弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士寺井俊正の上告理由第一点について。
 本件仮処分が係争建物のうち三棟について、上告人Aの占有を解き他の三棟と共
にその全部を被上告人の委任する執行吏の保管に付した上これを被上告人に使用さ
せることを内容とするものであるが、仮処分は争ある権利関係につき仮の地位を定
めるためにもこれを為すことができるのであつて、その処分は殊に継続する権利関
係につき著しき損害を避け若しくは急迫なる強暴を防ぐため又はその他の理由によ
りこれを必要とするときに限つて許されるのである。本件において原審は本件仮処
分を必要とする理由として被上告人の主張する事情は、すべてその疏明ありとする
外、本件仮処分命令の執行された昭和二三年八月中旬頃上告人Aは、家財をまとめ
て一部は既に発送し青森市に移転の準備を整えており、従来同人の使用していた作
業場なども出入口を閉鎖し、入口の戸と柱を針金で結び全く事業を止めていたこと
及びその後間もなく青森市の現住所へ引上げてしまつた事情についても亦その疏明
ありとし、このような特別事情のある場合には前記のような仮処分命令も必ずしも
妥当を欠くものということはできないと判示しているのであるから、原審は本件仮
処分によつて債務者たる上告人Aのうける不利益と、債権者たる被上告人が避けよ
うとする損害の程度とを対比し、継続する権利関係につき被上告人が避けようとす
る損害を著しいものと認めその損害を避けるため必要なりとして本件仮処分を是認
したものであることは明らかである。それゆえ原判決には所論のように仮処分の範
囲を逸脱し又は理由不備の違法あるものということはできないから論旨は理由がな
い。
 同第二点について。
 甲第一三号証が本訴提起後一私人によつて作成された証明書と題する書面であつ
て、上告人等が不知としてその成立を争つているものであることは所論のとおりで
ある。しかしかかる書面であつても裁判所が自由な心証によつてその成立及び記載
内容を真実であると認める場合には、これを判断の資料となすことができるのであ
つて、殊に疏明の場合にはかかる書面を判断の資料とすることは毫も妨げないので
あるから、原判決には所論のような違法なく論旨は理由がない。
 同第三点について。
 本件転貸借の目的物が係争建物の外、これに設備された機械その他工具什器一切
を包含するものであることは、原判決の確定するところであるが右機械その他工具
什器一切が、本件係争建物の転貸借に従として包含されるものであることは記録上
明かであるのみならず、建物が転貸借の目的物である以上、右転貸借がたとえ営業
の転貸借に準ずるような契約であつても、右建物の転貸借には借家法の適用がある
ものと解するを正当とする。それゆえ論旨は理由がない。
 同第四点について。
 本件仮処分についての本案訴訟は、本件係争工場建物中上告人Aに使用させてい
た建物については同上告人に対しその引渡を、その他については上告人両名に対し
て転借人たる被上告人の占有妨害排除を求めるものであることは、被上告人が原審
で主張しているところである。ところで所論の抗弁は、上告会社においてのみ主張
するところであつて、上告人Aにおいては何等これを主張していないことは原判決
事実摘示により明かであるから、原判決が右抗弁についての判断をなすことなく、
上告人Aに対する関係において、被上告人が係争建物の転借権を有することにつき
疏明ありとして右転借権に基く引渡請求権を保全するため、本件仮処分を認可した
原判決には所論のような違法はない。又上告人両名に対し占有妨害排除を命ずる本
件仮処分の部分は、被上告人の占有妨害排除の請求権の保全を目的とするものであ
るから、被上告人は占有権を有することを疏明するをもつて足り、進んで占有の基
本たる権利についての疏明を必要としないのである。そして被上告人が占有権を有
することは、弁論の全趣旨に徴し上告人等の争はないところであるから、被上告人
の占有の基本たる転借権について疏明がなくても、本件仮処分を認可するに妨げな
いのである。従つて原判決が上告会社の所論抗弁につき判断をしなかつたからとい
つて、所論のように理由不備の違法ありということはできない。それゆえ論旨は理
由がない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により主文のとおり判決する。右は裁判官
全員一致の意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    藤   田   八   郎

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