弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人成田篤郎の上告理由第一点について。
 原判決は、本件支払保証はその方式に欠けるところがあつて法律上無効と解すべ
きであるけれども、当時被上告人B信用金庫の名掛丁支所では支所長たる上告人が
斯る方式により支払保証をなすのを常例とし、同支所職員はすべてこれを有効なる
支払保証と信じて疑わず、かかる小切手の決済に当つては振出人の預金残高を調査
しないで支払をして来た事実が認められるから、上告人のなした本件支払保証と本
件手形決済との間には因果関係があるとしたものであつて、本件の如き方式の支払
保証をなすことが金融機関一般の慣行であるともまた右支払保証が法律上有効であ
るとも判断しているものではない。されば、右の如き各判断あることを前提とする
所論は原判示を正解しないにいでたものであつて、とり得ない。なお、原判決が前
記支所職員において本件支払保証を有効と信じて本件手形を決済したものと認定し
たものであることは、原判文上明らかであるから、論旨摘録にかかる「また仮令同
支所係員が本件小切手にした支払保証が無効であることを知つたとしても」以下の
原判示は単なる余論にすぎないのみならず、本件の如き小切手を預金に受入れた銀
行がこれを確定的な預金として取扱うか否は専ら小切手が決済できたか否かにかか
り支払保証の有無にかかわらないこと所論のとおりであるとしても、この故に支払
保証をしながら決済に応じないことが金融機関としての信用に関しないとはいい難
い。されば、前記原判示を攻撃する所論はいずれにしてもとり得ない。
 同第二点について。
 (イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ヘ)の所論は、要するに、本件小切手を決済したの
は、決済当時の名掛丁支所長Dその他の職員の過失によるものであり、右過失を損
害賠償額の算定に斟酌しないのは失当であるというにある。
 しかし、民法七二二条につき、被害者の過失を斟酌すると否とは裁判所の裁量に
属するのであるから、仮に前記職員らに過失があつたところでこれを斟酌しなくて
も必ずしも違法とはいい難く、しかも原審の確定するような事実関係のものでは、
仮に前記職員らに過失ありと判断するのが相当だとしても、これを賠償額算定に斟
酌する必要は認め難いから、原判決は結局において相当といい得るので、所論は理
由がない。
 (ホ)の所論は、結局単なる事実認定非難であり、とるを得ない。
 同第三点について。
 原判決は、所論乙第三、四、五号証の当座預金元帳の記載により、本件各小切手
番号の前後に近接する番号の小切手が昭和二四年一月一一日ないし三一日までの間
に右元帳に記入されている事実を認定し、この事実から、これら小切手はそれぞれ
右記入日付以前既に振出されていたものであつて本件各小切手の振出日時もまたこ
れと大差なかるべく、従つて、本件各小切手振出前なされた支払保証印の押捺は同
年一月中旬なされた公算が大であると判断し、これと上告人が原判示の如き経緯に
より過払金回収のため奔走しかつ被上告人B信用金庫に対し抵当設定及び割賦弁償
を応諾するかの如き態度を示した事実等を綜合して、本件小切手の支払保証は上告
人が名掛丁支所長に在任する当時においてなされたものと判断したものであること
判文上これを窺うに十分である。しかして、小切手記載の振出日付は先日付小切手
の如く実際の振出日付と一致しない場合がすくなくないけれども、小切手帳編綴の
小切手用紙には一連番号が付されている結果小切手振出の順序は右番号の順序に一
致するものを通常とすることを考慮すれば、原審の右判断はこれを是認することが
できる。
 所論は原判示の趣旨を正解しないで原審の判断を攻撃するものであつて、とり得
ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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