弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 本件各控訴の趣意については検察官及び弁護人渋谷正俊各提出に係る控訴趣意書
を引用する検察官及び弁護人は各その相手方の控訴は理由のないものとして夫々そ
の棄却を求めた。
 検察官の控訴趣意について
 原判決によれば原審が各被告人について夫々論旨摘録に係る二回の賭博の事実を
判示しこれに論旨摘記の法条を適用した上各被告人を科料千円に処したこと及び罰
金等臨時措置法第二条第二項によれば科料は五円以上千円未満と規定されているこ
とは各所論の通りであり従つて少くとも一個の罪に対し科料刑を選択した場合千円
以上の科料を量定し得ないことは明かである。
 然しながら原審の判示事実とその適用法条とを対照すれば原審が各被告人に夫々
科料千円を言渡したのは各被告人の右二回の賭博行為を以て夫々刑法第百八十五条
所定の二個の賭博罪とし且つ右二個の罪は同法第四十五条前段の併合罪の関係にあ
るものとし各被告人の各罪について何れも科料刑を選択し夫々五円以上千円未満の
金額の範囲内で量刑しその各量定された金額を主文において一括して表示した趣旨
であることが認められる。論旨は原審適用に係る刑法第五十三条第二項は法定刑が
単に拘留刑若くは科料刑である場合に限つて適用さるべきものと論ずるが右の見解
は法文竝びに理論上の根拠を欠如し採用し難いものであつて右法条は処断刑として
数個の拘留刑若しくは科料刑を科する場合に適用されるものと解すべきものであ
る。
 <要旨>而して右刑法第五十三条第二項によれば拘留刑若くは科料刑を以て処断す
べき併合関係にある数個の事実に科刑する場合はその刑を併科すべきものと
規定し罰金刑の場合における刑法第四十八条第二項のような規定がないのであるか
ら拘留刑若くは科料刑に処すべき併合関係ある数個の事実に対しては唯一個の刑を
量定することは許されずその各事実毎に各別にその刑を量定した上それ等を併科せ
ねばならぬのであるがこの場合の併科ということは論旨のように必ず裁判の主文に
おいても各事実とこれに対する刑を他の事実とその刑から区別して個別的に表示せ
ねばならぬものか否かについて考究するに凡そ刑の併科とは同一被告人に対し数個
の刑を同一機会において科することと解されるがそうだとすると裁判の理由におい
て各事実毎に各別にその刑が量定判示せられている以上その主文において各事実と
これに対する刑が他の事実とその刑から区別して夫々個別的に表示されていても将
又それ等の事実を表示することなくその各量定された刑を一括して表示(例へば第
一事実に対して拘留十日、第二事実に対して科料二百円と各量定したときこれを主
文に拘留十日及び科料二百円と表示し又第一事実に科料五百円、第二事実に対して
科料二百円と各量定した場合にこれを主文において科料七百円と表示)されていて
も各事実に対して量定された数個の刑を併科したとすることに何等差支がないと思
われるので刑法第五十三条第二項に所謂併科が主文における一括的表示を許さない
という趣旨とは解し得ない。勿論併合関係のない数個の事実についても各事実毎に
その刑を量定してそれ等を併科するのであるがこの場合は併合関係のある場合と異
りその各刑は恰も別人に刑が言渡される場合と同じく主文においても必ず各事実と
これに対する刑が他の事実とその刑から区別されて個別的に表示されていなければ
ならすその刑を一括表示することは許されないがそれは単に併科ということからそ
うせねばならぬのではなくその科刑の根抵たる事実が併合関係のない単純な数罪で
あることに由来するものであつて本件のように併合関係にある数罪に対する場合と
同一に論ずるのは誤りである。加之法が単純な数罪と区別して併合罪という観念を
認めるのは併合罪は一罪ではないが何等か特別の事情のない限り可成くこれを一括
的に処理しようとする意図に出たものと解せられ右の観点からすればむしろ併合罪
において刑を併科する場合でもその刑を一括的に取扱うことが原則的に要求されて
いるものといえる。而し他面その処分に関して各事実毎にこれに対する刑を量定す
るということから併科の場合は所謂吸収主義や加重主義が採られている場合に比し
て単純な数罪の処分に近似せざるを得ず勢いその一括的処理の色彩も稀薄となるこ
とはこれを容認せざるを得ないのであつて主文における一括的表示の要求もおのづ
から微弱となり例えば誤解や疑義や混雑を来すような虞がある等何等かの利益があ
るときは主文における刑の一括的表示の要求に拘泥する必要はなく各事実とその刑
とを他の事実と刑から区別して個別的に表示することを拒否するものではなくその
具体的場合における適宜の技術的操作に委ぬるものと解さざるを得ないのであり原
審がその主文において科料千円と表示したのは既に説示したように本件二個の賭博
罪に対して各別に量定した二個の科料刑を一括的に表示したものでありかかる主文
の表示方法の適法なことも亦右に説明したところである。尤もこの点において罰金
等臨時措置法第二条第二項に科料の多額は千円未満と規定されているから例え二個
の科料刑を併科する場合でも右の規定に制約され科料千円とすることは場合の如何
を問わず違法となるのではないかとの疑念が一応ないわけではないが右の制限は一
の科料刑を量定する場合の制限と解するのを相当とし数個の科料刑が量定されその
併科が認められる以上その科料の合計額が右の制限を超ゆるに到る場合のあること
は固より法の予想するところというべきであり従つて主文においてこれを一括した
結果右の制限を超ゆる表示がなされても違法といえないとせねばならない。但し原
判決の主文の刑の表示は違法といえないにしてもその理由を理解する迄は一応その
表示自体右の制限を無視したような疑念抱かせる虞があるので技術的には穏当でな
かつたといえるであろう。
 更に進んで夫々科料に処すべき併合罪の量刑に当つては刑法第四十八条第二項の
場合と同様に即ちその数罪に対し一個の科料刑を量定することは許されないのでそ
の主文における表示方法は別としてもその理由の説示においては各事実毎に各別に
その刑を量定したことが明白に示されておらねばならぬことは当然のことであるが
原判決の理由に為いては単に被告人等の行為に対し論旨摘録の法条が適用してある
丈で何れの事実にどの程度の量刑をしたかが明示されておらずその理由説示として
は不十分であるとの護を免れ得ないが本件各事実の態様その他一切の記録にあらわ
れた事情を考慮しても各被告人の各事実に対する量刑に差等を附さねばならぬと思
われる節がないので原審は各被告人の各事実に対し夫々科料五百円と量刑したこと
は窺い得られぬこともないから右の理由説示の瑕疵は未だ原判決を破棄する程度の
理由不備ともなし難いのである。
 弁護人の控訴趣意について
 本件犯行の態様に徴し論旨所論の事情を考慮しても到底原審の量刑が重きに過ぎ
るものとはなし得ない。
 その他原判決を破棄せねばならぬ瑕疵がないので本件各控訴は何れも理由のない
ものとして刑事訴訟法第三百九十六条に則つて夫々これを棄却すべきものと認めて
主文の通り判決する。
 (裁判長判事 河野重貞 判事 山田市平 判事 小沢三朗)

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