弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人両名弁護人小野謙三の上告趣意第一点について。
 所論は、農業団体法によれば市町村農業会の会員は強制加入であり、農業会の会
長、副会長、理事若しくは幹事の諸役職員は強制加入せしめられた会員中より選任
されるものであり、同法は更に刑罰をもつてこれら役職員の行為を覊束制限してい
るから、農業団体法六七条は違憲であり、同法を適用した原判決は破棄さるべきで
あると主張する。しかし、農業会の会員の加入が強制であつても、農業会の会長、
理事等は、選任された場合に自己の意思によらず強制的に就任せしめられる関係に
あるのではなく、就任を受諾すると否とは全くその自由意思によつて決定されるも
のである。それ故、本件において農業会の会長、理事等が、農業会の事業の範囲外
における貸付をすることを禁じ、これに刑罰を科することを定めた農業団体法六七
条の規定は、別段違憲と解すべきものではない。されば、農業会の会員の強制加入
を定めている農業団体法の規定が違憲であるかどうかの問題を判断するまでもなく
所論は理由がないものといわなければならぬ。その余の論旨は単なる法令違反の主
張であつて適法な上告理由に当らない。
 同第二点について。
 所論は判例違反をいうが、引用の判例は本件に適切でない。(第一審の認めた罪
数による罰金の合算額は、被告人Aに対しては五万七千円、同Bに対しては五万八
千円となり、第二審の認めた罪数による罰金の合算額は、被告人Aに対しては四万
二千円となり、同Bに対しては五万二千円となるわけである。それ故、原判決は第
一審判決が被告人Aに対し罰金七千五百円、同Bに対し罰金一万五千円を宣告した
のは、何れも第二審の認める正当な罰金合算額の範囲内の刑であるとしたのであつ
て正当である。そして、第一審のこの宣告刑は、その範囲の量刑としては重くはな
いし、また第一審及び第二審の認める合算額の何れに比べても甚だ低いものである
から、原審の指摘する第一審判決の法令違反は、判決の結論に影響を及ぼすことが
明らかではない。それ故この点に関する原判決の判示も正当である。)
 同第三点について。
 所論は、量刑の非難に帰し、適法な上告理由に当らない。
 よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は全裁判官の一致の意見による。
  昭和三〇年三月一六日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克

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