弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     一 原判決を次のとおり変更する。
     1 被控訴人の控訴人に対する昭和六一年一〇月一五日付け昭和六〇年
度知事交際費現金出納簿の非開示決定のうち、本判決添付別表記載の「相手方が法
人その他の団体」欄の二一九件及び「相手方が個人」欄中の「識別されないもの」
欄の三三件合計二五二件に関する情報が記録されている同出納簿中の部分について
これを非開示とした部分を取り消す。
     2 控訴人のその余の請求(右決定のうち、右別表記載の「相手方が個
人」欄中の「識別されるもの」欄の一七〇件に関する情報が記録されている右出納
簿中の部分についてこれを非開示とした部分を取り消すべき旨の請求)を棄却す
る。
     二 訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを二分し、その一を被控訴人
の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
         事    実
 第一 当事者の求めた裁判
 一 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人の控訴人に対する昭和六一年一〇月一五日付け昭和六〇年度知事交
際費現金出納簿(別表記載の「封筒代、葉書代等」欄の雑費一四件を除く四二二件
に関する部分)の非開示決定を取り消す(当審で請求を減縮し、右一四件に関する
部分についての訴えを取り下げた。)。
 3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
 二 控訴の趣旨に対する答弁
 控訴棄却(訴えの一部取下げに同意した。)
 第二 当事者の主張
 一 請求原因
 原判決二枚目表六行目から同三枚目裏四行目までを引用する(ただし、同二枚目
裏一行目の「六〇」を「六一」に改める。)。
 そこで、本件処分(別表記載の「封筒代、葉書代等」欄記載の雑費一四件を除く
四二二件に関する部分)は違法であるから、その全部の取消しを求める。
 仮に、本件処分の右全部の取消しが認められないとすれば、本件文書記載の情報
の「1」年月日、「2」支出項目、「3」金額(Ⅰ項目ごと、Ⅱ個別)、「4」相
手方(Ⅰ項目ごと、Ⅱ個別)の内、1、「1」ないし「4」Ⅰ、2、「1」ないし
「3」Ⅱ、3、「1」ないし「3」Ⅰ、4、「1」「2」、の順序で部分取消しを
求める。
 二 請求原因に対する認否
 認める。
 三 抗弁
 原判決四枚目表一行目から同一八枚目表一行目までを引用する。ただし、次のと
おり訂正する。
 1 原判決六枚目表一行目の次に、次を加える。
 「4 本件文書の内容の詳細は次のとおりである。
 本件文書に記載された知事交際費の内訳及び摘要欄の支出項目の種別は、別表記
載のとおりである(「相手方が個人」欄と「相手方が法人その他の団体」欄の区別
は、当該交際の相手方が個人であるか法人その他の団体であるかによって区分した
ものであり、「相手方が個人」欄中の「識別されるもの」欄には、本件文書の摘要
欄の記載から右交際の相手方である特定の個人が識別され、又は識別され得るもの
を記載し、「識別されないもの」欄には、右が識別されないものを記載してあ
る。)。また、事業を営む個人に対してその事業に関して交際費を支出した例はな
いので、これに関する情報は、「相手方が個人」欄には記載されていない。各支出
項目の内容は、次のとおりである。
 (一) 祝儀は、知事が各種の式典、祝賀会、大会、会合等に招待され、あるい
は各種スポーツ大会等に参加する選手団等から出陣のあいさつを受けた際、祝賀、
協賛、激励等の趣旨で、金銭又は生花を贈ったものである。
 (二) 慶弔のうち、「香料」、「供物」及び「生花」は、知事が、関係者の弔
事に際し、喪主等に対する弔意の趣旨で金銭、供物又は生花を贈ったものであり、
「御見舞」は、関係者の病気、事故等に対する見舞いの趣旨で金銭または品物を贈
ったものである。
 (三) 懇談経費の「接伴」は、知事が、関係者との間で御礼や信頼、友好等の
関係を深める趣旨で懇談等を行った際、会食等の費用を支出したものである。
 (四) 広告、賛助金等のうち、「広告」は、知事が新聞事業者等との信頼、友
好等の関係を維持する等の趣旨で当該事業者等の発行する新聞等に登載する儀礼的
な広告(知事の新年のあいさつ文等)の広告料を支出したもの、「賛助」は、公共
的な活動を行っている民間団体から訪問、協力の要請等があった際、当該活動に賛
同する趣旨で儀礼的に寄付を行ったものである。
 (五) せん別等の「餞別」は、知事が、関係者の転勤、海外渡航等に際し、そ
れまでの協力等に対し謝意を表し、更に今後の信頼、友好等の関係の維持を願う趣
旨で儀礼的に金銭を贈ったものである。
 (六) 贈答品、みやげ等の「雑費」は、知事が関係者が来訪した際、信頼、友
好等の関係を深める等の趣旨でみやげ等を贈ったもの、又は関係者のこれまでの協
力等に対し謝意を表し、更に今後の信頼、友好等の関係の維持を願う趣旨で記念品
等を贈ったものである。」
 2 同一二枚目裏一〇行目の末尾に「(一九件)」を加える。
 3 同一四枚目表四行目の「情報」の次に、「(具体的には、別表記載の「相手
方が個人」欄中の「識別されるもの」欄の一七〇件に関するもの)」を加える。
 4 同一四枚目裏一一行目の「情報」の次に、「(具体的には、別表記載の「相
手方が法人その他の団体」欄かつ「広告」欄の二九件のうち、広告料が新聞事業者
等の事業収入としての性格を有することが明らかであるものが二六件あり、これら
に関するもの)」を加える。
 5 同一七枚目表八行目から同裏一〇行目までを削除する。
 四 抗弁に対する認否
 否認する。
 なお、原判決一八枚目表五行目から同二七枚目表九行目の「る。」までを引用す
る(ただし、原判決二二枚目表三行目の「八」を「六」に改める。)。
 第三 証拠(省略)
         理    由
 一 請求原因について。
 当事者間に争いがない。
 二 抗弁について。
 1 本件条例における公文書開示請求権について。
 <要旨第一>本件文書の開示請求権は、憲法二一条の規定に基づいて直接的に発生
するものではなく、栃木県公文書の開示について定めた本件条例、殊に
第一条及び第五条によってはじめて認められたものである。そして、本件条例は、
条例の解釈基準を示すものとして、条例自体の中に特に一ケ条(第三条)を設けた
が、その第三条の前段は、「実施機関は、県民の公文書の開示を求める権利が十分
に保障されるようこの条例を解釈し、運用するものとする。」と規定し、公文書の
「原則公開」の基本理念を示した(乙第七号証中の第三条の解釈参照)。
 しかし、同時に、本件条例は、その第六条前文において、「実施機関は、次の各
号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の開示を
しないことができる。」と規定して、一号ないし七号にわたって右請求権の適用除
外の事由を定めており、また、前記第三条の後段は、「この場合において、実施機
関は、個人の秘密その他の通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに
公開されることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」と規定し、「個
人のプライバシーの保護」という基本的人権の尊重を強調している(前掲乙号証参
照)。
 したがって、控訴人の請求が認められるか否かは、法文解釈の一般原則と本件条
例の解釈基準を示した右第三条の趣旨に従って、右第六条各号の法文を解釈し、運
用することによって判断するべきであり、かつそれで十分というべきである。
 2 本件文書の内容等について。
 成立に争いのない乙第一四、一七、四九、五〇号証、証人Aの証言及び弁論の全
趣旨によれば、本件文書の内容等について、被控訴人主張の事実が認められる。そ
の内容は、原判決四枚目表二行目から同六枚目表一行目まで及び前示事実欄第二の
三1摘示の原判決に付加した部分のとおりである。
 右のように、本件文書に記載されている交際事務に関する情報は合計四二二件で
あり、これを支出の項目別に分類すると、祝儀一六一件、慶弔一一三件、懇談経費
一九件、広告、賛助金等六五件、せん別等二一件、贈答品、みやげ等四三件に六大
別され、支出の相手方別に分類すると、相手方が個人で識別されるもの一七〇件と
それ以外のもの二五二件(相手方が法人その他の団体のもの二一九件及び相手方が
個人で識別されないもの三三件)に二大別される。なお、本件文書には、右の外、
特定の交際事務と関係のない封筒代、葉書代等の一四件も記載されているが、これ
は実質的には交際事務に関する情報とみることはできない全くの雑費であり、当審
において乙第四九号証により実際上開示された。
 <要旨第二>3 本件条例第六条五号該当性について。
 (一) 本件条例第六条五号は、「県の機関又は国等の機関が行う検査、監査、
取締り、争訟、交渉、入札、試験その他の事務に関する情報であって、当該事務の
性質上、公開することにより、当該事務若しくは同種の事務の実施の目的が失わ
れ、又はこれらの事務の公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれのある
もの」が記録されている公文書については、開示をしないことができる旨定めてい
る。
 法文解釈の一般原則及び前示の本件条例第三条前段の定める「原則公開」の基本
理念に従って、本号の要件を分析すると、本号は前段要件と後段要件に分かれてお
り、前者において、県の機関が行うすべての事務の中から特定の事務を挙げて第一
段の絞りをかけ、更に、後者において、一定の要件を定めることによって第二段の
絞りをかけ、前段要件に該当する特定の事務であっても、その全部ではなく後段要
件に該当するその一部のみを開示しないことができるとしていることが明らかであ
る。この点は、被控訴人自身の作成にかかる「情報公開事務の手引き(Ⅰ)〔条例
の解釈・運用基準〕」(乙第七号証)の強調するところでもある。
 そして、被控訴人が控訴人等の請求権者からの公文書開示請求に対して本号該当
を理由として非開示決定をし、請求権者から本号非該当を理由としてその取消しを
求める訴訟が提起された場合は、被控訴人において、問題となっている情報が本号
の前段要件及び後段要件のいずれにも該当することを主張し、かつ、立証する責任
を負うべきであることは、法文上、当然である。
 (二) そこで、まず、本件のような「交際」に関する事務が右の前段要件に該
当するかどうかについて検討する。
 交際事務が本号の法文の挙げる「検査」以下の各種の事務に該当しないことはい
うまでもない。そうすると、控訴人の主張するように、交際事務は、開示をしない
ことができる事務に該当しないのではないかと解する余地もないではない。しか
し、立法者は、本号に挙示した事務のほかに、「その他の事務」も開示をしないこ
とができる事務に入ると規定している。そこで、交際事務がこの「その他の事務」
に当たるかどうかが問題となる。右の「その他の事務」とは、法文の構造上、同条
に挙示された前示の諸事務と類似の事務をいうものと解すべきである。そこで、前
示の「祝儀」以下の各行為を検討すると、これら各種の交際行為は、いずれも本号
の「交渉」に関する事務に類似し、広義においてはこれと同種の事務であるとみる
ことができる。したがって、右「祝儀」以下の交際事務は、本件条例第六条五号前
段にいう「その他の事務」に該当するというべきである。
 そして、本件文書が、前記四二二件の交際事務に関する情報を記載していること
は当事者間に争いがない。
 (三) 被控訴人は、右四二二件全件の交際事務に関する情報は、その全部が本
号の後段要件に該当すると主張し、その理由として、前記のように、右の情報を公
開すると、相手方その他の関係者に、不快、困惑、不信等の念を抱かせることにな
り、あるいは知事の裁量権が侵害されて、そのため、当該交際事務の実施の目的が
失われる等の結果を招くことになることを挙げている。
 しかし、経験則上、右のような情報の公開は、必ずしも相手方等の関係者に不快
等の感情を生じさせることになるとは限らない。場合によっては、むしろ反対に、
知事との交際が公表されたことを名誉に思う者もあるであろう。また、たとえ不快
等の感情を生じさせた場合でも、その程度は、交際事務の実施の目的を失わせる等
の結果を招くほどに強度のものではないことも多い筈である。例えば、本件文書中
の最初の支出項目である祝儀項目中の「御祝」は、被控訴人の主張によれば、スポ
ーツ大会や祝賀会に激励等の趣旨で金銭又は生花を贈ったものであるが、このこと
が公表されたとしても、通常の場合に、相手方等が不快感を抱き実施の目的が失わ
れる等の結果に至るものとは考え難い、というべきである。
 確かに、ある場合には、右のような不快等の感情の程度が強く、そのため実施の
目的が失われる等の結果を生ずることもあるであろう。しかし、そのような場合で
あることは、一般的抽象的にそういう可能性があるという主張のみから推認するこ
とはできず、交際事務の案件のそれぞれについて、個別的具体的に証拠によって証
明されなければならない。そして、立証の結果、ある特定の情報について後段要件
に該当することが証明されれば、その情報は非公開相当であって、その非開示決定
は適法であり、この点が証明されなければ、公開相当であって、非開示決定は違法
であるということになる訳である。 そして、被控訴人がこの後段要件の主張立証
責任を負うことは前示のとおりであるにもかかわらず、本件において、被控訴人
は、右の四二二件のいずれについても、抽象的に不快感等を生じさせるおそれがあ
るから、実施の目的が失われる等の結果を招くと主張するにとどまり、具体的に不
快感等の程度やそれによる右の結果を招くことの蓋然性については、何らの立証を
しない。確かに、証人Aは、抽象的に被控訴人の主張と同旨の供述をしているが、
これをもって本号の後段要件の具体的な証明がなされたとみることは到底できな
い。また、一般的に、公開の法廷で非公開事由の立証をすることは相当に困難であ
り、相応の工夫を要するであろう。しかし、それだからといって、見るべき工夫を
せず、具体的な立証をしなくてもよいということにはならないことはいうまでもな
い(以上の理は、被控訴人の主張する知事の裁量権の侵害その他の理由についても
等しく当てはまるものであり、いかなる主張も証拠に代わることはできないのであ
る。)。
 付言するに、もし、被控訴人の主張するように、交際事務に関する情報の全部が
当然に本号の後段要件に該当するとの考えが正当であるとすれば、非公開か公開か
を選別するための特別な要件としての後段要件をわざわざ設ける必要はない訳であ
り、立法者としては、端的に、交際事務に関する情報は全部非公開とする旨の規定
を設けた筈である。しかし、これは、原則公開の基本理念に反する。そこで、当然
のことながら、そのような特段の規定は設けられていない。そして、前示のよう
に、交際事務に関する情報は、本号の前段要件に該当する情報であると解する以
上、その全部が当然に同号の後段要件に該当するとの考えは採用することができな
い。
 なお、控訴人は、交際事務は、本号の前段要件に該当する情報ではないと主張
し、もし該当するとしても、その全部が同号の後段要件に該当しないと主張する。
この考えは、結論においては、被控訴人のそれと正反対であるが、立論の仕方はこ
れと同様であるから、右に説示したところに照らして、この考えも採用することが
できない。
 したがって、本件処分のうち、前記四二二件に関する情報は本件条例第六条五号
に該当するとして本件文書中の右情報が記録されている部分を非開示とした部分は
違法である。
 4 本件条例第六条二号該当性について。
 (一) 本件条例第六条二号は、「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除
く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関す
る情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該事業を営む個人に不利
益を与えることが明らかであると認められるもの」(同号ただし書イ、ロ及びハに
掲げる情報を除く。)が記録されている公文書については、開示をしないことがで
きる旨定めている。
 (二) 被控訴人は、別表記載の「相手方が法人その他の団体」欄かつ「広告」
欄の二九件のうち二六件に関する情報は本件条例第六条二号にも該当すると主張す
る。
 前掲乙第五〇号証及び弁論の全趣旨によれば、右情報は、本号の前段要件に該当
することを認めることができる。次に、後段要件に該当するかどうかについては、
本件条例第六条五号について前記3で説示したのと同様の理由により、個別的具体
的な立証がなされるべきである。しかし、それがなされていない。したがって、本
件処分のうち、右情報は本件条例第六条二号に該当するとして本件文書中の右情報
が記録されている部分を非開示とした部分は違法である。
 5 本件条例第六条四号該当性について。
 (一) 本件条例第六条四号は、「県の機関又は国等の機関が行う審議、検討、
調査研究等(以下この号において「審議等」という。)に関する情報であって、公
開することにより、当該審議等又は同種の審議等に著しい支障が生ずるおそれのあ
るもの」が記録されている公文書については、開示をしないことができる旨定めて
いる。
 (二) 被控訴人は、別表記載の「懇談経費」欄の一九件に関する情報は本件条
例六条四号にも該当すると主張する。しかし、懇談が審議等に関連してなされたと
しても、これに要した経費に関する情報は、審議等に関する情報ということはでき
ない。したがって、本件処分のうち、右情報は本件条例第六条四号に該当するとし
て本件文書中の右情報が記録されている部分を非開示とした部分は違法である。
 6 本件条例第六条一号該当性について。
 (一) 本件条例第六条一号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事
業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るも
の」(同号ただし書イ、ロ及びハに掲げる情報を除く。)が記録されている公文書
については、開示をしないことができる旨定めている。
 (二) 本件文書の中に、別表記載の個人に関する情報中、「相手方が個人」欄
中の「識別されるもの」欄のもの、すなわち、祝儀(御祝)三九件、慶弔(香料五
〇件、供物二三件、生花三〇件、御見舞六件)一〇九件、懇談経費(接伴)二件、
せん別等(餞別)一七件、贈答品、みやげ等(雑費)三件、合計一七〇件に関する
情報が記録されている部分が存在することは前示認定のとおりである。そして、こ
れらの情報は、明らかに本号に該当するものというべきである。したがって、本件
処分のうち、右情報は本件条例第六条一号に該当するとして本件文書中の右情報が
記録されている部分を非開示とした部分は適法である。
 (三) なお、控訴人は、事業を営む個人との間で当該事業に関して交際がされ
た場合の外、相手方が公務員の場合も右第六条一号の適用から除外するべきであ
り、また、相手方の氏名を抹消すれば、その他の部分は「特定の個人が識別され、
又は識別され得る」情報に該当しないから、右部分については開示すべきであると
主張する。
 しかし、前示のとおり、本件文書中に、事業を営む個人との間で当該事業に関し
て交際がされた場合に該当する事例の記載はないことが認められる。また、相手方
が公務員の場合でも、そのプライバシーは保護されるべきであり、本号の法文中に
公務員を適用除外とする旨の文言の存在しない以上、法文解釈の一般原則に照らし
ても、また、本件条例第三条後段の「個人のプライバシーの保護」の趣旨からみて
も、本号の解釈上、公務員を別異に扱うことはできない。更に、仮に、相手方の氏
名を抹消して、年月日、支出項目、金額等を開示するとすれば、その場合でも、こ
れによって、氏名識別の可能性があることは容易に推察できるところであるから、
そのような部分開示も本号に該当するものというべきである。
 7 本件条例第七条該当性について。
 (一) 本件条例第七条は、「実施機関は、前条に規定する公文書に同条各号の
いずれかに該当する情報(当該情報が記録されていることによりその記録されてい
る公文書について公文書の開示をしないこととされるものに限る。)以外の情報が
記録されている部分が含まれている場合において、当該部分を容易に、かつ、公文
書の開示の請求の趣旨を失わない程度に分離できるときは、同条の規定にかかわら
ず、当該部分については公文書の開示をしなければならない。」と定めている。
 (二) 本件において、本件文書中右の「当該部分」に相当する前記二五二件に
関する情報の部分は、前記の雑費一四件に関する情報の部分を記載した書面である
乙第四九号証に照らすと、容易に、かつ、公文書の開示の趣旨を失わない程度に分
離できるものと認めることができる。
 三 結論
 以上のとおり、被控訴人の控訴人に対する昭和六一年一〇月一五日付け昭和六〇
年度知事交際費現金出納簿の非開示決定のうち、本判決添付別表記載の「相手方が
法人その他の団体」欄の二一九件及び「相手方が個人」欄中の「識別されないも
の」欄の三三件合計二五二件に関する情報が記録されている同出納簿中の部分につ
いてこれを非開示とした部分は、被控訴人が主張する本件条例の定める公文書を非
開示とすべき事由が存在しないのであるから違法であり、したがって、取り消され
るべきである。次に、右決定のうち、右別表記載の「相手方が個人」欄中の「識別
されるもの」欄の一七〇件に関する情報が記録されている右出納簿中の部分につい
てこれを非開示とした部分は、本件条例第六条一号の定める非開示とすべき事由が
存在するのであるから適法であり、したがって、この点の控訴人の請求は棄却され
るべきである。
 よって、行訴法七条、民訴法三八六条、三八四条により原判決を主文一のとおり
変更し、訴訟費用について民訴法九六条、九二条、八九条を適用して主文二のとお
り判決する。
 (裁判長裁判官 武藤春光 裁判官 伊藤博 裁判官 池田亮一)
別 表
<記載内容は末尾1添付>

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛