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平成14年(ワ)第20611号 損害賠償請求事件
(口頭弁論終結の日 平成16年2月17日)
判         決
原       告     A
同訴訟代理人弁護士      對﨑俊一
被       告      シチズン商事株式会社
同訴訟代理人弁護士      篠崎正巳
主         文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の請求
  被告は,原告に対し,2400万円及びこれに対する平成14年2月27日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 原告は,「AEROBATICS」,「アエロバティックス」及び別紙標章
目録1記載の標章(以下「ウイングマーク」という。)の各表示(以下,これら3
つの表示を総称して「本件各表示」という。)を用いた曲技飛行競技会「FAI 
WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」(以下「本件
競技会」という。)の開催に携わる者であり,別紙原告商標目録記載の商標(以下
「原告商標」という。)につき商標権(以下「原告商標権」という。)を有する。
  本件において,原告は,被告が,商品名を「AEROBATICS MOD
EL」とする腕時計(以下「被告製品」という。)に別紙標章目録2記載の標章
(以下「被告ウイングマーク」という。)を付して販売する行為が,原告の周知商
品等表示を使用した不正競争行為,原告商標権についての商標権侵害に該当すると
主張して,損害賠償2400万円及び遅延損害金の支払を求めている(不正競争行
為の主張につき不正競争防止法2条1項1号,4条,5条3項1号,商標権侵害の
主張につき商標法38条3項)。
2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定され
る事実。証拠により認定した事実については末尾に証拠を掲げた。)
(1) 平成7年から平成11年までの間,日本において,次のとおり,曲技飛行
競技会が開催され,原告は,各競技会の開催に携わった。
ア 平成7年10月7日及び8日に,「ブライトリング・ワールドカップ」
が,兵庫県豊岡市但馬空港において開催された。
同競技会は,但馬空港フェスティバル実行委員会が主催した(甲55)。
イ 平成8年10月25日ないし27日に,「FAI WORLD GRAN
D PRIX OF AEROBATICS in TAJIMA」(本件競技
会)が,兵庫県豊岡市但馬空港において開催された。
同競技会は,但馬空港フェスティバル実行委員会が主催し,FAI(「F
ederation Aeronautique International
e」(国際航空連盟。以下「FAI」という。)が主管した(甲10)。
ウ 平成10年10月23日ないし25日に,「FAI WORLD GRA
ND PRIX OF AEROBATICS’98アエロバティックス日本グラ
ンプリ」(本件競技会)が,栃木県茂木町ツインリンクもてぎにおいて開催され
た。
  同競技会は,株式会社ツインリンクもてぎ(以下「ツインリンクもてぎ
社」という。)が主催し,FAI及びFWGPAが主管した(甲53)。
エ 平成11年10月15日ないし17日に,「FAI WORLD GRA
ND PRIX OF AEROBATICS’99アエロバティックス日本グラ
ンプリ」(本件競技会)が,栃木県茂木町ツインリンクもてぎにおいて開催され
た。
同競技会は,ツインリンクもてぎ社が主催し,FAI及びFWGPAが主
管した(甲54)。
(2) 原告は,平成11年12月24日,原告商標について商標登録出願手続を
行い,同商標につき次のとおり商標権(原告商標権)を有する。下記の商品区分の
うち,第14類には「時計」が含まれる。(甲1,2)
ア 出願日       平成11年12月24日
イ 出願番号      11-117901
ウ 登録年月日     平成13年1月26日
エ 登録番号      第4448213号
オ 商品及び役務の区分 第14類,第16類,第18類,第21類,第2
4ないし26類,第28類。
(3) 被告は,平成12年から平成14年12月末日までの間に,被告製品を販
売した(甲4の1・2,99の1ないし3,100,乙2ないし9及び弁論の全趣
旨)。
  被告製品の商品名は,「AEROBATICS MODEL」であり,被
告製品の広告等には同商品名が記載されている。また,被告製品の文字盤等には,
被告ウイングマークが付されている(甲4の1,2)。
3 争点
(1) 被告による被告製品の販売が不正競争防止法2条1項1号に該当するか
ア 本件各表示が原告の商品等表示といえるか(争点1)
イ 本件各表示が原告の商品等表示として周知性を有するか(争点2)
ウ 被告が被告製品を販売する行為が原告の商品と混同を生じさせる行為と
いえるか(争点3)
(2) 被告による被告製品の販売が商標権侵害行為に該当するか(争点4)
(3) 使用許諾の有無(争点5)
(4) 不法行為の成否(争点6)
(5) 損害について(争点7)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件各表示が原告の商品等表示といえるか)
(原告)
ア原告の主張
(ア) 本件各表示は,平成8年以来,本件競技会において用いられてきた。
そして,本件競技会の主管は,FWGPAであり,FWGPAとは,原
告のことである。したがって,本件各表示は,原告の商品等表示というべきであ
る。
原告は,「FWGPA JAPAN DELEGATION」,「FW
GPA-J」との表示を用いることもあったが,いずれも「FWGPA」という主
体(組織)の中の一部としての表示として用いたものである。
なお,FWGPAとは,本件競技会の競技会名である「FAI WOR
LD GRAND PRIX OF AEROBATICS」の略称であり,この
中には,FAIの表示が使用されているが,原告は,本件競技会についてFAIに
届け出て一定の金銭を支払っており,FAIの公認手続を経ているので,表示の中
に「FAI」を用いることに問題はない。
(イ) 原告が,FWGPAを名乗って本件競技会を開催するようになった経
緯は,次のとおりである。
原告は,スイスの有力時計メーカーであるブライトリング社がFAIの
公認を得て開催していた曲技飛行競技会である「ブライトリング・ワールドカッ
プ」において,ブライトリング社から企画運営を任された経験があったことから,
兵庫県豊岡市は,原告に対し,平成8年の本件競技会の開催を依頼した。原告は,
その後も,平成10年,平成11年と本件競技会を開催することになった。平成8
年の本件競技会については,豊岡市が原告に対する報酬等の支払を拒絶したことか
ら,原告は訴えを提起し(東京地裁平成9年(ワ)第26927号事件),豊岡市
が,原告に対して,本件競技会の開催実施委託料として5265万円を支払う旨の
和解が成立した。平成10年,平成11年の本件競技会については,原告とツイン
リンクもてぎ社との間で,原告が同競技会を主管し,ツインリンクもてぎ社に対し
てウイングマーク等の表示の使用を許諾し,ツインリンクもてぎ社が,原告に対
し,4500万円(平成10年),3000万円と事業商権上限1500万円(平
成11年)を支払う旨の契約を締結している(甲56,67)。
原告は,本件競技会には,ブライトリング社が関与していないことか
ら,「ブライトリング・ワールドカップ」とは異なる競技会名を使用する必要があ
ると考え,平成7年10月24日,平成7年のブライトリング・ワールドカップの
精算のため,スイスのブライトリング社を訪れた際に,新しい競技会の名称とし
て,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATIC
S」を着想して手帳にメモし,友人のCにも電話でその旨話した(甲91の1,
2)。また,原告は,平成8年7月ころ,本件競技会のマークとして,ウイングマ
ークを創作した。
原告は,本件競技会において,「ブライトリング・ワールドカップ」で
はエキシビジョンにとどまっていた音楽とシンクロした曲技飛行を,競技として取
り入れた。
(ウ) その他,原告は,自己の商品等表示である本件各表示につき知的財産
権を確保するため,次のような手続をしている。
a 原告は,平成9年1月13日,ウイングマークについて,意匠に係る
物品をラベルとして,意匠登録出願手続を行い,同年12月19日,登録された
(第1005786号)。
b 原告は,平成11年12月24日,原告商標について商標登録出願手
続を行い,平成13年1月26日,登録された(原告商標)。
c 原告は,平成11年12月24日,「FWGPA」について商標登録
出願手続を行い,平成12年10月20日,登録された(第4425181号)。
商品区分は,第14,第16,第18,第21,第24,第25,第26,第28
類である。
イ被告の主張に対する反論
 (ア) 被告は,本件競技会の実質的主催者は,E(以下「E」という。)が
代表者を務めるFWGPA Operating Services S.A.と
いうスイス法人(以下「FWGPA.S.A」という。)であり,原告はFWGP
A.S.Aの日本における代理人として関与したにすぎない旨主張する。
しかし,FWGPA.S.Aは,FWGPAという表示が使用され始め
た平成8年当時,「エアマスターバレ」という商号を用いていたのであり,同社が
「FWGPA Operating Services S.A.」に商号変更し
たのは平成11年2月以降であるから,同社が平成8年当時FWGPAを名乗るこ
とはあり得ない。同社は,FAIへの届け出業務の代行を行う会社であり,原告の
依頼を受けて,平成7年のブライトリング・ワールドカップ及び平成8年以降の本
件競技会についてのFAIへの届出事務を担当していたにすぎない(FAIは,航
空競技についての諸規則を定めており,FAIの規則を用いて競技会を行う場合に
は,FAIへ届け出て一定の金銭を支払うという手続を経て,FAI公認競技会と
なる。)。
平成10年の本件競技会について,EをFWGPAの代表とする契約書
が作成されているが(乙20),同契約書は,原告がEに指示して作成させた書面
である。乙20が作成されたのが会直前の9月15日であり,さらに,Eのサイン
のある頁は,同月22日に,原告が,ツインリンクもてぎ社に対し,別途ファック
ス送信したものであることから,乙20の契約は,形式的なものにすぎないことが
明らかである。また,FAI事務局長を名乗る者が,FAIは,Eに対し,本件競
技の主催等の権限を付与している旨の文書を作成しているが(乙12),同文書の
内容は,FAIが原告の代理人であったEに対してFAIの公認を与えたという意
味では正しいが,FAIは,後記(イ)のとおり,FWGPAという表示について何
らの権限を有していないのであるから,同書面は信用できない。
FWGPA.S.Aは,平成11年2月以降に,「エアマスターバレ」
から現在の商号に商号変更したが,これは,本件競技会がイベントとして定着し,
将来的に継続開催される見通しがついてきたことから,原告から本件競技会の開催
者たる地位を奪うために行ったものである。
なお,原告は,平成10年1月ころから,従業員としてB(以下「B」
という。)を使用し,本件競技会の事務手続を手伝わせていたが,同人は,次第に
原告の金員を横領するなどの背信行為を行うようになり,平成12年6月27日に
は,原告が創作して使用していたウイングマークと類似する別紙商標目録1の標章
を,原告に無断で自己の名において商標登録出願手続を行い,平成13年6月1日
に登録された後(登録番号第4479729号),同商標権をFWGPA.S.A
に譲渡している(原告は,上記商標につき無効審判を請求中である。)。上記のよ
うな経緯からすれば,エアマスターバレ(現在のFWGPA.S.A)は,平成1
1年1月ころから,Bと共同して原告の事業の乗っ取りを画策していたというべき
である。
(イ) 被告は,本件競技会の実質的主催者が,FAIであるかのような主張を
もする。
しかし,FAIが行ってきた競技会は,昭和45年から,「WAC」(W
orld Aerobatic Championships(世界エアロバティ
ック世界選手権)の略称)と呼ばれており(甲58),平成7年にブライトリン
グ・ワールドカップの撤退が決まった際には,その後のイベントを,「FAI W
orld Cup of Aerobatics」として存続させることを発表し
ているのであるから(甲90),FAIが主催する競技会は本件競技会とは異なる
ものである。
したがって,FAIは,本件競技会の主催者ではない。本件競技会は,F
AIの公認を得ているが,これは,FAIの定めたルールを用いて競技会を行って
いるという意味にすぎない。
FAIは,平成8年4月11日に,フランスにおいて,別紙商標目録2
(「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATIC
S」)について商標出願しているが,上記標章は,原告が平成8年に開催された本
件競技会に使用するために,前年の12月から自ら考案して使用し始めた表示であ
り,FAIの商標登録出願は原告の後追いである。
(被告)
ア 被告の主張
  本件競技会の実質的主催者であるFWGPAとは,FWGPA.S.Aの
略称であって,FWGPA.S.Aが本件各表示の商品等表示主体である。FWG
PA.S.Aは,FAIから,本件競技会を主催,組織,上演,広報等の活動をす
る一切の包括的権限を与えられて,本件競技会を主催しているものである。
したがって,本件各表示は,原告の商品等表示ではない。
イ 原告の主張に対する反論
  原告は,FWGPAが原告を表す表示であり,原告が,本件競技会の主催
者であると主張して,甲8ないし甲55を提出する。
しかし,これらの新聞記事やポスター等には,原告の氏名等は一切掲載さ
れていない。甲18ないし26の許可書には原告の名前が記載されているが,これ
らの書証は,原告が本件競技会に関わったことを示すにとどまり,原告が本件競技
会の主催者であったことを示すものではない。
なお,原告は,平成10年,11年の本件競技会において本件競技会の主
管者としてツインリンクもてぎ社との間で契約を締結した旨主張して甲56,67
を提出する。しかし,上記契約書の1条には,「大会を円滑に運営実施するため,
別紙に定める役務を実施監修する。」と定められ,別紙には原告の実施役務が詳細
に規定されている。また,他方で,ツインリンクもてぎ社は,本件競技会の開催に
あたり,平成10年9月15日付でEを代表者とするFWGPAとの間で,乙20
の契約を締結しており,同契約書には,EがFAIから本件競技会の開催と上演の
権限を与えていることが明記されている。また,同契約には,ツインリンクもてぎ
社のプロモーターとしての責務が規定されており,甲67の契約書は,ツインリン
クもてぎ社が,乙20の契約上負うプロモーターとしての責務の実行を,原告に委
託したものというべきである。
ウイングマークについては,原告は,平成9年1月13日に商標出願した
が,平成11年1月21日に拒絶査定を受けている。その後,Bが商標登録済ウイ
ングマークについて商標登録を得ており,原告が無効審判を請求していたが,当該
無効審判手続においては,原告の請求は成り立たない旨の審決がされている。
なお,原告は,自らが本件競技会において,初めて音楽とシンクロした曲
技飛行を取り入れた旨主張するが,甲51の4,19頁左欄28ないし33行に
は,アエロバティックスに初めて音楽が導入されたのは93年ブライトリング・ワ
ールドカップであった旨記載されており,音楽とシンクロした曲技飛行が原告の着
想によるものでないことは,明らかである。
2 争点2(本件各表示が原告の商品等表示として周知性を有するか)
(原告)
原告は,本件競技会の事務において,本名ではなくFWGPAとの表示を使
用していたことから,本件各表示が原告の営業を示す表示として周知になっている
とはいえないが,本件各表示はFWGPAの営業を表す表示として周知性を有して
いる。
被告は,原告提出の雑誌等の記事に原告の本名が記載されていないことか
ら,本件各表示が原告の商品等表示として周知性を有しない旨主張するが,的を得
ていない。
(被告)
原告が提出した甲8ないし甲55には,本件各表示が原告の商品等表示とし
て周知になっていることを示す記載はない。
3 争点3(被告が被告製品を販売する行為が原告の商品と混同を生じさせる行
為といえるか)
(原告)
被告製品は,「AEROBATICS MODEL」との商品名であるとこ
ろ,同商品名は,本件各表示のうち「AEROBATICS」を使用した商品名で
ある。また,被告製品の文字盤等には被告ウイングマークが付されており,そのパ
ンフレット等にも被告ウイングマークが掲載されているところ,被告ウイングマー
クは,本件各表示のうちウイングマークのマーク下部の記載を「AEROBATI
CS」ではなく,「SINCE 1905」と変更したものであって,ウイングマ
ークと被告ウイングマークは酷似している。したがって,被告による被告製品の販
売は,原告の商品等表示である「AEROBATICS」と同一の表示及び同ウイ
ングマークと類似した表示を用いて原告の商品と誤認混同を生じさせる行為であっ
て,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当する。
(被告)
被告製品には「AEROBATICS」が用いられているが,これは当該競
技用モデルという意味の説明として用いているにすぎず,商品の出所の表示ではな
いから,上記表示を用いたとしても本件競技会の営業主体と被告製品の出所との間
に混同を生じさせることはない。
また,ウイングマーク中の文字は,「FAI WORLD GRAND P
RIX OF AEROBATICS」であるところ,被告ウイングマーク中の文
字は,「FAI WORLD GRAND PRIX SINCE 1905」で
あり,FAIの設立年を記載しているにすぎないから,パンフレットにウイングマ
ークを用いたとしても「アエロバティックス」の営業主体と被告製品の出所との間
に混同を生じさせることはない。
4 争点4(商標権侵害の成否)
(原告)
平成13年1月26日以降に,「AEROBATICS MODEL」の表
示を使用した腕時計を販売する行為は,原告商標権を侵害する行為である。
被告は,「アエロバティックス,AEROBATICS」は,曲芸飛行を指
す一般名詞である旨主張するが,曲芸飛行を指す一般名称は,「エアロバティク
ス」であって,「アエロバティックス」ではない。平成7年のブライトリングワー
ルドカップにおいてもエアロバティクスと表示されていた。両者は,「ア」と
「エ」が異なるにすぎないが,この相違には十分な感銘力が認められる。
(被告)
被告は,被告製品に「AEROBATICS」を用いているが,これは当該
競技用モデルという意味の説明として用いているにすぎず,商品の出所の表示とし
て使用しているわけではないから,原告の商標権を侵害しない。
なお,被告製品には,ウイングマークを付しているが,ウイングマークは,
FWGPA.S.Aの商標であって,原告の商標ではない。
また,「AEROBATICS/アエロバティックス」は,曲芸飛行を指す
一般名詞であり,原告は,本件商標が登録された平成13年1月26日以来,一度
も上記商標を使用していないのであるから,本件商標権の行使は権利の濫用であっ
て許されない。
5 争点5(使用許諾の有無)
(被告)
(1) 使用許諾契約について
仮に,本件各表示が,原告の商品等表示であり,被告製品が原告商標を使
用しているとしても,原告は,被告に対し,平成12年8月ころ,被告が「アエロ
バティックス」やウイングマークを使用して被告製品を製造販売することを許諾し
ており(以下,「本件使用許諾契約」という。),本件使用許諾契約について覚書
を作成している(甲3。以下,「本件覚書」という。)。
本件使用許諾契約及び本件覚書の作成経緯は次のとおりである。
被告は,平成11年7月ころに,広告代理店である株式会社弘研(以下
「弘研」という。)のF(以下「F」という。)から,FWGPAの日本代表者と
してBを紹介された。F及びBは,被告に対し,平成11年10月に開催される本
件競技会に出場するパイロットであるG及びその機体に500万円で協賛すること
を申し出た。被告は,パイロットや機体に対する協賛がどれほどの宣伝効果を有す
るか未知数であったことから,協賛の申出を受けることを躊躇していたところ,F
及びBは,後日,被告に対し,本件競技会に関するオリジナルモデルの作成とこれ
に対する名称等の使用を含めて300万円との提示をしたので,被告は,これを受
けることにした。
被告は,Fに,上記内容を盛り込んだ書面を作成するよう依頼し,Fが本
件覚書を作成した。
原告は,本件使用許諾契約についてBに代理権を与えていない旨主張する
が,原告は,訴状において本件覚書が被告製品に関するものであることを前提とし
た記載をしており,本件覚書は,その文章を読んだだけでは,被告製品に関するも
のとは分からない内容であるから,原告は,訴状を作成する前の段階から,本件覚
書が被告製品に関するものであることを承知していたはずである。また,原告は,
国際線の「JAL SHOP」に掲載された被告製品の広告を見て,Fに対し,被
告製品の販売は海外でも行われているのかと問い合わせてきていることから,原告
は,少なくとも,被告製品が,国内で販売されていることは承知していたはずであ
る。
被告は,本件使用許諾契約に基づき,FWGPAに対し,使用許諾料(弘
研の仲介手数料15%と送金手数料を控除した金額)を次のとおり3回に分割して
支払った。①平成11年8月30日に「10月アエロバティックス日本グランプ
リ」との名目で55万円の請求を受け(乙31の2),平成11年10月29日に
他の支払と合わせて110万円を支払った(乙31の1,2,34)。②同年9月
30日に100万円の支払いを請求され(乙32の2),同年11月30日に他の
支払と合わせて117万円を支払った(乙32の1,2,35)。③同年10月3
0日に請求を受け(乙33),同年12月30日に100万円を支払った(乙3
6)。
(2) 本件使用許諾契約による許諾の範囲
本件覚書作成の際,使用を許諾する具体的表示は記載せず,「プロマスタ
ー『FWGPA』モデル(仮称)」,「『G』アドバイスモデル(仮称)」と記載
した。これは,オリジナルモデルの作成には時間を要し,具体的な表示が決まるの
は販売間近になることも多いから,本件覚書作成当時には,具体的な名称を確定で
きないためであった。その後,被告は,オリジナルモデルを作成し,使用する表示
が「AEROBATICS」及びウイングマークに決定したので,Bに対し,「プ
ロマスター『アエロバティックス』モデル」に名称が確定した旨を伝え,了解を得
ている。
(3) 本件使用許諾契約による使用許諾の期間
本件覚書においては,被告が使用する広告物に関する写真,映像に関する
使用期限は,平成11年8月5日から平成12年8月4日までとされているが(3
条),オリジナルモデルの製造に関する規定(4条,5条)では,特にその制作や
販売期間について限定していない。
(原告)
(1) 使用許諾の有無について
本件覚書は,被告とBとの間で作成されたもののようであるが,原告は,
本件覚書の存在を,平成12年7月8日に弘研の担当者から見せられるまで知らな
かった。たしかに,原告は,本件覚書の日付である平成11年8月ころ,Bを従業
員として使用して国内業務の一部を担当させていたが,原告は,本件覚書を締結す
る代理権限をBに与えたことはないから,本件覚書は,具体的権限のない者との間
で作成されたものである。そもそも,本件覚書には,使用許諾の対価が記載されて
いない。この種の許諾契約が何らの対価もなく合意されることはあり得ないから,
本件覚書は,原告の従業員であったBが原告の了解を得ることなく作成したもので
ある。
Bが,後日,対価について原告の了解を得ることを停止条件として本件覚
書を作成した可能性もあるが,原告は,対価について一切了解を与えていないか
ら,いずれにしても本件覚書の効力は生じていない。
なお,被告は,本件覚書の許諾の対価は300万円であった旨を主張する
が,そのような合意を裏付ける証拠は提出されておらず,使用許諾料の支払につい
ても何ら証拠がない。乙31ないし33の支払は,証拠に明記してあるとおり,ア
エロバティックスに参加した機体「スホーイ31」への協賛金であり,同機体に貼
り付ける被告のロゴの貼り付け代の支払であって,本件各表示の使用許諾料の支払
ではない。
(2) 本件使用許諾契約による許諾の範囲
仮に,本件使用許諾契約の存在が認められるとしても,本件使用許諾契約
によって許諾されているのは,「FWGPA」の表示と「G」の表示のみであっ
て,原告が被告に対し,「AEROBATICS」やウイングマークの使用許諾し
たということはできない。
6 争点6(一般不法行為の成否)
(原告)
被告は,Bが平成12年6月27日にウイングマークの商標権を取得する際
に,弁理士を紹介した上,Bとの間で,ウイングマークの商標の使用許諾契約を締
結した。
しかし,ウイングマークは原告が作成して使用してきたものであって,Bの
出願は冒認出願である。また,ウイングマークの商標につき許諾権限を有するのは
原告であってBではない。
被告は,故意又は重大な過失により上記のようなBの冒認出願に関与した
上,Bとの間で使用許諾契約を締結したものであって,被告の行為は,Bとの共同
不法行為である。
(被告)
原告の主張は争う。
7 争点7(損害について)
(原告)
原告は,被告の不正競争行為及び商標権侵害行為により少なくとも使用許諾
の対価として得べかりし利益を喪失した。また,原告は,被告とBとの共同不法行
為によりウイングマークについて商標登録出願し,商標権者となる利益を喪失し
た。原告の被った上記損害額の合計は2400万円を下らない。
(被告)
被告は,平成12年9月1日から平成14年12月末までの間に,被告製品
を1個5万5000円で,国内において720個販売し,このうち,平成13年1
月26日以降の販売数量は176個であり,売上合計額は968万円である。海外
において545個販売した。販売することなく,営業用に贈与する等したものが1
0個ある(乙1)。
被告は,平成11年10月から平成13年2月1日までの間に,「アエロバ
ティックス」やウイングマークを,カタログ(乙2,3,5,9),ポスター(乙
8),雑誌(乙4,6,7)に用いて広告宣伝活動を行った。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件各表示が原告の商品等表示といえるか)について
(1) 証拠(甲1,2,5,8,9の2ないし9の11,10,11ないし6
3,65ないし68,70ないし86,88,90,91の1,92ないし98,
101,乙10ないし13,15ないし30)及び弁論の全趣旨によれば,次の事
実が認められる。
ア FAIは,昭和45年,The Commission Intern
ationale de Voltige Aerienne(以下「CIVA」
という。)という曲技飛行競技会を主催する組織を後援し,同年以降,CIVA
が,世界エアロバティック世界選手権(WAC)を開催するようになった。
  なお,FAI(Federation Aeronautique I
nternationale。国際航空連盟)は,各加盟国の主要な国立空港管理
組織が代表して加盟する国際航空連盟であり,各種航空スポーツ活動を行う団体等
も活動の規模によって参加することができる組織である。FAIは,毎年1回総会
を開催し,8人からなる幹部会が存在し,総会の決定事項の実施等を行っている。
幹部会の執行スタッフとしてFAI事務局が,スイスのローザンヌに設置されてい
る。
FAIは,自らを表示するものとして別紙標章目録3記載のマークを用
い,CIVAは,別紙標章目録4記載のマークを用い,WACには別紙標章目録5
記載のマークが用いられていた。
イブライトリング・ワールドカップについて
(ア) スイス法人のブライトリング社は,平成5年に,FAIの公認を得
て,WACとは別個の曲技飛行競技会である「ブライトリング・ワールドカップ」
を開催し,その後,平成7年まで同競技会を開催した。
  ブライトリング社は,Eを,CIVAに派遣して,同競技会に関する
業務を担当させた。Eは,ブライトリング・ワールドカップ当日には,コンテスト
ディレクターとして採点委員長を務めるなどした。
  同競技会は,1年回に数回,世界5か国で開催され,各パイロット
が,1年間に開催される各競技会において得られた合計点数により,年間ランキン
グを競うものであった。平成6年からは,各パイロットが,4分間,会場に流れる
音楽をパイロットが無線で受けて音楽に合わせて自由演技を行い,その技術,芸術
性を競うというプログラムで構成されるようになった。
 (イ) ブライトリング社は,平成7年ころ,ブライトリング社の日本法人
としてブライトリング・ジャパン株式会社(以下「ブライトリング・ジャパン」と
いう。)を設立し,同社のキャンペーンの意味もあって,平成7年のブライトリン
グ・ワールドカップのうち1回を,日本の兵庫県豊岡市但馬空港において開催する
ことにした。
原告は,ブライトリング社製の時計の日本における販売に関与してい
た経験があったことから,ブライトリング・ジャパンの平成10年当時の代表取締
役であったC(以下「C」という。)から,依頼を受けて,上記ブライトリング・
ワールドカップに関する各種許可申請手続等の実務を担当した。
同競技会においては,曲芸飛行の一般名称として,「AEROBAT
ICS」,「エアロバティック」が用いられ,ブライトリング・ワールドカップの
マークとして別紙標章目録6記載のマークが用いられた。
ウ ブライトリング・ワールドカップの終了と本件競技会の開始
 (ア) ブライトリング社は,平成7年,同年の競技会をもって,ブライト
リング・ワールドカップから撤退する意向を表明した。
(イ) FAIは,これを受けて,今後,「ブライトリング・ワールドカッ
プ・オブ・エアロバティックス」の代わりに,「FAI WORLD CUP O
F AEROBATICS」を開催する旨の緊急プレスリリースを行った。
(ウ) FAIは,同年11月4日及び5日,CIVA会議を開催し,ブラ
イトリング・ワールドカップの終了と,これに代わる曲技飛行競技会の開催につい
て話し合った。Eは,同会議において,ブライトリング・ワールドカップが大成功
を納めており,複数のスポンサーを集めて同種の競技会を実施することが可能であ
る旨述べた。CIVA会議の出席者は,Eの上記説明を受け,平成8年以降もAE
ROBATICSシリーズを実施することで合意した。この際,新たな競技会名を
「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」と
することが決定されたが,トレードマークの作成前に上記競技会名を公表すること
はできないとして公表しないこととされた(上記具体的名称は,同会議の会議録に
は,公表できないとして記載されていないが,後記のとおり,同会議の2日後の同
月7日にはCIVA会長からEに対して上記具体的名称の登録手続がまもなくであ
る旨のファックスが送信されていることから(乙23),同会議の時点で,上記具
体的名称が決定されたと認められる。)。Eは,今後の計画として具体的な方針を
述べた(例えば,本件競技会を1年に5回,最多で1年に20回開催し,パイロッ
トの数は12名に制限することを考えていること,プログラムに関しては,音楽に
合わせたフリーのフィギュアを導入すること,3部構成の最初のプログラムはFA
I公認の国際審判員による判定を行うが,最終日はFAIとは関係のない審判員に
より芸術点を判定し,後者の判定は1年のファイナルランキングには加味しないこ
と,平成8年は,ベルリン,ハンガリー(6月初旬),オクラホマ(8月),アリ
ゾナ(9月21日),サンフランシスコ(10月5ないし6日),及びアジア(1
0月中旬から11月中旬まで)での開催を考えていること,平成9年2月18日な
いし23日には,オーストラリアでの開催を予定していることなど。)。
エ 平成8年の本件競技会の開催経緯は,概ね次のようなものであった。
(ア)Eは,平成7年11月7日には,CIVA会長マイケル・R・ヘウ
アーから,「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」
の名称についてまもなく登録手続がなされる旨の連絡を受けた。
(イ) 一方,日本においては,豊岡市が,平成7年のブライトリング・ワ
ールドカップが成功したことから,平成8年にも同様の競技会を開催したいと考え
ており,ブライトリング・ジャパンのCにその旨要請した。しかし,Cは,ブライ
トリング社がブライトリング・ワールドカップから撤退したことから豊岡市の要請
を断った。
  もっとも,Cは,FAIが平成8年に同種の競技会を開催する意向を
示していることから,豊岡市が競技会の開催を希望している旨をFAIに取り次ぐ
こととし,原告に対し,平成7年のブライトリング・ワールドカップに要した費用
等から,平成8年の競技会に要する費用等を見積もって豊岡市に提示するよう指示
した。原告は,事業計画書(費用約2億6000万円との内容であった。)を作成
して豊岡市に提出し,豊岡市は,当該書面を検討した上で,再度,平成8年の競技
会の開催を希望した。
  原告は,このころまでに,日本オリンピック委員会の勤務経験を有す
る知人のD(以下「D」という。)に本件競技会開催について話をもち掛け,Dも
本件競技会の開催に関与するようになっていた。
(ウ) Dは,平成7年11月17日,Eに対し,平成7年のブライトリン
グ・ワールドカップの協力者である旨の自己紹介のファックスを送信した。その
後,Dは,同月23日,Eに対し,但馬空港の関係者が曲技飛行競技会の開催を希
望していること,但馬空港関係者に対し,ブライトリング社の撤退について,今後
のアエロバティックスの将来のことを考えて本件競技会をブライトリング社の手か
らFAIへ戻した旨説明したこと,但馬空港の関係者が,FAIとEが新しい組織
を作った後にプレスリリースすることに同意したことについて報告した。
(エ) Eは,同月30日,Dに対し,本件競技会の名称が「FAI WO
RLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」に決定したことを
通知し,FAI及びCIVAは,未だ上記名称の決定を公表していない旨を連絡し
た。
(オ) Eは,同年12月初旬ころから,本件競技会のロゴを作成するた
め,建築家と打合せを行った。このときまでに,フランスの戦闘機のウイング,地
球,FAI旗にちなんだ虹のデザイン,「FAI」及び「WORLD GRAND
 PRIX OF AEROBATICS」の文字をロゴに取り込む話がされてい
た。
(カ) 原告とDは,同月12日ないし13日ころ,スイスを訪れてEと打
合せを行った。DとEとの間で,DがEに対し,保証金を支払い,EはDに対し,
FWGPAの日本代表部としての権限を与えることについて大筋で合意した。
(キ)Dは,同月20日ころ,上記合意について契約書を作成する前では
あるが,FWGPA日本代表部として日本の企業と契約を締結する必要があると要
請し,Eは,同月23日,Dに対し,上記(カ)記載の合意について契約書を作成す
ることを条件として,FWGPA日本代表部として契約を締結することを認めた。
  しかし,Dは,上記(カ)記載の合意について契約書を作成せず,保証
金を支払わなかったことから,Eは,Dではなく,原告を代理人として,豊岡市と
の間で,豊岡市が,本件競技会を開催し,Eに対し保証金25万米ドルを支払う旨
の契約を締結した。豊岡市は,上記契約に基づき,Eに対し,手付金として10万
米ドルを支払った。
(ク) Eは,日本における平成8年の本件競技会開催準備のため,原告を
Eの連絡業務担当の代表として認める書面を作成した。原告は,平成8年の本件競
技会のポスターやチケットの作成に携わり,ポスターやチケットに,「AEROB
ATICS」の称呼を記載する際,「エアロバティックス」ではなく「アエロバテ
ィックス」と記載した。テレビ局等から,誤記ではないかとの問い合わせが多数あ
ったが,原告は,空戦術のイメージを払拭してスポーツのイメージを強調し,差別
化を図る意図である旨説明し,「アエロバティックス」の称呼で統一した。
(ケ) 原告は,同年5月19日ころ,Eの事務所を訪れ,ロゴに関する資
料をコピーして持ち帰った。
  Eは,同年7月1日,依頼していたデザイナーからロゴのデザインを
受け取り,同月7日ころ,これを原告に交付した。Eは,同月30日,ロゴについ
て,ウイングマークのデザインを採用する旨最終決定し,その旨を原告にファック
スで知らせた。Eは,ロゴデザインを担当したデザイナーに対し,報酬を支払っ
た。
(コ) Eは,同年9月6日,豊岡市に対し,保証金残額15万米ドルの支
払を求めたが,豊岡市から保証金が支払われることはなかった。
(サ) 本件競技会は,上記のような準備を経て,同年10月25ないし2
7日,開催されたが,競技会日程3日間のうち2日間が雨天だったこともあり,期
待していた入場料収入が得られず,多額の損失が生じた。
(シ) 原告は,同競技会終了後,豊岡市の但馬空港フェスティバル実行委
員会に対し,同競技会の開催費用を請求したが,豊岡市が支払を拒絶したことか
ら,原告は,平成9年12月ころ,東京地方裁判所に対し,豊岡市を被告として,
同競技会の開催費用等2億0846万円の支払を求める訴訟を起こした(同裁判所
平成9年(ワ)第26927号事件等)。Eは,上記訴訟との関係で,原告の要請に
より,平成8年の本件競技会においては,原告にFWGPAのすべての権限を与え
ていた旨の書面を作成した。同事件においては,豊岡市が原告に対し,上記競技会
の開催実施委託料として5265万円を支払い,上記競技会に使用した機体等を輸
送した郵船航空サービス株式会社に対して和解金として4565万円を支払い,会
場設営をした株式会社イーレントに対し,和解金として5300万円を支払い,会
場警備を行った綜合警備保障株式会社に対し和解金として450万円を支払うとい
う内容の和解が成立した(甲66,68)。
オ 平成10年の本件競技会開催までの間に,日本において,次のようなイ
ベントが実施された。
(ア) 原告は,平成9年8月9日ないし10日にかけて,北海道中川郡
(以下省略)において,自ら5700万円を支出し,土地・施設使用承諾や運輸省
東京航空局釧路空港事務所長,東京航空局長の許可を得るなどして「遠音with
AEROBATICS」を実施した。Eは,北海道スポーツ協会に対し,同イベン
トを支援する旨の書面を送付した。
   同協議会のパンフレットには「共催 FWGPA-JAPAN DE
LEGATION」,「FWGPA official Exhibition」
などと表示された。
(イ) 平成10年3月28日ころ,ツインリンクもてぎにおいて開催され
たカーレースの最終日にGが,機体にウイングマークを付して合計30分間の曲技
飛行を披露した。
原告は,Gの上記飛行のための土地・施設使用承諾,東京国際空港長
の許可等についての申請手続を行った。
(ウ) 同年6月13日ないし14日に,ツインリンクもてぎにおいて開催
されたカーレースの際,エキシビジョンとして航空ショーが行われた。上記カーレ
ースのパンフレットには,上記航空ショーを「アエロバティックス」と表示した。
原告は,上記航空ショーのための土地・施設使用承諾,東京航空局長
からの許可,東京国際空港長からの許可等の申請手続を行った。
カ 平成10年の本件競技会開催経緯は,概ね次のとおりであった。
(ア) ツインリンクもてぎ社は,Eとの間で,FAI世界航空グランプリ
プロモーター契約を締結した(乙20)。同契約書には,Eの肩書きとして「FW
GPA Chief Executive」との記載がされている。なお,原告
は,同契約書の作成の際,Eに対し,契約書をファックスで送信しただけで原本を
送付しなかったことから,Eは,ファックス送信された用紙に署名し,これを契約
書の原本に挿入する形で契約書が作成された。
同契約書には,次のような内容が記載されている。
a FAI(国際航空連盟)は,世界中の航空スポーツを統括する唯一
の国際的に認知された機関であり,“FAI World Grand Prix
 of Aviation”と称される競技に関連するすべての保有する権利を管
理する。
b FAIは,世界中のFWGPAの開催と上演をEに任命しその権利
を与えている。
c ツインリンクもてぎ社は,FWGPAに対し,グランプリ開催前6
か月前までに登録の費用(登録費)として1万5000米ドルを支払い,当該登録
費の支払は,FWGPAチームが当プロジェクトの作業を開始するための必要条件
となる。
d プロモーターは,FAIが本協議イベントに関するすべての権利を
保有することを認めこれに同意する。
e プロモーターは,広告及び販促目的で日本もてぎグランプリの名称
を使用し(ただし,FWGPAの事前の文書による承認を条件とする。),日本も
てぎグランプリのための専用ロゴを制作すること(ただし,使用前にFWGPAの
文書による承認を得なければならない。)等の権利を有する。
(イ) ツインリンクもてぎ社は,原告との間で,「’98エアロバティッ
クス日本グランプリ開催に関する覚書」を作成した。同覚書には,原告の肩書きと
して「国際航空連盟・曲技飛行部門・FAI WORLD GRAND PRIX
 OF AEROBATICS日本代表部」との記載がされている。同覚書には,
ツインリンクもてぎ社が上記競技会の主催者であること,ツインリンクもてぎ社
は,原告に対し,大会開催準備,開催に至る実施報酬として,4500万円を支払
う(運行許可取得費用,出張費用等を含む)旨が記載されている(甲67)。
(ウ) 原告は,平成8年の本件競技会開催のために,土地・施設使用承
諾,東京航空局長及び東京国際空港長の許可等について申請手続を行った。
(エ) 平成10年の本件競技会は,日本経済新聞,朝日新聞,下野新聞,
福島民友,映像新聞,岐阜新聞の各紙で報道されたほか,航空情報平成11年1月
号,航空ファン平成11年1月号,シュナイダー平成10年12月16日号,週刊
プレイボーイ平成10年11月24日号,カーグラフィック平成11年1月号,N
AVI平成11年1月号,Good Press平成11年1月号,スカイスポー
ツ平成11年2月号,Club man平成11年1月号,OPT4WD平成10
年12月号,エアワールド平成11年1月号,LE MONDE DE L’AV
IATIONの各雑誌に掲載され,その際,本件各表示が使用された。
上記掲載記事の一部について,その内容を記すと,次のようなもので
あった。
a シュナイダー平成10年12月16日号(甲51の4)の26頁,
27頁には,原告のインタビュー記事が掲載されており,そこには,「FWGPA
(FAI World Grand Prix of Aerobatics)競
技会代表・A氏に,98アエロバティックス日本GPの背景を語っていただいた。/
A:本業はドイツ・ミュンヘンのホフマン・アイテル法律事務所でオペレーションズ
リサーチをしています。‥‥‥アエロバティックスと初めて関わったのは,95年
にスイスの時計メーカーが主催するアエロバティックス競技会を日本で主催したの
ですが,不馴れながら準備は私が行いました。その時の実績が評価され,現在はF
WGPA競技会代表という肩書きを頂いて,各国で開催されるFAIアエロバティ
ックスGPをオペレーションしています。」といった記載があるほか,Bのインタ
ビュー記事も掲載されており,そこでは,同人は,「国際空港連盟ワールド・グラ
ンプリ・アエロバティックス(FWGPA)の日本代表部,マネージングディレク
ター」との肩書で,「95年の但馬大会にたずさわっていらい,どっぷりとアエロ
バティックスにはまり,いまの職に。現在,札幌市に居を構え,仕事のために日本
中を飛び回る。」と紹介されている。
b 週刊プレイボーイ平成10年11月24日号(甲51の5)には,
「サーキットのヒコーキ野郎たち」と題する記事が掲載されており,「このグラン
プリを運営するのは国際航空連盟(FAI)。オリンピック競技委員会(IOC)
の参加の下,非政府・非営利で航空活動を推進する国際団体だ」と記載されてい
る。
c カーグラフィック平成11年1月号(甲51の6)には,「壮絶に
して華麗 大空に描く芸術 ‘98アエロバティックス日本グランプリ」と題する
記事が掲載されており,「アエロバティックス・ワールド・グランプリというの
は,FAI(国際航空連盟)公認曲技飛行競技の頂点に位置する大イベントであ
る。98/99年シーズンは8月のスイスを皮切りに4戦が行われ,10月の日
本,11月の中国に続き,99年2月のオーストラリアでシーズンを終える。日本
では,95,96年に兵庫県但馬空港で開催されたのが最初である。小さな飛行場
で行われるのが普通で,ツインリンクのようなレースコースで開かれるのは世界的
にも例がない。」と記載されている。
d NAVI平成11年1月号(甲51の7)には,「エンスーへの道
(第101回) コレを観ないと,あなたの人生はエンスーではなくなってしまう
の巻」と題する観戦記が掲載されており,「今回の『ワールド・グランプリ・オ
ブ・アエロバティックス』は,世界航空連盟(FAI)が公認する世界最高峰の
『カテゴリー』にランクされる大会で,いわば“空のF1”といったところ。日本
を初め,スイスや中国,オーストラリアなど1シーズンに4,5か国を転戦し,F
AIの審判員によって採点される技術点と芸術点の合計ポイントでチャンピオンが
決定されるのだ」と記載されている。
e OPT4WD平成10年12月号(甲51の11)には,「AIR
 BALL 空中舞踏会」と題する記事が掲載されており,「このアエロバティッ
クスは38年間も続いている。第1回目の世界選手権は,1960年にチェコスロ
バキア(当時)で開かれている。その後,FAIの認可を受け,93年にはワール
ドカップが開催された。この大会は,95年までに三大陸で計15回行われた。9
6年,そのワールドカップが『FAIワールド・グランプリ・オブ・アエロバティ
ックス』に代わり,年間競技として五大陸で開催された。日本でも但馬で開催され
ている。」と記載されている。
f エアワールド平成11年1月号(甲51の12)には,「‘98ア
エロバディックス日本グランプリ」と題する記事が掲載され,「世界エアロバティ
ックス選手権と並ぶFAI公認の大会『FAIワールド・グランプリ・オブ・アエ
ロバティックス』は,1996年に日本で始まった。その2回目となる大会が98
年10月23~25日,栃木県にあるモータースポーツ専用サーキットの『ツイン
リンクもてぎ』で開催された」と記載されている。
キ 平成11年の本件競技会開催までの間に,日本において,次のようなイ
ベントが実施された。
(ア) 平成11年4月8日ないし10日に開催されたカーレースのオープ
ニングで平成10年の本件競技会に出場した選手2名が曲技飛行を披露した。 
原告は,上記飛行のため,土地・施設使用承諾,東京航空局長の許
可,東京国際空港長の許可等についての申請手続を行った。
(イ) 同年8月4日ころ,ツインリンクもてぎにおいて,マスコミ向けに
アエロバティックスの試乗(以下「マスコミ向けイベント飛行」という。)が行わ
れた。
原告は,東京航空局長の許可等についての申請手続を行った。
(ウ) 同年9月ころ,米軍厚木基地祭ウイング99において,曲技飛行
(以下「厚木基地イベント飛行」という。)が実施された。
ク Eが代表者を務めるスイス法人エア・マスター・バレ社は,平成11年
9月1日,商号を,FWGPA.S.Aに変更した(甲60)。
  原告は,同年12月24日,「FWGPA」(標準文字)について商標
登録出願手続を行い,商標登録された(甲88。登録第4425181号)。
ケ 平成11年の本件競技会開催経緯は,概ね次のとおりであった。なお,
平成11年の本件競技会は,「'99アエロバティックスHONDAグランプリ」と
の大会名で報道された(甲52の17,19,20,21,22)。
(ア) ツインリンクもてぎ社は,Eとの間で,FAI世界航空グランプリ
プロモーター契約を締結した(乙21)。同契約書の内容は,平成10年に締結さ
れたものとほぼ同内容であった。
(イ) ツインリンクもてぎ社は,原告との間で,「'99エアロバティック
ス日本グランプリ開催に関する覚書」を作成した。同覚書には,原告の肩書きとし
て「国際航空連盟・曲技飛行部門・FWGPA FAI WORLD GRAND
 PRIX OF AVITATION対日本代表部」との記載がされている。同
覚書には,ツインリンクもてぎ社が上記競技会の主催者であること,ツインリンク
もてぎ社は,原告に対し,大会開催準備,開催に至る実施報酬として,現金300
0万円,事業商権は金1500万円相当を上限として支払う(運行許可取得費用,
出張費用等を含む)旨記載されている(甲56)。
(ウ) 平成11年の本件競技会及び前記キ記載のイベントは,エアショー
ガイド平成11年4月発売号,スカイスポーツ平成11年6月号,航空ファン平成
11年6月号,平成12年1月号,航空情報平成11年7月号,11月号,平成1
2年1月号,Good Press平成11年7月号,11月号,ラジコンエアー
ワールドvol.4,キャノンサークル平成11年3月号,週刊プレイボーイ平成
11年8月31日号,ベストカー平成11年9月26日号,カーグラフィック平成
11年10月号,スカイスポーツ平成11年10月号,ラピタ平成11年11月
号,ラジコン技術平成11年11月号,シュナイダー平成11年秋号,週刊読売平
成11年11月7日号,ラジコン技術平成11年12月号,エアワールド平成12
年1月号等に記事が掲載され,本件各表示が使用された。
コ 原告は,平成11年12月24日に,原告商標について商標登録出願手
続を行った。
サ平成12年の本件競技会開催経緯は,概ね次のとおりであった。
(ア) Eは,同年4月6日,原告との間で,平12年の本件競技会に関す
る打合せを行った。Eは,この際,原告に対し,FWGPA.S.Aの代理人とし
て活動する意思があるなら,Eと正式に契約を締結するよう求めたが,原告は,F
WGPAとは独立の立場で活動したい旨を述べてこれを拒絶した。
(イ) Eは,BをFWGPA.S.Aの代理人にすることにした。
  原告は,これを知って,Bと話をするために同月15日ころ,北海道
札幌市にある原告の事務所を訪れた。原告は,原告の事務所のパソコン等の機材,
CD,資料,預金通帳等がなくなっていたとして,北海道警察に被害届を出し,同
月25日には,Bを業務上横領の罪で告訴した。
(ウ) FWGPA.S.Aは,Bとの間で,同年5月11日,BをFWG
PA.S.Aの代理人とする旨の契約を締結した。
  Bは,同年6月27日に,別紙商標目録1について商標登録出願手続
を行った。
(エ) ツインリンクもてぎ社は,FWGPA.S.Aの代理人Bとの間
で,平成12年の本件競技会開催についての契約を締結した。
(オ) 平成12年の本件競技会は,BがFWGPA.S.Aの代理人とし
て活動し,開催された。
シ その後の経緯
(ア) Eは,平成13年4月6日,別紙商標目録3の商標につき商標登録
出願し,平成14年7月2日,「曲芸飛行ショー及び気球・スカイダイビング・グ
ライダー・ハングライダー・パラセーリング・その他の空港スポーツショーの興行
の企画・運営又は開催」等を指定商品又は指定役務として商標登録を得た。
(イ) 原告は,商標登録済ウイングマークについて無効審判を請求してい
たが(無効2002-35285),特許庁は,平成15年7月9日,原告の無効
審判の請求は成り立たない旨の審決をした(乙22)。
(ウ) 平成15年10月31日,ツインリンクもてぎにおいて,本件競技
会が,「FAI WORLD GRAND PRIX 2003“オートボルテー
ジュ”アエロバティックス日本グランプリ」の名称で開催された。
  同大会の主管は,FAI及びHAUTE VOLTIGEとされた。
 もっとも,同競技会は,当日,事故が発生し,その後のプログラムは中止され
た。
(2) 上記認定事実によれば,本件競技会は,FAIから全権委任されたEによ
って,世界各国で開催されていた「FAI WORLD GRAND PRIX 
OF AEROBATICS」の一環として日本において開催されたものであっ
て,本件競技会の開催が,原告の営業であったということはできない。
  原告は,Eと正式な契約書を作成しないまま,日本における本件競技会開
催事務の担当者としてFWGPAないしFWGPA-J等と名乗って活動し,日本
における会場提供者である豊岡市やツインリンクもてぎ社から,上記活動の対価を
得ていたたものと認められる。Eは,平成12年初めころ,原告に対し,正式な契
約を締結することを求めたが,原告がこれを拒んだことから,Bとの間で,契約を
締結して本件競技会の開催事務を担当させることにしたものである。
したがって,本件競技会において使用された本件各表示が,原告の商品等
表示であるということはできない。
この点に関し,原告は,「FAI WORLD GRAND PRIX 
OF AEROBATICS」の競技会名及びウイングマークを考えたのは原告で
あり,Eは原告から依頼を受けてFAIに対する諸手続を担当していたに過ぎない
旨主張し,これに沿う陳述書を提出するとともに原告本人尋問において同趣旨の供
述をしている。
しかし,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AERO
BATICS」の競技会名及びウイングマークを創作したのが原告であるか否か
は,これらの表示が原告の商品等表示であるか否かとは直接関係がない上,Eは原
告から依頼を受けてFAIに対する諸手続を担当していたにすぎない旨の原告の供
述は,Eが,平成7年11月4日及び5日に開催されたCIVA会議において,今
後の競技会の具体的計画を述べており(甲92),本件競技会が概ねEの計画どお
り実行されていること,同月30日に,Dに対し,上記競技会名の決定を通知して
いること(乙25),スイスのFWGPA事務所が,平成8年7月30日に,原告
とウイングマークについて話をした後,原告に対してウイングマークのコピーを送
信していること(乙27),スイスのFWGPA事務所が,原告を日本代表部とし
て扱っていること(乙27)など,客観的証拠から認められる事実と符合しないも
のであり,原告本人の上記陳述書の内容及び本人尋問における供述は,信用できな
い。
原告が,自らの主張を裏付ける証拠として提出する甲9の2ないし9の1
1(平成8年5月ころの原告の手帳にウイングマーク類似のロゴが手書きされてい
るもの。)及び甲56,67(ツインリンクもてぎ社と原告との間の契約書)は,
上記認定事実と矛盾するものではない。
また,原告が自らの主張を裏付ける証拠として提出する甲91の1及び9
1の2(平成7年10月下旬ころの原告の手帳に上記競技会名が記載されているも
の。)については,真実その時期に作成されたものであるか定かでない上,仮に作
成時期が原告主張のとおりであったとしても,原告の主張によれば,上記手帳の記
載は,原告がスイスのEを訪れた際になされたメモであるというのであるから,原
告が,Eから本件競技会の新たな名称を聴取してメモしたものである可能性を否定
できない。
いずれにしても,原告の提出する証拠は,いずれも前記認定を覆すに足り
るものとはいえない。
2 争点4(被告による被告製品の販売が商標権侵害行為といえるか)について
(1) 被告商品の商品名と原告商標の類否について
  原告商標は,上段に明朝体英字で「AEROBATICS」と横1列に書
し,下段に明朝体片仮名で「アエロバティックス」と横1列に書した横2列の文字
列から成る商標であり,これらの活字は,すべて同じ大きさである。同商標の上段
の文字列と下段の文字列とは外観上それぞれ独立した部分ととらえられるものであ
り,また,下段の「アエロバティックス」は上段の「AEROBATICS」の称
呼を片仮名で表記したものであることが一見して明らかであるから,原告商標にお
いては,全体が外観上見る者の目を引くほか,上段の「AEROBATICS」及
び下段の「アエロバティックス」がそれぞれ見る者の注意をひく部分であり,これ
らの部分はそれぞれ商品の出所を表示する部分(要部)ということができる。そう
すると,上段の「AEROBATICS」からは,「エアロバティックス」ないし
「アエロバティックス」の称呼を(「AEROBATICS」からは,一般的には
「エアロバティックス」の称呼を生じるものであるが,原告商標においては,下段
の「アエロバティックス」と結合商標を成していることから,「アエロバティック
ス」の称呼をも生ずる。),下段の「アエロバティックス」の部分からは「アエロ
バティックス」の称呼を生じ,曲技飛行又は本件競技会の観念を生じさせる。
  他方,被告製品の商品名は「AEROBATICS MODEL」であ
り,その広告等には,同じ大きさの英文字により横一列に記載されている。このう
ち,「MODEL」の部分は商品の「型式」「タイプ」等を意味するものであっ
て,自他識別機能を有するものではないから,被告製品の商品名において出所表示
機能を有する要部は「AEROBATICS」の部分である。そうすると,被告製
品の商品名の要部からは,「エアロバティックス」ないし「アエロバティックス」
の称呼を生じ,曲技飛行又は本件競技会の観念を生じる。「AEROBATIC
S」は,一般的には「エアロバティックス」の称呼を生じるものであるが,被告製
品は,本件競技会において公認された製品として製造販売されているものであり,
被告製品のカタログ,公告等にも「アエロバティックス」と記載されていることか
ら,「エアロバティックス」のほか「アエロバティックス」の称呼をも生ずるとい
うべきである。
  上記によれば,被告製品の商品名の要部である「AEROBATICS」
は,原告商標の要部と同一であるから,被告製品の商品名は,原告商標と類似する
ものというべきである。
(2) 原告商標権に基づく権利行使が権利の濫用といえるか
  被告は,原告商標が「曲芸飛行」を意味する一般名詞であると主張する。
しかし,原告商標の指定商品ないし役務には曲芸飛行の展示等は含まれておらず,
原告商標が指定商品又は役務に係る商品又は役務の普通名称であるということはで
きないから,原告商標が曲芸飛行を意味する一般名詞であることは,原告商標の無
効事由たり得ない(商標法46条1項1号,3条1項1号)。
また,被告は,原告が,指定商品又は役務について,原告商標を日本国内
において使用していない旨主張し,原告商標は取消事由を有することが明らかであ
るから(商標法50条1項),原告商標権に基づいて被告の平成12年9月から平
成14年12月末までの間の被告製品販売について損害賠償を請求することは権利
の濫用であるかのような主張するが,商標登録の取消の効果は遡及しない(商標法
54条1項)ことに照らせば,被告主張のような事由のみをもって,直ちに原告商
標の商標権に基づく権利行使が権利濫用に該当するとまではいえない。
3 争点5(使用許諾の有無)について
(1) 証拠(甲3,51の4,86,99の1,2,3,100,101,乙
2,4,5,6,7,9,14,15,16,19,20,31ないし38の各枝
番号,36,証人F,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
ア 原告は,平成10年1月ころ,友人のBとの間で,Bが,原告の本件競
技会の開催業務を手伝い,原告がBに対して業務手伝いの対価として月50万円を
支払い,ベンツワゴン2台,パソコン2台を貸与する旨合意した。
  原告は,そのころ,Bに対し,札幌市所在の事務所を提供し,東京三菱
銀行札幌支店の自己の銀行口座(ただし,名義は,当初「マーケテイング・サービ
スイズ エフダブルジーピー」,後に「マーケテイング・サービスイズダイヒヨウ
ミツカノブユキ」に変更)の預金通帳や銀行印等を渡して,その管理を委ねた。
イ シュナイダー平成10年12月16日号26頁,27頁(甲51の4)
には,原告のインタビュー記事と共に,Bのインタビュー記事も掲載されている
が,そこでは,同人は,「国際航空連盟ワールド・グランプリ・アエロバティック
ス(FWGPA)の日本代表部,マネージングディレクター」との肩書で,「95
年の但馬大会にたずさわっていらい,どっぷりとアエロバティックスにはまり,い
まの職に。現在,札幌市に居を構え,仕事のために日本中を飛び回る。」と紹介さ
れている。
ウ Bは,平成11年2月ころ,FWGPA日本代表部のマネージングディ
レクターとして,弘研のFと面会した。Bは,その際,Fに対し,FWGPAが本
件競技会を運営していること,FWGPA日本代表部として,Bのほかに原告がお
り,原告と一緒に業務を行っていることを話した。
Fは,Bに対して,本件競技会の協賛企業として被告を紹介することに
した。
エ Bは,同年7月ころ,ドイツに滞在中の原告に対し,弘研の紹介で,被
告が飛行機の機体にロゴを表示する形でスポンサーになりそうである旨伝え,その
対価額はいくらが相当であるかを相談した。
オ B及びFは,被告に対し,本件競技会に対する協賛の話を申し出た。B
及びFは,被告に対し,様々な協賛メニューを提示したが,この時点では,結局,
FWGPA日本代表部が,マスコミ向けイベント飛行及び平成11年の本件競技会
において,Gの機体に「CITIZEN」及び「PROMASTER」のロゴを記
載したカッティングシートを貼付し,被告がFWGPA日本代表部に対し,協賛金
300万円を支払うことで合意した。Bは,被告に対し,Gの機体のほか,サービ
スで,もう1機に同様のカッティングシートを貼付する旨申し出た。
  さらに,Bは,Fとの間で,FWGPA日本代表部が,弘研に対し,仲
介手数料として,売上金の15%を支払う旨合意した。
カ 原告は,同年8月に行われたマスコミ向けイベント飛行において2機の
機体に被告のロゴを貼付して飛行した。上記イベントの際,原告は,弘研のFや被
告の担当者と初めて顔を合わせたが,契約関係についての詳しい話はしなかった。
キ Bは,マスコミ向けイベント飛行の後,被告との間で,前記オ記載の合
意について覚書を作成することにした。
  Bは,上記覚書作成作業の中で,被告に対し,協賛金支払に対するサー
ビスとして,機体に被告のロゴを貼付するサービスだけでなく,FWGPA等の表
示を使用した時計の製作を認めることについても提案するようになった。そこで,
Bと被告の間においては,結局,FWGPA日本代表が,本件競技会に出場するG
の機体に「CITIZEN」及び「PROMASTER」のロゴを記載したカッテ
ィングシートを貼付すると共に,被告がFWGPA等の本件競技会関連の表示を使
用した時計を製作することを認め,被告がFWGPA日本代表部に対し,協賛金3
00万円を支払うことで合意し(本件使用許諾契約契約),同年9月ころ,その旨
の覚書を作成した。(甲3。本件覚書)。ただし,本件覚書には,作成日付として
同年8月1日との記載がなされ,被告が支払う具体的な金額は記載されず,FWG
PA日本代表部が使用許諾する表示の例として「FWGPA」及び「G」が記載さ
れただけで,具体的な表示は記載されなかった。
  本件覚書(甲3)は,被告(甲),弘研(乙)及び「FWGPA Japan
Delegation」の3者を契約当事者とするものであり,「上記3社を当事者とし,甲
のためになされる,丙が主管するアエロバディックスグランプリ開催(平成11年
10月15日から17日)における出場パイロット,Gおよび機体(以下を「丁」
という。)への協賛および,甲が展開する広告物の企画,制作および映像使用等に
関し,以下の各条項により覚書を取り交わした。」との前文に始まり,次のような
条項を含むものである。
 第1条(委託業務)
   甲は乙に対し,丙主管のアエロバティックスグランプリに出場する丁
への協賛,広告の企画,制作および実施等の業務を委託し,乙はこれを受諾した。
 第2条(公告の範囲)
   前条に定める公告は,甲の商品「CITIZEN PROMASTE
R(シチズン プロマスター)」空展開商品(以下「本商品」という)のための電
波媒体広告物(テレビCMおよびラジオCM,尚テレビCMについては劇場用C
M,店頭放映用ビデオソフトCMへの流用を含む),印刷媒体広告物(新聞,雑
誌,ポスター,パンフレット,チラシ,ダイレクトメール,テレフォンカード,カ
レンダー,POP等の一切を含む),交通広告物および無償頒布品等販売促進物
(以下これらの広告物を総称して「本件広告物」という),パブリシティ活動並び
に催事等の一切をいう。尚,電波媒体には有線放送,衛星放送及び通信ネット等に
よるものを含む。
 第3条(使用期間)
   甲が展開する本件広告物に関する丙保管の写真,映像の使用期間は,
平成11年8月5日から平成12年8月4日の1年間とする。
 第4条(オリジナルモデルの製造 その1)
   甲は,限定発売商品のオリジナルモデル「プロマスター『FWGP
A』モデル(仮称)」を製造・販売する際には,および当該商品に『FWGPA』
の名称を使用することができるものとする。
 第5条(オリジナルモデルの製造 その2)
   甲は,限定発売商品のオリジナルモデル「プロマスター『G』アドバ
イスモデル(仮称)」を製造・販売する際には,および当該商品に丁の氏名を使用
することができるものとする。
ク 同年9月に,厚木基地イベント飛行が行われた。Bは,Fに対し,上記
イベント飛行が行われることを告げ,被告のロゴをどうするか尋ねたところ,F
は,そのままにしておくよう答えた。原告は,Bからその旨の報告を受け,上記エ
アショーにおいても被告のロゴを2機の機体に貼付し,1機は展示飛行を,1機は
地上展示を行った。
ケ 同年10月の本件競技会においても,マスコミ向けイベント飛行と同様
に,2機の機体に被告のロゴを貼付して飛行した。原告とFは,同競技会において
顔を合わせたが,契約内容についての詳細な話はしなかった。
コ Bは,本件覚書に基づく協賛金等の支払として,Fに対し,次の(ア)な
いし(ウ)のとおり合計255万円(弘研の仲介手数料15%を控除したもの)を請
求し,Fは,これらの金員を上記ア記載の原告の銀行口座に振込送金する方法によ
り支払った。これらの入金については,そのころ,Bから原告に対してEメールに
より報告がされている。また,本件覚書に基づく協賛金とは別に,上記クに対する
協賛金及びブース代の支払として(エ)及び(オ)のとおり請求した。その他,カッテ
ィングシートや編集ビデオ作成の実費の支払として次の(カ)のとおり請求した。
(ア) Bは,同年8月30日に,協賛金300万円の一部として55万円
の支払を請求し(乙31の2),Fは,同年10月29日に,他の支払と合わせて
110万円を,東京三菱銀行札幌支店の「マーケテイング・サービスイズ エフダ
ブルジーピー」名義の口座に振込送金する方法により,支払った(乙31の1,
2,34)。
(イ) Bは,同年9月30日に,協賛金300万円の一部として100万
円の支払を請求し(乙32の2),Fは,同年11月30日に,他の支払と合わせ
て117万円を,東京三菱銀行札幌支店の「マーケテイング・サービスイズダイヒ
ヨウミツカノブユキ」名義(ただし,口座番号は(ア)記載の口座と同一)の口座に
振込送金する方法により,支払った(乙32の1,2,35)。
(ウ) Bは,同年10月30日に,協賛金300万円の一部として100
万円の支払を請求し(乙33),Fは,同年12月30日に100万円を,上記
(イ)記載の口座に振込送金する方法により,支払った(乙36)。
(エ) Bは,同年8月30日に,米軍厚木基地での航空ショーにおける機
体への協賛金50万円から弘研の仲介手数料15%を控除した42万5000円の
支払を請求した(乙31の2)。
(オ) Bは,同年9月30に日に,米軍厚木基地での航空ショーにおける
ブース代20万円から弘研の仲介手数料を控除した17万円の支払を請求した(乙
32の1)。
(カ) Bは,同年8月31日に,カッティングシート代及びビデオ編集代
として合計12万5000円の支払を請求した(乙31の1)。
サ 被告は,平成11年10月ないし平成12年12月ころ,被告製品を掲
載したプロマスターシリーズのカタログを頒布し(乙2,5,9),同年8月から
9月,同年12月から平成13年1月のJAL SHOPのパンフレットに被告製
品を掲載し(甲4の1・2,99の1ないし99の3,同年12月ないし平成13
年2月ころ,雑誌に被告製品の広告を掲載した(乙4,6,7)。同パンフレット
には被告商品の商品名「AEROBATICS MODEL」が記載され,別紙標
章目録2の標章が掲載され,FAIの公認モデルであることが記載された。
シ Eは,前記1(1)サ(ア)記載のとおり,原告に対してFWGPA.S.A
の正式な代理人として契約を締結するよう求めたが,原告は,これを拒絶したた
め,Eは,BをFWGPA.S.Aの正式な代理人にすることにした。
ス 原告は,平成12年に,国際線の「JAL SHOP」に掲載された被
告製品の広告を見て,Fに対し,被告製品の販売は海外でも行われているのかと問
い合わせた。原告の問い合わせ内容は,当初,被告製品の販売は国内だけではなか
ったかとの内容であったが,後に,被告製品の製作については承知していないとい
う内容に変化した。
(2) 以上認定の各事実によれば,①原告は,平成10年からBに「FWGPA
日本代表部マネージングディレクター」の肩書を与えて,原告の本件競技会の開催
業務全般に関与させていたものであるところ,本件においても,Bは,FWGPA
日本代表部マネージングディレクターとして,弘研の紹介により被告を知り,被告
に対して本件競技会の協賛企業となるように働きかけ,被告との折衝を行っている
こと,②マスコミ向けイベント飛行及び平成11年の本件競技会において,原告の
関与の下,BとFの間の合意(本件使用許諾契約)の内容に従って,Gほか1機
(合計2機)の機体に「CITIZEN」及び「PROMASTER」のロゴを表
示したカッティングシートを貼付して飛行等が行われていること,③被告から,B
とFの間の合意(本件使用許諾契約)の内容に従った金員が,原告の銀行口座に支
払われ,当該入金についてはBから原告に報告されていること,④原告は,当初,
Fに対しては,被告製品の国内における販売は承知しているような言動をしていた
こと,などの事実が指摘できるものであり,これらの事情に照らせば,原告は,本
件競技会の開催に関する業務全般につき,Bに包括的な代理権を付与していたもの
であり,被告との間の本件使用許諾契約も,このようなBの代理権に基づく権限の
範囲に属するものとして締結されたものと認めるのが相当である(加えて,本件使
用許諾契約の内容については,原告自身もこれを認識し,了承していたものと認め
られる。)。
  なお,原告は,本件使用許諾契約合意のうち,Gの機体に「CITIZE
N」及び「PROMASTER」のロゴを記載したカッティングシートを貼付する
ことと被告がFWGPAに対して300万円を支払うことは承知していたが,被告
に対してFWGPAやウイングマークを使用した時計を製作することを認めること
は承知していない旨,及び,原告はBに対して1機1飛行につき50万円にするよ
う指示しており,被告から受領した300万円(弘研に対する手数料控除前)は,
平成11年8月のマスコミ向けイベント飛行,同年9月の米軍厚木基地の航空ショ
ーにおけるイベント飛行及び同年10月開催の本件競技会の3回の飛行で2機に被
告のロゴを表示したことの対価である旨を陳述書及び本人尋問において述べてい
る。しかし,同年9月の厚木基地イベント飛行に関しては,原告は,別途対価50
万円(弘研に対する手数料控除前)を受領しているのであるから,本件使用許諾契
約の内容は,前記のとおり認定できるものというべきである。
  また,原告は,仮に本件使用許諾契約が認められたとしても,使用を許諾
する範囲は「FWGPA」又は「G」であって,「AEROBATICS」やウイ
ングマークについては使用許諾していない旨主張する。
  しかし,本件覚書においては,被告の限定発売商品について「プロマスタ
ー『FWGPA』モデル(仮称)」,「プロマスター『G』モデル(仮称)」と記
載されているものであり,これによれば「FWGPA」や「G」の表示が例示であ
ることは明らかであり,また「FWGPA」の正式名称が「FAI WORLD 
GRAND PRIX OF AEROBATICS」であることに加えて,前記
の本件使用許諾契約の成立経緯や,原告が被告製品の広告等によりその商品名が
「AEROBATICS MODEL」であることを了知していたこと(前記(1)ス
参照)等に照らせば,「AEROBATICS」の表示も本件使用許諾契約の範囲
内の表示というべきである(ウイングマークについては,前判示のとおり,原告の
商品等表示とは認められず,原告はウイングマークについて何ら権限を有していな
い。)。
  上記によれば,原告は,Bを代理人として,FWGPA日本代表部の名前
で,被告との間で,「AEROBATICS」の表示を使用許諾を含む本件使用許
諾契約を締結したものと認められる。
  なお,使用許諾の期間については,本件覚書においては,第3条に広告物
に関する写真,映像の使用期間についての定めは置かれているものの,被告の販売
する製品(オリジナルモデル)については期間の定めが置かれていないこと等に照
らせば,被告製品の製造販売に関しては使用許諾に期間的限定は付されていないも
のというべきである。
  上記によれば,被告が被告製品に「AEROBATICS MODEL」
の商品名を付して販売した行為は,本件使用許諾契約による許諾の対象となってい
たと認めるのが相当である。 
4 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は,い
ずれも理由がない。
  よって,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官     三  村  量  一
裁判官     吉  川     泉
 裁判官大須賀寛之は,転任のため署名押印することができない。
裁判長裁判官     三  村  量  一
(別紙)
原告商標目録標章目録1標章目録2商標目録1商標目録2標章目録3標章目録4標
章目録5標章目録6商標目録3

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