弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人森田博之の上告理由第一について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審
の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用するこ
とができない。
 同第二、第三及び第四の一について
 原審の適法に確定した事実関係によれば、訴外亡Dの相続財産である一審判決別
紙目録記載(一)ないし(二)の不動産につき上告人A1及び被上告人らは相続持分各
三分の一の割合により相続権を取得したところ、被上告人ら名義による相続放棄が
あつたものとしてこれらの不動産につき右上告人のみの単独名義による相続の登記
が経由されているが、右相続放棄は、右上告人が偽造した相続放棄申述書によつて
されたものであつて、被上告人らの意思に基づくものでなく無効であり、右上告人
は、共同相続人として被上告人らのいることを知りながら右各不動産につき被上告
人らの意思に基づかずに単独名義の相続の登記をすることによつて、被上告人らの
相続権を侵害している、というのである。右事実関係のもとにおいては、被上告人
らから右上告人に対し相続による共有関係の回復を求めるため右登記を右上告人及
び被上告人らの持分各三分の一の登記に更正登記手続をすることを求める請求につ
いては、民法八八四条の適用がないものと解するのが相当であり(最高裁昭和四八
年(オ)第八五四号同五三年一二月二〇日大法廷判決・民集三二巻九号登載予定参
照)、ひいて、右目録記載(二)の不動産につき右上告人から贈与を原因とする所有
権移転登記をうけた上告人A2に対し右登記を上告人A2の共有持分三分の一の部
分についてのみの移転登記に更正登記手続をすることを求める被上告人らの請求に
ついても、同条の適用をみる余地はないというべきである。そうすると、上告人ら
は被上告人らの本件請求を同条の規定を援用して拒むことができないものであり、
原審の判断は結論においてこれを是認することができる。論旨は、被上告人らの右
各請求について民法八八四条の適用があることを前提とするものであるから、その
前提を欠き失当であつて、いずれも採用することができない。
 同第四の二について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を
異にし適切でない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事
実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官横井大三の意
見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官横井大三の意見は、次のとおりである。
 私は、本判決の結論において多数意見と同じであるが、上告理由第二、第三及び
第四の一に関する多数意見の見解に同調することはできない。私は、前記昭和五三
年一二月二〇日大法廷判決の大塚裁判官ほか五裁判官の意見と同様の理由により、
共同相続人相互間における相続持分権侵害の排除を求める請求については常に民法
八八四条の適用がないと解するものであり、その点において右上告理由における論
旨はすでに理由がないと考える。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    環       昌   一
            裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    服   部   高   顯
            裁判官    横   井   大   三

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