弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人花岡敬明の上告理由について
 一 本件について原審が認定した事実関係は、およそ次のとおりである。
 1 D(明治二七年三月一〇日生)は、大正八年二月一二日E(明治三三年七月
二四日生)と婚姻したが、Eとの間には実子はなく、Fとの間に出生した被上告人
B1がただ一人の実子であつたが、同被上告人とは同居していなかつた。
 2 D夫婦は、昭和七年九月二八日Dの実弟Gと養子縁組したが、同人の妻とE
との折合いが悪く十数年後に別居し、また、昭和三五年六月二五日修作の子の被上
告人B2と養子縁組したが、やはり同人の妻とEとの折合いが悪く数年後に別居し
た。その後D夫婦は、昭和四八年三月ころ実子である被上告人B1と同居したが、
同人の妻とEとの折合いが悪く同年一〇月ころ別居した。
 3 ところで、その後Eが脳溢血で入院するということもあつたので、D夫婦は、
終生老後の世話を託すべく、今度は妻Eの実家筋のH家から上告人らを養子として
迎えることを希望した。これに対し、上告人らは当初難色を示したが、Dから「実
子の被上告人B1には居住する家屋敷だけやれば十分であるから、もし上告人らが
養子となりD夫婦を今後扶養してくれるならば、他の不動産を全部遺贈してもよい」
との趣旨の申出を受けたので、これを承諾し、昭和四八年一二月二二日D夫婦と養
子縁組したうえ、同夫婦と同居し共同生活を営みつつその扶養をしていた。
 4 そして、Dは、前記の約旨にしたがい、同月二八日公正証書により、その所
有する現金、預貯金全部を妻のEに遺贈し、不動産のうち市川市ab丁目)c番宅
地三六・一三平方メートルを被上告人B1に遺贈するが、その余の不動産全部を上
告人両名に持分各二分の一として遺贈する旨の本件遺言をした。
 5 ところが、昭和四九年一〇月、上告人A及び実兄の訴外Iが経営していたJ
株式会社が倒産したが、そのことにより上告人A及び訴外IがDに無断でD所有の
不動産について右会社のK信用金庫に対する四億円の債務担保のため根抵当権設定
等の登記をしていることが発覚した。そして、Dがこのことを知つて激怒したため、
上告人A及び訴外Iは、六か月以内に右根抵当権設定登記等を抹消し、かつ、Dか
ら右会社が借用していた一五〇〇万円を返還することを約し、その旨の念書をDに
差し入れたが、右約束を履行するに至らなかつた。
 6 そこで、D夫婦は、上告人らに対し不信の念を深くして、上告人らに対し養
子縁組を解消したい旨申し入れたところ、上告人らもこれを承諾したので、昭和五
〇年八月二六日D夫婦と上告人らとの間で協議離縁が成立し、上告人らはD夫婦と
別居した。
 7 上告人らは、別居後D夫婦を扶養せず、被上告人B1夫婦がD夫婦の身の廻
りの世話をしていたが、Dは、昭和五二年一月八日死亡し、Eも同年二月一日死亡
した。
  以上の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、すべて正当として是認するこ
とができ、その過程に所論の違法はない。
 二 ところで、民法一〇二三条一項は、前の遺言と後の遺言と抵触するときは、
その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす旨定
め、同条二項は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれ
を準用する旨定めているが、その法意は、遺言者がした生前処分に表示された遺言
者の最終意思を重んずるにあることはいうまでもないから、同条二項にいう抵触と
は、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不
能となるような場合にのみにとどまらず、諸般の事情より観察して後の生前処分が
前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含す
るものと解するのが相当である。そして、原審の適法に確定した前記一の事実関係
によれば、Dは、上告人らから終生扶養を受けることを前提として上告人らと養子
縁組したうえその所有する不動産の大半を上告人らに遺贈する旨の本件遺言をした
が、その後上告人らに対し不信の念を深くして上告人らとの間で協議離縁し、法律
上も事実上も上告人らから扶養を受けないことにしたというのであるから、右協議
離縁は前に本件遺言によりされた遺贈と両立せしめない趣旨のもとにされたものと
いうべきであり、したがつて、本件遺贈は後の協議離縁と抵触するものとして前示
民法の規定により取り消されたものとみなさざるをえない筋合いである。右と同旨
の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論
旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、
又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、いずれも採用すること
ができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    宮   崎   梧   一

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