弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を、いずれも、棄却する。
     被告人両名に対し、当審における未決勾留日数中各九十日を本刑に算入
する。
         理    由
 被告人両名の弁護人大池龍夫の控訴趣意は、本件記録編綴の同弁護人の各控訴趣
意書の通りであるから、いずれも、これを引用する。
 被告人両名に対する同弁護人の各控訴趣意第一点について。
 <要旨>外国人登録令は、外国人の入国に関する措置を適切に実施し、且つ外国人
に対する諸般の取扱の適正を期する目的を以て、在日外国人を調査するため
に、これに登録義務を課したもので、その目的及び精神に徴すれば、同令第四条等
の所謂申請期間は、その目的を達成するために、一定期間を限つて登録申請を促進
すると云う政策的な期間であると認むべきもので、従つて、その期間内は勿論、期
間経過後においても、その登録の申請を免除し又は登録の申請をなすことができな
い旨を定めた規定、或は斯く解すべき論拠もない(又右登録申請を不能ならしむべ
き法務府其他の官公庁の行政上の措置がなされたこともない)以上は、引続き登録
申請の義務があるものというべきであり、只所定の期間内に登録を申請した場合に
おいては、作為義務違反はないものとして、犯罪の成立を否定する所謂免責期間で
あると解するのが相当である。従つて所定期間経過後においても、登録申請不作為
の状態が継続する限りは、義務違反の犯罪状態が継続するものというべきである。
本件において、被告人両名は、朝鮮に本籍を有する外国人で、昭和二十二年五月二
日勅令第二百七号外国人登録令(以下旧令と称する。)施行の際現に本邦に在留し
ていた著であるから、右勅令施行の日から三十日以内に、所定の登録の申請をしな
ければならないことは、右勅令附則第二項第三項によつて明らかである。然るとこ
ろ、右勅令は、昭和二十四年十二月三日政令第三百八十一号(以下新令と称す
る。)により改正され、昭和二十五年一月十六日から施行されたものである。被告
人両名は、原判示の如く、旧令所定の期間内に登録の申請をなさず、その後引き続
き昭和二十五年九月下旬頃まで右手続を怠つていたものであるから、旧令から新令
に跨つて、その義務違反が継続していたもので、斯の如き場合には、旧令と新令と
の間に刑の変更があつて、新令の刑が旧令の刑より重く定められているとしても、
重い新令のみを適用すれば足りるものと解すべきである。原判決が、原判示認定の
事実に対して、昭和二十二年勅令第二百七号外国人登録令附則第二項第三項第四条
第十三条第一号等を適用したのは、右の趣旨に従つて法令の適用をなしたもので、
右第十三条第一号というのは、新令第十三条第一号であることが明らかであるか
ら、原判決の法令の適用には誤がない。論旨は理由がない。
 被告人両名に対する同弁護人の各控訴趣意第二点について。
 論旨は、いずれも、原判決の刑の量定が不当であるというにあるが、記録を精査
し、弁護人主張の各種事情を考慮するも、原審の刑の量定は不当ではないので、論
旨も採用できない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に則り、本件各控訴を、いずれも棄却し、刑
法第二十一条により、被告人両名の当審における未決勾留日数中各九十日を本刑に
算入することとし、主文の通り判決する。
 (裁判長判事 高城運七 判事 高橋嘉平 判事 赤間鎮雄)

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