弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人柏崎正一、同野村宏治の上告理由三について
 納税者が、課税処分を受け、当該課税処分にかかる税金をいまだ納付していない
ため滞納処分を受けるおそれがある場合において、右課税処分の無効を主張してこ
れを争おうとするときは、納税者は、行政事件訴訟法三六条により、右課税処分の
無効確認を求める訴えを提起することができるものと解するのが、相当である(最
高裁昭和四二年(行ツ)第五七号同四八年四月二六日第一小法廷判決・民集二七巻
三号六二九頁参照。なお、最高裁昭和四〇年(行ツ)第一〇六号同四二年五月二六
日第二小法廷判決・訟務月報一三巻八号九九〇頁は、確定申告にかかる所得税額等
を減額した更正処分の無効確認を求める訴えを「行政事件訴訟法三六条が無効等確
認の訴えの提起を許した場合に該当しない」との理由で不適法としているが、右の
ような減額更正処分については、被処分者はその無効確認を求める法律上の利益を
有せず、その理由において右更正処分の無効確認を求める訴えは不適法たるを免れ
ない(同条参照)のであつて、右判決理由もその趣旨を判示したにとどまるものと
解されるのである。されば、当裁判所の前示判断は、右判決に牴触するものではな
い。)。
 そこで、右の見解に立つて本件をみるのに、原判決によれば、上告人は本件課税
処分にかかる所得税及び入場税をいまだ納付していないことがうかがえるというの
であるから、上告人は、右課税処分に続く滞納処分を受けるおそれがあるものとい
うべく、したがつて、本件課税処分無効確認の訴えは適法である。しかるに、原審
が右訴えを不適法として却下したのは法律の解釈適用を誤つたものであり、右違法
は原判決の結論に影響を及ぼすことが、明らかである。論旨は理由があり、原判決
中本件課税処分無効確認請求にかかる訴えを却下した部分はこれを破棄し、右請求
の当否について更に審理判断させるためこれを原審に差し戻す必要がある。そして、
主位的請求である右課税処分無効確認請求について原判決が破棄差戻を免れない以
上、予備的請求である本件課税処分取消請求についても当然に原判決は破棄差戻を
免れない。
 よつて、その他の上告理由に論及するまでもなく、原判決を全部破棄し、これを
原審に差し戻すこととし、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条、三九六条、三八
八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    服   部   高   顯

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