弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原判決を取消す。
被控訴人が控訴人に対して昭和四九年五月一五日付でなした、昭和四六年五月分、
同年七月分、同年九月分、同年一二月分、昭和四七年二月分、同年四月分、同年六
月分、同年九月分、同年一〇月分、同年一二月分、昭和四八年二月分、同年四月
分、同年七月分、同年九月分、同年一二月分の物品税の決定処分並びにこれらの各
月分にかかる無申告加算税の賦課決定処分をいずれも取消す。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴人は、主文同旨の判決を求め、被控訴人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は
控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり附加するほか原判決の事実摘示と
同一であるから、これを引用する。
(控訴人の当審における陳述)
仮に、本件が「製造」に該当するとしても、本件の場合には、長年にわたり物品税
法三条所定の製造に該当しないものとして、非課税の取扱いを受けており、控訴人
(納税者)は、これを信頼して、「修理」をする意思で「製造」に従事して経済活
動をなしていたものであるから、「信義誠実の原則」により、過去に遡つてまで課
税処分を行うことばできない。
(右に対する被控訴人の反論)
控訴人は、昭和四四年三月一七日付けで呉税務署長に対し、物品税法三五条二項の
規定により、ぱちんこ機の「製造業開始申告書」を提出している(従つて、控訴人
は自己の行為が製造に該当する旨の一応の認識のあつたことが推認される。)事情
にあり、また、決定処分が行われたのは昭和四六年五月分以降の月分であるが、そ
れまでのものについて課税されていないのは、製造行為に該当しないからではな
く、物品税法施行令六条一号により課税標準価格が課税最低限(当時は一個当り四
〇〇〇円)以下であつたことによるものであつて、本件課税を信義則違反というに
は当らない。
(証拠)(省略)
○ 理由
一 原判決理由一及び二の(一)に説示するところは、原判決七枚目表四行目の
「ぱちんこ機」以下同七行目の「構成していること」まで八枚目裏三行目の「ロー
ズから」以下同十行目の「供されていたこと」までを削除するほか、すべてこれを
引用する。
二 物品税法三条二項にいう「製造」については、同法に特別な定義付けがなされ
ていないから、一般概念に従い、材料または原料に物理的、化学的変化を与え、若
しくは操作を加えて新たな物品を造り出す行為をいうものと解され、従つて、本件
ぱちんこ機のように中古の機械を加工することが「製造」といい得るためには、加
工後の機械が新たな機械であり、加工前と加工後の機械に同一性がない(加工後の
機械に対する関係で加工前のそれは実質的には材料としての意味しか有しない)こ
とが必要であるといえる。そして、機械が加工によつて機械としての同一性を失う
場合としては、(1)旧と全く別種の機能を有する機械が造られた場合、(2)機
械としての機能を全く失つてスクラツプ化した加工前の機械から正常な機能を有す
る機械が造られた場合、(3)機械を構成する素材の大部分又は主要部分がとり替
えられた場合等が考えられる。
被控訴人は、本件ぱちんこ機の加工にあたり、機械が解体、再組立された点を重視
してこれを「製造」であると主張するもののようであるが、機械の修理において、
これを解体(従つて当然に再組立)する必要のあることは、時計の修理を例にあげ
るまでもなく、多々見られるところであり、何ら異とするに足りない。また、同時
に多数の同種ぱちんこ機が加工される場合、その再組立にあたつて、或機械の部品
が他の機械にいれ替つて装着されたとしても、そのことは通常、加工前の機械と加
工後の機械の同一性を判定する上において、特別の意味を有しない。例えば、A、
B、Cの三台の同種機を同時に解体修理した場合、Aの部品がBに、Bの同種部品
がCに、Cの同種部品がAに装着され、再組立されたとしても、右各部品にそれぞ
れ個性があり、修理の目的上右いれ替えが意図的になされたとみられるような特段
の事情のある場合は別として、それによつて修理の目的が達せられるとすれば、そ
れは右部品が同一規格のものであつて個性がなく、もともとA、B、Cいずれの機
械にも適合するからに過ぎず、このような場合には、A、B、Cは全体として、実
質的には旧部品をもつて再組立されたものと解するのが相当である。本件におい
て、右の特段の事情あることを窺う証拠は全くない。結局、問題となるのは、本件
ぱちんこ機の解体再組立に際し、どれだけの旧部品が廃棄され、これに代つて新部
品(新品、古品は問わない)が用いられたかという前記(3)に関する点のみであ
るが、この点につき右いれ替え部品は新部品にはならない。
三 ところで、本件ぱちんこ機の加工が右(1)の場合にあたらないことはいうま
でもなく、また右(2)の場合にも、そのまま該当するものでないことは、弁論の
全趣旨に照らして明らかである。
そこで右(3)について検討するに、本件ぱちんこ機の加工にあたつてとり替えら
れた部品が、主として表側台板及びこれに装着される部品であることは、前認定の
とおりであるところ、日本遊技機工業組合に対する調査嘱託の結果によれば、一般
的に、その部品代は、これにヤクモノ代を全部加えても、ぱちんこ機の全資材価格
に対する割合は、昭和四六年では約二七パーセント、昭和四八年ではそれ以下であ
ることが認められ、また成立に争いない乙第四号証によれば、本件ぱちんこ機の加
工において投与された新品部品(表側台板部分以外の部品を含む)の価額は、一台
当り平均、昭和四六年一二月の分では二〇〇〇円、昭和四七年中の分では最高一七
九六円から最低一三六七円まで、昭和四八年中の分では最高二七一五円から最低一
七〇五円までであり、機によりこれに若干の中古部品の投与が加えられたことが認
められるが、一台あたりの資材価格(前記調査嘱託の結果により窺うことができ
る)からみて、到底素材の大部分がとり替えられた場合に該当するものということ
はできない。(もつとも、個々の機械についてみた場合、極めて少数のものについ
て、或は素材の相当部分がとり替えられたとの疑いがないではないが、その内容及
び台数を的確に把握する証拠がない。)
次に、本件加工の中心である表側台板部分がぱちんこ機の主要部分といえるかどう
かについて考える。ぱちんこ機の主要部分がどの部分かということは一義的に明確
ではないが、ぱちんこ機も一つの機械である以上、機械としての機能の主たる部分
を受け持つ裏側台板部分を主要部分とする考え方は、一応成立し得るかも知れな
い。しかし、表側台板部分は、最も人目につき易い部分であり、客寄せの外観上無
視できない面のあることは否定されないとしても、それだけで同部分をぱちんこ機
の主要部分とすることは疑問である。乙第一一号証(裁決書)は、機能面では裏側
台板部分が主要部分であるが、商品価値又は使用価値の面からみると表側台板部分
が主要部分であるとするが、右見解の後段については、その趣旨自体あいまいであ
り、格別根拠ある立論とは解されないので、俄かに賛同し難い。従つて、本件加工
は前記(3)に該当する場合であるということもできない。
ところで、原審証人Aは、本件ぱちんこ機は、いわゆる二落ち(再下取品)以下の
機械で、その価格は三〇〇円ないし五〇〇円程度であるが、加工後ローズへの移出
価格は五〇〇〇円ないし七〇〇〇円程度である旨の証言をしている。
経済的に極めて低価値となつた中古ぱちんこ機が、加工により飛躍的な価値の増大
を来した場合には、前記(2)の場合に準じて、同一性を失つたものとし、これを
「製造」と解することも、理論上はあながち不当であるとはいえまい。ただ、この
場合注意すべきことは、加工前後の機械(殊に加工前のそれ)の価値を客観的に評
価することが必須の前提となることである。加工による価値の変化についての考え
方は、基本的には、例えば、五の価値ある物件に加工費(加工賃を含む)五を加え
られた物件の価値は一〇であり、加工費五を加えられて一〇の価値ある物件が生成
されたとすれば、もとの物件の価値は五であるべき筈である。(加工にあたり特別
な創意工夫がなされた場合は例外であるが、本件はかような場合ではない。)もつ
とも、単なる加工のみではなく、そこに取引が介在すると、市場の関係から現実の
取引価格は右の原則通りにはならないであろうが、少くとも「製造」の要件となる
非同一性を判定するための価値の比較に関する限り、右の基本的な考え方に立脚す
るのが正当であり、限られた市場における取引価格を以て直ちに客観的な価値であ
るとすることは許されないものと解する。そして、右のような考え方に立つても、
極めて低価値となつた中古機に数倍の加工費を投じればその価値が大きく変化する
ともいい得るが、ぱちんこ機の寿命(当審証人Bの証言によれば、機械としての寿
命は五年程度であると認められるが、その型式において流行ないし顧客の嗜好に支
配されることの大きい遊技機械であるぱちんこ機の営業上の寿命は更に短い場合が
多いと思われる。)からみて、かような場合業者はむしろ新しい機械を求めるのが
得策であり、前記のような加工がなされることは通常考えられない。
以上の考察によると前記A証言は、たやすくこれを採用しがたいものというほかな
く、他に本件加工による価値の飛躍的増大を認めるに足る資料はない。
四 そうすると、本件加工は前記(1)ないし(3)のいずれにも該当せず、他に
本件加工がぱちんこ機の同一性を失わしめる根拠Kついての主張立証はないから、
本件加工は前記物品税法の規定にいう「製造」にあたらないというべきである。
むしろ、一般にぱちんこ機の寿命が前記のとおりであり、しかもその間に表側台板
部分のとり替えが屡々なされる(前掲B証言によれば、ローズにおいては少くとも
年一回はとり替えられることが窺われる。)のが実状であるとすれば、ぱちんこ機
において、表側台板部分は当初から営業上とり替えが予想されている消耗品的性格
のものであり、そのとり替えは修理ないし改装とみるのが、社会通念に適合した考
え方であるといえよう。
五 よつて、本件ぱちんこ機の加工がぱちんこ機の「製造」であることを前提とす
る被控訴人の本件処分は違法であつて、取消を免れないから、これと判断を異にす
る原判決を取消して控訴人の本訴請求を認容すべく、訴訟費用の負担につき民訴法
九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 胡田 勲 土屋重雄 高升五十雄)
(原裁判等の表示)
○ 主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
一 双方の申立
原告は、「被告が原告に対して昭和四九年五月一五日付でなした、昭和四六年五月
分、同年七月分、同年九月分、同年一二月分、昭和四七年二月分、同年四月分、同
年六月分、同年九月分、同年一〇月分、同年一二月分、昭和四八年二月分、同年四
月分、同年七月分、同年九月分、同年一二月分の物品税の決定処分並びにこれらの
各月分にかかる無申告加算税の賦課決定処分をいずれも取消す。訴訟費用は被告の
負担とする。」との判決を求めた。
被告は、主文同旨の判決を求めた。
二 原告の請求原因
(一) 原告は、ぱちんこ機の修理を業とする株式会社である。
(二) 被告は、昭和四九年五月一五日付で原告に対し別表(一)記載の物品税の
決定及び無申告加算税賦課決定の各処分(以下本件処分と総称する)をなした。
原告は、同年六月一五日被告に対し右処分について異議申立をしたが、被告は同年
八月二日これを棄却するとの決定をしたので、原告は、さらに同月一九日国税不服
審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は昭和五〇年一二月一六日これを棄却す
るとの裁決をした。
(三) 本件処分は、原告が物品税法の規定による第二種物品であるぱちんこ機の
製造をしたとしてなされたものであるが、原告は、
ぱちんこ機の製造をしたものではなく、修理をしたにすぎず、したがつて本件処分
は違法であるからその取消を求める。
三 被告の答弁
請求原因(一)の事実は否認する。同(二)の事実は認める。同(三)の事実のう
ち本件処分の理由は認めるが、その余は争う。
四 被告の主張
(一) 原告は、昭和四六年五月から昭和四八年一二月までの間、中古ぱちんこ機
を用いて別表(二)の「移出台数」欄記載の台数のぱちんこ機を製造移出したにも
かかわらず、所轄税務署長に対し物品税法三五条二項に規定する製造開始申告をせ
ず、また原告の製造場から移出した課税物品について、物品税法二九条二項に規定
する移出にかかる物品についての課税標準及び税額の申告もしていなかつた。そこ
で被告は、国税通則法二五条、六六条の規定により、課税標準及び税額の決定並び
に無申告加算税の賦課決定を行なつたが、その額及び算出根拠は別表(二)記載の
とおりである。
(二) 原告の加工行為が、課税物品であるぱちんこ機の「製造」に該当する理由
は次のとおりである。
すなわち、原告は、中古ぱちんこ機を、その一体性を失わしめる程度に解体してそ
れぞれの部品に還元し、その部品のうち再使用可能な部品に新たな部品を補充し、
これら新古の部品を材料として課税物品であるぱちんこ機を新たに組み立てて製品
化し、原告の製造場から移出していたものであるが、物品税法に規定する「製造」
とは、材料または原料に物理的、化学的な変化を与え、若しくは操作を加え、新た
な課税物品を造り出す行為一般を指称し、その使用した材料または原料については
その新古を問わず、さらにそれが素材であると製品であるとを問わない。そして、
個々の事実行為が「製造」に該当するか否かは社会通念によつて判定すべきとこ
ろ、原告の前記行為を社会通念に照らしてみれば、その行為は「修理」という限度
を越えたものであつて、「製造」に該当することは明らかである。
よつて本件処分は適法である。
五 被告の主張に対する原告の答弁
被告の主張(一)の事実のうち、原告の行為が製造に該当するとの点は争うが、そ
の余は認める。なお原告の行為が製造に該当するとした場合の物品税及び無申告加
算税の算出根拠については争わない。同(二)は否認する。
原告は、ぱちんこ機を解体したうえ再びこれを組み立てているが、それは、
部品のうち釘などのような消耗と狂いの激しいものを取り替えることと、分解掃除
をすることを目的としているにすぎず、さらに解体といつても、内側台板のうち表
側台板は新品と取り替えるが、それに付着した表部品は全部取り替えるわけではな
く、また裏側台板及びそれに付着した裏部品は、ほとんどそのまま使用するのが通
常であるほか、ぱちんこ機の外枠、内枠及び裏側台板にはそれぞれ番号が付してあ
り、再び組み立てるにあたつては、右番号により解体前と同じもの同士を組み合わ
せているのであつて(このようにしなければ各部分を正確に組み合わせることがで
きない)、このような行為は、ぱちんこ機の「製造」に該当せず、「修理」にすぎ
ないというべきである。
六 証拠関係(省略)
○ 理由
一 請求原因(二)の事実及び原告が、所轄税務署長に対し、物品税法三五条二項
に規定する製造開始申告、同法二九条二項に規定する課税標準及び税額の申告をす
ることなく、昭和四六年五月から昭和四八年一二月までの間、中古ぱちんこ機に加
工(それが製造にあたるといえるか否かについては後記のとおり争いがある)をし
て別表(二)記載の台数のぱちんこ機を移出したことは当事者間に争いがない。
二 そこで、原告の中古ぱちんこ機に対する加工行為が、物品税法三条二項の課税
物品の「製造」に該当するか否かを検討する。
(一) 証人Aの証言により真正に成立したものと認められる乙第二ないし第四号
証、乙第五号証の一、乙第六号証、成立に争いのない乙第五号証の二ないし一一、
乙第九号証その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから
真正な文書と推定すべき乙第一二号証の二ないし四、証人Bの証言により原告が移
出したぱちんこ機と同種のものであると認められる検甲第一号証、証人A及び同B
(但し一部)の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、前記期間中ぱちんこ
店株式会社ローズ(以下ローズという)から、専属的に、二、三か月に一度の割合
で、同店が営業の用に供しているぱちんこ機のうち、その約半数にあたる二〇〇台
ないし二三〇台程度のぱちんこ機を無料で引き取り、これを解体して後記加工を施
したうえ、再び組立ててローズに移出していたこと、右ぱちんこ機の構造は大ぎく
分けて、外枠、内枠、表側台板(表ベニヤともいう)、裏側台板(裏ベニヤともい
う)の四つの基本的部分に分かれており、外枠は単なる木の枠であるが、内枠には
百皿、下皿、前飾り、ハンドル等の部品が取り付けられ、表側台板には、表面にセ
ル(セルロイド板)が張られ、その上に表釘、風車、役物、チヤツカー等の表部品
が取り付けられ、裏側台板にはタンク、タンクレール、鈴筒等の裏部品が取り付け
られていること、ローズが営業の用に供しているぱちんこ機は、大同式等の通常の
ぱちんこ機においては一枚の内側台板の裏表に各装着されている部品を、裏側台板
と表側台板の二枚にそれぞれ装着させて組合せ一体としたものであり、ぱちんこ機
としての機能面では裏部品を装着した裏側台板が一応一番重要な部分といえるが、
商品価値ないし使用価値の面では、表部品を装着した表側台板が最重要部分を構成
していること、原告が中古ぱちんこ機に対して施す加工の大要は、ローズから同店
が営業の用に供していた中古ぱちんこ機を引き取ると、まず前記四つの部分に解体
し、外枠は洗浄するのみであるが内枠は、装着部品をすべて取りはずして、使用可
能なものは洗浄ないし研磨して各部品ごとに整理保管し、表側台板については、役
物、チヤツカー等のうち再使用可能なものを一部取りはずして部品の種類別に保管
していた後は、装着された古い表釘、レール等の表部品は廃棄し一旦外枠、内枠、
裏側台板をそれぞれ別々に積上げ整理していたこと、次に組立の順序としては、表
側台板については常に別途業者から購入した新品を用いることとし、これに表セル
を貼り、表セルにゲージ機で釘六等の印をつけ、表釘、レール、風車等は別途購入
した新しい部品を用い、その他の表部品は保管しておいた中古部品を用いるのを原
則として不足分は新品をもつて補充し、次に内枠については古い内枠に洗浄ないし
研磨して保管中の部品を適宜とり出して装置し、裏側台板については、裏部品のう
ち不良なものを新品と取り替えたうえ、再び四つの部分を組み合わせて一個のぱち
んこ機を完成させていたが、表側台板、内枠に装置される中古部品は必らずしも元
同一の表側台板、内枠に装着させていたものではなく、またすべて中古品を用いて
いた内枠、外枠、裏側台板も必らずしも元通り組合せたものではなく、適宜装着な
いし組合わされていたこと、なお原告は、ローズから、同店が営業の用に供してい
るものとは型式の異なる大同式等の中古ぱちんこ機の提供をうけ、これに加工を施
すこともあつたが、この場合右ぱちんこ機が一枚の内側台板の裏表に部品を取り付
けたものであつたため、表部品の取り替えのほかに、裏側台板に右大同式等のぱち
んこ機からとつた裏部品を取り付ける作業も行なつていたこと、ローズから引き取
る中古ぱちんこ機は、いわゆる二落ち(再下取品)以下の機械であるため、せいぜ
い三〇〇円ないし五〇〇円程度で取引されるにすぎず、ローズが他から買入れて原
告に提供していた大同式等の中古ぱちんこ機も二、〇〇〇円以下程度のものであつ
たが、右の如き加工を施した結果五〇〇〇円ないし七〇〇〇円の価格でローズに移
出され、同店において、新台と遜色のないぱちんこ機として営業の用に供されてい
たこと、以上の事実が認められ、証人Bの証言中右認定に反する部分は措信でき
ず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
(二) ところで、物品税法三条二項にいう課税物品の「製造」とは、一般に材料
または原料に物理的、化学的な変化を与え、若しくは操作を加えて新たな課税物品
を造り出す行為をいうものと解されるが、本件の如く中古ぱちんこ機に加工を施す
ような場合にあつては、素材となつた中古ぱちんこ機が、加工行為によりその一体
性を失うに至つたか否かという物理的要因とともに、それにより別個の新たな価値
物を創造したといえる程度に著しい価値の増加があつたか否かという経済的要因を
も総合勘案し、社会通念に従つて判断するのが相当である。
そこでこれを原告の本件加工行為についてみるに、前記認定事実によれば、右加工
行為は、加工の対象物である中古ぱちんこ機を、まず四つの基本的部分(ローズの
営業の用に供されている以外の型式のものでは三つの部分)に解体し、さらに表部
品及び内枠に装着された部品はいずれも取りはずして各個の部品に還元するなど、
いわばぱちんこ機としての一体性を一旦喪失せしめたうえ、表側台板は常に新しい
ものを用い、その他の部品については再使用可能な中古部品を取捨選択して寄せ集
め、これに新しい部品を補充し、これらを組み合わせてぱちんこ機を作り出すもの
であり、とりわけ、ぱちんこ機の遊戯具としての商品価値ないし使用価値の面で最
重要部分といえる表側台板部分を、ほぼ全面的に新品と取り替える点を考えれば、
加工前後のぱちんこ機は、もはや物理的同一性を有しないことは明らかである。そ
して加工行為により、中古ぱちんこ機はその価値を著しく増大させ、新品のぱちん
こ機と遜色がないものとしてローズの営業の用に供されていることも併せ勘案すれ
ば、原告の中古ぱちんこ機に対する加工行為は、社会通念上既存の価値の修復の限
度を越えて、別個の新たな価値物を創造するものというべきであり、したがつて、
物品税法上の「製造」に該当すると認めるのが相当である。本件加工行為がぱちん
こ機の「修理」に該当するとの原告の主張に沿う甲第一号証(鑑定書)記載の見解
は採用し難い。
なお検甲第一号証(ぱちんこ機)には、外枠、内枠、裏側台板にそれぞれ同一番号
が付されていることが認められるところ、証人Bはこの点に関して、原告は、解体
前の中古ぱちんこ機の外枠等の各部分には検甲第一号証と同様に同一の番号を付
し、これにより再び組み立てるにあたつては必ず解体前と同じ部分同士を組み合わ
せていた旨及びこのようにしなければ、各部分を正確に組み合わせることができな
い旨証言し、乙第一二号証の一にも同旨の記載があるが、これらの証言ないし記載
は、前掲乙第一二号証の二ないし四に対比し、にわかに措信し難い。
三 しかして、原告のぱちんこ機に対する加工行為が製造にあたるとした場合、そ
れに対する物品税及び無申告加算税の算定根拠が別表(二)記載のとおりであるこ
とは当事者間に争いがないから、主文掲記の各年月分の物品税額及び無申告加算税
額は本件処分のとおりに算定されることとなる。
四 以上の説示によると、被告が原告に対してなした本件処分はいずれも適法であ
るということができるから、原告の本訴請求はいずれも理由がないものとしてこれ
を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九
条を適用して主文のとおり判決する。
別表(一)、(二)(省略)

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