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判決 平成14年2月7日 神戸地方裁判所 平成12年(行ウ)第21号公文書非
公開決定の取消請求事件
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請 求
原告が平成11年8月10日付けで行った,豊岡市公文書の公開等に関する条
例に基づく「公立豊岡病院組合の構成市町長会に提出された一切の文書」の公開請
求に対して,被告が同月24日付けで行った非公開決定中,下記の文書に関する部
分を取り消す。

公立豊岡病院組合の構成市町長会に提出された公立豊岡病院組合及び組合立
の各病院の病院施設・設備の建設・改修,人員配置,財政,運営,将来計画等に関
する一切の文書(但し,前記条例が施行された平成11年4月1日以前に実施機関
が管理することとなった文書並びに個人情報,人事管理情報及びこれに類する文書
を除く。)。
第2 事案の概要等
 1 事案の骨子
 本件は,原告が被告に対し,平成11年8月10日付けで豊岡市公文書の公
開等に関する条例(平成10年豊岡市条例第33号。以下,「本件条例」とい
う。)6条に基づき,「公立豊岡病院組合の構成市町長会に提出された一切の文
書」(以下「一切の文書」という。)について公文書の公開を請求したところ,被
告が同月24日付けで「一切の文書」の公開を行わない旨の公文書非公開決定(以
下「本件処分」という。)をしたため,原告が本件処分のうち前記第1記載の取消
対象文書(以下「本件文書」という。)に関する部分の取消しを求めた事案であ
る。
 2 前提事実
 (証拠を掲記した事項以外は,当事者間に争いがない。)
  (1) 当事者
原告は,本件条例6条1号所定の「(豊岡)市内に住所を有する者」であ
り,被告は,本件条例2条1号所定の「実施機関」である。
  (2) 本件条例の規定
本件条例には,下記のとおりの規定がある(乙1)。

(目的)
第1条  この条例は,市民の市政参加を促進し,市民の市政への信頼と理
解を深めるために,公文書の公開に関して必要な事項を定め,もって,地方自治の
本旨に即した市政の推進に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条  この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に
定めるところによる。
(1) 実施機関  市長,教育委員会,選挙管理委員会,監査委員,農
業委員会,固定資産評価審査委員会,公営企業管理者及び議会をいう。
(2) 公文書   実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文
書,図画及び写真であって,決裁その他これに準ずる手続が終了し,実施機関が管
理しているものをいう。
(3) 省略
(実施機関の責務)
第3条  実施機関は,第6条に規定するものから公文書の公開の請求がな
された場合は,当該請求に係る公文書が第9条及び第10条に規定する公文書であ
る場合を除き,当該公文書を公開しなければならない。
(情報の提供)
第5条  実施機関は,市民の生活の利便性を向上し,市民の市政に対する
理解を深めるため,市政に関する情報を市民に積極的に提供するよう努めなければ
ならない。
(公開を行わないことができる公文書)
第10条  実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されて
いる公文書については,公文書の公開を行わないことができる。
(1)及び(2) 省略
(3)  市と国,他の地方公共団体その他公共団体(以下「国等」と
いう。)又は特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特
別の設立行為をもって設立すべきものとされた法人をいう。以下この号において同
じ。)との間の協議,依頼等に基づく事務事業に関する情報であって,公にするこ
とにより,市と国等又は特殊法人との協力関係又は信頼関係が損なわれると認めら
れるもの
(4) 省略
(5)  実施機関が行う事務事業に係る審議,協議,検討,調査,研
究その他意思形成の過程における情報であって,公にすることにより,当該事務事
業又は将来の同種の事務事業の公正な意思形成に著しい支障が生ずると認められる
もの
(6)  実施機関(市長及び公営企業管理者を除く。)並びに市の執
行機関の附属機関及び専門委員並びにこれらに類するもの(以下「合議制機関等」
という。)の会議に係る審議,協議,検討,調査及び研究等に関する情報であっ
て,当該合議制機関等の設置の目的に照らして,公にすることにより公正又は円滑
な議事運営が損なわれるため,議事運営に係る規程又は議決によりその全部又は一
部を公にしない旨を定めているもの及び公にすることにより公正又は円滑な議事運
営が著しく損なわれると認められるもの
(7) 省略
  (3) 原告の公文書公開請求
原告は,被告に対し,平成11年8月10日付けで,本件条例6条に基づ
き,「一切の文書」について公文書の公開を請求した。
  (4) 本件処分
被告は,平成11年8月24日付けで,公文書非公開決定通知書(甲1)
をもって,原告から公開請求のあった「一切の文書」の公開を行わない旨の本件処
分を行った。
  (5) 公立豊岡病院組合の概要
ア 公立豊岡病院組合は,豊岡市を含む1市9町(以下「関係市町」とい
う。)が,各関係市町に属する事務の一部である公的医療機関としての病院の設置
及び管理に関する医療事務等を共同して処理することを目的として,公立豊岡病院
組合規約(乙4)によって設置された,地方自治法(以下「法」という。)284
条2項に基づく一部事務組合(特別地方公共団体)である。
   イ 公立豊岡病院組合規約は,同組合の組織等について,以下のとおり定め
ている(乙4)。
    (ア) 公立豊岡病院組合は,公立豊岡病院組合議会(以下「組合議会」と
いう。)において決議を行う(5条)。
    (イ) 組合議会の議員は,関係市町の各議会において,各々の議会の議員
の中から,選挙により選出される(6条)。
    (ウ) 組合議会議員の任期は,関係市町の議会議員の任期による(7
条)。
    (エ) 公立豊岡病院組合は,執行機関として管理者(以下「組合管理者」

     いう。)を置く(8条)。
    (オ) 組合管理者は,組合議会において,豊岡市長又は関係市町の議会の
議員の被選挙権を有する者の中から,選挙により選出される(9条)。
    (カ) 組合管理者の任期は,豊岡市長の場合はその任期により,それ以外
の場合は4年間である(10条)。
    (キ) 公立豊岡病院組合の運営に必要な経費は,寄附金,補助金その他の
収入によるものの他,関係市町に分賦される(11条)。
      なお,関係市町の分賦金について必要な事項は,「公立豊岡病院組合
の分賦金に関する条例」(甲10,以下「本件分賦金条例」という。)に規定され
ている。
    (ク) 公立豊岡病院組合に関する事項で,前記規約に定めのない事項につ
いては,普通地方公共団体に関する法の規定が準用される(12条)。
  (6) 構成市町長会の概要
ア 公立豊岡病院組合は,前記(5)イ(ク)の準用規定及び法138条の4第3
項に基づき,組合管理者の附属機関として,公立豊岡病院組合構成市町長会(以下
「構成市町長会」という。)を設置している。
イ 構成市町長会の組織及び運営については,組合議会の制定した公立豊岡
病院組合構成市町長会設置条例(乙5,以下「本件設置条例」という。)によっ
て,以下のとおり定めている。
    (ア) 構成市町長会の委員は,関係市町の長をもってあてる(いわゆる
「あ
     て職」規定)(2条)。
    (イ) 委員の任期は,各関係市町の長の任期による(3条)。
      なお,委員の費用や報酬は,「特別職に属する非常勤の職員の報酬及
び費用弁償に関する条例」(乙6)に基づき,公立豊岡病院組合より支給される。
    (ウ) 構成市町長会は,同会を代表する会長が,必要に応じて招集したと
きの他,組合管理者から同会の開催要請があったとき及び同会の3分の1以上の委
員から同会の開催請求があったときに,開催される(5条)。
    (エ) 構成市町長会は,半数以上の委員が出席しなければ,会議を開くこ

     ができない(6条)。
    (オ) 構成市町長会は,組合管理者の諮問に応じる他,公立豊岡病院組合
を運営する上での基本的事項あるいは重要事項について,審議を行う(8条)。
  (7) 本件文書
本件訴訟において,原告が取消対象とする公文書は,前記第1のとおり,
「一切の文書」のうちの本件文書である(なお,以下,本件文書に記録されている
情報を「本件情報」という。)。
本件文書は,公立豊岡病院組合管理者の附属機関である構成市町長会に提
出されたものであって,構成市町長会の委員を兼任している被告が,同会において
取得し,保管しているものである。
  (8) 本件情報の内容
原告は,本件文書には,以下のような内容の情報が記載されていると主張
している。
ア 組合立病院の改築,改修,設備の増強等に関する計画及び財政計画
イ 上記アの計画に係る関係市町の財政負担の内容
ウ 組合立病院の経営改善計画及び合理化計画
エ 組合立病院の改築,改修,設備の増強,合理化計画に伴う関係市町の関
連公共事業,公共投資等の要請
オ その他関連事項
  (9) 公立豊岡病院組合における公文書公開条例の存否
 公立豊岡病院組合自体には,豊岡市が定めている本件条例のような公文書
の公開に関する条例は,制定されていない。
 3 争 点
本件における争点は,本件処分の適法性であるが,具体的には,次の2点で
ある。被告は,本件文書を公開することができない理由として,(1) 本件文書は本
件条例2条2項の「公文書」に該当しないこと,(2) 本件情報は本件条例10条3
号所定の非公開情報にあたることを,択一的に主張している。
(1) 本件文書は,本件条例2条2項の「公文書」に該当するか。
(2) 本件情報は,本件条例10条3号に規定する「市と他の地方公共団体との
間の協議,依頼等に基づく事務事業に関する情報であって,公にすることにより,
市と他の地方公共団体との協力関係又は信頼関係が損なわれると認められるもの」
にあたるか。
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点(1)について
  (被告の主張)
  (1) 被告主張の要旨
    被告は,普通地方公共団体たる豊岡市の市長(豊岡市に属する特別職の地
方公務員)と,公立豊岡病院組合の構成市町長会の委員(公立豊岡病院組合に属す
る特別職の地方公務員)との2つの職を兼任しており,2つの身分を有している。
被告は,公立豊岡病院組合の構成市町長会の委員として本件文書を取得し,保管し
ているのであり,普通地方公共団体である豊岡市の市長として本件文書を取得し,
保管しているのではない。それゆえ,本件文書は,本件条例2条2項にいう「公文
書」には該当しない。
    その理由の詳細は,以下のとおりである。
  (2) 構成市町長会委員の地位と豊岡市長の地位との関係
    公立豊岡病院組合の構成市町長会の委員の地位は,以下述べるとおり,豊
岡市長の地位からは全く独立している。
   ア 公立豊岡病院組合と豊岡市は別個の地方公共団体
  公立豊岡病院組合は,法に基づいて設置された一部事務組合であって,
豊岡市とは別個の法人格を有する特別地方公共団体である。すなわち,公立豊岡病
院組合は,関係市町とは別個独立して組合議会及び執行機関たる組合管理者を有
し,その運営も関係市町とは別個独立して行われている。
  そして,構成市町長会は,本件設置条例に基づいて設置された組合管理
者の附属機関である。構成市町長会の委員の報酬等も,豊岡市ではなく,公立豊岡
病院組合より支給されている。
  以上のとおり,構成市町長会は,関係市町から独立した公立豊岡病院組
合の一機関であるから,同会の委員を普通地方公共団体である関係市町の長そのも
のと同一視することはできない。
   イ 組合議会の役割
     公立豊岡病院組合は,その運営に関する意思決定機関として,独自に組
合議会を有している。ここでは,公立豊岡病院組合の運営に関して生じる関係市町
の利害について,調査,審議等が行われる。
     例えば,公立豊岡病院組合の関係市町として豊岡市が負担すべき分賦金
について,組合議会で財政関連会議が開催される場合には,豊岡市の生涯健康課及
び財政課において協議の上,豊岡市議会において市としての意思決定を行い,それ
を受けて,上記担当課の職員及び組合議会議員たる豊岡市会議員が組合議会に出席
し,豊岡市としての意見を述べる。
     このように,公立豊岡病院組合の運営に関して豊岡市の利害を主張すべ
き場合,豊岡市の意見は,組合議会の場において主張され,そこで他の関係市町と
利害調整が行われる。
   ウ 構成市町長会委員の役割
     構成市町長会は,関係市町間の利害調整を行うべき場としては予定され
ていない。構成市町長会の委員たる各関係市町の長は,同会において,各々の属す
る関係市町の利害を離れ,関係市町の長としての知識や経験に基づいて,公立豊岡
病院組合の運営に関する事項について,同組合全体の立場から討議ないし意見交換
を行い,それを踏まえて組合管理者に対して意見具申を行うべき立場にある。
     現に,被告は,構成市町長会委員として,豊岡市の利益のみに囚われる
ことなく,豊岡市長たる立場によって獲得された知識,経験を背景に,公立豊岡病
院組合全体の健全なる運営,発展を図る目的において,同会において意見を表明し
ている。そのため,構成市町長会委員としての被告の意見について,豊岡市の利害
を忠実に反映するため構成市町長会の開催前に豊岡市として事前の協議を行った
り,また,意見をまとめたりするための部局は,豊岡市に存在しない。
   エ まとめ
     以上のアないしウの事実を踏まえると,公立豊岡病院組合の構成市町長
会の委員の地位は,関係市町の長の地位からは,全く独立していることが明らかで
ある。
  (3) 本件文書は「公文書」にあたらない
     本件文書は,本件条例2条2号の「公文書」にあたらない。その理由
は,以下のとおりである。
   ア 「職務上取得した文書」に該当せず
     被告が構成市町長会の委員として本件文書を取得する行為は,あくまで
公立豊岡病院組合の特別職の地方公務員として行ったものであり,豊岡市長の職務
として行ったものではない。
     よって,本件文書は,実施機関たる被告が「職務上」「取得した文書」
にあたらない。
   イ 「決裁等が終了し,実施機関が管理」に該当せず
     豊岡市では,被告が豊岡市長として職務上取得した文書については,当
該文書に関わる事務を分掌する市の担当部課において,決裁等の手続がなされ,か
かる手続を経た文書は,同部課において,そのまま保管されることとなっている。
     しかし,豊岡市においては,構成市町長会の委員としての被告の職務を
分掌する部局は存在しないから,豊岡市の職員において,本件文書の決裁その他の
手続がなされることはなく,また,それを前提とする本件文書の保管がなされるこ
ともない。本件文書は,被告が,豊岡市長の職務としてではなく,あくまで公立豊
岡病院組合の特別職の地方公務員として受領したものに過ぎない。
   ウ まとめ
     以上のア,イの事実からすると,本件文書は,「実施機関」たる被告に
おいて,「決裁その他これに準ずる手続が終了し」た文書にあたらないし,「決裁
その他これに準ずる手続が終了し,実施機関が管理している」文書にもあたらな
い。
  (原告の主張)
  (1) 原告主張の要旨
    被告は,公立豊岡病院組合の構成市町長会の委員として本件文書を取得
し,保管するとともに,普通地方公共団体である豊岡市の市長としても本件文書を
取得し,保管しているものである。それゆえ,本件文書は,本件条例2条2項にい
う「公文書」に該当する。
    その理由の詳細は,以下のとおりである。
  (2) 構成市町長会委員の地位と豊岡市長の地位との関係
    被告が公立豊岡病院組合の構成市町長会の会議に参加する行為は,以下の
事実からして,構成市町長会の委員としての職務にあたるのみならず,豊岡市長と
しての職務そのものである。
   ア 公立豊岡病院組合設立の経緯
     公立豊岡病院組合は,明治時代以来続く但馬地方における公的医療機関
の不足を解消するため,財政力の弱い同地方の市町村が,各々の財政負担を軽減し
つつ,当該地域に必要な医療事務を共同で処理するために設立した一部事務組合で
ある。すなわち,本来は,各市町村が単独で公立病院を設立運営すべきところ,主
に財政上の理由により単独では困難であるため,他の市町村と共同経営を行うこと
としたものである。
     このように,公立豊岡病院組合は,設立そのものが関係市町の意思に基
づくものであって,しかも,関係市町の医療機関の充実という公益を図ることを目
的として設立された特別地方公共団体である。
   イ 関係市町による財政負担の実態
     公立豊岡病院組合は,完全な独立採算の組織ではなく,企業債の発行や
欠損発生の際には,本件分賦金条例に基づき,関係市町の財政負担を必要とし,平
成11年度には,各関係市町が支出した財政負担額は,総額で約17億8516万
円にも達している。
   ウ 開設者協議会(構成市町長会の前身)設置の経緯
     公立豊岡病院組合の法的性格は,地方公営企業法における財務規定が適
用される地方公営企業であり,同組合の経営には企業会計原則の一部が適用される
ため,普通地方公共団体のそれと比較すると,執行機関たる組合管理者の裁量権が
著しく大きい。
     そこで,公立豊岡病院組合の円滑な運営を図るため,同組合の運営に際
し,組合管理者に対して関係市町の利害について公式に発言できる機会,すなわち
各関係市町の利害を十分に連絡調整できる機関が必要となり,構成市町長会の前身
である開設者協議会が設置された。このような構成市町長会設置の経緯からする
と,同会には関係市町間の利害調整機能が付与されているというべきである。
   エ 構成市町長会の委員の役割
     構成市町長会の委員には,関係市町の利害について,当該市町を代表し
て発言できる人が就任する必要がある。そのため,公立豊岡病院組合は,構成市町
長会の委員として,関係市町の長を「あて職」とした。構成市町長会の委員は,各
関係市町長の属する市町の利益代表たる性格を有する者といえる。
     現に,豊岡市でも,被告がかかる役割を遂行できるよう,構成市町長会
に関する事務を分掌する部課として,企画総務部を置いている。
   オ まとめ
     以上のアないしエの事実からすると,被告が公立豊岡病院組合の構成市
町長会の会議に参加する行為は,構成市町長会の委員としての職務にあたるのみな
らず,豊岡市長としての職務そのものであるといえる。
  (3) 本件文書は「公文書」にあたる
    本件文書は,本件条例2条2号の「公文書」にあたる。その理由は,以下
のとおりである。
   ア 「職務上取得した文書」に該当
     被告が構成市町長会において取得した本件文書は,豊岡市長の職務とし
て取得したものともいえる。したがって,本件文書は,実施機関たる被告が「職務
上取得した文書」にあたる。
   イ 「決裁等が終了し,実施機関が管理」に該当
    (ア) 本件文書は,被告が豊岡市長の職務として取得したものでもあるこ
と,すなわち,豊岡市の最高責任者が取得したものであるから,そもそも責任者が
部下の作成等に係る文書の採否を判断するとの意味での「決裁」はあり得ない。
      それゆえ,本件文書は,被告が,市の最高責任者たる豊岡市長の地位
に基づいて取得したことをもって,「決裁その他これに準ずる手続」を完了したも
のというべきである。
    (イ) 本件文書は,豊岡市の公文書として決裁等の手続を完了し,被告が
本件文書を保管している以上,その保管は豊岡市として行っているというべきであ
る。
      したがって,本件公文書は,「決裁その他これに準ずる手続が終了
し,実施機関が管理している」文書にもあたる。
 2 争点(2)について
  (被告の主張)
   本件情報は,以下述べるとおり,本件条例10条3号所定の非公開事由に該
当する。
  (1) 本件条例10条3号前段該当性
    本件情報は,以下述べるとおり,「市と他の地方公共団体との間の協議,
依頼等に基づく事務事業に関する情報」(本件条例10条3号前段)に該当する。
   ア 公立豊岡病院組合は,特別地方公共団体たる一部事務組合であるから,
本件条例10条3号にいう「他の地方公共団体」に該当する。
   イ 構成市町長会は公立豊岡病院組合の一機関であり,同会の委員は関係市
町の長のあて職とされているところ,豊岡市長たる被告は,組合管理者の諮問に応
じて同会に委員として出席し,本件文書を取得したものである。そうすると,本件
情報は,「市と他の地方公共団体との間の協議,依頼等に基づく事務事業に関する
情報」に該当する。
  (2) 本件条例10条3号後段該当性
    本件情報は,以下述べるとおり,「公にすることにより,市と他の地方公
共団体との協力関係又は信頼関係が損なわれる」(本件条例10条3号後段)情報
に該当する。
   ア 構成市町長会は,組合管理者の附属機関として,組合管理者からの諮問
に応じる他,組合運営上の基本事項あるいは重要事項を審議することをその所掌事
務としている。具体的には,公立豊岡病院組合が行う事務については,構成市町長
会の委員たる各関係市町の長が合議形式により調査及び審議等を行った上,組合管
理者に対する意見具申を行う。
そうすると,原告が公開を請求している本件情報は,公立豊岡病院組合
の内部機関である構成市町長会において,各委員が合議による意思形成を行う上で
の検討材料としての情報,すなわち公立豊岡病院組合自体の「意思形成過程におけ
る情報」であり,かつ,構成市町長会という合議体における「会議に係る審議,協
議,検討,調査及び研究等に関する情報」であるといえる。
イ ところで,豊岡市は,本件条例10条5号により「意思形成過程におけ
る情報」を,同条例10条6号により「合議制機関等の」「会議に係る審議,協
議,検討,調査及び研究等に関する情報」を,それぞれ非公開事由とすることを定
めている。
 これらの情報を非公開としているのは,未だ「未成熟かつ不正確な情
報」であるからであって,本件情報は,まさに構成市町長会における討議内容ない
しそのための資料ともいうべきもので,未だ「未成熟かつ不正確な情報」であるか
ら,仮に,公立豊岡病院組合において,豊岡市と同様の公文書公開条例を有してい
たとしても,本件情報は,非公開事由とされるべきものである。
ウ 現に,公立豊岡病院組合は,本件情報は未成熟な情報であり,その内容
を公開することによって,住民に対して不正確な理解や誤解を与えるおそれがある
として,組合議会から構成市町長会の資料(本件情報を含む。)の公開請求があっ
ても,公開を断っている。
 当然,豊岡市が,公立豊岡病院組合に対し本件文書の公開を求めても,
入手することはできないものである。
エ また,構成市町長会においても,同会の各委員が外部の不当な圧力を受
けることなく忌憚のない意見交換ができる環境を確保するため,同委員相互の申し
合わせにより,従来から,公立豊岡病院組合の管理者から同委員に交付される文書
を部外秘扱いにしてきた。
オ さらに,公立豊岡病院組合の関係市町の中には,本件公開請求当時,未
だ公文書公開条例を制定していない町があり,本件情報の中にはそれらの町から提
供された情報が含まれていた。
カ 以上のことからすると,現段階において,公立豊岡病院組合自体が公開
していない本件情報を,豊岡市が本件条例に基づいて一方的に公開することは,本
件条例10条3号後段にいう「市と他の地方公共団体との協力関係又は信頼関係が
損なわれる」事態を招くことになる。
  (原告の主張)
本件情報は,以下述べるとおり,本件条例10条3号所定の非公開事由に該
当しない。
  (1) 本件条例10条3号後段の厳格解釈の必要性
   ア 構成市町長会は,関係市町の利害調整のために審議を行う公の機関であ
る。しかも,本件情報は,豊岡市民にとって直接影響のある新病院の移転新築計画
及びその施設等に関する情報並びにそれに伴う財政負担の程度,内容に関する情報
等である。
     特に,組合立豊岡病院の移転新築計画に関しては,既に病院用地の造成
工事が開始され,新築予定の病院の概要も示されるなど,住民にとって経済的負担
の増加や利用上の便宜の問題が目前に迫っている状況にある。本来なら,かかる計
画案は既に住民に公開され,各関係市町の議会等において,公立豊岡病院組合が求
める財政負担等が妥当か否かの議論が開始されていても不思議ではない時期にあ
る。
   イ このように構成市町長会における審議内容は,住民の重要な利害に関わ
るものであるから,本件文書を公開することにより「協力関係又は信頼関係が損な
われる」(本件条例10条3号後段)旨の主張を,無限定に行うことは許されるべ
きではない。
     「協力関係又は信頼関係が損なわれる情報」の意義は,当該情報の公開
により,例えば,①情報を提供した側にとって,住民や他の機関からの信頼を損う
ことになると客観的に認められる場合や,②住民に対し,徒に不安を与える場合な
ど,限定的に考えるのが相当である。
   ウ したがって,被告は,本件情報が,本件条例10条3号の非公開事由に
該当するという具体的理由,すなわち,本件文書の公開により,「市と他の地方公
共団体との協力関係又は信頼関係が損なわれる」具体的危険性を,文書の形式,内
容に応じて,個別具体的に主張,立証すべきである。
  (2) 本件情報は「未成熟かつ不正確な情報」ではない
公立豊岡病院組合は組合立豊岡病院の移転,新築を計画しているところ,
その病院の規模や職員の数及び配置等はもちろん,各関係市町の財政負担等につい
ても,同組合内部では検討を重ね,それを終えていることは,既に公表されている
基本計画及び調査費等必要経費の予算計上の事実及び既に病院用地の造成工事に着
手していること等により明らかである。
したがって,本件情報は,原告の公開請求の時点においては,もはや未成
熟かつ不正確な情報ではない。
  (3) 本件情報は「意思形成過程の情報」にあたらない
公立豊岡病院組合は関係市町の財政負担なしに運営してゆくことは不可能
であるが,さりとて,組合議会による議決によって一方的に関係市町に対して財政
負担を命じても円滑な組合運営はできないことから,構成市町長会は,関係市町を
代表する者により,主に財政負担に関し,事前の了承を得る場として設置されたも
のである。
そうすると,かかる構成市町長会に提出された本件情報は,既に組合内部
で審議,検討され,少なくとも,組合管理者が責任をもって構成市町長会に提案
し,各関係市町の長の了解を得るべき段階に至った情報,すなわち,その時点にお
いて既に成熟した情報として文書化されたものである。
したがって,本件情報は,構成市町長会の意思決定がなされた時点で,既
に未成熟な情報とはいえないから,「意思形成過程における情報」ではない。
  (4)まとめ
以上の(1)ないし(3)の諸事情に照らせば,本件情報は,「公にすることに
より,市と他の地方公共団体との協力関係又は信頼関係が損なわれる」(本件条例
10条3号後段)情報にはあたらない。
第4 当裁判所の判断
 1 事実の認定
前記第2の2の前提事実及び証拠(甲4の1~3,甲8,甲9,甲13,甲
14,乙4,証人A)並びに弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められ
る。
  (1) 構成市町長会の位置づけ
   ア 構成市町長会は,公立豊岡病院組合管理者の附属機関であるところ,本
件設置条例に基づき,組合管理者から同組合の運営や行う事業に関する諮問に応じ
る他,組合運営上の基本的事項あるいは重要事項について調査,審議,意見具申等
を行っている。
   イ 公立豊岡病院組合管理者は,組合運営を行うに当たって,通常,まず,
構成市町長会にその運営に関する重要な事項を提案し,それについて予め同会の意
見を求めた上で,組合議会に対して,構成市町長会の意見に沿った内容の提案を行
い,それに関して,組合議会の議決を得ることで公立豊岡病院組合としての最終的
意思を確定している。
   ウ 公立豊岡病院組合としての最終的意思決定は,上記のとおり組合議会の
議決によって決せられるものであって,構成市町長会の意見は,組合議会の審議及
び議決に対し,何ら法的拘束力を有するものではなく,組合議会は,構成市町長会
の意見を修正,変更し,同会の意向とは異なった議決をもなしうる。現に,組合議
会は,住民や組合職員の要望や実態等を考慮し,構成市町長会の意向とは異なった
財政負担の内容について議決したことも,多々ある。
  (2) 構成市町長会の審議方式
   ア 構成市町長会は合議制で,その半数以上の委員が出席した会議により同
市町長会としての審議,意思決定を行う。
   イ ところで,構成市町長会の委員は,関係市町の長の「あて職」とされて
いるが,同市町長会では,公立豊岡病院組合の運営に関する事項について,各々の
委員が,関係市町の長たる立場において獲得し得た知識や経験に基づいて審議ない
し意見交換を行い,組合管理者に対して構成市町長会としての意見具申を行ってい
る。
   ウ 構成市町長会は非公開で,そこでの審議内容は公開されていない。構成
市町長会では,調査,審議,意見具申等を行うための資料が提出されることになる
が,その資料の中には,関係市町から提出された資料も含まれている。
  (3) 本件情報の性質,内容等
ア 本件情報は,主に,組合立豊岡病院の移転新築計画及び経営計画並びに
それに伴う関連公共事業等の計画及び関係市町の財政負担計画(以下「組合立病院
の移転新築計画等」という。)に関する情報等である。公立豊岡病院組合管理者
は,被告を含む構成市町長会の各委員に対し,本件情報が記載された本件文書を交
付した。
   イ 本件文書は,公立豊岡病院組合管理者の附属機関である構成市町長会
が,組合立豊岡病院の移転新築計画等に係る事項について調査,審議,意見具申等
を行うための検討資料である。本件文書の中には,関係市町から公立豊岡病院組合
管理者に提出された資料も含まれている。
   ウ なお,公立豊岡病院組合管理者は,これまで,構成市町長会に提出した
資料について,組合議会からの交付請求があっても,同請求を断っている。また,
構成市町長会の各委員も,外部の不当な圧力を受けることなく,忌憚のない意見交
換ができる環境を確保するために,委員相互の申し合わせにより,これまで,公立
豊岡病院組合から交付を受けた資料を部外秘としてきた。
  (4) 関係市町の公文書公開条例の存否
    公立豊岡病院組合には,豊岡市のような公文書公開条例はなく,関係市町
の中にも,本件公開請求当時,豊岡市のように公文書公開条例が制定されていない
ところもあった。
 2 検 討
  (1) はじめに
被告は,本件文書を公開することができない理由として,(1) 本件文書は
本件条例2条2項の「公文書」に該当しないこと(争点(1)での被告の主張),(2)
 本件情報は本件条例10条3号所定の非公開情報に該当すること(争点(2)での被
告の主張)を,択一的に主張している。
そこで,まず,本件情報が本件条例10条3号所定の非公開情報に該当す
るか否か(争点2)について,以下検討する。
  (2) 本件条例10条3号の非公開事由の趣旨
    本件条例10条3号所定の事情が非公開事由とされたのは,豊岡市が市民
のため果たすべき責務は大きく,そのためになすべき役割,事務・業務は多岐に渡
り,その責務を果たすためには,他の地方公共団体を含む団体などとの連携・協力
が不可欠であるところ,仮に,他の団体との連携・協力関係にある事項について,
当該団体に諮ることなく,豊岡市の一存で一方的に公開することは,両者の協力関
係及び信頼関係を著しく損ない,かえって住民の利益に反する事態を招来すること
になりかねないことから,非公開とされたものである。
  (3) 本件条例10条3号前段該当性の検討
   ア 公立豊岡病院組合は,特別地方公共団体たる一部事務組合であるから
(当事者間に争いがない),本件条例10条3号にいう「他の地方公共団体」に該
当する。
   イ 構成市町長会は公立豊岡病院組合の一機関であり,同会の委員は関係市
町の長のあて職とされているところ,豊岡市長たる被告は,組合管理者の諮問に応
じて同会に委員として出席し,本件文書を取得したものである(前記第2の2
の(6)(7))。
     本件情報は,組合立病院の移転新築計画等に関する情報等であり,本件
情報が記載された本件文書は,公立豊岡病院組合管理者の附属機関である構成市町
長会が本件情報に係る事項について調査,審議,意見具申等を行うための資料であ
る。また,本件文書は,合議制をとっている同市町長会としての調査,審議,意思
形成を行うための検討資料でもある(前記第4の1(3)ア,イ)。
     以上のような,被告が本件文書を取得した経緯,及び本件情報の内容,
性質からすると,本件文書に記載された情報は,豊岡市と公立豊岡病院組合との間
の「協議,依頼等に基づく事務事業に関する情報」に該当することが認められる。
   ウ そうすると,本件情報は,「市と他の地方公共団体との間の協議,依頼
等に基づく事務事業に関する情報」に該当し,本件情報は本件条例10条3号前段
所定の要件を充足する。
(4) 本件条例10条3号後段該当性の検討
   ア 本件情報の性質,内容
     前記1の(1)(構成市町長会の位置づけ),同(2)(構成市町長会の審議
方式),同(3)(本件情報の性質,内容等)の事実に照らせば,本件情報は,組合立
病院の移転新築計画等に関する情報であり,構成市町長会という合議体における審
議,協議等の資料とするための情報であって,その後,組合議会においてさらに検
討の上,修正,変更等される可能性のある情報である。
     したがって,本件情報は,公立豊岡病院組合における意思形成過程での
情報ないし未だ未成熟かつ不正確な情報であり,その内容を公開することによっ
て,住民に対し,不正確な理解や誤解を与えるおそれのある情報であるといえる。
     そのため,公立豊岡病院組合自体が,構成市町長会に提出した資料につ
いて,組合議会からの交付請求があっても,同請求を断っているのであり,構成市
町長会の各委員が,外部の不当な圧力を受けることなく,忌憚のない意見交換がで
きる環境を確保するために,委員相互の申し合わせにより,公立豊岡病院組合から
交付を受けた資料を部外秘としてきたものである(前記1の(3)ウ)。
   イ 意思形成過程における情報
    (ア) 豊岡市を始めとする各地方公共団体が制定している公文書公開条例

     は,公文書の非公開事由として,本件条例10条5号と同趣旨(実施機
関が行う事務事業に係る審議,協議,検討,調査,研究その他意思形成の過程にお
ける情報であって,公にすることにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業
の公正な意思形成に著しい支障が生ずると認められるもの)の規定を置いているこ
とが多い(公知の事実)。
    (イ) 意思形成過程での情報が記載された文書を非公開とする趣旨は,以
下のとおりである。
     a 普通地方公共団体の内部的な意思形成のための情報は,最終的意思
形成に至る途中の過程での情報,すなわち普通地方公共団体の内部会議の中での情
報であって,そこで供される情報は,未だ未成熟かつ不正確なものが含まれている
ことも少なくなく,したがって,仮に,意思形成過程の中での情報ないし文書で,
未だ未成熟かつ不正確なものが公開されれば,住民に不正確な理解や誤解を与える
などの無用の混乱を生じる危険性が高い。
     b また,かかる未成熟かつ不正確な情報が公開されるとすれば,本来
行政の内部的意思形成機関として,様々な知識や経験に基づいた,忌憚のない意見
交換がなされるべき内部会議の場において,自由闊達な審議・検討ができなくなる
だけでなく,将来に亘りこのような抑止的な効果が働く結果,行政内部における調
査,審議等の遂行が著しく困難となり,ひいては,普通地方公共団体として,適切
かつ責任ある意思形成ができなくなる危険性が高い。
     c 以上のような理由から,各地方公共団体が制定している公文書公開
条例は,意思形成過程での情報が記載された文書を非公開としているのである。
    (ウ) 本件情報は,構成市町長会がそこでの調査,審議,意見具申等を行
うための資料であって,公立豊岡病院組合の最終的意思ではなく,同組合としての
意思形成過程における資料であるから,未だ未成熟かつ不正確な情報ないし資料と
いうべきものである。
      仮に,かかる情報ないし文書が外部に流出すると,関係市町の住民に
対し,あたかも当該情報が確定したかのような印象を与え,公立豊岡病院組合の運
営方針,すなわち組合立病院の移転新築計画等について,不正確な理解や誤解を与
えるなどの無用の混乱を生じさせる危険性が予想される。
      また,かかる情報が公開されれば,前記移転新築計画等に関する個々
の施策について,賛成あるいは反対する立場の者から,何らかの働きかけがなされ
ることも予想され,構成市町長会において,その委員たる各関係市町の長が,外部
の不当な圧力を受けることなく,自由闊達な審議,検討を行うことが将来に亘って
著しく困難となることも予想される。
      そうすると,本件文書に記載された本件情報は,「公にすることによ
り,当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正な意思形成に著しい支障が生じ
ると認められる」(本件条例10条5号)情報に該当すると認められる。
    (エ) したがって,仮に公立豊岡病院組合に本件条例と類似の公文書公開

     例が制定されていたとしても,本件情報は,意思形成過程における情報
(本件条例10条5号所定の非公開情報)として,非公開の取扱いをされるべき情
報ということになる。
   ウ 合議制機関等の会議に係る審議等に関する情報
    (ア) 豊岡市を始めとする各地方公共団体が制定している公文書公開条例

     は,公文書の非公開事由として,本件条例10条6号と同趣旨(合議制
機関等の会議に係る審議,協議,検討,調査等に関する情報であって,公にするこ
とにより公正又は円滑な議事運営が著しく損なわれると認められるもの)の規定を
置いていることが多い(公知の事実)。
    (イ) 上記情報が記載された文書を非公開とする趣旨は,会議における最
終的意思決定に至る前の情報の中には,未だ未成熟かつ不正確な情報が含まれてい
ることも少なくないが,このような情報が公開された場合,前記イ(イ)と同様の弊
害が生じ,普通地方公共団体としてとして適切かつ責任ある意思形成ができなくな
る事態が生じかねないため,かかる弊害を回避する必要があるからである。
    (ウ) 本件情報は,公立豊岡病院組合の内部機関で,しかも合議制の機関
である構成市町長会の会議に係る審議,協議,検討,調査に関する情報に該当す
る。本件情報は,前記アで認定したとおり未だ未成熟かつ不正確な情報であるとこ
ろ,かかる情報が流出すれば,前記イ(ウ)のような弊害が生じる危険性がある。
      そうすると,本件情報は,「合議制機関等の会議に係る審議,協議,
検討,調査等に関する情報であって,公にすることにより公正又は円滑な議事運営
が著しく損なわれると認められる」(本件条例10条6号)情報に該当することが
認められる。
    (エ) したがって,仮に公立豊岡病院組合に本件条例と類似の公文書公開

     例が制定されていたとしても,本件情報は,合議制機関等の会議に係る
審議等に関する情報(本件条例10条6号所定の非公開情報)として,非公開の取
扱いをされるべき情報ということになる。
   エ 構成市町長会の会議の非公開性等
    (ア) 構成市町長会は非公開で,そこでの会議内容が公開されていない
(前
     記1(2)ウ)。公立豊岡病院組合管理者は,これまで,構成市町長会に提
出した資料について,組合議会からの交付請求があっても,同請求を断ってきた。
構成市町長会の各委員も,委員相互の申し合わせにより,これまで,公立豊岡病院
組合から交付を受けた資料を部外秘としてきた(前記1(3)ウ)。
    (イ) 公立豊岡病院組合管理者が構成市町長会に提出した資料(本件文書
もその一つ)について,本件条例に基づき公開を認めると,前記イ,ウで説示した
と同様の弊害が生じるおそれがあるから,従前から前示(ア)のよ
     うな運営,取扱いがされてきたものである。
   オ 関係市町との関係を損なうおそれ
     本件文書中には,関係市町から提出された資料も含まれているところ,
関係市町の中には,本件公開請求当時,豊岡市のような公文書公開条例を制定して
いないところもあった(前記1(4))。
     公文書公開条例が制定されていない町の住民は,公文書の公開を求める
権利がないので,公文書公開条例を制定していない町から構成市町長会に提出され
た資料については,その住民からの公開請求が認められる余地はない。したがっ
て,豊岡市がかかる町から提出された情報(資料)を本件条例に基づいて一方的に
公開することになると,当該町との協力関係ないし信頼関係を損なう危険性が高
い。
   カ まとめ
     以上のア(本件情報の性質,内容),イ(意思形成過程での情報),ウ
(合議制機関等の会議に係る審議等に関する情報),エ(構成市町長会の会議の非
公開性等),オ(関係市町との関係を損なうおそれ)の事実及び事情からすると,
本件情報が記載された本件文書の公開は,本件条例10条3号にいう「豊岡市と他
の地方公共団体との協力関係又は信頼関係が損なわれる」事態を招くことになると
認めることができる。
     したがって,本件情報は,本件条例10条3号所定の非公開事由に該当
することが認められる。
 3 小 括
   以上によると,争点(1)について判断するまでもなく,原告の本件文書非公開
決定の取消請求は理由がない。
第5 結 論
以上の次第で,原告の本訴請求は理由がないので棄却することとし,訴訟費
用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり
判決する。
    神戸地方裁判所第2民事部
       裁判長裁判官        紙  浦   健  二
          裁判官        中  村      哲
裁判官        秋  田   志  保

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