弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成15年(ワ)第608号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結の日 平成16年4月12日
          判         決
        原      告     三星ダイヤモンド工業株式会社
        訴訟代理人弁護士     筒井豊
        補佐人弁理士       倉内義朗
        被      告     中村留精密工業株式会社
        訴訟代理人弁護士     関根秀太
        同            佐々木俊夫
        同            酒井剛毅
          主         文
 1 原告の請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
 1 被告は、別紙イ号物件説明書記載の物件を製造し又は販売してはならない。
 2 被告は、原告に対し、5800万円及びこれに対する平成15年1月31日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は、貼り合せガラス基板の裁断装置及びガラスの切断方法に関する特許
権を有する原告が、被告によるガラス基板の裁断装置の製造販売が上記特許権を侵
害すると主張し、また、被告による被告製裁断装置のメンテナンス等が、裁断装置
の使用者による上記特許権の侵害行為を幇助する不法行為に該当すると主張して、
裁断装置の製造販売の差止めと損害賠償を請求した事案である。
 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実は証拠を掲記しない。)
  (1) 原告は、各種ダイヤモンド並びに各種超硬合金工具及び硝子切の製造販売
等を目的とする株式会社である。
    被告は、機械及び機械部品の製造販売等を目的とする株式会社である。
    原告及び被告は、いずれも、液晶パネル用ガラス基板その他のガラス基板
の裁断装置の製造販売を行っている。
  (2) 原告は、下記の特許権を有している(以下、この特許権を「本件A特許
権」といい、その特許請求の範囲の請求項2記載の発明を「本件A発明」とい
う。)。
     発明の名称  貼り合せガラス基板の裁断方法及びその装置
     出願日    平成4年7月29日
     出願番号   特願平4-223345号
     登録日    平成12年3月10日
     特許番号   第3042192号
     特許請求の範囲の請求項2は、別紙特許公報(特許第3042192
号)の該当欄記載のとおり
    上記請求項の構成要件は、以下のとおり分説される。
     ア 2枚のガラス基板を貼り合せて形成された貼り合せガラス基板のう
ち、上方に向いたガラス基板の表面をスクライブするガラスカッターと、
     イ 前記貼り合せガラス基板のうち、上方に向いたガラス基板の表面側
から下方のガラス基板に押圧力を負荷させるためのブレイク手段と、
     ウ 前記2枚のガラス基板の上下を反転させるための反転搬送手段を具
備するとともに、
     エ 第1スクライブテーブルと第1ブレイクテーブルと第2スクライブ
テーブルと第2ブレイクテーブルをこの順に具備し、これにより、2枚のガラス基
板のそれぞれに対して、ガラスカッターの種類や材質を最適なものから選定した
り、又ブレイク手段によって負荷させる押圧力を最適な状態に調整できることを特
徴とし、
     オ 貼り合せガラス基板を第1スクライブテーブル上に水平状態で置
き、上方に向いた第1ガラス基板をその予め設定されたラインに沿って上方からガ
ラスカッターでスクライブし、
     カ 次にこの貼り合せガラス基板を反転させて第1ブレイクテーブル上
に搬送して水平状態で置き、上方に向いた第2ガラス基板の上方からブレイク手段
によって押圧力を負荷させることで、第1ガラス基板をスクライブラインに沿って
ブレイクさせ、
     キ 更にこの貼り合せガラス基板をその状態のまま、第2スクライブテ
ーブル上に搬送して水平状態で置き、上方に向いた第2ガラス基板を予め設定され
たラインに沿って上方からガラスカッターでスクライブし、
     ク 次にこの貼り合せガラス基板を反転させて第2ブレイクテーブル上
に搬送して水平状態で置き、上方に向いた第1ガラス基板の上方から前記ブレイク
手段によって押圧力を負荷させることで、第2ガラス基板をスクライブラインに沿
ってブレイクさせるよう構成した
     ケ 貼り合せガラス基板の裁断装置
  (3) 原告は、下記の特許権を有している(以下、この特許権を「本件B特許
権」といい、その発明を「本件B発明」という。)。
     発明の名称  ガラスの切断方法
     出願日    昭和62年5月27日
     出願番号   特願昭62-130347号
     出願公告日  平成5年5月27日
     出願公告番号 特公平5-35689号
     登録日    平成6年2月28日
     特許番号   第1828096号
     特許請求の範囲の請求項1は、別紙特許公報(特公平5-35689
号)の該当欄記載のとおり
    上記請求項の構成要件は、以下のとおり分説される。
     ア 2枚のガラス板を多数箇所で接着重合してなる母材の表裏両面に、
もしくは1枚のガラス板の一面に、複数本の第1切断線を一方向にスクライブし、
続いて該第1切断線と交差する方向に複数本の第2切断線をスクライブした後、前
記母材もしくはガラス板を所定圧力で押圧あるいは切断線より折り曲げ加圧し、該
母材から多数個のセル、もしくは1枚のガラス板から多数枚のガラス片を取り出す
ようにしたガラスの切断方法において、
     イ 前記第1切断線のスクライブの加圧力P1と、前記第2切断線のス
クライブの加圧力P2との関係を、
         P1<P2
      としたことを特徴とする
     ウ ガラスの切断方法
  (4) 被告は、ガラススクライバ(以下「スクライバ」という。)及びガラスブ
レーカ(以下「ブレーカ」という。)を製造販売している。また、被告は、顧客の
求めに応じて、スクライバ及びブレーカをまとめ、搬送装置等も付けて販売するこ
ともある。
  (5) 被告は、商社に対し、株式会社日立製作所(以下「日立製作所」とい
う。)向けとしてスクライバ2台及びブレーカ2台を販売し、平成12年5月16
日ころにこれを同社に納入し、平成12年9月19日ころにその検収を受けた。
    被告が日立製作所に納入したスクライバ及びブレーカは、同社の求めに応
じ、これら4台を組み合せたものであり、反転手段及び搬送手段となる装置も合わ
せて納入している(被告が日立製作所に納入した上記製品を以下「ロ号物件」とい
う。)。
  (6) 被告は、商社に対し、エスティ・エルシーディー株式会社(以下「エステ
ィ社」という。)向けとしてスクライバ2台とブレーカ4台を販売し、これを同社
に納入し、平成11年7月30日にその検収を受けた(乙1の1・2)。
    被告がエスティ社に納入したスクライバ及びブレーカは、いずれも単体で
販売したものである。
  (7) 被告は、上記エスティ社へのスクライバ及びブレーカの納入以降、エステ
ィ社との契約に基づき、エスティ社において、納入したスクライバ及びブレーカの
修理、メンテナンス等を行ってきた。
 2 争点
  (1) 差止めの必要性
   〔原告の主張〕
    被告は、顧客に対して別紙イ号物件説明書記載の物件(以下「イ号物件」
という。)を製造販売している。
    イ号物件の構成は本件A発明の構成要件を充足するものであり、イ号物件
の作用効果も本件A発明の作用効果と同じである。したがって、イ号物件は本件A
発明の技術的範囲に属する。
    ところで、被告は、製造しているのはスクライバ及びブレーカの単体であ
り、イ号物件は製造販売していないと主張するが、顧客の求めに応じてラインを構
成して販売することがあるとも主張しており、現に、後記(2)の原告の主張のとお
り、本件A発明の技術的範囲に属するロ号物件を販売したことがある。
    このような被告の主張及び営業活動に照らせば、将来において、被告が顧
客の求めに応じてイ号物件を製造販売する可能性を否定できないことは明らかであ
る。
    したがって、本件A特許権に基づいて、被告によるイ号物件の製造販売を
差し止める必要がある。
   〔被告の主張〕
    被告が製造しているのは、スクライバ及びブレーカの単体であって、イ号
物件のような一連の裁断装置として製造しているものではない。
    スクライバ及びブレーカの販売に際しては、顧客の求めに応じて何台かを
まとめ、場合によっては搬送装置等も付けて販売することもあるが、これにしても
必ずイ号物件のような組合せになるというものでもない。
    以上のとおり、被告はイ号物件を製造販売しているものではないから、差
止めの必要性はない。
  (2) ロ号物件の構成
   〔原告の主張〕
    ロ号物件の構成及び作用は、別紙ロ号物件説明書(1)記載のとおりである。
    ロ号物件の構成は本件A発明の構成要件を充足するものであり、ロ号物件
の作用効果も本件A発明の作用効果と同じである。
    したがって、ロ号物件は本件A発明の技術的範囲に属する。
    被告は、ロ号物件の構成としてスルー機能があり、作用としてもそのよう
な機能をも有していると主張するが、そうだとしても、基本的な構成は別紙ロ号物
件説明書(1)記載のとおりであるし、これに記載した作用効果も有することは被告も
認めるところであるから、ロ号物件が本件A発明の技術的範囲に属することに変わ
りはない。
   〔被告の主張〕
    ロ号物件の構成は、別紙ロ号物件説明書(2)記載のとおりである。
    ロ号物件の作用は、別紙ロ号物件説明書(1)記載のものも、その一つである
が、各スクライバ、ブレーカとも、スクライブ又はブレークを行わないで次の工程
に母剤を流す機能をも有している。
  (3) 被告によるエスティ社に納入したスクライバ及びブレーカの修理、メンテ
ナンス等は、エスティ社による本件A特許権侵害の幇助行為として不法行為となる
か。
   〔原告の主張〕
    被告がエスティ社に納入した前記「前提となる事実」(6)記載のスクライバ
及びブレーカは、別紙ハ号物件説明書記載のとおりに構成された(以下「ハ号物
件」という。)。
    このうち、前半のスクライバ2台及びブレーカ2台からなる部分(以下
「ハ’号物件」という。)は、本件A発明の構成要件を充足するものであり、その
作用効果も本件A発明の作用効果と同じである。したがって、ハ’号物件は本件A
発明の技術的範囲に属する。
    よって、エスティ社においてハ’号物件を含むハ号物件を使用すること
は、本件A発明を実施することを意味し、本件A特許権の侵害に当たる。
    被告は、エスティ社に納入した上記スクライバ及びブレーカの修理、メン
テナンス等の作業のために従業員を派遣したり、部品交換や部分的手直し等を行っ
ている。これは、エスティ社がハ号物件を使用するために必要不可欠な支援であ
り、即ち、エスティ社がハ号物件のとおりに構成したことを知った上で、故意又は
過失によって、エスティ社による本件A特許権の侵害行為を幇助するものであっ
て、原告に対する共同不法行為である。
    なお、被告がエスティ社に納入した前記「前提となる事実」(6)記載のスク
ライバ及びブレーカは、別紙ハ号物件説明書記載のとおりに構成されることを前提
として注文がされたものであり、被告もこれを知っていたものである。
   〔被告の主張〕
    被告がエスティ社に納入したスクライバ及びブレーカは、納入したのは原
告主張の構成以外の構成でも、単体でも用い得る単体機であり、反転手段や搬送手
段の調達に被告は関与していない。ラインを組んだのはエスティ社であって、被告
は関与していないし、実際の構成も知らない。また、エスティ社においてはライン
構成を変更したことがあるから、常にハ号物件のように構成されていたわけでもな
い。
    被告がエスティ社に従業員を派遣してスクライバ及びブレーカの修理等を
行ったことはあるが、あくまでスクライバ及びブレーカ単体の修理等を行ったもの
であり、ライン全体に対する修理等を行ったものではない。
    被告がエスティ社に従業員を派遣して行った修理等の回数は、4年間弱の
期間内において10回未満と非常に少ない上、問題が生じた箇所の修理等にしか関
与していなかったから、エスティ社がスクライバ及びブレーカをどのように構成し
ていたかを把握することは極めて困難であった。
    他方、被告がエスティ社向けにスクライバ及びブレーカを販売したのは、
本件A特許権の登録前であり、この販売行為自体は本件A特許権を侵害しない適法
なものであるところ、適法に販売した機械について契約上の修理等は容易に拒否す
ることができないものであるから、上記のとおり、エスティ社が本件A特許権を侵
害するようにラインを構成していたかどうか被告において知り得ない状況下では、
スクライバ及びブレーカの機械単体の修理等を拒むべき義務はないというべきであ
る。
    したがって、本件の状況下では、仮に、被告がエスティ社向けに販売した
スクライバ及びブレーカの修理等を行った行為が、エスティ社による本件A特許権
の侵害行為を幇助するものと評価されるとしても、違法性が阻却されるかそもそも
違法性が存在しないというべきであり、仮に違法性があるとしても故意過失がない
ものである。
  (4) 本件A特許権に無効理由が存することが明らかか
   〔被告の主張〕
   ア 本件A発明は、本件A特許権の出願前に発行され、公知となっていた公
開特許公報である特開昭59-8632号(乙2。以下「引用例A1」という。)
及び特開昭57-109918号(乙3。以下「引用例A2」という。)の各公報
に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易に発明することができたもので
あり、本件A特許権には特許法123条1項2号、29条2号の無効理由が存在す
ることが明らかである。このような本件A特許権に基づく請求は、権利の濫用であ
って許されない。
     即ち、引用例A1に記載された発明は、2枚のガラスが重ねられ、かつ
互いに接着されて構成された積層板の切断方法に関するものであるが、本件A発明
との相違点は、それぞれの作業工程に特定の作業テーブルがあるか否かの点のみで
あり、その余の点は同じである。この、それぞれの作業工程に特定の作業テーブル
があることの効果は、「2枚のガラス基板のそれぞれに対して、ガラスカッターの
種類や材質を最適なものから選定したり、又ブレイク手段によって負荷させる押圧
力を最適な状態に調整できること」(以下「最適状態選定効果」という。)であ
る。
     ところで、引用例A2に記載された発明は、ガラス基板切断装置に関す
るものであるが、この装置は、「押圧ローラーの押圧力は加圧調整用ボルトによっ
て調整できるので、各スクライブ部において確実に切断することができ」ると記載
されているように、2枚のガラス板の材質及び両面の切筋性状等の条件により各々
の切断機構の加圧力を別個に設定し、それぞれに最適な押圧力を与えることができ
るものである。
     したがって、最適状態選定効果のうち、「ブレイク手段によって負荷さ
せる押圧力を最適な状態に調整できる」という点は、上記の引用例A2に記載され
た技術を引用例A1の工程にそのまま適用すれば得られるものである。
     また、最適状態選定効果のうち、2枚のガラス基板のそれぞれに対して
「ガラスカッターの種類や材質を最適なものから選定」して「最適な状態に調整で
きる」という点も、上記の引用例A2に記載された技術をスクライブ工程に単純に
応用することにより得られるものである。
     以上のように、引用例A2に記載された、複数の切断機構において異な
った加圧力を設定することができるという技術を、引用例A1の各工程に応用すれ
ば、最適状態選定効果を得ることは容易である。
     したがって、本件A発明は、本件A特許権出願当時において、引用例A
1記載の技術と引用例A2記載の技術から、当業者であれば容易に想到することが
できたものである。
   イ 原告は、引用例A1に記載された発明では、2枚の板ガラスをどのよう
な順序でスクライブし、ブレイクするかの順序については触れていないと主張する
が、その特許請求の範囲や、実施例の記載において2枚の板ガラスのスクライブと
ブレイクの順序が記載されている。
     また、原告は、引用例A1に記載された発明では、一連に配された4つ
のテーブル同士と反転手段と搬送手段の各要素を相互に有機的に連繋する構成と
し、貼り合せガラス基板を、テーブルから次のテーブルへと、途中、反転、搬送、
反転を行いつつ、順次送って、スクライブ、ブレイク、スクライブ、ブレイクの一
連の作業を施すことは想定していないと主張するが、そもそも、引用例A1は、本
件A発明との相違点として主張したとおり、それぞれの作業工程に特定の作業テー
ブルがないのであるから、4つのテーブル同士等を有機的に連繋し、搬送を行い、
順次送って一連の作業を施すようになっていないことは、全て当然のことであり、
それぞれの作業工程に特定の作業テーブルがないことと同じことをいうにすぎな
い。
     原告は、引用例A2に記載された発明と本件A発明では根本的に技術思
想が異なっていると主張するが、被告が主張する無効理由は、引用例A2記載の発
明と本件A発明をその全体において比較するものではないから、反論となるもので
はない。
     また、原告は、引用例A2に記載された技術を、ブレイクとは全く異質
の技術であるスクライブに応用できるとすることには根拠がないと主張するが、引
用例A2に記載された技術は、最適な押圧力を選定し設定することを可能にするた
めに2個以上の切断機構を設けるというものであり、その技術思想は工程ごとに装
置を設けて最適な状態を選定するというものであるから、これをスクライブ工程に
応用することができるのは明らかである。
     なお、本件A特許権の出願前に発行され、公知となっていた公開特許公
報である特開昭47-22912号(乙10。以下「引用例A3」という。)に記
載された発明は、一方向に多数本のスクライブをするステージと、当該方向に直行
する方向に多数本のスクライブをするステージを備えたガラス切断装置に関するも
のであるが、当該装置は、それぞれのステージごとにカッターの種類やスクライブ
の押圧力を変えることができる機能を備えているところ、当業者が引用例A2と合
わせて引用例A3をも参照すれば、引用例A1の各工程につき個別にスクライブテ
ーブル、ブレイクテーブルを設け、各工程に適切な条件を設定して最適状態選定効
果を得ることに思い至ることは一層容易である。
   〔原告の主張〕
    本件A発明は、貼り合せガラス基板の2枚のガラス基板に、種類や厚みの
相違があったり、表面仕上げの有無や仕上げ状態の相違があったり、熱履歴の相違
があっても、第1スクライブテーブルに載置すれば、最終の第2ブレイクテーブル
まで滞りなく送られ、単位貼り合せガラスに自動的に裁断されるようにしたことに
特徴があり、そのために、第1スクライブテーブルと第1ブレイクテーブルと第2
スクライブテーブルと第2ブレイクテーブルをこの順に具備するとともに、第1ス
クライブテーブルと第1ブレイクテーブルとの間及び第2スクライブテーブル及び
第2ブレイクテーブルとの間では、それぞれ貼り合せガラス基板を反転させ、第1
ブレイクテーブルと第2スクライブテーブルとの間では貼り合せガラス基板をその
まま搬送するというように、一連に配された上記4つのテーブル同士と2つの反転
工程と1つの搬送工程の各要素を相互に有機的に連繋した構成としている。
    これに対し、引用例A1に記載された発明では、2枚の板ガラスをどのよ
うな順序でスクライブし、ブレイクするかの順序については、何ら触れていない。
したがって、本件A発明のように、一連に配された4つのテーブル同士と反転手段
と搬送手段の各要素を相互に有機的に連繋する構成とし、貼り合せガラス基板を、
テーブルから次のテーブルへと、途中、反転、搬送、反転を行いつつ、順次送っ
て、スクライブ、ブレイク、スクライブ、ブレイクの一連の作業を施すことにより
自動的に単位貼り合せガラスに裁断するというようなことは想定していないし、開
示も示唆もない。
    また、引用例A2に記載された発明は、ガラス基板を反転させずに上下両
方のガラス板をそれぞれ既設のスクライブ部(切筋)で自動的にかつ確実に切断す
るというものであって、本件A発明のように、一連に配された4つのテーブル同士
と反転手段と搬送手段の各要素を相互に有機的に連繋する構成として、第1のスク
ライブから始めるものとは、根本的に技術思想が異なっている。また、引用例A2
に記載された技術は、ガラス基板をブレイクすることに関するものでしかないか
ら、この技術を、ブレイクとは全く異質の技術であるスクライブに応用できるとす
ることは、何の根拠もない。
    以上のように、本件A発明は、引用例A1記載の技術と引用例A2記載の
技術から、当業者であれば容易に発明することができたというものではなく、被告
主張の無効理由は存在しない。
  (5) 被告によるエスティ社向けのスクライバ2台の販売は本件B特許権の間接
侵害となるか
   〔原告の主張〕
    被告がエスティ社に納入した前記「前提となる事実」(6)記載のスクライバ
2台は、クロススクライブ用に設計され、別紙ハ号方法説明書記載の方法(以下
「ハ号方法」という。)の実施にのみ使用する装置であり、現にエスティ社は、上
記スクライバ2台によって、ハ号方法を実施している。
    ハ号方法の構成は本件B発明の構成要件を充足するものであり、ハ号方法
の作用効果も本件B発明の作用効果と同じである。したがって、ハ号方法は本件B
発明の技術的範囲に属する。
    そして、上記スクライバ2台は、上記のとおりハ号方法の実施にのみ使用
するものであるから、即ち本件B発明の実施にのみ使用するものといえる。
    したがって、被告がエスティ社向けに上記スクライバ2台を販売した行為
は、本件B特許権の間接侵害に当たる。
    なお、被告がエスティ社向けに販売したスクライバについて、P1とP2が
調整可能であることは事実であるが、エスティ社において、P1<P2の設定のみで
用いられていることは、原告従業員がエスティ社において圧力計を確認したところ
でもあり、第2切断線の不良率が非常に高くなるP1=P2やP1>P2に設定する
ことが当業者の技術常識からあり得ないことから明らかである。
   〔被告の主張〕
    被告の製品であるスクライバには、クロススクライブにも用いることがで
きるスクライバであるが、クロススクライブ用に設計されたスクライバはない。加
圧力は自由に設定することができるものであるから、B特許の実施のためにのみ用
いるものではないし、実際にP1<P2以外の設定で使用されることも少なくない。
エスティ社においても、切断線ごとに加圧力を設定し、その結果、P1=P2やP1
>P2となる交点もあるように加圧力を設定してスクライバを使用している。
    なお、一般論として、P1=P2やP1>P2と設定するよりも、P1<P2
と設定する方が第2切断線の不良率が減少することが当業者の技術常識であること
は争わないが、実際の貼り合せ基板切断の場面では、シール材の位置、ガラス基板
や裁断装置テーブルの微妙なうねりなど、スクライブの圧力以上に切断の良否を大
きく左右する要因がいくつもあるから、P1<P2とすることは余り重視されていな
い。
    したがって、被告の製品であるスクライバは、ハ号方法の実施にのみ使用
するものではない。
  (6) 本件B特許権に無効理由が存することが明らかか
   〔被告の主張〕
    本件B発明は、本件B特許権の出願前に発行され、公知となっていた公開
特許公報である特開昭55-15173号(乙5。以下「引用例B1」という。)
に記載された発明及び本件B特許権の出願前である昭和53年12月10日に刊行
され、公知となっていた刊行物である『ガラス施工法(上巻)』(第5版)(乙
6。以下「引用例B2」という。)に記載された技術に基づいて、当業者であれば
容易に発明することができたものであり、本件B特許権には特許法123条1項2
号、29条2号の無効理由が存在することが明らかである。このような本件B特許
権に基づく請求は、権利の濫用であって許されない。
    即ち、引用例B1に記載された発明は、光学表示セルの製造方法に関する
ものであるが、本件B発明との相違点は、①引用例B1に記載された発明は2枚の
ガラス板が接着重合した母材が対象物になっているのに対し、本件B発明ではこれ
に加え1枚のガラス板も対象物になっている点、②引用例B1に記載された発明で
は母材に付けられる切断線が一方のガラス板の外側面と他方のガラス板のない側面
に形成されるのに対し、本件B発明では母材の表裏両面(いずれも外側面)に形成
される点、③引用例B1に記載された発明においては切断線の深さの差が問題にさ
れているのに対し、本件B発明では切断線をスクライブする加圧力の差が問題にさ
れている点、④引用例B1に記載された発明においては第1電極基板素材であるガ
ラス板の切断線の深さと第2電極基板素材であるガラス板の切断線の深さに差が設
けられるのに対し、本件B発明においては同一のガラス面内の一方向の第1切断線
とこれと交差する他方向の第2切断線との間に、切断線を形成するスクライブ加圧
力に差が設けられている点、⑤引用例B1に記載された発明では重合される電極基
板素材である2枚のガラス板のいずれに先に切断線が入れられるか、いずれのガラ
ス板の切断線を深く形成するかについて何ら指定がないのに対して、本件B発明で
は同一ガラス面内で先に形成される第1切断線のスクライブ加圧力よりも後から形
成され第1切断線と交差する第2切断線のスクライブ加圧力の方が大きく設定され
る点、の5点である。
    これらの相違点のうち、③については、引用例B2に、ガラスカッターに
加える力即ち加圧力と、切りすじに生じる縦方向に伸びた割れ目(にゅう)即ち切
断線との深さとの関係が図示されており、これによれば、加圧力が増加すれば切断
線の深さも増えるので、切断線の深さをスクライブ加圧力に置き換えることは引用
例B2に記載された技術に基づき当業者であれば容易にできることである。
    次に、①、④、⑤については、引用例B1に記載された発明において切断
線の深さが異なるように形成されたのは、最初に分断される一方のガラス板の切断
線を深くして比較的弱い力で分断されるようにし、次に分断される他方のガラス板
の切断線を比較的浅くして比較的強い力で分断されるようにして、最初の分断の時
に一方のガラス板とともに他方のガラス板も同時に分断されるのを防ぐためである
が、この技術が、2枚のガラス板を接着重合した母材における異なるガラス板に付
けられた切断線の間のみならず、一枚のガラス板の同一表面における一方向と他方
向の切断線に適用できることは明らかであり、したがって、母材の2枚のガラス板
のそれぞれの同一面内、又は1枚のガラス板の同一面内にクロススクライブされる
一方向の切断線と他方向の切断線において、その深さを変化させて切断線を形成
し、弱い力で分断できる切断線から分断し、当該方向の全ての切断線に沿って分断
してから他方向の分断線に沿って分断するという分断方法を、母材の表裏両面又は
一枚のガラス板の一面に適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
    そして、上記のように同一のガラス面内において、引用例B1に記載され
た発明にみられるような、縦方向と横方向の交差する切断線を、縦と横とでスクラ
イブ加圧力を変えて異なった深さに形成する場合、作業性や効率の観点から、まず
一方の切断線を同一加圧力でスクライブした後、他方向の切断線を前とは異なる加
圧力でスクライブするという作業工程が合理的であるから、当業者であれば上記の
工程を採用することが明らかである。
    さらに、上記の工程を採用した場合、最初の方向に複数本の切断線をスク
ライブする際には、各切断線は、他の切断線と交差しないが、続いて他の方向の切
断線をスクライブする際には、先に形成した切断線と交差することとなるところ、
最初の方向のスクライブ加圧力P1と、後の方向のスクライブ加圧力P2の設定は、
通常の場合はP1<P2とすべきである。なぜなら、後からスクライブされる切断線
は、先にスクライブされた切断線と交差するところ、ガラスの性状によってはこの
交差部分の直後において線飛びを起こし、ガラスカッターによってはこの交差部分
の直後で線飛びを起こし、切断線が形成されない場合があり、そのときには加圧力
を増大させて切断線の形成を図る必要があるし、引用例B2に記載されているよう
に、切断線の両側付近にはガラス表面に横割れが生じており、そのために切断線の
両側は盛り上がっているから、線飛びを起こさない場合でも、交差する後からの切
断線をより大きい加圧力で形成することが好ましいからであり、これらは、引用例
B2に記載されている加圧力を増せば深い切断線ができるという関係から容易に得
られることである。したがって、P1<P2とする作業方法を設計することは、当業
者において何の困難もないことであった。
    最後に、②については、切断時に加えられる押圧力の方向の違いをもたら
すものにすぎず、母材の製作工程を計画する際に、どちらの方法を用いるかを選択
するという設計上の問題にすぎないのであって、何ら本質的なものではない。した
がって、母材の表裏両面に切断線を付ける方法は、当時の知見に基づき、当業者で
あれば容易に採用することができたものである。
    したがって、本件B発明は、本件B特許権出願当時において、引用例B1
記載の発明と引用例B2記載の技術から、当業者であれば容易に想到することがで
きたものである。
    なお、原告は、引用例B1に記載された発明は、電極基板素材を、切込線
に沿って簡単かつ確実に分断できるようにすることを課題とするものであると主張
するが、その明細書の記載に照らせば、共割れ問題の解決を図ったものであること
は明らかであり、その余の原告の主張は、いずれも全く反論とならないものであ
る。
   〔原告の主張〕
    本件B発明は、共割れ問題と交点飛び問題を同時に解決することを課題と
するのに対し、引用例B1に記載された発明は、電極基板素材を、切込線に沿って
簡単かつ確実に分断できるようにすることを課題とするものであって、両者は構成
において全く異なり、作用効果も異なるものである。
    引用例B2では、ガラスカッターに加える加圧力とガラス板に形成される
切りすじにおける縦の割れ目(にゅう)の深さとの関係、及び、切りすじにおける
ガラス性状が開示されているにすぎず、クロススクライブの技術や、交差する2種
類の切断線をガラス板状に形成する際にどのような現象が発生するか、また、ガラ
スカッターに加える加圧力が2種類の切断線の交点においてどのような影響を及ぼ
すかなどについては、開示されていない。
    被告の主張にいう本件B発明と引用例B1に記載された発明の相違点③
(以下単に相違点①、②のように記載する。)についていえば、本件B発明は、共
割れ問題だけではなく、交点飛び問題を同時に解決するものであるから、単にP1
とP2を異ならせるのではなく、P1<P2とする必要があったものであり、ここで
問題とされる加圧力と、引用例B1で問題とされる切断線の深さとは、相互に置き
換えられるようなものではない。
    相違点①、④、⑤についていえば、被告の、引用例B1に記載された技術
を、2枚のガラス板を接着重合した母材における異なるガラス板に付けられた切断
線の間のみならず、一枚のガラス板の同一表面における一方向と他方向の切断線に
適用できることは明らかであるとの主張は、引用例B1の記載に基づかないもので
あり、また、母材の2枚のガラス板のそれぞれの同一面内、又は1枚のガラス板の
同一面内にクロススクライブされる一方向の切断線と他方向の切断線において、そ
の深さを変化させて切断線を形成し、弱い力で分断できる切断線から分断し、当該
方向の全ての切断線に沿って分断してから他方向の分断線に沿って分断するという
分断方法を、母材の表裏両面又は一枚のガラス板の一面に適用することは、当業者
が容易に想到し得ることであるという主張は、本件B発明が課題とする交点飛びの
問題を全く無視するものである。
    また、同一のガラス面内において、交差する切断線を、縦と横とでスクラ
イブ加圧力を変えて異なった深さに形成する場合、作業性や効率の観点から、まず
一方の切断線を同一加圧力でスクライブした後、他方向の切断線を前とは異なる加
圧力でスクライブするという作業工程が合理的であるから、当業者であれば上記の
工程を採用することが明らかであるとの被告の主張も、何の根拠もないものであ
り、本件B発明が課題とする交点飛びの問題を全く無視するものでもある。
    さらに、P1とP2の設定は、通常の場合はP1<P2とすべき理由とし
て、後からスクライブされる切断線は、先にスクライブされた切断線と交差すると
ころ、ガラスの性状によってはこの交差部分の直後において線飛びを起こし、ガラ
スカッターによってはこの交差部分の直後で線飛びを起こし、切断線が形成されな
い場合があり、そのときには加圧力を増大させて切断線の形成を図る必要がある
し、引用例B2に記載されているように、切断線の両側付近にはガラス表面に横割
れが生じており、そのために切断線の両側は盛り上がっているから、線飛びを起こ
さない場合でも、交差する後からの切断線をより大きい加圧力で形成することが好
ましいからであるとし、これらが、引用例B2に記載されている加圧力を増せば深
い切断線ができるという関係から容易に得られることであるという被告の主張も、
証拠に基づかない主張であり、加圧力を増せば深い切断線ができるという関係から
は、第2切断線の加圧力を第1切断線の加圧力よりも大きくすることにより交点飛
び問題を解決するという技術思想が導き出されることはないものである。
    相違点②についていえば、引用例B1記載の発明において、ガラス板の表
裏両面に切断線を形成した場合には、引用例B1記載の発明が行おうとする分断は
できない。また、引用例B1には、ガラス板の表裏両面に切断線を形成することに
ついての記載も示唆もない。
    以上のように、本件B発明は、引用例B1記載の発明と引用例B2記載の
技術から、当業者であれば容易に発明することができたというものではなく、被告
主張の無効理由は存在しない。
  (7) 損害
   〔原告の主張〕
   ア 被告によるロ号物件の販売は、本件A特許権を侵害するものであり、こ
れにより原告が被った損害は、これにより被告が得た利益に等しい。
      ロ号物件の販売代金  1億8000万円
      被告の利益率     20パーセント
      被告が得た利益
             1億8000万円×20パーセント=3600万円
   イ 被告によるエスティ社に納入したスクライバ及びブレーカの修理、メン
テナンス等は、前記原告の主張のとおり被告に対する不法行為であり、これにより
原告が被った損害は、ハ’号物件の使用によって原告が被った損害、即ちハ’号物
件の使用に対する実施料相当額に等しい。
      ハ’号物件を構成するスクライバの販売代金
                 2300万円×2台=4600万円
      ハ’号物件を構成するブレーカの販売代金
                 2100万円×2台=4200万円
      実施料率       5パーセント
      実施料相当額
        (4600万円+4200万円)×5パーセント=440万円
   ウ 被告によるエスティ社向けのスクライバ2台の販売は、本件B特許権を
間接侵害するものであり、これにより原告が被った損害は、これがなければ原告が
得られた利益に等しい。
      上記スクライバの販売代金
                 2300万円×2台=4600万円
      原告の利益率     20パーセント
      原告が得られた利益 4600万円×20パーセント=920万円
   〔被告の主張〕
    否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(4)(本件A特許権に無効理由が存することが明らかか)について
  (1) 本件A特許権に係る明細書(甲2)によれば、本件A発明は本件A特許権
の請求項2に係るものであり、請求項1の発明はこれを方法の発明としたものであ
るところ、その発明の詳細な説明には、次のような記載があることが認められる。
   ア 産業上の利用分野、従来の技術、発明が解決しようとする課題の項
     本発明は、二枚のガラス基板を貼り合せて形成された貼り合せガラス基
板から単位貼り合せガラスに機械的に裁断する裁断方法及びその装置に関する。
     従来は、まず、貼り合せガラス基板をスクライブテーブル上に水平状態
で置き、第1ガラス基板を上方からガラスカッターでスクライブし、次に、この貼
り合せガラス基板を反転させてスクライブテーブル上に水平状態で置き、第2ガラ
ス基板を上方からガラスカッターでスクライブし、この後、第2ガラス基板を上方
に向けた状態のまま、この貼り合せガラス基板をブレイクテーブル上に水平状態で
置き、上方に向いた第2ガラス基板の上方からブレイク手段によって第1ガラス基
板のスクライブラインに沿って押圧力を負荷させて第1ガラス基板をブレイクさ
せ、次に、この貼り合せ基板を反転させてブレイクテーブル上に水平状態で置き、
上方に向いた第1ガラス基板の上方からブレイク手段によって第2ガラス基板のス
クライブラインに沿って押圧力を負荷させて第2ガラス基板をブレイクさせてい
た。
     ところが、この際、第1ガラス基板をブレイクさせる工程で、上方に向
いた第2ガラス基板も同時にブレイクし、工程途中で貼り合せガラス基板の一部が
完全に単位貼り合せガラスに裁断されるおそれがある。こうなると、その後に貼り
合せ基板を反転させ、ブレイクテーブル上に置くまでの途中で完全に単位貼り合せ
ガラスに裁断されたものが脱落したり、再度ブレイク手段によって押圧力が負荷さ
れることで、単位貼り合せガラスの側端に欠け等の損傷が残ることがある。
     本発明は、このような従来の問題点の解決を図り、工程途中で貼り合せ
ガラス基板の一部が完全に単位貼り合せガラスに裁断されて、これが最後の工程に
搬送する途中で脱落したり、裁断された単位貼り合せガラスの側端に欠け等の損傷
が残るおそれを少なくすることを目的とする。
   イ 課題を解決するための手段の項
     上記の目的を達成するため、本発明は、第1スクライブテーブルと第1
ブレイクテーブルと第2スクライブテーブルと第2ブレイクテーブルをこの順に具
備し、これにより二枚のガラス基板のそれぞれに対して、ガラスカッターの種類や
材質を最適なものから選定したり、ブレイク手段によって負荷させる押圧力を最適
な状態に調整できることを特徴とし、貼り合せガラス基板を第1スクライブテーブ
ル上に水平状態で置き、第1ガラス基板を上方からガラスカッターでスクライブ
し、次に、この貼り合せガラス基板を反転させ、第1ブレイクテーブル上に搬送し
て水平状態で置き、上方に向いた第2ガラス基板の上方からブレイク手段によって
押圧力を負荷させることで第1ガラス基板をスクライブラインに沿ってブレイクさ
せ、さらにこの貼り合せガラス基板をその状態のまま、第2スクライブテーブル上
に搬送して水平状態で置き、第2ガラス基板を上方からガラスカッターでスクライ
ブし、次に、この貼り合せガラス基板を反転させ、第2ブレイクテーブル上に搬送
して水平状態で置き、上方に向いた第1ガラス基板の上方からブレイク手段によっ
て押圧力を負荷させることで第2ガラス基板をスクライブラインに沿ってブレイク
させる貼り合せガラス基板の裁断方法及び裁断装置を要旨とする。
   ウ 作用、発明の効果の項
     本発明では、二枚のガラス基板を貼り合せて形成された貼り合せガラス
基板から単位貼り合せガラスに機械的に裁断するに際し、最初にスクライブするガ
ラス基板をブレイクさせる工程では他方のガラス基板はまだスクライブされていな
いから、他方のガラス基板はこれをブレイクさせる工程の前にブレイクされること
がなく、工程途中で貼り合せガラス基板の一部が完全に単位貼り合せガラスに裁断
されて、これが最後の工程に搬送する途中で脱落したり、裁断された単位貼り合せ
ガラスの側端に欠け等の損傷が残ることが少なくなる。
     また、貼り合せガラス基板は二枚のガラス基板が完全にブレイクした
後、そのままの状態で残るから、後処理や後工程への搬送が簡単に行える。
     さらに、第1ガラス基板のスクライブと第2ガラス基板のスクライブを
それぞれ別のスクライブテーブルで行い、またこれらのブレイクをそれぞれ別のブ
レイクテーブルで行うから、貼り合せガラス基板の2枚のガラス基板に、種類や厚
みの相違があったり、表面仕上げの有無やこの仕上げ状態の相違があったり、熱履
歴の相違があっても、これら二枚のガラス基板のそれぞれに対して、ガラスカッタ
ーの種類や材質を最適なものから選定したり、ブレイク手段によって負荷させる押
圧力を最適な状態に調整することができ、好適である。
  (2) これに対し、引用例A1(特開昭59-8632号。乙2)に記載された
発明は、特許請求の範囲第1項が、「互いに重ねて固着された2枚の板ガラスに切
筋を入れ、前記切筋を形成した板ガラスを下側とし、かつその切筋の両側部を支承
台で支承し、前記切筋の部分を上側の板ガラス上から加圧して、下側の板ガラスを
切筋に沿って割ることを特徴とする板ガラスの切断方法」、第2項が、「一方の板
ガラスに切筋を入れ、その板ガラスを下側として、それを切筋から割り、次に他方
の板ガラスに切筋を入れる特許請求の範囲の記載1の板ガラスの切断方法」という
ものであり、その明細書の発明の詳細な説明には、次のような記載があることが認
められる。
   ア 本発明は互いに固着された2枚の板ガラスの切断方法に関し、2枚の板
ガラスを無理なく切断することを可能にするものである。
     本発明は、互いに重ねて固着された2枚の板ガラスに切筋を入れ、前記
切筋を形成した板ガラスを下側とし、かつその切筋の両側部を支承台で支承し、前
記切筋の部分を上側の板ガラス上から軽く押すなどすることを要旨とする。
   イ 第1実施例の説明
     1は積層板で、これは2枚のガラス板A、Bが重ねられ、互いに接着さ
れて構成されたものである。
     まず上側になったガラス板Aにカッター2で切筋3Aを入れる。切筋3
Aを入れた積層板1を反転して、切筋3Aを有するガラス板が下側になるように
し、かつ切筋3Aの両側部を支承台4,4で支承する。支承台4上に載置された積
層板1を、その切筋3Aの部分を板ガラスB側から、軽く押すようにするか、たた
くようにして、板ガラスAを切筋3Aの部分で割る。次には、板ガラスBの所要の
位置にカッター2で切筋3Bを入れる。切筋3Bを形成した積層板1を再度反転
し、板ガラスB側を下にして支承台4上に積層板1を置き、切筋3Bの部分を板ガ
ラスA側から押すか、たたくようにして板ガラスBを切筋3Bの部分で割ること
で、積層板1を切断する。カッター2で切筋3を入れるときは、積層板1は、その
全面を支承し得るテーブルその他適当な位置に置く。
    引用例A1の上記記載中、「板ガラス」は本件A発明における「ガラス基
板」に、「互いに重ねて固着された2枚の板ガラス」及び「積層板」は「貼り合せ
ガラス基板」に、「切筋」は「スクライブライン」に、「切筋を入れる」は「スク
ライブする」に、切筋を入れるときに積層板を置く「テーブル」は「スクライブテ
ーブル」に、「支承台」は「ブレイクテーブル」に、「加圧して切筋から割る」は
「押圧力を負荷させることでスクライブラインに沿ってブレイクさせる」に、それ
ぞれ相当するものと認められる。
    したがって、引用例A1に上記のように記載されている特許請求の範囲第
2項の板ガラスの切断方法を実施するための装置としては、本件A発明の構成要件
に即していえば、
   ア 2枚のガラス基板を貼り合せて形成された貼り合せガラス基板のうち、
上方に向いたガラス基板の表面をスクライブするガラスカッターと、
   イ 前記貼り合せガラス基板のうち、上方に向いたガラス基板の表面側から
下方のガラス基板に押圧力を負荷させるためのブレイク手段と、
   ウ 前記2枚のガラス基板の上下を反転させるための反転搬送手段を具備す
るとともに、
   エ スクライブテーブルとブレイクテーブルを具備し、
   オ 貼り合せガラス基板をスクライブテーブル上に水平状態で置き、上方に
向いた第1ガラス基板をその予め設定されたラインに沿って上方からガラスカッタ
ーでスクライブし、
   カ 次にこの貼り合せガラス基板を反転させてブレイクテーブル上に搬送し
て水平状態で置き、上方に向いた第2ガラス基板の上方からブレイク手段によって
押圧力を負荷させることで、第1ガラス基板をスクライブラインに沿ってブレイク
させ、
   キ 更にこの貼り合せガラス基板をその状態のまま、スクライブテーブル上
に搬送して水平状態で置き、上方に向いた第2ガラス基板を予め設定されたライン
に沿って上方からガラスカッターでスクライブし、
   ク 次にこの貼り合せガラス基板を反転させてブレイクテーブル上に搬送し
て水平状態で置き、上方に向いた第1ガラス基板の上方から前記ブレイク手段によ
って押圧力を負荷させることで、第2ガラス基板をスクライブラインに沿ってブレ
イクさせるよう構成した
   ケ 貼り合せガラス基板の裁断装置
   が示唆されるものと認められる。
  (3) 本件A発明と上記引用例A1の記載から示唆される裁断装置の構成を対比
すれば、両者は、本件A発明では、「第1スクライブテーブルと第1ブレイクテー
ブルと第2スクライブテーブルと第2ブレイクテーブルをこの順に具備し、これに
より、2枚のガラス基板のそれぞれに対して、ガラスカッターの種類や材質を最適
なものから選定したり、又ブレイク手段によって負荷させる押圧力を最適な状態に
調整できる」ようにしているのに対し、上記引用例A1の記載から示唆される裁断
装置では、各スクライブ及び各ブレイク工程をそれぞれ別個のスクライブテーブル
及びブレイクテーブルで行うことが明示されていない点で相違し、その余の点で一
致する。
    この点、原告は、引用例A1に記載された発明では、2枚の板ガラスをど
のような順序でスクライブし、ブレイクするかの順序については、何ら触れていな
いと主張するが、上記(2)のとおり、引用例A1には、スクライブとブレイクの順序
が明示されているのであるから、この点についての原告の主張は採用することがで
きない。
  (4) そこで、進んで、上記相違点について検討する。
    引用例A2(特開昭57-109918号。乙3)は、ガラス基板切断装
置の発明に関するものであるが、その明細書には、この発明は、「2枚のガラス板
を接着しかつ2枚のガラス板の所定位置の表面にスクライブしたガラス基板を自動
的に各ガラス板のスクライブ部において切断することを目的とするものである」こ
と、その実施例として、2個の切断機構を備え、ガラス基板の2箇所にスクライブ
した後、第1の切断機構において押圧ローラによってガラス基板を押圧することで
ガラス基板を第1のスクライブ部において切断し、その後に第2の切断機構におい
て押圧ローラによってガラス基板を押圧することでガラス基板を第2のスクライブ
部において切断するガラス基板切断装置の構成が記載され、さらに、各押圧ローラ
の押圧力は可圧調整用ボルトによって調整できるので、各スクライブ部において確
実に切断することができること、発明の効果として、「2枚のガラス板を接着しか
つ2枚のガラス板の所定位置の表面にスクライブしたガラス基板を自動的にかつ確
実に切断することができ」ることが記載されていることが認められる。
    また、引用例A3(特開昭47-22912号。乙10)は、ガラス切断
方法及び装置の発明に関するものであるが、その明細書には、特許請求の範囲の請
求項3として、「板ガラスを予定寸法の長方形断片に切断するための機械におい
て、前記長方形断片に切断されるべき板ガラスを支持するための支持装置と、前記
支持装置上の板ガラスが前記支持装置と共にある与えられた通路に沿って運動する
ように、前記支持装置を前記通路に沿って搬送するために前記支持装置と作動的に
連結された搬送装置と、前記板ガラスが前記支持装置と共に前記通路に沿って運動
する際前記板ガラスをこのガラス中で相互に平行したほぼ真直ぐな線に沿って切断
するために前記通路に沿って配置された1対のガラス切断装置とを包含し、前記搬
送装置、支持装置、及び切断装置の対がすべて相互に協働して前記支持装置と前記
切断装置の一方との間に、前記支持装置と前記切断装置の他方との間の相対方位に
対して垂直な相対方位を与え、この結果前記切断装置の一方によって前記ガラス中
に切込まれた直線が前記切断装置の他方によって前記ガラス中に切込まれた直線に
対して直交するようになっているガラス切断機械」が記載され、また、その実施例
の説明として、各ガラスカッターは止めねじ等により調整可能に固定されているこ
と、カッターの種類も選択可能なことが記載されていることが認められる。
    上記のとおり、引用例A2には、ブレイクを2箇所で分けて行う構成が、
引用例A3には、スクライブを2箇所で分けて行う構成が記載され、さらに、引用
例A2及びA3には、いずれも、スクライブやブレイクを2箇所で分けて行う際
に、ガラスカッターの種類や材質を選択したり、ブレイク手段によって負荷させる
押圧力を調整することができる構成が記載され、加えて、板ガラスの切断を自動化
する発想とそのための装置も記載されている。
    そして、ガラスカッターの種類や材質を選択したり、ブレイク手段におけ
る押圧力を調整することができる場合に、最適なものから選定したり、最適な状態
に調整できるよう構成することは、当業者であれば当然なすべき事項であるという
べきである。
    したがって、上記引用例A1の記載から示唆される裁断装置の構成に、上
記引用例A2及びA3に記載された構成を組み合わせれば、上記の本件A発明との
相違点は解消されるということができる。
    なお、原告は、引用例A2に記載された発明は、本件A発明とは根本的に
技術思想が異なっていると主張するが、本件A発明と引用例A2に記載された発明
は、いずれも貼り合せガラス基板の切断方法ないし装置に関するものであり、技術
分野は全く同一であるから、当業者において、引用例A2に記載された技術を引用
例A1の記載から示唆される裁断装置に組み合わせて適用することを妨げる事情は
存在しないというべきであり、この点についての原告の主張は採用することができ
ない。
    また、原告は、本件A発明は、第1スクライブテーブルに載置すれば、最
終の第2ブレイクテーブルまで滞りなく送られ、単位貼り合せガラスに自動的に裁
断されるようにしたことに特徴があり、そのために、一連に配された上記4つのテ
ーブル同士と2つの反転工程と1つの搬送工程の各要素を相互に有機的に連繋した
構成としているところ、引用例A1に記載された発明ではそのようなことは想定し
ていないし、開示も示唆もないと主張する。しかしながら、原告の主張を前提とし
ても、上記のとおり、引用例A2及びA3には、板ガラスの切断を自動化する発想
とそのための装置が記載されており、これを上記引用例A1の記載から示唆される
裁断装置の構成に適用することは、当業者であれば容易にし得ることは明らかであ
り、特段の意味を有する相違点とはならない。
  (5) 以上のとおり、本件A発明は、その特許出願前に頒布された引用例A1な
いし3に記載された技術を組み合わせることによって、当業者であれば容易に想到
することができたものであるというべきである。
    したがって、本件A特許権には特許法123条1項2号、29条2項の無
効理由が存在することが明らかである。
    そして、このような無効理由を有することが明らかである特許権に基づく
差止め等の請求は、特段の事情が存在しない限り権利の濫用として許されないとい
うべきであるところ、本件においてはそのような特段の事情が存在するとは認めら
れない。
    よって、本件A特許権に基づく原告の本件請求は、権利の濫用というべき
であり、許されないという被告の主張は、理由がある。
 2 争点(5)(被告によるエスティ社向けのスクライバ2台の販売は本件B特許権
の間接侵害となるか)について
   原告は、被告がエスティ社向けに販売したスクライバについて、P1とP2が
調整可能であることは認めつつ、エスティ社においては、現実にはP1<P2の設定
のみで用いられていると主張し、その根拠として、①原告従業員がエスティ社にお
いて圧力計を確認した、②P1=P2やP1>P2に設定すると、第2切断線の不良
率が非常に高くなるから、そのような設定は当業者の技術常識からあり得ない、と
主張する。
   そこで検討するに、上記①の主張を裏付ける証拠となり得るものとしては、
原告従業員であるaの報告書(甲15)が存在するが、その記載は、原告の従業員で
ある技術者がエスティ社に納入した1号ライン装置のメンテナンス作業に出向いた
際に、被告製の「単体機を組み合わせた2号ライン装置の配置状況及び稼働状況を
目撃することが何回もあったと聞いております。従って、A特許発明の内容の装置
が稼働している状況とB特許発明のスクライブ方法を用いた状況でライン装置が稼
働していたことも確認されております。」というものにとどまる。この記載は、原
告従業員が確認したという時期や回数といった具体性に欠けるばかりか、原告が納
入した1号ライン装置のメンテナンスに出向いた原告従業員において、別ラインで
稼働する被告製スクライバの圧力計を十分に確認することができたのかという点で
疑問なしとしない。そして、上記の他に、上記①の主張を認めるに足りる証拠はな
い。また仮に、上記①の主張が事実であるとしても、原告従業員は上記報告書の記
載のとおり、原告が納入したライン装置のメンテナンスのためにエスティ社に赴い
たもので、被告が納入したスクライバを常時監視することができたものとは認めら
れないから、この①の主張のみによっては、結局、エスティ社において常にP1<
P2の設定で用いられていると直ちに認めることはできない。
   また、上記②の主張について検討するに、一般論として、P1=P2やP1>
P2と設定するよりも、P1<P2と設定する方が第2切断線の不良率が減少するこ
とが当業者の技術常識であることは被告も認めるところであるが、本件B特許の出
願前においては、P1=P2と設定してスクライブを行っていたことは本件B特許の
特許公報(甲4)に記載されているところであるから、エスティ社においてそのよ
うな設定をしたとしても、直ちに不合理であるとはいえない。しかも、本件B発明
を適法に実施するためには原告の許諾が必要となり、そのためには、通常は、原告
に実施料を支払うか、原告の製品を用いるなどしなければならないから、エスティ
社においてこれを避けるために、あえてP1<P2という設定をしないことも、十分
な合理性を有するものというべきである。加えて、実際の貼り合せ基板切断の場面
では、シール材の位置、ガラス基板や裁断装置テーブルの微妙なうねりなど、スク
ライブの圧力以上に切断の良否を大きく左右する要因がいくつもあるから、エステ
ィ社においても、切断線ごとに加圧力を設定しており、その結果、P1=P2やP1
>P2となる交点も生じるように使用されているという被
告の主張と、これを裏付ける被告従業員bの陳述書(乙13)の記載内容も、合理
性を欠くものとはいえない。したがって、上記②の主張によっては、エスティ社に
おいて常にP1<P2の設定で用いられていると認めることはできない。
   そして、他に、被告がエスティ社向けに販売したスクライバが、常にP1<
P2の設定で用いられていることを認めるに足りる事情も証拠も存在しない。
   したがって、被告がエスティ社向けに販売したスクライバが、P1<P2の設
定のみで用いられていると認めることはできないから、これらがハ号方法の実施に
のみ使用するものであると認めることもできない。
   よって、被告によるエスティ社向けのスクライバ2台の販売が本件B特許権
の間接侵害に当たるという原告の主張は採用することができない。
 3 結論
   以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の
請求はいずれも理由がないことが明らかである。
   よって、主文のとおり判決する。
      大阪地方裁判所第26民事部
           裁判長裁判官      山  田  知  司
              裁判官      中  平     健
              裁判官      守  山  修  生
(別紙)
イ号物件説明書第1図ロ号物件説明書(1)第1図ロ号物件説明書(2)ハ号物件
説明書第1図ハ号方法説明書

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛