弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士登坂良作、熊谷恒夫の上告理由は別紙記載のとおりである。
 上告理由第一点について。
 記録に徴すると、原審においては、上告人が本件建物を占有していることにつき
当事者間に争がなく、上告人は訴外亡Dの受遺者として右建物を占有管理する正当
な権原があること並に上告人の右占有を奪つて使用を許さない仮処分は保全の目的
を逸脱すること等を主張して抗争したものであることが明白である。論旨引用の疎
甲第三九号証は、上告人が右占有を奪う仮処分の不当な一事由として本件建物の一
部は上告人の住居にあてられている旨主張したので、被上告人において、上告人の
住居は既に他に移された事実を疎明するため提出したものにすぎないものであるこ
とが認められるから(記録三〇四丁参照)、これにより被上告人が従前の主張を改
め、上告人は既に本件建物を占有していないという自己に不利益な事実を主張する
に至つたものとは解し難い。
 されば原審は上告人において本作建物を占有しているとの認定のもとに、その占
有を解く仮処分をなし、又論旨摘録のような理由で上告人の附帯控訴を棄却したも
のであつて、所論は右認定と相容れない事実を前提として原判決を非難するに帰す
るから、到底採用することが。
 上告理由第二点について。
 仮処分訴訟において、保全さるべき権利の存否につき疎明にもとずいて審理判断
をすることは許されるものと解するのが相当である。そして原審が所論の事業につ
き判断を加えたのは、本件の被保全権利である係争建物所有権の帰属を判断する必
要に出でたものであることが明かであるから、仮処分訴訟において判断すべからざ
る事項を判断したものとは言いえない。そして被上告人が所論のような利息、俸給
の支払を受けた事実は原審の認定していないところであるから、原判決挙示の疎明
によう右事業を被上告人両名その他の共同事業であつたと認定しても何等実験則に
違反するものではない。更に右共同事業に関する事実並に法律関係は被保全権利の
存否を判断するに必要な限度でこれを明かにすれば足りること勿論であるから、原
判決が右共同事業を営むたあ被上告人両名外二名の間に民法上の組合契約が成立し、
本件建物はその組合財産として組合員の共有に属したところ、原判示のような経過
で被上告人両名の共有に帰したことを認定している以上、所論のような点につき逐
一詳細な認定をしないでも何等違法の点はない。されば論旨は理由がない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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