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判決 平成14年2月7日 神戸地方裁判所 平成13年(ワ)第2453号 請
求異議事件
主文
1 被告から原告に対する神戸地方裁判所平成6年(ワ)1469号所有権移転登
記抹消登記手続等請求事件の判決に基づく強制執行は許さない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事     実
第1 当事者の求めた裁判
 1 請求の趣旨
主文同旨
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
 1 請求原因
(1) 原被告間には,神戸地方裁判所平成6年(ワ)第1469号所有権移転登記
抹消登記手続等請求事件(以下「前訴」という。)の確定判決(以下「本件判決」
という。)が存在する。
(2) 本件判決は,被告の別紙物件目録2記載の建物(以下「本件建物」とい
う。)の所有権に基づき,本件建物に入居していた原告が,被告に対し,平成6年
9月1日から2階203号室の使用期間中1か月7万8000円の割合による金員
を支払うべきことを命じている。
(3) しかしながら,以下の理由により,被告が本件判決に基づいて強制執行す
ることは,権利濫用ないし信義則にあたり許されない。
 前訴において,原告外1名を除く5名の敗訴者が控訴し,さらにBが当事
者参加した。そして,Bは,平成5年4月9日付代物弁済契約により本件建物の所
有権を取得したと主張し,前記5名は同内容の抗弁を提出したところ,被告は,同
代物弁済の事実につき自白した。そこで,控訴審は,原告と同様の立場にあった者
につき,原判決を取り消して,被告の請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決
は確定した(大阪高等裁判所平成8年(ネ)第1094号,同年(ネ)第1095号,
同9年(ネ)第579号)。
 被告は,本件建物の所有権を有すると虚偽の事実を主張して訴えを提起し,
裁判所を欺いて本件判決を詐取したものである。
(4) よって,原告は本件判決の執行力の排除を求める。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)(2)は認める。
(2) 同(3)は争う。
 A(前訴において原告と同様の立場に立ち,原告同様控訴しなかった者)
は法に従い支払義務を履行し,その余の本件建物の賃借人も法に従いBに対し支払
義務を履行したのに対し,原告は,本件判決確定後5年余りも逃亡を繰り返して強
制執行を免れ,今後も逃走し続け,Bからの請求も拒否することは容易に推測でき
る。このような原告が,本件判決の作成過程における些細な瑕疵を主張して,強制
執行の不許を得ることは到底許されない。
理由
1 請求原因(1)(2)は当事者間に争いがない。
2 請求異議の訴えは,債務名義に表示された請求権と現在の権利関係の不一致
が生じたことを原因として債務名義の執行力を奪う訴えである。したがって,債務
名義が確定判決の場合,当該請求に付着した瑕疵は洗われ,請求権が既判力によっ
て確定された以上,標準時(口頭弁論終結時)以前に遡って事実を争い,請求異議
の訴えを提起することは許されないといわなければならない。また,民事訴訟法は,
主張する事実が再審事由にあたる場合は,再審の訴えによる確定判決の取消の道を
設けている。
 しかしながら,信義誠実の原則は訴訟法の分野をも支配するものであって,
再審事由にあたる事情があり,しかも標準時以後の事情変更により請求権の行使が
権利濫用になる場合には,請求異議を求める余地があると解される。
3 そこで,本件につき検討するに,証拠(甲1,2,乙1)及び弁論の全趣旨
によれば,次の事実が認められる。
(1) 被告は,前訴において,本件建物及びその敷地(別紙物件目録1記載の土
地,以下「本件土地」という。)の所有権を有すると主張して次のとおり請求し
た。
ア 本件土地建物の登記簿上の名義人であり,本件建物を占有しているEに
対し,本件土地建物の所有権移転登記手続の抹消及び本件建物の明渡し
イ 本件建物につき賃借権仮登記を経由し,本件建物を占有しているDに対
し,前項の抹消登記手続の承諾及び本件建物の明渡し
ウ 本件建物の各室をDから賃借して居住している原告ほか6名に対し,平
成6年9月1日から使用期間中の賃料相当損害金の支払
 一審判決は,被告の本人尋問と書証により,被告が昭和62年4月30日
売買により本件土地を取得してその所有権移転登記を経由し,同地上に同58年5
月23日に本件建物を建築してその所有権保存登記を経由したことを認め,平成9
年9月3日,被告勝訴の判決を言い渡した。
(2) 原告及びAを除く者が控訴し,新たな抗弁(Bが代物弁済したので,被告
には本件土地建物の所有権がない。)を提出した。被告のもと妻であるBは,当事
者参加し,以下のような主張をして,E及び被告に対し本件建物の明渡しを,その
余の控訴人に対してはBに対し賃料相当損害金を支払うよう求めた。
ア 被告は,Cが被告経営のFに貸し付けた1億円を返済できない場合には,
Cに対し本件土地建物を代物弁済する旨予約し,平成3年12月13日,これに基
づき同人を権利者とする所有権移転請求権仮登記を経由した。
イ Bは,平成4年12月25日,Cから同貸金債権及び代物弁済予約上の
権利を譲り受け,同仮登記につき移転の付記登記を経由し,予約完結の意思表示及
び清算金がない旨の通知をして本件土地建物の所有権を取得した。
(3) 被告は,抗弁事実及びBの主張を認める答弁したため,控訴審は,平成9
年9月30日,被告の所有権に基づく請求は理由がないとして,原審の判決主文を
取り消す旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。
4 以上の認定事実によれば,前訴の控訴審では一審判決が変更されていること
が認められ,同事実は,再審事由(民事訴訟法338条1項8号)にあたるものと
解せられる。また,被告は,前訴の控訴審において,Bが代物弁済により本件土地
建物の所有権を取得した事実を自ら認めていることからすると,同事実を熟知しな
がら,これを秘して前訴を提起し,本人尋問においても同事実を黙して,一審裁判
所を欺き,本件判決を詐取したものと推認される。
 また,代物弁済の事実自体は,前訴の一審口頭弁論終結時以前に存在したも
のであって,抗弁として提出しうる事実であるが,原告のような立場にある者が容
易に知りうる事実ではないことは,代物弁済の抗弁が,Bが当事者参加した控訴審
において初めて提出されたものからも容易に推測される。
 さらに,控訴審での判決の変更は,一審口頭弁論終結時以降の事情変更によ
り,被告の本件建物の所有権の行使が権利濫用にあたる事情を作り出しているとい
える。
 これらの事情からすると,本件判決に基づく執行行為は,信義則上違法不当
なものとなると言わざるをえない。
5 以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担
につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第5民事部
裁判官  永  田  眞  理

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