弁護士法人ITJ法律事務所

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主    文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 控訴人と被控訴人間のアメリカ合衆国カリフォルニア州ベンチュラ郡上級
裁判所D236340号養育費請求事件について,1995年9月11日,同裁
判所がなした,被控訴人は,控訴人に対し,未成年の子の養育費として,
子1人につき毎月1000ドル,合計2000ドルを,1995年9月15日から,
毎月1日と15日に半額ずつ支払えとの判決部分につき,控訴人が,被控
訴人に対し,強制執行することを許可する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
 主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 本件は,アメリカ合衆国カリフォルニア州ベンチュラ郡上級裁判所
の‘stipulationandorderonordertoshowcause’(理由開示命令手続におけ
る合意及び命令)に定められた,被控訴人から控訴人への養育費支払条項
につき,控訴人が執行判決を求めている事案である。
2 本件請求を判断するについては,次の各点が問題となる。
(1) 前記‘stipulationandorderonordertoshowcause’(以下「本件合意及
び命令」という。)は,執行判決の対象となるか。すなわち,
ア 執行判決を求めることができるのは,外国裁判所の判決に限られる
か,それ以外の判決と同一の効力を有するものも含まれるか。
イ 執行判決を求めることができるのは,外国裁判所の判決に限られると
して,本件合意及び命令は,同判決に当たるか。
(2) 本件合意及び命令は確定しているか。
(3) 本件合意及び命令は,民事訴訟法118条各号に掲げる要件を具備して
いるか。
 なお,上記(2)は,執行判決を求める者において主張立証すべき事項であ
るが,上記(1)及び(3)は,職権探知事項である。
第3 当裁判所の判断
1 執行判決を求めることができるのは,外国裁判所の判決に限られるか,それ
以外の判決と同一の効力を有するものも含まれるかについて
 民事執行法24条にいう「外国裁判所の判決」及び民事訴訟法118条にい
う「外国裁判所の確定判決」とは,外国における裁判権を行使する権限を有
する機関が,私法上の法律関係について当事者双方の審尋を保証する手続
により終局的に行った裁判で,通常の不服申立の方法では不服申立ができ
ないものをいうものと解されるところ,上記裁判に該当しないが外国裁判所の
判決と同一の効力を有するもの(例えば,内国における和解調書に相当する
外国裁判所の文書等。ただし,外国の仲裁判断を除く。)はこれに当たらない
というべきである。すなわち,民事執行法22条は,同法24条によって執行判
決を得た外国裁判所の判決を債務名義として掲げる(6号)ところ,同法22条
が内国の債務名義として,確定判決と同一の効力を有するもの(7号)を,確
定判決(1号)とは別個に掲げていることからすれば,同条6号に定められた
「外国裁判所の判決」には,同号掲記の外国の仲裁判断のほかには,外国
裁判所の判決と同一の効力を有するものは含まれないものと解すべきであ
る。そして,同法22条が,外国の仲裁判断以外に,外国裁判所の判決と同
一の効力を有するものを債務名義として掲げていないことからすれば,同法
24条により執行判決を求めることができるのは,外国裁判所の判決に限ら
れ,それ以外の同判決と同一の効力を有するにすぎないものはこれに含まれ
ないというべきである。
2 本件合意及び命令は,外国裁判所の判決に当たるかについて
 上記のとおり,執行判決の対象となる外国裁判所の判決とは,形式や名称
は如何にあれ,私法上の法律関係につき,当事者双方の審尋を保証する手
続により,外国の裁判所が終局的にした裁判であるというべきである。
 しかるところ,甲第1号証の1,同第5号証の2,3,5,同第8号証の5の1,
2によれば,本件合意及び命令は,被控訴人が,控訴人を相手方としてカリフ
ォルニア州ベンチュラ郡上級裁判所に申請した理由開示命令手続(相手方
に,申立てを排斥すべき理由を示す機会を与え,これが適時になされなけれ
ば,申立てにかかる命令や処分がなされる手続)において,控訴人と被控訴
人が,第1の1(2)に記載された内容の養育費支払条項を含む訴訟上の合意
をし,その合意を,同裁判所が認定し,裁判所の命令として宣言したものであ
ること,本件合意及び命令は,アメリカ合衆国において,執行力を有すること
が認められる。
 そこで,本件合意及び命令が執行判決の対象となる外国裁判所の判決に
当たるかにつき検討するに,上記認定したところによれば,本件合意及び命
令において,控訴人と被控訴人との間の法律関係の形成は,訴訟上の合意
によってなされ,これに執行力を付与するため,裁判所の命令という形式が
利用されていると見るのが相当であり,本件合意及び命令は,私法上の法律
関係につき,当事者双方の審尋を保証する手続により,外国の裁判所が終
局的にした裁判とは,実質を異にするものというべきである。
 したがって,本件合意及び命令は,執行判決の対象となる外国裁判所の判
決には当たらない。
3 結論
 よって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は理由がな
いから,これを棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないのでこ
れを棄却することとし,控訴費用の負担につき民事訴訟法67条,61条を適
用して,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第2部
裁判長裁判官    大  内  捷  司
裁判官    島  田  周  平
裁判官    川  添  利  賢

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