弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1原判決中上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき第
1審判決を取り消す。
2前項の部分に関する被上告人の請求を棄却する。
3訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人高村順久ほかの上告受理申立て理由第1について
1本件は,司法書士会である上告人に入会する際に上告人の規則に定められた
「会館維持協力金」(以下「本件会館維持協力金」という。)20万円を納付した
被上告人が,上告人の会則には本件会館維持協力金の納付義務が定められていない
から,上告人にはこれを取得する法律上の原因がないなどと主張して,上告人に対
し,不当利得返還請求権に基づき,20万円及びこれに対する民法704条前段所
定の利息の支払等を求める事案である。
本件会館維持協力金が,司法書士法(平成14年法律第33号による改正前のも
の。以下「法」という。)15条7号にいう「入会金その他の入会についての特別
の負担」に当たり,法15条の2第1項により会則に記載して法務大臣の認可を受
けなければならないものであるか否かが争点となっている。
2原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)上告人は,大阪府で業務を行う司法書士を構成員として,司法書士法に基
づき設立された司法書士会である。
(2)上告人は,その所有する大阪司法書士会館の管理運営に関し,大阪司法書
士会会館管理運営規則(以下「本件管理運営規則」という。)を定めている。本件
管理運営規則には,平成9年2月当時,次の規定があった。
「第7条本会に新たに入会する者は,入会に際し,会館維持協力金として金2
0万円を本会に納付しなければならない。ただし,再入会するときはこの限
りではない。
2前項の納付については,規程の定めるところにより延納または分割払の方
法によることができる。」
(3)上告人の会則には,本件会館維持協力金の納付義務を定めた規定はない。
また,上告人の会則,規則等には,本件会館維持協力金を納付することを上告人へ
の入会の要件とし,又はこれを納付しないときに上告人を退会したものとみなされ
るなどの規定はない。
(4)被上告人は,平成9年2月6日,日本司法書士会連合会に備える司法書士
名簿への登録申請を行うと同時に,上告人に入会する手続を執り,その際,上告人
に対し,本件会館維持協力金20万円を納付した。被上告人は,同月19日,上記
司法書士名簿に登録され,上告人に入会した。
(5)被上告人は,上告人に対し,平成18年11月28日到達の書面をもっ
て,被上告人が納付した上記20万円の返還を催告した。
3原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人の上告
人に対する請求を20万円及び黙示に予備的に併合されていると認めたこれに対す
る遅延損害金の支払を求める限度で認容した。
(1)法15条7号,15条の2第1項は,司法書士会の会則には「入会金その
他の入会についての特別の負担」に関する規定を定めて法務大臣の認可を受けなけ
ればならないとしているが,その立法趣旨は,将来司法書士会に入会しようとする
者のみに課される負担が,既存の会員の意思で決定されることによって,司法書士
業への事実上の参入規制となることを防止することにある。
(2)上記立法趣旨に照らせば,入会後の納付が義務付けられている負担であれ
ば,その納付が入会の要件となっているものでなくとも,事実上の参入規制となる
おそれがあることに変わりはないから,「入会金その他の入会についての特別の負
担」に当たると解すべきである。本件会館維持協力金は,上告人に新たに入会しよ
うとする者あるいは新たに入会した者にその納付が義務付けられているものである
から,上記「入会金その他の入会についての特別の負担」に当たる。
4しかしながら,原審の上記3(1)の判断は是認することができるが,同(2)の
判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)法15条7号,15条の2第1項が「入会金その他の入会についての特別
の負担」に関する規定を会則に定めて法務大臣の認可を受けなければならないとす
る趣旨は,司法書士業の公共性に鑑み,司法書士会に新たに入会する者のみに課さ
れる負担が司法書士業への事実上の参入規制となるのを防止することにある。そし
て,法15条7号が「入会についての特別の負担」の例示として入会金を挙げてい
るのは,入会金は,これを納付することが司法書士会への入会の要件となってお
り,その負担が司法書士業への事実上の参入規制となるおそれが大きいものの典型
といえるからである。このことからすれば,入会金のように,司法書士会に新たに
入会する者のみに課される負担であって,それを履行することが入会の要件となる
ものが,「入会についての特別の負担」に当たることは明らかである。
これに対し,司法書士会に入会する者のみに課される負担であっても,その履行
が入会の要件となっておらず,入会後にそれを履行すべき法的義務が発生するにす
ぎないものは,それが司法書士業への事実上の参入規制となるおそれがないとはい
えないものの,履行が入会の要件となる負担に比べて性質上そのおそれは格段に小
さいということができる。また,会費に関する会則の規定の変更については法務大
臣の認可を受けることを要しないとされている(法15条の2第1項ただし書,1
5条9号)のと同様に,司法書士会に新たに入会した者を含む会員全員のために必
要とされる経費等を,新たに入会した者と既存の会員との間でどのように負担する
かに関しては,両者の間でこれを公平に負担するなどの観点からする司法書士会の
自主的判断に委ねるのが相当というべきである。そうすると,司法書士会に新たに
入会する者のみに課される負担であっても,その履行が入会の要件となっていない
ものは,その負担が新たに入会しようとする者の入会を事実上制限するような効果
を持つほど重大なものであるなどの特段の事情のない限り,法15条7号にいう
「入会金その他の入会についての特別の負担」には当たらないというべきである。
(2)前記事実関係によれば,本件会館維持協力金は,上告人に入会する者のみ
に課される負担ではあるが,その納付は延納又は分割払の方法によることができ,
上告人への入会の要件となるものではなかったというのである。また,本件会館維
持協力金の額は20万円であったというのであり,その負担が上告人に新たに入会
しようとする者の入会を事実上制限するような効果を持つほど重大なものであった
ということもできない。
そうすると,本件会館維持協力金は,法15条7号にいう「入会金その他の入会
についての特別の負担」には当たらず,これを会則に定めて法務大臣の認可を受け
ることを要しないものというべきである。
5以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反があり,論旨は理由がある。
そして,被上告人は,仮に本件会館維持協力金が上告人に入会しようとする者に
よる自主的な納付が期待されるにすぎないものであったとすれば,被上告人はその
納付義務があると誤信して納付したから,その納付は錯誤に基づくものとして無効
であるとも主張しているが,前記事実関係によれば,本件会館維持協力金は上告人
に新たに入会する者にその納付義務が課されるものと解されるから,上記の錯誤無
効の主張は前提を欠き,採用することができない。
以上説示したところによれば,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れず,上記部
分に関する被上告人の請求は理由がないから,同部分につき第1審判決を取り消
し,同部分に関する請求を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官須藤正彦裁判官古田佑紀裁判官竹内行夫裁判官
千葉勝美)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛