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判決 平成14年2月14日 神戸地方裁判所 平成13年(わ)第644号 詐欺
被告事件
              主       文
    被告人を懲役1年6か月に処する。
    未決勾留日数のうち180日を刑に算入する。
              理       由
(犯罪事実)
 被告人は,平成11年10月6日に分離前の相被告人Aが運転し,分離前の相被
告人B及び被告人が同乗した普通乗用自動車とCが運転する普通乗用自動車が衝突
した交通事故に関し,前記Cが自動車保険契約を締結していたD保険株式会社から
保険金の名目で金員をだまし取ろうと企て,前記A,分離前の相被告人E,同Fの
各名義の銀行口座へ振込入金された分について,A,E,B,Fと共謀の上,更
に,被告人,Bの各名義の銀行口座へ振込入金された分について,A,Bと共謀の
上,Aが,同年11月下旬ころ,兵庫県明石市G町Ha番地のA方で,Cが自動車
保険金の支払請求をしていた同社関西損害調査部Iサービスセンター係員Jに対
し,真実は前記交通事故によりAに休業損害が発生した事実はないのに,前記交通
事故のため仕事ができず,休業損害が発生した旨申告し,同年10月下旬ころから
平成12年1月初旬ころまでの間,10回にわたり,真実は被告人,B,Fの3名
がAの経営するKに勤務していた事実はなく,かつ,Fが前記交通事故の際A運転
車両に同乗していた事実はないのに,前記交通事故のため,被告人及びFについ
て,同年10月7日から平成12年1月6日までの間,Bについて,同年10月7
日から同年12月28日までの間,それぞれ勤務先のKでの仕事ができず,その間
の給料の支払いが受けられずに休業損害が発生した旨の内容虚偽の休業損害証明書
を作成して,神戸市L区Mb丁目c番d号の前記Iサービスセンター宛に郵送し,
更に,前記Eが,平成12年1月8日ころ,真実はいずれもE接骨院に通院して施
術を受けた事実はないのに,Aについて平成11年10月8日から平成12年1月
6日までの69日間E接骨院に通院し施術費37万2040円相当の施術を受けた
旨,Fについて平成11年10月12日から平成12年1月6日までの67日間E
接骨院に通院して施術費36万880円相当の施術を受けた旨,いずれも虚偽の内
容を記載した各施術証明書・施術費明細書を作成して,前記Iサービスセンター宛
に郵送し,同所長Nらにその旨思い込ませ,その結果,同社係員に,平成11年1
1月9日,同年12月2日,同月28日及び平成12年1月17日の4回にわた
り,同県明石市O町Pe番地のfの株式会社Q銀行O出張所の被告人名義の口座に
休業補償費の名目で合計118万636円を,平成11年12月16日及び平成1
2年1月17日の2回にわたり,同市G町Rg番地のhの株式会社S銀行(現Q銀
行)T支店のA名義の口座に休業補償費等の名目で合計164万5696円を,同
市O町Ui番地jのV信用金庫O支店のF名義の口座に休業補償費等の名目で合計
132万9860円を,平成11年12月16日及び平成12年1月20日の2回
にわたり,前記S銀行T支店のB名義の口座に休業補償費の名目で合計99万41
74円を,平成12年2月3日,同市W町k丁目l番m号のX信用金庫W支店のE
名義の口座に施術費の名目で73万2920円をそれぞれ振込入金させた。
(証拠)
省略
(補足説明)
1 被告人は,E,Fの各保険金詐欺について,E,Fとそれぞれ共謀をしていな
い旨主張する。
2 しかし,まず,被告人とFとの間の共謀について検討すると,前掲証拠,こと
にA,B,Fの各検察官調書及び警察官調書によれば,
 (1) 本件事故当日の平成11年10月6日午後3時ころ,Aは,Fとの間で,F
が,本件事故の際,A運転車両に同乗していなかったが,同乗していたことにし
て,Fも保険金詐欺をすることについて共謀を遂げた。
 (2) そこで,Aは,被告人に対し,電話で,Fが,本件事故の際に同乗していな
かったが,同乗していたことにして,Fも保険金詐欺の仲間に入れてよいか尋ねた
ところ,被告人は,いったんは,発覚するおそれがあると言ったものの,Aが,心
配することはないと言うと,「俺は知らんぞ。」と言って,Fを保険金詐欺の仲間
に入れることについてしぶしぶ了解した。
 (3) 同日午後7時すぎころ,Aら及びCと共にU交番所に行く途中,被告人は,
F,Bが同乗したA運転の乗用車の中で,Aから,「
Y(Fのこと),後ろに乗っとって寝とったことにするから話合わせてな,ごめん
やけど。」と言って,再度Fを保険金詐欺の仲間に入れることを頼まれ,「あ
あ。」と返事してこれを了承した。その際,Fも,被告人に対し,「頼みます。」
と言って保険金詐欺の仲間に入れてくれるように頼んだが,被告人は,これに対し
ても,「ああ。」と言って了解した。
 (4) その後,同車内で,被告人は,Aに対し,「俺,Kでいくから,休損書いて
くれよ。」と言って,Kの従業員ではない被告人を,Kの従業員ということにして
Kの休業損害証明書を書いて欲しい旨頼み,Aは,これを了解した。続いて,B
も,Aに対し,同様に,Kの従業員ではないが,Kの従業員ということにして休業
損害証明書を書いて欲しい旨依頼し,Aは,これを了解した。そして,Aは,被告
人やBに聞こえるように,「Yも書いたるから。」と,Fに対し,同様に,うその
Kの休業損害証明書を書いてやると言った。
 以上の事実が認められる。
  以上の事実は,A,B,Fの3名が一致して供述しているところであって,こ
れらの点について記憶がはっきりしない等と述べている被告人の公判及び 捜査段
階の供述と対比すると,前記のA,B,Fの各検察官調書及び警察官調書は,十分
信用することができる。これに反する被告人の公判及び捜査段階の供述は信用しな
い。
  以上の事実によれば,被告人が,Fの保険金詐欺について,F,Aらと共謀を
遂げていたことは明らかである。
3 次に,被告人とEとの間の共謀について検討する。
  前掲証拠によると,被告人とEとの間には,被告人とAとの間,AとEとの間
の共謀,及び,前記2のとおり被告人とFとの間,FとEとの間の共謀により,そ
れぞれ,順次に,保険金詐欺について共謀が成立していること が明らかである。
  そして,AやFが,休業補償費の名目で保険金を詐取するについては,その手
段として,AやFを治療したとする柔道整復師であるEが作成した架空の施術証明
書,施術費明細書が必要であり,この点を含めて前記の保険金詐欺についての共謀
が成立していることもまた明らかである。
  よって,被告人は,Eが施術費の名目で詐取した金員についても,共同正犯と
しての刑責は免れないものである。
4 以上の次第で,被告人の前記1の主張は,理由がない。
(累犯前科)
1 事実
  平成8年7月9日神戸地方裁判所宣告
  強盗罪により懲役4年
  平成11年3月16日刑の執行終了
2 証拠
  前科調書(検察官請求番号261),判決書謄本(同番号264)
(法令の適用)
罰条         刑法60条,246条1項
再犯加重       刑法56条1項,57条
未決勾留日数の算入  刑法21条
訴訟費用の不負担   刑訴法181条1項ただし書
  平成14年2月14日
    神戸地方裁判所
       裁判官   白  神  文  弘
 

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