弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を旭川地方裁判所に差戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人中島一郎及び被告人提出の控訴趣意書記載のとおりであ
るから、ここにこれを引用する。
 所論は控訴趣意第一点において、原審における訴訟手続の法令違反を主張し、被
告人は同人に対する傷害暴行被告事件において私選弁護人としてAを選任し、又同
人に対する殺人及び強姦致傷被告事件において私選弁護人としてBを選任したとこ
ろ、右両被告事件は併合決定により旭川地方裁判所で併合審判されたのであるが、
同裁判所は右私選弁護人Aの存在を無視して、弁護人Bのみの立会の下に右両事件
を審理判決し、右併合決定以後右判決に至る迄、右弁護人Aに右公判立会の機会を
与えなかつたのは、まことに遺憾であつて、弁護権を不法に制限したものであると
主張し、控訴趣意第二点において原判決の事実の誤認を主張し、原判示第一乃至第
三の傷害暴行は被告人の心神喪失中の所為であり、原判示第四は強姦の犯意のない
単純な傷害行為であり、原判示第五は傷害致死にすぎないと主張し、控訴趣意第三
点において原判決の量刑不当を主張する。
 よつて本件記録を調査すると、被告人に対する傷害暴行被告事件につき昭和二八
年四月二五日盛岡地方裁判所に公訴の提起があり、私選弁護人としてAが選任せら
れ、(同年六月一九日保釈許可決定)右事件の公判審理中のところ、其の後右被告
人に対する殺人及び強姦致傷被告事件の公訴が旭川地方裁判所に提起せられ、私選
弁護人として弁護士Bが選任せられ、右両事件は併合決定により本件原裁判所たる
旭川地方裁判所で併合審判されたことは明かである。さて私選弁護人の選任は原則
として個々の事件についてすべき厳格な要式行為であつて、一の事件についてした
弁護人選任の効力が当然同一被告人の他の事件に及ぶことはない。ただ弁護人を選
任した後、同一裁判所に追起訴があつて併合審判される場合は、刑事訴訟規則第一
八条の<要旨>二の特別規定によつて、その選任の効力が追起訴事件にも及ぶのであ
る。従つて相異なる裁判所に夫々別個に公訴の提起があつて別個に審判され
る場合は同条の適用がない。然しこの場合でも、其の後右両事件につき併合決定が
あつたときは、該決定発効のときにおいて右決定後併合審判すべき裁判所に対し併
合審判さるべき事件につき追起訴があつたと同様の取扱をなすべき法意と解するを
相当とする。蓋し右特別規定が、主として被告人の利益と併合審判手続の円滑な進
行を計るために通常の場合における被告人の意思を推測して規定されたものである
ことは同条の規定自体からも容易に推知し得るところであつて、この立法の趣旨に
鑑み、右の如く解するを相当とするからである。されば被告人において右特別規定
の適用を阻む旨の申述を積極的にしない限り右併合審判裁判所に従来係属する事件
につき選任された弁護人はこれに併合さるべき事件についても併合決定の発効のと
きにおいて弁護権を取得するのであるが、しかしかく解しても、このことにより併
合された他の事件についてすでに他の弁護人が選任されている場合にはその弁護人
の弁護権が当然に消滅するとなすべきいわれは毫もない。これを本件について考え
てみると、弁護人Aについては併合決定の前後に亘り同弁護人において辞任し又は
被告人においてこれを解任した形跡がなくかつ被告人において刑事訴訟規則第一八
条の二の適用を阻む旨の積極的申述をした形跡も認められないから、右併合事件に
はB及びAの二名の弁護人のあることは明らかであつて、かかる場合に原裁判所は
当然刑事訴訟法第三三条同規則第一九条乃至第二一条に従い主任弁護人を定めなけ
ればならないことは勿論である。然るに本件記録を精査しても原審において主任弁
護人指定の手続か行われた形跡が全くない。のみならず原裁判所は弁護人Aの存在
を全く無視し、同人には終始公判期日の通知をしないで右公判立会の機会を与え
ず、ただ弁護人Bのみの立会の下に右両事件を併合審理して原判決を言渡したこと
は本件記録上明らかである。かくの如く二名の弁護人がある場合に、併合決定以後
その内一名の弁護人が終始右公判審理に立会したとしても、刑事訴訟法及び同規則
に定めた主任弁護人指定の手続をしないのみならず、他の一名の弁護人に対して右
併合審理の頭初から公判期日の通知をしないで、同弁護人に右公判立会の機会を全
く与えないことは、被告人の弁護権を不法に制限したもので刑事訴訟法第三三条及
び同法第二七三条第三項に違反し、判決に影響を及ぼすこと明らかな訴訟手続の法
令違反があるものといわなければならない。従つて原判決は破棄を免れない。論旨
は理由がある。
 よつて事実誤認及び量刑不当に関する控訴趣意に対する判断を省略して、刑事訴
訟法第三九七条第一項、第三七九条により原判決を破棄し、更に本件につき前記手
続を明確にして審理判決する要あるものと認め、同法第四〇〇条本文により本件を
原裁判所たる旭川地方裁判所に差戻すこことし、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 豊川博雅 裁判官 羽生田利朝 裁判官 中村義正)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛