弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を次のとおり変更する。
     一 被上告人から上告人に対する前橋地方法務局所属公証人D作成昭和
四四年第九三七号債務承認及び弁済契約公正証書の執行力ある正本に基づき原判決
別紙物件目録記載の物件についてした強制執行は、金九万五五〇五円及びこれに対
する昭和四四年五月一日から右支払ずみまで年六分の割合による金員をこえる部分
についてこれを許さない。
     二 上告人のその余の請求を棄却する。
     訴訟の総費用はこれを五分し、その一を上告人の、その余を被上告人の
負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由について
 原審が適法に確定した事実関係によれば、昭和四二年一二月一一日、上告人は被
上告人から自動車一台を代金完済まで所有権を被上告人に留保する約で買い受け、
その代金支払に充てるため、被上告人の連帯保証のもとに、訴外株式会社E銀行か
ら割賦払の約で金員を借り受けたが、右賦払金の一部を支払つたのみで残額の支払
を遅滞したために期限の利益を喪失し、これを代位弁済した被上告人に対し、残額
を一時に支払うべき求償債務を負担したが、昭和四三年一〇月七日被上告人との間
で、右求償債務残額三四万円を再度割賦払によつて被上告人に対し弁済し、その支
払を一度でも遅滞したときは期限の利益を失い、そのときの残額全部を日歩九銭の
割合による遅延損害金を附して支払うことを約し、割賦弁済を始めたところ、上告
人は、昭和四四年三月七日を弁済期日とする賦払金の支払を遅滞して期限の利益を
喪失し、そのころ被上告人によつて右自動車の留保所有権を行使され、同自動車を
被上告人に取り戻され、被上告人に対し、そのときの債務残額から右取り戻された
自動車の価格を控除した残元金九万五五〇五円及びこれに対する右賦払金の支払遅
滞後の昭和四四年五月一日から支払ずみまでの遅延損害金を一時は支払うべき義務
を負担するに至つた、というのである。原審は、右事実関係のもとにおいて、上告
人が被上告人に対し右求償債務残元金九万五五〇五円に附加して支払うべき遅延損
害金の額については、約定の日歩九銭の割合により算定すべきものと解したのであ
る。しかし、本件のごときいわゆるローン提携販売において、商品の買主が売主に
対し負担する求償債務は、その実質において割賦販売代金債務と異なるものではな
いから、買主の右求償債務不履行の結果売主によつて留保所有権が行使され、商品
が売主に取り戻され、買主が売主に対し求償債務の残額から右取り戻された商品の
価格を控除した額の金員を一時に支払うべきこととなつた場合においては、商品の
割賦販売契約が代金債務不履行により解除された場合と同視し、右金員に附加して
支払うべき遅延損害金の額については、割賦販売法六条が類推適用され、商事法定
利率である年六分の割合に制限されるものと解するのが相当である。これと異なる
見解のもとに、上告人の本訴請求中、前記九万五五〇五円に対する昭和四四年五月
一日から支払ずみまで年六分の割合による金員をこえ日歩九銭の割合による金員に
達するまでの部分の強制執行の排除を求める請求部分を排斥した原審の判断には、
法令の解釈適用を誤つた違法があり、右違法は原判決中右部分についての結論に影
響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこれを主文第一項一、二のとおり変
更すべきものである。
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九二条
に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    団   藤   重   光

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