弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 一 上告代理人西山要の上告理由第一点について
 賃借地上に建物を所有する土地の賃借人がその建物を他に譲渡した場合には、特
別の事情のない限り、建物の所有権とともにその敷地の賃借権をも譲渡したものと
推定すべきものである(最高裁昭和四五年(オ)第八〇三号同四七年三月九日第一
小法廷判決・民集二六巻二号二一三頁)ところ、原審の確定する事実関係によれば、
上告人A1は、昭和三六年三月ごろに被上告人から第一審判決別紙目録記載の土地
(以下「本件土地」という。)のうち五九六・一三平方メートルを建物所有の目的
で賃借し、その後借増しをして昭和三八年一月には本件土地の全部(実測六四三・
九六平方メートル)を賃借するに至つたが、昭和四〇年一二月ごろ、本件土地上に
ある木造建物を取りこわしたうえ、同地上に鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造陸屋
根四階建ビルデイング一棟(以下「本件建物」という。)を建築して所有し、本件
建物でパチンコ店、喫茶店等を経営してその営業の基礎を築いた後、本件建物の所
有権を上告人A2に移転して昭和四四年四月四日付でその所有名義をも同上告人に
移転し、また、本件建物における右営業を同上告人に譲り、その後は山口県宇部市
に居を移して他の事業に従事している、というのである。
 右事実関係によれば、上告人A1が本件建物の所有名義を上告人A2に移転した
際、上告人A1は、特別の事情のない限り、本件土地の賃借権をも上告人A2に譲
渡して賃借人の地位を離脱し、他方、上告人A2が単独で賃借人の地位を承継取得
したものと推定すべきものである。しかるところ、原審は、この点につき、上告人
A1はいまだ本件土地の賃借人たる地位を失つておらず、上告人A2とともに共同
賃借人たる地位にあるものと推認すべきものとし、そのように推認すべき事情とな
るべき事実関係として、(1) 上告人A1は本件建物及び建物内で経営する前示営
業を上告人A2に譲渡した後も、毎月一度は来阪して上告人A2の営業について指
示、助言を与え指導に当たつていること、(2) 被上告人が昭和四六年一二月に本
件第一回目の賃料増額の請求をした際、上告人A1が上告人A2を同道して被上告
人宅を訪れ、上告人らの増額案を呈示するなど接衝に当たつていること及び(3) 
上告人A1は、本件建物を上告人A2に譲渡するにあたり、事前に被上告人の承諾
を得ておらず、本件土地の賃借権の譲渡等につきいまだ被上告人との間で接衝する
に至つていないことの諸事実を認定している。しかしながら、原審が挙示する右(
1)ないし(3)の事実関係が存在するというだけではいまだ本件建物の所有権及び
本件建物を利用して行われている営業が上告人A1から上告人A2に譲渡されたに
もかかわらず、なお上告人A1が賃借人たる地位を離脱することがなく、したがつ
て、上告人A2も完全な単独賃借権を取得せず、その結果、上告人両名が共同で賃
借人たる地位を保有するに至つたものと認定すべき特別の事情があるものというこ
とはできない。してみれば、右事実関係を認定しただけで、上告人両名が共同賃借
人の関係にあることを肯認した原判決には建物の敷地となつている土地の賃借権の
譲渡に関する法律関係についての法令の解釈、適用を誤り、ひいて理由不備の違法
を犯したものというべきであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論旨
につき判断するまでもなく、破棄を免れない。
 二 のみならず、被上告人の主張にかかり、また原審の確定した事実関係によれ
ば、昭和四七年一月一日から本件土地の賃料を一か月あたり四一万六五〇〇円に増
額する旨の第一回目の増額請求部分については、昭和四六年一二月二二日に被上告
人の代理人Dから上告人A2に対してその旨の意思表示がされたというにとどまり、
共同賃借人の他の一人とされる上告人A1に対してその旨の意思表示がなされたこ
とについては、被上告人の主張するところでも、また原審の確定するところでない
にもかかわらず、原審は右第一回目の増額請求の効力を認め、昭和四七年一月一日
をもつて本件土地の賃料が適正額に改定された旨の判断を示している。
 しかしながら、賃貸人が賃借人に対し借地法一二条に基づく賃料増額の請求をす
る場合において、賃借人が複数の共同賃借人であるときは、賃借人の全員に対して
増額の意思表示をすることが必要であり、その意思表示が賃借人の一部に対してさ
れたにすぎないときは、これを受けた者との関係においてもその効力を生ずる余地
がない、と解するのが相当である(最高裁昭和五〇年(オ)第四〇四号同年一〇月
二日第一小法廷判決・裁判集民事一一六号一五五頁参照)。してみれば、原判決中、
上告人A2に対してされた増額の意思表示によつて第一回目の増額請求が効力を生
じたことを前提として、上告人両名に対し、昭和四七年一月一日から同四九年一一
月末日までの増額後の賃料月額と従前の賃料月額との差額八一三万四〇〇〇円及び
これに対する昭和五〇年一月一日から支払ずみまで年一割の割合による遅延損害金
の支払を命じた第一審判決を維持し、控訴を棄却した部分は、この点においても破
棄を免れない。
 三 そして、上告人両名が本件土地につき共同賃借人たる地位にあるか否かにつ
いてはなお審理を尽くさせる必要があるので、本件を原審に差し戻すのが相当であ
る。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致の意見で、主文のとおり判決
する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    吉   田       豊
            裁判官    本   林       讓

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛