弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 別紙債権一覧表中の債権額欄記載の各債権が、各原告の破産株式会社うえの屋
に対する優先破産債権であることを確定する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
 主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 富山市<以下略>所在の株式会社うえの屋(以下「破産会社」という。)に対
し、富山地方裁判所において昭和五八年六月二八日午前一〇時破産宣告がなされ
(昭和五八年(フ)第三六号事件)、被告が破産管財人に選任された。
2 右破産宣告当時、原告らは破産会社に対して雇傭契約に基づく雇人の給料とし
て別紙債権一覧表中の債権額欄記載のとおり(但し、原告Aについては一八万一八
〇〇円、原告Bについては七二万〇九〇〇円である。)の各債権を有していたの
で、別紙債権一覧表中の債権額欄記載の額について優先破産債権の届出をしたとこ
ろ、被告は債権調査期日に異議を述べた。
3 原告らは、赤帽富山県軽自動車運送事業協同組合(以下「本件組合」とい
う。)の組合員であるところ、本件組合は、中小企業等協同組合法により設立を認
可された協同組合であり、原則として一台の車両を保有して小荷物を運搬すること
を業とする者達で構成され、組合員の相互扶助の精神に基づき組合員の為に仕事の
共同受注・斡旋を行なつたり業務に必要な物品の共同購入を行なつたりしているも
のである。
4(一) 原告らは、破産会社からの本件組合に対する斡旋の申込により、同組合
から斡旋され破産会社の仕事に従事していたもので、同組合は、昭和五四年から破
産会社の申込により組合員を斡旋していた。
(二) 斡旋方法は、本件組合が、破産会社から組合員のうちで仕事振り等で破産
会社の意に添う者に指名され派遣を求められ、それに従つて派遣していたものであ
る。
 そして、破産会社から前日位に、誰々を何時に派遣してほしいとの連絡があり、
指名された者が指示された時刻に破産会社へ行き、そこで具体的に仕事の指示がな
されていた。
5(一) 原告らの仕事の内容は、破産会社から指示されたとおり、破産会社の客
先へ家具を運搬し、車からそれを降して搬入する仕事が主たるもので、その他に
は、展示会の設営の作業に従事したりもしたが、それらの仕事に使用する車両はす
べて破産会社の車両(破産会社名が書かれた車両。)によつていた。
(二) そして、原告らは客先では「赤帽」の名称は一切使わず、「うえの屋の者
です。」と言つて作業していた(破産会社の社長の指示によりそうしていた。)も
ので、納品書も破産会社のものを使用し、それに客先で受領印を押捺してもらつて
いた。
(三) 原告らは、日頃、破産会社の社長から破産会社の社員として振る舞うよう
指示、又は教育されていて、仕事も完全に破産会社の指示に従つて行い、派遣を求
められた日には、体は一日中拘束されていた。
6(一) 賃金については、出来高払いではなく、完全に時間給として定められ、
一時間当り一六〇〇円となつていたもので、形式的には破産会社の社長と本件組合
の取決めになつていたが、実体は破産会社の社長の一方的な決定によるものであつ
た。
 なお、遠距離配送の場合は、一時間一六〇〇円の時間制ではなく、行先によつて
定額で決められており、東京は三万八〇〇〇円、神奈川は四万円、静岡は三万二〇
〇〇円、埼玉は三万六〇〇〇円などとなつていた。
(二) 賃金の計算や支払方法については、原告らが破産会社から指示された仕事
を終えて帰社したときに、破産会社の社員に仕事時間の確認をしてもらつたうえ伝
票に確認のサインをしてもらい、その後本件組合において原告ら各自の賃金を集計
し、取りまとめて破産会社に請求して支払を受けていた。
(三) なお、以前は、賃金計算は毎月二〇日締切として翌月二五日払いが原則だ
つたが、その後、破産会社の指示により月四、五回に分けて請求していた。
7 原告らは別紙債権一覧表中の作業日数及び作業時間等欄記載のとおり作業に従
事したが、破産会社の指揮命令の下で労務自体の提供を契約の目的として仕事に従
事したものであるから、それは民法六二三条の雇用契約に該るものである。
二 請求の原因に対する認否
1 同1は認める。
2 同2のうち、原告らが破産会社との雇傭契約に基づく原告ら主張の優先破産債
権を有していたこと、原告Bが債権額を七一万二五〇〇円として届出したことは否
認する。右原告の届出額は七一万五二〇〇円である。その余は認める。
3 同3は不知。
4 同4の(一)、(二)は否認する。
5(一) 同5の(一)のうち、破産会社の車両が使用されたことは認めるが、そ
の余は否認する。
(二) 同5の(二)は認める。
(三) 同5の(三)は否認する。
6(一) 同6の(一)のうち、代金が一時間当り一六〇〇円という取り決めにな
つていたことは認めるが、その余は否認する。
(二) 同6の(二)のうち、伝票に確認のサインをしていたことは認めるが、そ
の余は否認する。
(三) 同6の(三)は否認する。
7 同7は否認する。
 破産会社は本件組合との間で家具配送に関する請負契約を締結したものであつ
て、破産会社と原告らとの間には何らの契約もない。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 請求原因1は当事者間に争いがない。
二 請求原因2のうち、原告らが破産会社に対して雇傭契約に基づく雇人の給料債
権を有するとして、別紙債権一覧表中の額(但し、原告Bは少くともその額以上の
金額。)について優先破産債権の届出をしたこと、それに対して被告が債権調査期
日に異議を述べたことは当事者間に争いがない。
三 成立について争いのない甲第一、第二号証、証人Cの証言によれば、請求原因
3が認められる。
四1 原告らと破産会社との間に雇用契約が存在したことについては、直接にそれ
を証する証拠はない。
2 さらに、証人Dの証言によつて真正に成立したと認められる乙第一、第二号
証、証人D及び同Cの各証言、原告E及び同Fの各本人尋問の結果、弁論の全趣旨
によれば、次の各事実が認められ、証人Cの証言及び右原告ら各本人尋問の結果中
左の認定に反する部分は、前掲各証拠に照らして措信できず、他に左の認定を左右
するに足りる証拠はない。
(一) 破産会社は、呉服及び婚礼家具等の販売、婚礼衣裳の貸出し等を業とする
会社であり、従来、家具等の配送については他の運送業者に依頼していたが、昭和
五四年頃、本件組合の理事長から要請があつて、本件組合の組合員に家具等の配送
をさせるようになつたこと
(二) 料金については、破産会社と本件組合の役員との間で、遠距離配送の場合
は、行先によつて定額(東京は三万八〇〇〇円、神奈川は四万円、静岡は三万二〇
〇〇円、埼玉は三万六〇〇〇円など。)で、遠距離配送でない場合は、一時間一六
〇〇円と定め、破産会社は、右に従つて、組合員が破産会社に戻るまでの時間を確
認し労働時間を計算したうえ後日本件組合の請求に基づいて右組合に対して一括し
て支払つていたこと
(三) 原告らは、もともと個人で運送業を営んでいる者達であり、破産会社の仕
事の依頼も、自己の仕事の都合などによつて自由に断わることができたこと、破産
会社は、原告らに対して、原告らが右会社以外の仕事をすることについて何らの制
約も加えなかつたこと
(四) 破産会社と原告らとの間で、原告らの行なう破産会社の仕事について契約
書を交わしたことがなかつたのは勿論、個別的に契約内容を話し合つたこともなか
つたこと
 以上によれば、原告らが破産会社の家具の配送に従事したことがあつたからとい
つて、それが原告らと破産会社との間の雇用契約に基づくものであつたということ
はできない。
五1 もつとも、前記四の2の各証拠によれば、原告らが破産会社の仕事をすると
きには一見して赤帽とわかるような服装をしないこと及び配達先の客に対しては
「うえの屋の者です。」と名のることを破産会社から求められ、納品書も破産会社
のものを使用していたこと、原告らが家具を配送する場合には主に破産会社の車両
を使用していたことが認められる。
 しかし、破産会社の業務内容は、前記のように主として婚礼に関わるものであつ
たから、破産会社が仕事の上でそのイメージを大切にするのは当然であり、しかも
家具の配送に際し「寿」のマークの入つた破産会社の車両を使用したのは、原告ら
所有の車両は小さくて家具の配送には不適当であつたこと及び破産会社の従業員も
原告らとともにその仕事に従事することがあつたことのためでもあり(証人Dの証
言及び弁論の全趣旨によつて認められる。)、呉服の運搬の際には赤帽の服装で原
告ら組合員の車両を使用していたこと(証人Dの証言によつて認められる。)など
を考慮すれば、前記の各事実は前記四の2の判断を左右するものではない(また、
原告らに対しては遠距離配送の場合を除いて時間制で料金が支払われるのであるか
ら、破産会社が、原告らが破産会社に戻つた時刻を確認するのは当然であり、時間
制で料金を支払うという定めの存在が直ちに雇用契約の存在を根拠づけるものでは
ない。)。
 なお、請求原因5の(三)に沿う証人Cの証言、原告E及び同F各本人尋問の結
果は、乙第一、第二号証、証人Dの証言に照らして措信できず、他に右事実を認め
るに足りる証拠はない。
2 また、前記四の2の各証拠によれば、原告らの一部の者は、家具の配送をした
ついでに、破産会社の求めにより家具の配送先で展示会場の設営を手伝つたことが
あつたことが認められるが、それが、破産会社と右原告らとの間の、家具の配送と
は別の契約に基づくものであることを根拠づける事実は本件証拠上これを見い出す
ことができない。
六 よつて、その余の点を判断するまでもなく、原告らの請求は理由がないから棄
却し、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九三条一項本文を適用して主文のと
おり判決する。
別紙原告目録、債権一覧表(省略)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛