弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人A代理人海野普吉同高橋己之助の上告理由は後記書面のとおりである。
 第一点について。
 論旨(1)は、土地所有者D(代表者住職E)と補助参加人である小作人Cとの
間に小作関係において、右CからDに小作地を返還したのは、両者の合意によつて
行われたのでなんら条件附ではないというのである。しかし原判決は、上告人より
Dに買受を申入れた土地が、他の土地と共に右Cに賃貸してあり、同人が耕作して
いたので、Dはこれを、右Cより返還を受け、上告人に売渡そうと欲し、Cにその
返還を求めたところ、Cは、これを返還すると、残りの小作地はきわめて少くなり、
家族六人の「生活に困難を来たすこととなるので右申出を拒絶したが、更にEは、
本件の代替地として面積は狭少でも同寺の自作地である良田を貸与することを約し
たためCも右申出に応じ」と認定しているのであるから、所論は結局原審の事実認
定を争うに過ぎない。さらに、この主張の中で上告人は、Dが右小作人であるCの
小作地を引上げたのは、右Cの不信行為によるのであつて、同人は異議を止めず返
地したのであるとし、三つの事実を挙げているが、(イ)の小作料の滞納の点につ
いては、原判決は、「……Cもこれに従つて小作料を納入して居りその納入を怠つ
たものでないことが認められる」と判示しているし、(ロ)の右Cは、その小作農
地の一部を荒癈のまま放置していたという点については、原判決は、「Cは……一
時そこに雑草を生ぜしめて居たことを認めることができるけれども、……右土地は
水利に恵まれないたあ除草に国難な関係があつたことによるものと認められる」と
判示しているから、いずれも原審の事実認定を争うに過ぎず、またその認定に違法
も認められない。(ハ)のCの供出状況が不良であるという点については、原判決
は、「……供出を遅滞して居たことが認められるけれどもこの事実だけで右土地取
上を正当となし得ないことは言をまたない」と判示しているのみならず、供出状況
の良否は、地主に対する信義とは別問題であつて、解約の理由とならないと解すべ
きであつて、所論は、原判決の事実認定に反する事実を主張するに過ぎない。また
論旨(2)は、要するに、本件所有権移転は適法であるというのである。しかし原
判決も、上告人は本件土地をDから買受け、自作農創設維持の事業により、自作農
地として創設を受け、適法にその所有権を取得したと判示し、違法であるとはいつ
ていない。根拠は他にあるのであつて、すなわち自作農創設特別措置法(以下自創
法という)において、昭和二〇年一一月二三日当時の小作農のため、遡及買収計画
を定めることを認めたのは、これによつて耕作者をしてその地位の安定を得させよ
うとする趣旨であつて、右日時以後において、右小作地が第三者に譲渡され、譲受
人が自作農地として創設を受けたとしても、そのため前の耕作者は当然遡及買収の
権利を失い、その利益がなくなるものではなく、かような場合においても、耕作者
の請求により、農地委員会において相当と認めるときは、遡及買収計画を定めるこ
とができるものと解するを相当とする。論旨は詳細に、上告人が本件土地を取得す
るに至つた経過が適法である理由を述べているが、それが適法であつたということ
は、なんら自創法の定めた遡及買収計画の決定を妨げるものではない。また論旨は、
上告人が本件土地を買収した当時は、自創法の施行なく、地方長官の許可を得て行
つたのであるから、同法施行後の農地委員会の許可と同一の効力を有するのであり、
従つて事後において農地委員会が、この売買を否認すると同様の結果となる遡及買
収を認めるのは、矛盾も甚しいと主張する。しかし上告人が本件土地を取得した当
時は、未だ自創法は施行されていなかつたのであるが、その後耕作者の地位を安定
することを目的とする自創法が施行され、同法の附則二項による遡及買収の請求を
も認めたのであるから、法の趣旨に従つて遡及買収計画が定められた以上、所論の
ような場合を生ずることも当然予想されるのであつて、これを矛盾とはいえない。
また本件の場合自創法の趣旨よりいうも、耕作者である右Cが、本件土地と替地の
いずれをも全く失うと解するのは相当でなく、結局において、遡及買収は違法と解
することはできない。
 第二点について。
 所論は、原判決は、本件農地が自創法三条一項各号のいずれにあたるかを審理し
ないで、遡及買収計画を適法であるとしたのは理由不備の違法があると主張する。
本件当時の自創法附則二項による遡及買収は、三条一項の買収(いわゆる当然買収)
にあたる場合にかぎるのであつて、同条五項のいわゆる認定買収にあたる場合は遡
及買収をすることができなかつたことは、所論のとおりである(改正後の現行法で
はできることとなつた)。しかし本件においては、原審において遡及買収が、自創
法三条一項一号ないし三号のいずれに当るか、または、いずれにも当らないかにつ
いて、上告人はなんら争つていないのであるから、原判決がこれに判示しなかつた
のは当然であつて、原判決にはなんら違法はない。そして原判決は、もちろん本件
買収が自創法三条一項によつて行われたことを認めた趣旨であることは明らかであ
り、裁判所は、買収計画に対する不服の訴において、特に当事者の主張がないかぎ
り、買収の適法要件のすべてについて巨細にわたり、これを審理判示すべき義務が
あると認めることはできない。さればこの点の論旨もとることはできない。
 第三点について。
 所論前段は、訴外Fは、Dの小作人でなく同寺の作男に過ぎないということを前
提として、訴外Fより右Cの土地につき遡及買収の請求があつて、農地委員会がこ
れに基き買収計画を定めたとき、右Cが異議の申立及び訴願等をすれば、当然買収
計画は取消される運命にあつたのに、却て上告人に向つて攻撃して来たといつてい
るが、FがDの小作人であることは原判決の認定するところであるから、これを争
うことを前提とする理由は、事実審の裁量権を非難するに過ぎない。また所論中段
は、Dが右Cに替地を与えることが条件となつていたと仮定しても、その契約は、
DとCとの間の契約であつて、斯る契約を知らず、全く善意無過失に適法な所有権
を取得した上告人に対し、遡及買収の申立をするのは、自創法附則二項の法意から
いうも許されないと主張するが、前に説明したように、(第一点(2))遡及買収
を定めた自創法の趣旨は上告人の所有権の取得が適法であるか否かは、遡及買収計
画の決定に直接の関係はなく、耕作者を保護しようとする法の目的に即して、すべ
ての観点より遡及買収を相当と認めるときは、これを許すこととなるのであつて、
上告人が善意で所有権を取得したとしても、このため上告人に不利益を及ぼす結果
となるのはやむを得ないのである。上告人の所有権取得が不適法であれば、すでに
その点において自創法附則二項の適用をまつまでもなく、本件土地を所有すること
ができない別個の理由が生ずることもあり得るのである。そして原判決は、判示の
ように各種の事情を審査し結局本件遡及買収を相当と認めたのであり、またこの判
断になんら違法は認められない。また所論後段は、本件遡及買収計画を定めるに際
し、自創法施行令四五条による審議をしていないと主張するが、かかる主張は原審
において主張も判断もされなかつた事項であるから、上告理由とすることはできな
い。従つて論旨はすべて理由がない。
 第四点について。
 所論は、自創法及び農地調整法の精神が、精農を保護育成するにありとし、補助
参加人Cが怠農であるに反し、上告人が居村第一の精農である事実を強調し、原判
決が農地改革に関する関係各法規に違背することを非難するのであるが、かかる事
実は原判決のなんら認定していないところであるから、結局上告人は独自の事実を
主張し、原判決の違法を主張するに帰し、論旨はとることを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官一致の意見により、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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