弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する
     被告人を懲役四月及罰金二万円に処する
     但し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、右罰金を完納
することができぬときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する
     差押に係る濁酒九斗八升八合の換価金七百六円四十二銭、四斗樽三箇、
一斗甕一箇、すいの一箇は之を没収する
     原審に於ける訴訟費用は全部被告人の負担とする
     本件公訴事実中濁酒所持の点について被告人は無罪
         理    由
 弁護人橋本福弘の控訴趣意は同弁護人名義の控訴趣意書と題する書面記載の通り
であるからこゝに之を引用する
 <要旨>職権を以て按ずるに酒類密造者が其の製造の必然的結果として唯単に一時
的に其の密造酒を所持するに過ぎない場合には製造罪の他に更に独立して別
に酒税法第五十三条に所謂所持罪を構成することなく固より製造者と雖も自己の密
造に係る酒類等を一時的でなく保存する為倉庫其の他の場所に貯蔵するとか之等を
販売する為他に携行するとか又は販売の為店舗に陳列する等所持自体が既に製造行
為とは其の必然的関係を離れて全く別個の行為と考へられる場合には製造罪の他に
同法第五十三条の所持罪を構成するものと解するを妥当とする。
 今本件について之を看るに起訴状によると被告人は昭和二十五年四月二十二日肩
書自宅で無免許で米、小麦粉、米麹、水等を原料として仕込み醗酵させ濁酒を製造
し同月二十七日迄同所に於て之を所持していたものとして、其の製造と同時に所持
まで併せ処罰を求めんとしていることは右記載及起訴状の罪名の下に酒税法第十六
条(後記の如く第十四条の誤り)第六十条と共に同法第五十三条第六十二条を明記
している事実から明かで原判決亦右起訴状通り製造と共に所持まで罪に該るものと
認定判示し起訴状と同様の法条を掲げた上二者を併合罪として処罰することゝして
いるも原判決挙示の証拠を綜合すれば被告人が本件濁酒九斗八升八合を所持して居
たのは唯単に之が密造の必然的結果として一時的に所持していたものに過ぎないこ
とを窺知することが出来るから原判決が酒類の密造罪の他に其の所持罪までも認定
処断したのは事実の誤認及法律の解釈適用を誤つた違法があると云はねばならぬ又
濁酒の密造は酒税法第十四条の違反となるところ原判決に前記の如く起訴状と共に
此点につき酒母醪又は麹の無免許製造を禁ずる前記酒税法第十六条を掲記している
のは擬律錯誤の違法を犯せるものといふべく更に原判決で没収を言渡した物件中一
升壜、蒸溜器、冷却器は起訴事実と関係のない焼酎の容器若は其の製造用具である
こと記録中の差押顛末書(第十四丁以下)の記載により明白であるので原判決は此
の点に於ても亦違法である
 右の通り本件控訴は結局理由があるから原判決の量刑不当の論旨に対する判断を
為さずに刑事訴訟第三百九十六条に則り原判決を破棄し本件訴訟記録並原裁判所で
取調べた証拠により直に判決を為すことができると認めるので同法第四百条但書に
従つて更に判決することゝする
 事 実
 被告人は政府の免許を受けないで昭和二十五年四月二十二日其の肩書自宅に於て
四斗樽三本に各米及小麦粉一斗余米麹四升水一斗位づつ仕込んで醗酵させ同月二十
七日頃までに濁酒九斗八升八合を製造したものである
 証 拠
 一、 被告人の原審公判に於ける供述
 一、 大蔵事務官作成の差押顛末書
 一、 大蔵技官作成の鑑定書三通(記録第二十一丁乃至第二十四丁)並大蔵事務
官作成の理由書(記録第二十六丁)
 法令の適用
 被告人の判示所為は直税法第十四条に違反し同法第六十条に該当するところ情状
により同法第六十三条の二に則り懲役及罰金を併科することゝし、所定刑期金額の
範囲内で被告人を懲役四月及罰金二万円に処し刑法第二十五条に従い本裁判確定の
日から三年間右懲役刑の執行を猶予することゝし右罰金の完納が出来ぬときは刑法
第十八条により金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置するものとす
る本件差押物件中主文中に没収を言渡した物件は酒税法第六十条第四項に従つて之
を没収し刑事訴訟法第百八十一条により原審に於ける訴訟費用は全部被告人をして
負担せしめることゝする尚本件公訴事実中密造濁酒所持の点は冒頭説明の通り犯罪
を構成していないので刑事訴訟法第三百三十六条前段に則り無罪の言渡をする
 (裁判長判事 深井正男 判事 鈴木正路 判事 山口正章)
 (弁護人の控訴趣意は省略する。)

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