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平成12年(行ケ)第437号 審決取消請求事件
平成15年2月27日口頭弁論終結
            判       決
     原     告    国 
     代表者法務大臣    森山眞弓
     指定代理人    野下智之
  同 石原淳一
     被     告    特許庁長官 太 田 信一郎
     指定代理人    星野浩一
  同 藤田 節
  同 村山 隆
  同 山口由木
  同 高木 進
  同 涌井幸一
  同    大橋良三
          主       文
   1 原告の請求を棄却する。
   2 訴訟費用は原告の負担とする。
            事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が平成11年審判第17560号事件について平成12年9月26日
にした審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
  原告は,平成9年10月31日,発明の名称を「ミニポテト」とする発明
(以下「本願発明」という。)につき特許出願(平成9年特許願第299888
号。以下「本願出願」という。)をしたが,平成11年10月5日拒絶査定を受け
たので,同年11月4日,これに対する不服の審判を請求した。特許庁は,これを
平成11年審判第17560号として審理し,その結果,平成12年9月26日
「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年10月18日にその謄
本を原告に送達した。
2 特許請求の範囲の記載
【請求項1】(以下「本願発明」という。)
「多様な形及び色を有する一口大のミニポテトを製造する方法であって:
アンデス原産栽培2倍体バレイショであるソラヌム・ステノトーマム(Solanum
stenotomum),ソラヌム・フレヤ(Solanumphureja)およびソラヌム・ゴニオカリ
ックス(Solanumgoniocalyx)から,混合受粉による交配を行って遺伝的変異に富
む雑種集団を形成する工程と,
 上記雑種集団を育種栽培し,その際のミニポテトの収量を含む選別基準に基
いて選抜することにより,前記雑種集団の再構成を行う工程と,
 この再構成された雑種集団を実生栽培する工程とを具備し,該実生栽培に際
しては,根圏を制御し,短日日長条件下で栽培し,イモの肥大期にはやや低温で管
理する方法。」
3 審決の理由の要点
 審決は,別紙審決書の写し記載のとおり,本願発明は,刊行物である「ポテ
トサイエンス,vol.11,p.1-9(1990),米田勉ら訳」(以下「引用刊
行物」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。),及び,周知技
術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法2
9条2項の規定に該当し,特許を受けることができないから,本願出願は,拒絶さ
れるべきである,と判断した。
 本願発明と引用発明との一致点・相違点についての審決の認定は,次のとお
りである。
「両者は,多様な形及び色を有するポテトに関するものである点で一致し,前
者が,
(イ)一口大のミニポテト
(ロ)アンデス原産栽培2倍体バレイショであるソラヌム・ステノトーマ
ム(Solanumstenotomum),ソラヌム・フレヤ(Solanumphureja)および ソラヌ
ム・ゴニオカリックス(Solanumgoniocalyx)から,混合受粉による交配を行って
遺伝的変異に富む雑種集団を形成する工程と,
(ハ)上記雑種集団を育種栽培し,その際のミニポテトの収量を含む選別基準
に基いて選抜することにより,前記雑種集団の再構成を行う工程と,
(ニ)この再構成された雑種集団を実生栽培する工程とを具備し,
(ホ)該実生栽培に際しては,根圏を制御し,短日日長条件下で栽培し,イモ
の肥大期にはやや低温で管理する方法であるのに対して,後者ではそのことが記載
されていない点で,相違している。」(審決書4頁11行~24行)
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 審決は,本願発明の技術内容を誤って認定し(取消事由1),本願発明と引
用発明との相違点を看過し(取消事由2),引用発明と本願発明との各相違点につ
いての判断を誤り(取消事由3ないし5),本願発明の顕著な作用効果を看過した
ものであり(取消事由6),これらの誤りがそれぞれ結論に影響することは明らか
であるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1 取消事由1(本願発明の認定の誤り)
(1)審決は,「請求項1に記載された「一口大のミニポテト」とは,本願明細
書の【0036】欄における1.5センチ~4.0センチの大きさの芋をミニポテ
トとする旨の記載からして,1.5センチ~4.0センチの大きさの芋のことを意
味するものと認められる。」(審決書3頁31行~34行)と認定した。しかし,
この認定は,誤りである。
 本願発明の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の段落
【0036】の記載は,栽培試験におけるミニポテトの収量を,いもの大きさに基
づいて分類する際,4.0㎝角の篩を通り抜け,1.5㎝角の篩上に残るものをミ
ニポテトの収量として量ったものであり,「一口大」のミニポテトのサイズが1.
5㎝ないし4.0㎝であるといっているわけではない。「一口大のミニポテト」と
は,本願明細書の段落【0005】に記載されているように,「ミニトマト大のバ
レイショ」であって,包丁を入れることなくそのまま皮ごと口の中に放り込むこと
ができる,2㎝ないし3㎝程度の直径のものである。
 審決のこの誤りは,審決が相違点(イ)として認定したもの(「一口大の
ミニポテト」に関するものであるか否か)の把握の誤りをもたらし,それにより,
同相違点についての判断をも誤らせたものである。
(2)被告は,本願発明の「一口大のミニポテト」の大きさが2㎝ないし3㎝程
度の直径のものであるとの原告の主張は,本願明細書に根拠がないものである,と
主張する。
 しかしながら,本願明細書の上記段落【0036】における記載は,先に
述べたように,単に,栽培試験におけるミニポテトの収量を,いもの大きさに基づ
いて分類する際,4.0cmの篩を通り抜けるが1.5cmの篩上に残るものをミ
ニポテトの収量として量ったものにすぎない。このミニポテトの粒径分布が正規分
布であることは当業者の常識であるから,当業者は,実施例に係る上記記載に基づ
き分類された「一口大」のミニポテトのほとんどが2㎝ないし3㎝程度の直径のも
のであると理解するのである。また,一口大のミニポテトが,ほとんど2㎝ないし
3㎝程度の直径のものであることについては,本願明細書の段落【0037】にお
ける表1によっても裏づけられる。すなわち,表1は,段落【0036】記載の分
類による,栽培試験における試験区当たりのいもの大きさ別収量(kg)を示すも
のであり,1.5㎝角の篩を通り抜けた極小イモの収量と4.0㎝角の篩の上に残
った極大イモの収量とを比較した場合に,極小イモの収量(kg)が極大イモの収
量(kg)よりも多いことから,数についても極小イモの個数の方が極大イモの個
数よりも多いことがわかり,これを正規分布に照らし合わせれば本願発明の一口大
のミニポテトは2㎝ないし3㎝程度の直径のものがほとんどであることが理解でき
るのである。
2 取消事由2(相違点の看過)
 本願発明により得られるミニポテトは,雑種集団でありながら顕著に小さな
サイズを有するポテトの集団,すなわち,「多様な形及び色を有する一口大」のミ
ニポテトである。審決は,引用刊行物の記載に基づき,引用発明の「ソラヌム・ス
テノトーマム,ソラヌム・フレヤ及びソラヌム・ゴニオカリックスは,多様な形及
び色を有する小粒なバレイショである」(審決書3頁28行~30行)と認定した
上で,本願発明と引用発明とを,「両者は,多様な形及び色を有するポテトに関す
るものである点で一致し」(審決書4頁11行)と認定した。しかし,引用発明の
これらの「バレイショ」は,品種ごとに特徴のある色や形を有するものの,同一品
種内においては遺伝的均一性を有するものであり,この点において,本願発明によ
り得られるミニポテトとは異なる。したがって,審決が,「多様な形及び色を有す
る」という点につき,上記のとおり一致点を認定するにとどまるのは,上記相違点
を看過するという誤りを犯すものである。
3 取消事由3(相違点(イ),(ロ)(一口大のミニポテト,3種の交配)に
ついての判断の誤り)
 審決は,本願発明が,「(イ)一口大のミニポテト」に関するものであり,
「(ロ)アンデス原産栽培2倍体バレイショであるソラヌム・ステノトーマ
ム(Solanumstenotomum),ソラヌム・フレヤ(Solanumphureja)およびソラヌ
ム・ゴニオカリックス(Solanumgoniocalyx)から,混合受粉による交配を行って
遺伝的変異に富む雑種集団を形成する工程」(審決書4頁13行~18行)を有す
る方法であるのに対し,引用刊行物にはそのことが記載されていない点を,それぞ
れ本願発明と引用発明との相違点(イ),(ロ)と認定した上で,「刊行物1に
は,アメリカではカラフルなアンデスポテトが高価で取り引きされていること,各
種小型野菜の開発が熱心に行われ小粒でカラフルなポテトの需要が増加しているこ
と,及びメイン州でゴルフボール(約4センチ)からビリヤードぐらいの大きさの
ポテトが大量に販売されたこと等が記載されていることから,小粒なアンデス産ポ
テトを親とした小型野菜の開発は,当業者が容易に着想し得ることである。」(審
決書4頁27行~32行)と判断した。しかし,この判断は,誤りである。
 メイン州で販売されたポテト(ジャガいもである。以下,ジャガいものこと
を「ポテト」という。)の中に含まれているゴルフボール大のポテトは,生育が悪
く未熟なものであり,不規則な形で目が深いという欠点を有するもので,ゴルフボ
ール大の完熟したポテトが安定して供給されているわけではない。したがって,
「小粒」なポテトを更に小さくして極小サイズのポテトとすることは,このような
欠点をより増幅させることが予想されるのであるから,2㎝ないし3㎝程度の直径
を有する「一口大のミニポテト」を開発することは,当業者にとって,容易に着想
し得ることではない。
 このように,「一口大のミニポテト」の開発が容易に着想し得ないものであ
る以上,「ソラヌム・ステノトーマム」,「ソラヌム・フレヤ」及び「ソラヌム・
ゴニオカリックス」を適宜交配し,その後,「一口大の大きさのミニポテト」を選
抜することを,当業者が適宜になし得る設計的事項とはいうことはできない。
4 取消事由4(相違点(ロ),(ハ)(3種の交配,育種栽培と選抜)につい
ての判断の誤り)
  審決は,本願発明が,「(ロ)アンデス原産栽培2倍体バレイショであるソ
ラヌム・ステノトーマム(Solanumstenotomum),ソラヌム・フレヤ(Solanum
phureja)および ソラヌム・ゴニオカリックス(Solanumgoniocalyx)から,混合
受粉による交配を行って遺伝的変異に富む雑種集団を形成する工程と,(ハ)上記
雑種集団を育種栽培し,その際のミニポテトの収量を含む選別基準に基いて選抜す
ることにより,前記雑種集団の再構成を行う工程」(審決書4頁14行~20行)
を有する方法であるのに対し,引用刊行物では,そのことが記載されていない点で
相違すると認定した上で,上記相違点(ロ),(ハ)について,「その際,ポテト
を作出する手法として,ポテトを交配させた後に選抜する方法は周知慣用の手法
(・・・)であることから,刊行物1に記載された小粒なポテト,例えば「ソラヌ
ム・ステノトーマム」,「ソラヌム・フレヤ」および「ソラヌム・ゴニオカリック
ス」を適宜交配し,その後,一口大の大きさのものを選抜することは,当業者が適
宜なし得る設計的事項と認められる。」(審決書4頁33行~5頁8行)と判断し
た。しかし,審決の上記判断は誤りである。
 審決の上記判断は,本願発明の発明者が,「一口大のミニポテト」を育成す
るために鋭意研究した結果,アンデス産の多数の種類のポテトの中から,ソラヌ
ム・ステノトーマム,ソラヌム・フレヤ及びソラヌム・ゴニオカリックスの3種類
のポテトを組み合わせることに想到し得たことの困難性を認識していない。
 本願発明においてアンデス原産栽培2倍体バレイショである3種から,混合
受粉による交配を行って遺伝的変異に富む雑種集団を形成したのは,「多様な形及
び色を有する一口大のミニポテト」を作出するためであり,その中での前記工程が
有する技術的意義は,4倍体のバレイショに比べてサイズが小さい2倍体バレイシ
ョを親株として交配を施すことにより,極小サイズのポテトを産する個体を含む可
能性がある遺伝的に多様な雑種集団を作り出すためのものである。このような本願
発明の方法の技術的意義は重要である。
5 取消事由5(相違点全体についての判断の誤り)
 審決は,本願発明が,「(ニ)この再構成された雑種集団を実生栽培する工
程とを具備し,(ホ)該実生栽培に際しては,根圏を制御し,短日日長条件下で栽
培し,イモの肥大期にはやや低温で管理する方法であるのに対して,後者ではその
ことが記載されていない点で,相違している」(審決書4頁21行~24行),と
認定した上で,上記相違点(ニ)について,「実生による栽培は,品種改良を行う
際に一般的に採用される方法であり,また栄養繁殖に比べてイモの小さくなること
もよく知られたことである。」(審決書5頁10行~11行)と判断し,相違点
(ホ)について,「ポテト等を育苗箱などの容器内で栽培することは,本願出願前
に周知(・・・)のことであり,また株間を狭くするほど株当たりの収量の低下す
ることも栽培上よく知られたことであるので,より小粒のアンデス産ポテトを得る
ために,育苗箱などの容器内で栽培することは,当業者が容易になし得ることと認
められる。また,ポテトの芋の形成適温は約17℃であることや芋の発育時はやや
短日条件がよいこと等は良く知られた栽培条件(・・・)であることから,当業者
が適宜決定し得るものと認められる。」(審決書5頁19行~30行)
と判断し,その上で,「本願発明は,刊行物1に記載された発明及び周知技術に基
いて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められ」(審決5頁下から
2~1行)と判断した。しかし,この判断は誤りである。
 本願発明の要旨は,本願特許請求の範囲請求項1に記載のとおりのものであ
って,まず,ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・フレヤ及びソラヌム・ゴリオ
カリックスの3種を選定し,これを前提に,本願明細書の請求項1に記載された各
工程を具備し,これらの工程を組み合わせることにより,本願発明の完成に至った
ものである。審決は,上記の各工程に関する技術的手段が周知であるという理由を
示すだけで,これら手段を採用し,工程として組み合わせることの困難性を何ら考
慮せずに本願発明の進歩性を否定するものであり,誤りである。
6 取消事由6(本願発明の顕著な効果の看過)
 審決は,「本願発明の効果についても,刊行物1の記載及び周知技術から予
測し得るものと認められる。」(審決書5頁31行~32行)と判断した。しか
し,この判断も誤りである。
 本願発明により得られるミニポテトは,雑種集団でありながら,多様な形及
び色を有する顕著に小さなサイズの一口大のミニポテトの集団である。本願明細書
における実施例の表1(甲第2号証【0037】段落)から算出できるように,本
願発明により生産されるポテトのうち,85%以上が一口大のミニポテトとして得
られるのであり,そのほとんどは2㎝ないし3㎝程度の直径のものである。このよ
うに,本願発明により,食用のポテトが具備すべき特性を有する極小サイズの完熟
ミニポテトを高収量で安定して提供することが可能となったのである。「一口大」
であり,切らずに皮ごと食卓に提供されるミニポテトにおいて,本願発明のように
多様な形及び色を有するということは,その形,色の多様性を食材として生かすこ
とができるという更なる作用効果を奏するものである。すなわち,本願発明によれ
ば,色,形,そして風味が様々な一口大のサイズのミニポテト一つ一つをスナック
菓子の感覚で楽しみながら食することができるのである。本願発明のこのような顕
著な効果は,引用刊行物の記載及び周知技術から予測し得るものではない。
また,単に根圏を制限する手法,すなわち,育苗箱などの容器内で栽培する
手法によっては,生育自体が抑制されるために,その成果は1個体に付くいも数の
減少となって現れる。これに対し,本願発明によって得られるミニポテトは,雑種
集団からの選抜と雑種集団の再構成の過程で,根圏の制限による生育抑制がいも数
の減少ではなく,いも1個の重量の顕著な減少として現れるよう改善を重ねたもの
である。
第4 被告の反論の要点
1 取消事由1(本願発明の認定の誤り)について
 原告は,本願明細書の段落【0036】の記載は,栽培試験におけるミニポ
テトの収量を,いもの大きさに基づいて分類する際,4.0㎝角の篩を通り抜け,
1.5㎝角の篩上に残るものをミニポテトの収量として量ったものであり,「一口
大」のミニポテトのサイズが1.5㎝ないし4.0㎝であるといっているわけでは
ない,「一口大のミニポテト」とは,本願明細書の段落【0005】に記載されて
いるように,「ミニトマト大のバレイショ」であって,包丁を入れることなくその
まま皮ごと口の中に放り込むことができる,2㎝ないし3㎝程度の直径のものであ
る,と主張するが,失当である。
 原告の上記主張は,本願発明の「一口大のミニポテト」は,本願明細書記載
の「ミニポテト」の中で特定の大きさのものを指すこと,すなわち「ミニポテト」
と「一口大のミニポテト」とを別のものであることを意味する。しかし,本願明細
書には,「本発明はミニポテト,即ち,皮ごと一口で食べられるミニトマト大のバ
レイショを産生する・・・製造する方法に関する。」(甲第2号証段落【000
1】)とあり,「ミニポテト,即ち,皮ごと一口で食べられる」と記載されている
ことから明らかなように,「一口大」はミニポテトを修飾する形容詞にすぎず,
「ミニポテト」と「一口大のミニポテト」とは,本願明細書において同一の概念で
ある。そして,1.5㎝ないし4.0㎝の大きさのものは一口で食べられる大きさ
である。また,市販のミニトマトにも大きさが1㎝ないし4㎝程度の種々のものが
あり,「ミニトマト大」であることが直ちに2㎝ないし3㎝の大きさであることを
意味するということはできない。本願発明の「一口大のミニポテト」の大きさが2
㎝ないし3㎝程度の直径のものであるとの原告の主張は,本願明細書に根拠がない
ものである。
2 取消事由2(相違点の看過)について
 審決は,「ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・フレヤ及びソラヌム・ゴ
ニオカリックスは,多様な形及び色を有する小粒なバレイショである」(審決書3
頁28行~30行)と認定した。
 アンデス産ポテトに関して,引用刊行物には,「アンデスのバレイショ(各
種のSolanum種)の大部分は他の地域の人々が普通に扱っているものとは全く異なっ
ている。これらの芋はしばしばあざやかな黄色や濃い紫色など多様な色の皮と肉を
もっている。いくつかは驚くべき形-細長いもの,偏平なもの,しわだらけのもの
-をしており,多くは豊かな風味と高い栄養価がある。」(甲第4号証2頁5行~
8行)と記載され,さらに,ソラヌム・ステノトーマムについて「赤,黒,白色を
呈しており」(同4頁5行)及び「いくつかの系統はいくらか耐霜性をもってい
る。」(同4頁9行~10行),ソラヌム・ゴニオカリックスについて「多くの品
種は白花で黄色の芋」(同4頁15行)及びソラヌム・フレヤについて「少なくと
も500もの名前のついた品種が知られており,・・・多彩な色(しばしば紫色)
で」(同4頁29行~30行)と紹介されている。
 以上の記載を踏まえれば,引用刊行物に記載された「ソラヌム・ステノトー
マム,ソラヌム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フレヤ」は,遺伝的に確立され
た一つの品種(イネに例えれば,「コシヒカリ」,「ササニシキ」等のこと,トマ
トでは「桃太郎」等のこと。)を意味するのではなく,いろいろな品種が集まった
分類学上の総名称(例えば「イネ」,「トマト」という総称)のことであることが
分かる。
 審決では,引用刊行物に記載された「ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌ
ム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フレヤ」は,それぞれ一つの品種を意味する
のではなく,種々の色や形を有するものの総称であるという意味から「多様な形及
び色を有する小粒なバレイショである」(審決書3頁30行)と認定し,本願発明
と引用発明とを「両者は,多様な形及び色を有するポテトに関するものである点で
一致し」(同4頁11行)と認定したのである。
 しかも,引用刊行物には,「彼らは1枚の畑に200もの異なるバレイショ
を栽培することがある。」(甲第4号証2頁4行~5行)と記載されており,これ
らの各種混ざった,あるいは自然交雑された雑種のポテトは,区分けされることな
く,多様な色や形を有する雑多な集団として,収穫され利用されていると考えられ
る。
 本願発明のミニポテトの雑種集団が,多様な形及び色を有するのは,「多様
な形及び色を有する小粒」の親植物を交配して作出された,複数の雑種の「ミニポ
テト」が混在した集団の状態になっているからである。上記のとおり,引用発明も
「多様な形及び色を有する」雑種集団であり,この点において両発明の間には何ら
の差異もない。そこで,審決では,本願発明と引用発明との一致点を「多様な形及
び色を有するポテトに関するものである点」(審決書4頁11行)と認定したので
あり,この認定に誤りはない。
3 取消事由3(相違点(イ),(ロ)(一口大のミニポテト,3種の交配)に
ついての判断の誤り)について
 原告は,引用刊行物に記載されたメイン州で販売されていたゴルフボール大
のポテトの欠点を挙げて,一口大のミニポテトを開発することは,当業者にとって
容易に着想し得ることではない,と主張する。
 しかし,アンデス産ポテトを紹介した引用刊行物には,「これらのあまり知
られてない作物にはかつてない好機を迎えている。小粒や個性的な芋の新しい市場
が出現しつつある。たとえば,北アメリカでは食品産業が小型の野菜の開発に熱心
であり,とくに小粒でカラフルなバレイショの需要が増加している。」(甲第4号
証2頁13行~15行)と記載されているのに引き続いて,小粒なポテトや個性的
なポテトの新しい市場が出現していることの例示として,メイン州で販売されてい
たポテトが記載されているのである。すなわち,引用刊行物には,小粒でカラフル
なポテトの需要が増加しており,このような小型野菜の開発に,アンデス産ポテト
を利用することができることが示唆されているのである。引用刊行物には,「一口
大のミニポテト」自体については記載されていないとはいえ,そこに記載されてい
る小粒でカラフルなポテトの需要が増加しているという状況は,より「小粒で多様
な色及び形のミニポテト」を作出することの動機付けとしては,十分なものである
ということができる。
 アンデス産ポテトに着目して新たなポテトを製造することは,当該技術分野
においては何ら珍しいことではない。現に,アンデス産ポテトを利用して商品化さ
れたポテトの品種は多数存在し,審決は,その具体的名称も挙げている(審決書5
頁1行~4行)。
 そして,細かく切らずに丸ごと,場合によっては皮ごと煮物などに利用され
る小粒の「新じゃが」や「ミニトマト」等の小型野菜が既に知られていることか
ら,小粒なものとする際の具体的な大きさは,これら小型野菜の大きさ,市場の嗜
好等を勘案して適宜決め得るものであり,本願発明が「一口大」の大きさを選択し
た点に,格別の困難性はない。
4 取消事由4(相違点(ロ),(ハ)(3種の交配,育種栽培と選抜)につい
ての判断の誤り)について
 原告は,アンデス産の多数の種類のポテトの中から,ソラヌム・ステノトー
マム,ソラヌム・フレヤ及びソラヌム・ゴニオカリックスの3種類のポテトを組み
合わせることに想到することの困難性を主張する。
 しかし,引用刊行物に記載されている8種類のアンデス産ポテトの中から,
小粒であると記載されたソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・ゴニオカリックス
及びソラヌム・フレヤを利用して,新たな小粒でカラフルなポテトを作出しようと
することは,当業者が容易に着想し得ることである。
原告は,本願発明においてアンデス原産栽培2倍体バレイショである3種か
ら,混合受粉による交配を行って遺伝的変異に富む雑種集団を形成する技術的意義
は重要である,と主張している。
 しかし,引用刊行物には,上述のとおり,アンデスでは,種々の異なるポテ
トを同じ畑で栽培していることが記載されているのであるから,遺伝的変異に富む
雑種集団としてポテトを栽培し,雑種集団のまま利用に供することが,格別なこと
であるとはいえない。
 ポテトは,塊茎で繁殖させることが可能な植物である。しかし,新たな形質
を持つポテトを作出する手法として,ポテトを交配させた後に選抜することは,審
決で例示したように(審決書4頁33行~5頁1行)周知慣用の手法である。
 そして,本願明細書の実施例に示された,母集団の形成方法は,「合計14
30個体のアンデス原産の3種類の栽培2倍種を,圃場に無作為に配置し,放任受
粉によって得た種子を母集団とした。」(甲第2号証【0012】(I))という
もので,三種類のポテトの間で交配を行う際に,交配親を特定をすることなく無秩
序に行っており,自然交雑の状態に近く,交配方法に格別の技術的意義を認めるこ
とはできない。
したがって,審決が「刊行物1に記載された小粒なポテト,例えば「ソラヌ
ム・ステノトーマム」,「ソラヌム・フレヤ」および「ソラヌム・ゴニオカリック
ス」を適宜交配し,その後,一口大の大きさのものを選抜することは,当業者が適
宜なし得る設計的事項と認められる。」(審決書5頁5行~8行)と判断した点に
誤りはない。
5 取消事由5(相違点全体についての判断の誤り)について
 原告は,本願発明は,ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・フレヤ及びソ
ラヌム・ゴニオカリックスの3種を選定し,これを前提に,本願明細書の請求項1
に記載された各工程を具備し,これらの工程を組み合わせることにより,本願発明
の完成に至ったものであって,審決は,上記の各工程に関する技術的手段が周知で
あるという理由を示すだけで,これら手段を採用し,工程として組み合わせること
の困難性を何ら考慮せずに本願発明の進歩性を否定するもので,誤りである,と主
張する。
 しかし,前に述べたとおり,引用刊行物には,アンデス産ポテトに注目し
て,小粒でカラフルなポテトを製造することが示唆され,引用刊行物に小粒である
と記載されている「ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・ゴニオカリックス及び
ソラヌム・フレヤ」を交配親として利用して,小粒で多様な色及び形を有するポテ
トを作成しようとすることは,当業者が容易に着想し得ることである。そして,本
願発明の請求項1に記載された各栽培条件は,品種改良により新規なポテトを作出
する際に当業者が当然に採用するはずの栽培条件にすぎない。すなわち,審決にお
いて文献を挙げて示したように(審決書5頁10行~17行),実生による栽培
は,品種改良を行う際に一般的に採用される方法であり,また栄養繁殖に比べてい
もの小さくなることもよく知られたことであるから,より小さい粒のポテトの開発
を目的として,従来の小粒のポテトを交配してその中から,目的とするポテトを選
抜することは,格別困難なことではない。また,育苗箱等の容器等で根圏を制限し
て栽培すると,地下部の生育が抑制され,いもが小さくなることもよく知られてい
ることであって,小粒のポテトを収穫するために根圏を制御することは,当業者が
容易になし得ることである。ポテトのいもの形成適温が約17℃であることやポテ
トの発育時はやや短日条件がよいこと等は,審決で例示したように(5頁27~3
0行),よく知られた栽培条件である。引用刊行物にも,本願発明で用いられる種
ではないものの,S.Andigenaにつき,「短日条件下でよく芋を形成する」ことが記
載されており(甲第4号証8頁3行~4行),ポテトが形成されやすい温度や日長
条件を調整することは,実験に基づいて適宜になし得る程度のことである。
6 取消事由6(本願発明の顕著な効果の看過)について
 原告は,本願発明により,食用のポテトが具備すべき特性を有する極小サイ
ズの完熟ミニポテトを高収量で安定して提供することが可能となったのである,本
願発明によれば,色,形,そして風味が様々な一口大のサイズのミニポテト一つ一
つをスナック菓子の感覚で楽しみながら食することができるのである,本願発明の
このような顕著な効果は,引用刊行物の記載及び周知技術から予測し得るものでは
ないと主張するが,失当である。
 引用刊行物に「小粒」であると記載されている「ソラヌム・ステノトーマ
ム,ソラヌム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フレヤ」を適宜交配することによ
り,一口大で多様な色及び形を有するポテトが高収量で安定して得られることは,
当業者が予測し得ることである。また,新ジャガなどの小粒のポテトを皮ごとその
まま料理に利用することも,よく知られていることであるので,一口大のミニポテ
トを,スナック菓子の感覚で食することも,当業者が予測し得る範囲内のことであ
る。
 原告は,本願発明によって得られるミニポテトは,根圏の制御による生育抑
制がポテトの数の減少ではなく,ポテト1個の重量の顕著な減少として現れるよう
改善を重ねたものである,とも主張する。しかし,本願明細書には,ポテトの数に
ついては記載されておらず,原告の主張は,本願明細書の記載に基づかないもので
ある。また,仮に,一植物体当たりのポテトの数が減少したとしても,栽植密度を
上げることができるのであるから,一定面積当たりの収穫量が減少するとはいえな
い。本願明細書の実施例においても,収穫量はポテトの数ではなく,ポテトの収量
で表示しているのであり(甲第2号証【0037】【表1】),ポテト数の減少が
予想されるとしても,密植が可能なのであるから,根圏を制御する栽培方法を採用
することが困難であるとはいえない。
第5 当裁判所の判断
1 国有特許に関する出願,不服審判請求及び取消訴訟の行為主体について
  本件の特許出願及び拒絶査定に対する不服審判請求の各手続は,神戸大学長
により,あたかも,同大学長自身が出願人であり,請求人であるかのような形でな
されている。また,本件訴訟も,これと同様の形で提起され,遂行されてきた。し
かしながら,本願発明につき特許を受ける権利は,国有財産であり,その帰属主体
は国であるから,これにつき特許出願人となり,不服審判の請求人となり,審決取
消訴訟の当事者となるべき者は,国自体以外にはあり得ない。のみならず,神戸大
学長は,国の機関であって,財産権の主体にはなり得ないから,特許を受ける権利
の主体になることは,およそあり得ない。これらのことは,自明のことというべき
であるから,本件で神戸大学長によってなされている上記各手続は,同大学長が,
国の機関としての立場においてこれらを行う権限を有することから(国有財産法2
条1項5号,3条3項,6条,8条1項但書(同法施行令5条1項4号),同条2
項,9条1項参照。ただし,後述のとおり,訴訟行為にはこの権限は及ばな
い。),国自体を主体(当事者)としてなされたものとして把握するのが相当であ
る(この場合には,主体(当事者)としての国は,便宜,これを行う権限を有する
機関を示すという形で表示されているとみることになる。)。
  ただし,本件訴訟は,国を当事者とする訴訟であるから,「国の利害に関係
のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」1条により,法務大臣が国
を代表すべきものであり,法務大臣又は法務大臣によりその代理人とされた者以外
の者は,訴訟行為をなし得ない。本件訴訟は,当初,神戸大学長の名前により,神
戸大学長により選任された訴訟代理人により提起され,遂行されたものであるた
め,これらの訴訟行為は,すべて,代理権のない者によってなされたものというこ
とになる。しかし,後に,法務大臣により代理人が指定され,同代理人は,これま
での訴訟代理人がなしてきた訴訟行為のすべてを追認した。これにより,本件訴訟
の提起も含め,これまでの訴訟代理人がなしてきた訴訟行為は,すべて,さかのぼ
って有効なものとなると解すべきである。
2 取消事由1(本願発明の認定の誤り)について
 原告は,審決の「請求項1に記載された「一口大のミニポテト」とは,本願
明細書の【0036】欄における1.5センチ~4.0センチの大きさの芋をミニ
ポテトとする旨の記載からして,1.5センチ~4.0センチの大きさの芋のこと
を意味するものと認められる。」(審決3頁下から7~4行)との認定は誤りであ
る,と主張する。
 本願発明を特定する特許請求の範囲の請求項1の記載は,前出第2の2のと
おりである。そこには,「多様な形及び色を有する一口大のミニポテトを製造する
方法であって:」との記載はあるものの,この「一口大のミニポテト」の大きさを
より具体的に明らかにする記載はない。その文言解釈からすれば,通常人が一口で
そのすべてを口に入れることができる程度の大きさを意味するものと解することは
可能である。しかし,同じく通常人といっても,男性と女性,あるいはその年齢層
のみならず,各人の顔の造作等によって,その口の大きさやその開き具合は多様で
あることが明らかであるから,上記のような解釈からは,「一口大のミニポテト」
の大きさを明確に理解することは困難である。
 そこで,本願発明の発明の詳細な説明を見てみる。
 甲第2及び第3号証によれば,「発明の詳細な説明」には,「一口大のミニ
ポテト」を明確に定義した記載はないものの,次の記載があることが認められる。
「【0001】
本発明はミニポテト,即ち皮ごと一口で食べられるミニトマト大のバレイシ
ョ・・・
【0036】
・・・上記栽培試験において,試験区(24育苗箱)当たりのイモの大きさ別
収量(kg)は下記の通りであった。なお,イモの大きさに基づく分類は,1.5㎝
角の篩と4.0㎝角の篩とを用い,下記のようにして行った。即ち,1.5㎝の篩
を通り抜けるものを極小イモ,4.0㎝の篩の上に残るものを極大イモとし,4.
0㎝の篩を通り抜けるが1.5㎝の篩上に残るものをミニポテトとした。
【0037】
【表1】(省略)
【0038】上記の結果から明らかなように,今回の栽培におけるミニポテ
トの収量は,何れも略80%以上であった。特に,密植区において,ミニポテトの
高い生産量が得られた。
【0039】
【発明の効果】以上詳述したように,本発明によれば,皮ごと一口で食べら
れるミニポテトを栽培することができ,スナック菓子およびビールのつまみとして
有用な食材を提供することができる。」
 本願明細書の発明の詳細な説明では,上記のように,「ミニポテト」を「皮
ごと一口大で食べられるミニトマト大のバレイショ」と説明した上で,4.0㎝角
の篩を通り抜け,1.5㎝角の篩上に残るものをミニポテトと,1.5㎝の篩を通
り抜けるものを極小イモ,4.0㎝の篩の上に残るものを極大イモと定義してい
る。本願明細書の上記記載状況からすれば,本願明細書においては,ミニポテトの
中に,一口大のものと,そうでないものとの二種類のものがあるということはでき
ず,段落【0036で】で定義された大きさのミニポテトと,皮ごと一口で食べら
れるミニポテトすなわち「一口大のミニポテト」と同じ対象を意味するものとし
て,使用されているものと認められ,そうである以上,本願明細書においては,本
願発明の「一口大のミニポテト」とは,4.0㎝角の篩を通り抜け,1.5㎝角の
篩上に残るもののことであると認めるのが合理的である。
 原告は,本願明細書の段落【0005】の「ミニトマト大のバレイショ」と
の記載,並びに,段落【0036】及び【0037】の記載と,ミニポテトの粒径
分布が正規分布であることからすれば,本願発明に係る「一口大のミニポテト」と
は,2㎝ないし3㎝程度の直径のものである,と主張する。しかし,「ミニトマ
ト」は,「トマトの栽培品種。果実は直径二~三センチメートルの球形で赤く熟
す。」(大辞林2332頁)ものであるから,2㎝ないし3㎝程度のものが多いと
しても,「ミニトマト大のバレイショ」とは,「一口大のミニポテト」と同じこと
をいっているにすぎない。また,原告の主張のとおり,本願明細書の段落【003
7】の表1のミニポテト粒径分布が正規分布であり,粒径2㎝ないし3㎝程度の粒
径のミニポテトが多いとしても,それは,収穫されたポテトとして,2㎝ないし3
㎝程度の直径のものが多く収穫されることを意味するにすぎず,本願発明の「一口
大のミニポテト」につき,その大きさが2㎝ないし3㎝程度の直径のものに限定さ
れることにはならないことは当然である。そもそも,発明の目的とするポテトの大
きさが2㎝ないし3㎝程度のものであるならば,通常ならば,4.0㎝角の篩を通
り抜け,1.5㎝角の篩上に残るものをミニポテトと定義してその収量を量ったり
しないで,端的に3㎝角の篩を通り抜け,1.5㎝角の篩上に残るものをミニポテ
トと定義することとなるであろう。本願発明において別に考えるべきことを根拠づ
ける資料は,本件全証拠を検討しても見いだすことができない。原告の上記主張
は,採用することができない。
3 取消事由2(相違点の看過)について
 原告は,審決が,本願発明と引用発明とにつき,「両者は,多様な形及び色
を有するポテトに関するものである点で一致し」(審決書4頁11行)と認定した
だけで,本願発明によって得られるミニポテトが雑種集団であるのに対し,引用発
明におけるポテト(バレイショ)は同一品種内においては遺伝的均一性を有する,
という点を認定していないのは,相違点の看過である,と主張する。
 しかし,甲第4号証によれば,引用刊行物には,アンデス産ポテトの全般に
関して,「アンデスのバレイショ(各種のSolanum種)の大部分は他の地域の人々が
普通に扱っているものとは全く異なっている。これらの芋は,しばしばあざやかな
黄色や濃い紫色など多種な色の皮と肉をもっている。いくつかは驚くべき形-細長
いもの,偏平なもの,しわだらけのもの-をしており,多くは豊かな風味と高い栄
養価がある。」(同2頁4行~7行)との記載があり,ソラヌム・ステノトーマム
については,「細長く,でこぼこした円筒形で,赤,黒,白色を呈しており,小粒
で目が深く,いくつかはらせん形をしている」(同4頁4行~5行)との記載があ
り,ソラヌム・ゴニオカリックスについても,「多くの品種は白花で黄色の芋
(皮,肉とも)」(同4頁15行)との記載があり,ソラヌム・フレヤについて
も,「小粒で形は不規則である」(同4頁20行),「少なくとも500もの名前
のついた品種が知られており,・・・多彩な色(しばしば紫色)で,らせん状にね
じれた形をしている。」(同4頁28行~29行)との記載があることが認められ
る。
 引用刊行物のこれらの記載からすれば,同刊行物に記載された「ソラヌム・
ステノトーマム,ソラヌム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フレヤ」は,それぞ
れが遺伝的に確立された一つの品種を意味するのではなく,多数のいろいろな品種
が集まった分類学上の総名称のことであることを,容易に理解することができる。
 甲第4号証によれば,引用刊行物には,「今でも彼らは1枚の畑に200も
の異なるバレイショを栽培することがある。」(同2頁4行~5行)と記載されて
いることが認められ,この記載からすれば,アンデス山脈の山中の畑においては,
さまざまな品種のバレイショが自然に交雑され,特定の品種ごとに区分けされるこ
となく,多様な色や形を有する雑多な集団として,育成され収穫されているものと
認められる。
 審決では,引用刊行物に記載された「ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌ
ム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フレヤ」は,それぞれ一つの品種を意味する
のではなく,種々の色や形を有する多数の品種の総称であり,かつ,これらが同一
の畑で雑多な集団として一緒に栽培され,収穫されることも珍しくないことから,
「多様な形及び色を有する小粒なバレイショである」(審決書3頁30行)と認定
したものと理解することができる。また,本願発明の「ミニポテトの雑種集団」
が,多様な形及び色を有するのは,「多様な形及び色を有する小粒」の親植物を交
配して作出された,複数の雑種のミニポテトを混在した集団の状態にしているから
である。そうすると,両者は,いずれも,上記の意味で多様な形及び色を有するポ
テトであるということができ,両者の間に原告主張のような相違は存在しない。審
決が,本願発明と引用発明とを「両者は,多様な形及び色を有するポテトに関する
ものである点で一致し」(審決書4頁11行)と認定しただけで,原告主張の相違
点を認定しなかったことに誤りはない。原告の上記主張は採用することができな
い。
4 取消事由3(相違点(イ),(ロ)(一口大のミニポテト,3種の交配)に
ついての判断の誤り)について
 審決は,相違点(イ),(ロ)について,「小粒なアンデス産ポテトを親と
した小型野菜の開発は,当業者が容易に着想し得ることである。」(審決書4頁3
1行~32行)と判断した。
 甲第4号証によれば,引用刊行物には次の記載があることが認められる。
「バレイショがアンデスの山中で,栽培されてきた8,000年もの間,現地
の農民はそれぞれの地域のニーズや好みに合いさらに4,000kmにおよぶアン
デス山脈のさまざまな環境に適したタイプを選抜・育成してきた。この長い育種作
業が何千もの変異を生み出したのである。今でも彼らは1枚の畑に200もの異な
るバレイショを栽培することがある。アンデスのバレイショ(各種のSolunum種)の
大部分は他の地域の人々が普通に扱っているものとは全く異なっている。これらの
芋はしばしばあざやかな黄色や濃い紫色など多様な色の皮と肉をもっている。いく
つかは驚くべき形-細長いもの,偏平なもの,しわだらけのもの-をしており,多
くは豊かな風味と高い栄養価がある。・・・これらのあまり知られてない作物には
かつてない好機を迎えている。小粒や個性的な芋の新しい市場が出現しつつある。
たとえば,北アメリカでは食品産業が小型の野菜の開発に熱心であり,とくに小粒
でカラフルなバレイショの需要が増加している。1986年にはメイン州でゴルフ
ボールからビリヤードボールまでのサイズの芋が,4,000tも売られてい
る。・・・アンデスで進行している農薬開発に伴って近代的な品種が普及し,小粒
芋の大半が消えつつあり,そのうちのいくつかは絶滅の危機にあり,これらのバレ
イショの早急な収集や有効利用が重要である。しかしこれらのアンデスのバレイシ
ョを収集し世界に広げるという関心はほとんどない。これらのバレイショの多くは
高地の斜面にだけ生育しており,栽培はそのような環境に限られている。そのため
普通のバレイショと同じ環境では,生育・収集が悪く芋も小さい。・・・このよう
な環境的な制限はあるが,支配育種・組織栽培や現在の改良された病害検定技術に
よって農業的に成功する可能性がある。」(同2頁2行~29行)
 これらの記載によると,引用刊行物には,アンデスの何千もの種類のポテト
を全体としてみると,多様な色の皮と肉,多様な形,豊かな風味と高い栄養価があ
ること,小粒で個性的なポテトは,市場価値があり,北アメリカでは,食品産業が
小型の野菜の開発に熱心であり,既に,その開発が進められていること,及び,ア
ンデスの小粒で個性的なポテトの育種により農業的に成功する可能性があることが
記載されているものと認められ,そこには,アンデスの小粒で個性的なポテトを利
用して,小型なポテトを開発することが明確に記載されている,ということができ
る。
 新たな種の開発技術として,現存する種を親として用いること,その際に,
開発の目的とする形質を有する現存の種を用いることが技術常識であることは,当
裁判所に顕著である。そうだとすれば,親として小粒のアンデス産のポテトを採用
し,小型のポテトの開発を行おうとすることは,当業者が容易に着想し得ることで
あることは,論ずるまでもないところである。これと同旨の判断をした審決に誤り
はない。
 原告は,メイン州で販売されたポテトの中に含まれているゴルフボール大の
ポテトは,生育が悪く未熟なものであり,不規則な形で目が深いという欠点を有す
るもので,「小粒」なポテトを更に極小サイズのポテトとすることは,このような
欠点をより増幅させることが予想されるのであるから,2㎝ないし3㎝程度の直径
を有する「一口大のミニポテト」を開発することは,当業者にとって容易に着想し
得ることではない,と主張する。しかし,本願発明に係る「一口大のミニポテト」
については,上記説示のとおり,その大きさが2㎝ないし3㎝程度の直径のものと
限定して解すべき理由がないことは,前記のとおりである。また,引用刊行物に記
載されているのは,「北アメリカでは食品産業が小型の野菜の開発に熱心であり,
とくに小粒でカラフルなバレイショの需要が増加している。」ことであり,メイン
州で販売されていたゴルフボールからビリヤードボールまでのサイズのポテトは,
その一例にすぎないのであるから,仮に,メイン州のゴルフボール大のポテトに,
原告が主張する問題があったとしても(その証拠はない。),引用刊行物の「小粒
でカラフルなバレイショ」の需要が増加しているとの記載は,ミニトマトが既に市
場に存在していたことも考えると,小型のポテトとして,「ゴルフボールからビリ
ヤードボールのサイズのポテト」から,さらに小さな一口大のミニポテトの生産を
着想することの動機付けとして十分であると認められる。原告の上記主張は採用す
ることができない。
5 取消事由4(相違点(ロ),(ハ)(3種の交配,育種栽培と選抜)につい
ての判断の誤り)について
 審決は,相違点(ロ),(ハ)について,「その際,ポテトを作出する手法
として,ポテトを交配させた後に選抜する方法は周知慣用の手法(・・・)である
ことから,刊行物1に記載された小粒なポテト,例えば「ソラヌム・ステノトーマ
ム」,「ソラヌム・フレヤ」および「ソラヌム・ゴニオカリックス」を適宜交配
し,その後,一口大の大きさのものを選抜することは,当業者が適宜なし得る設計
的事項と認められる。」(審決書4頁33行~5頁8行)と判断した。
(1)原告は,審決の上記判断は,本願発明の発明者が,「一口大のミニポテ
ト」を育成するために鋭意研究した結果,ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・
フレヤ及びソラヌム・ゴニオカリックスの3種類のポテトを組み合わせることに想
到し得たことの困難性を認識していない,と主張する。
 甲第4号証によると,引用刊行物には,次の記載があると認められる(下
線付加)。
「 アンデスの種
 アンデスのバレイショのほとんどは,他の地域で栽培されている普通栽
培種とは全くの別種である。しかし1種は栽培種の祖先である。この1種と他の7
種は次の通りである
1 Pitiguina 在来バレイショの原型といわれている。この種(Solanum
stenotomum5
)の芋は細長く,でこぼこした円筒形で,赤,黒,白色を呈しており,
小粒で目が深く,いくつかはらせん形をしている。・・・
2 Limena アンデスで1imenaやpapaamarilla(黄肉ジャガイモ)として
知られているこの種(S.goniocalyx)は,独特の風味のある濃黄肉色の芋をつけ
る。それらはフライにしたり,ペルーのリマの通りでは料専理用として売られてい
る。多くの品種は白花で黄色の芋(皮,肉とも)で,アンデスの多くの国々で昼食
の重要な材料であり,またペルーの伝統的料理である風味豊かな黄色スープのべー
スになっている。この種は2倍体でpitiquinaに近く,変種か亜種といわれている。
この種は非常に美味しいので,アンデスの温帯地域において広く栽培されている
が,アンデス以外での栽培はない。種子はつける。
3 Phureja この種(S.phureja)は小粒で形は不規則ではあるが,味は
良好である。・・・この種は2倍体で・・・ほとんどは目が深く,多彩な色(しば
しば紫色)で,らせん状にねじれた形をしている。・・
4 Andigena ・・・アンデスのバレイショの中で最も大きい芋であ
り・・・この種は4倍体で稔性があり・・・。
5 Chaucha この種は2つの栽培種であるpitiquinaとandigena・・・と
の雑種である。・・・不稔性の3倍体で・・・この芋は多くの在来バレイショより
大きい傾向があり・・・。
6 Ajanhuiri ・・・分類学者や植物育成家には約50年前から知られて
いるが,育種にはまだ広く利用されてはいない。・・・。
7 Rucki ・・・Sxjuzepczukiiは3倍体で稔性がなく,Sx
curtilobumは5倍体で稔性がある。
8 Solanumhygothermicum・・・この種は非常に数が少なく,絶滅の危機
に瀕しており,現在コレクションに入っていない。・・・(4頁1行~7頁11
行)」
 アンデス産の上記の各種ポテトの中から,ミニポテトを得るためには,2
倍体の小型ポテトであること(3倍体,4倍体,5倍体の相対的にみて大型のポテ
トは避けること),及び,絶滅の危機にあるような育種に利用しにくいものは避け
ることは,通常の選択の基準として考えられるところである。上記の記載による
と,アンデスのポテトの種類として8種が列挙されている中で,小型の2倍体のポ
テトで入手が困難でないものは,本願発明で採用された1 Pitiguina(Solanum
stenotomum)(ソラヌム・ステノトーマム),2 Limena(S.goniocalyx)(ソラ
ヌム・ゴニオカリックス),3 Phureja(S.phureja)(ソラヌム・フレヤ)の3
種類である。すなわち,4 Andigena,5 Chaucha,7 Ruckiは,いずれも3倍
体ないし5倍体で大きいものであり,また,6 Ajanhuiriは,育種にはまだ広く利
用されていないものであり,8 Solanumhygothermicumは,絶滅の危機に瀕してお
り,その入手が困難なものである。したがって,アンデス産のポテトから,小粒の
ポテトを得ようとすれば,本願発明の3種類のポテトを選択することは,容易に想
到し得る選択であるということができ,この点が困難であるとの原告の主張は,採
用することができない。
(2)原告は,本願発明においてアンデス原産栽培2倍体バレイショである3種
から,混合受粉による交配を行って遺伝的変異に富む雑種集団を形成したのは,
「多様な形及び色を有する一口大のミニポテト」を作出するためであり,その中で
の前記工程が有する技術的意義は,4倍体のバレイショに比べてサイズが小さい2
倍体バレイショを親株として交配を施すことにより,極小サイズのポテトを産する
個体を含む可能性がある遺伝的に多様な雑種集団を作り出すためのものである,と
主張する。
 しかし,引用刊行物には,上で述べたように,アンデスでは,種々の異な
るポテトを同じ畑で栽培していることが記載されており,アンデスのポテトについ
て,遺伝的変異に富む雑種集団として栽培し,雑種集団のまま利用に供すること
が,格別なことであるとはいえない。そして,本願明細書の実施例に示された,母
集団の形成方法も,「合計1430個体のアンデス原産の3種類の栽培2倍種を,
圃場に無作為に配置し,放任受粉によって得た種子を母集団とした。」(甲第2号
証【0012】)というものであり,三種類のポテトの間で交配を行う際に,交配
親を特定をすることなく無秩序に行っており,自然交雑の状態に近く,その交配方
法に格別は技術的意義を認めることはできない。また,新たな形質を持つポテトを
作出する手法として,ポテトを交配させた後に選抜することは周知慣用の技術であ
る(甲第6号証)。
したがって,審決が,「刊行物1に記載された小粒なポテト,例えば「ソ
ラヌム・ステノトーマム」,「ソラヌム・フレヤ」および「ソラヌム・ゴニオカリ
ックス」を適宜交配し,その後,一口大の大きさのものを選抜することは,当業者
が適宜なし得る設計的事項と認められる。」(審決書5頁5行~8行)と判断した
点に誤りはない。
6 取消事由5(相違点全体についての判断の誤り)について
 原告は,本願発明は,ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・フレヤ及びソ
ラヌム・ゴニオカリックスの3種を選定し,これを前提に,本願明細書の請求項1
に記載された各工程を具備し,これらの工程を組み合わせることにより,本願発明
の完成に至ったものであって,審決は,上記の各工程に関する技術的手段が周知で
あるという理由を示すだけで,これら手段を採用し,工程として組み合わせること
の困難性を何ら考慮せずに本願発明の進歩性を否定するもので,誤りである,と主
張する。
 しかし,引用刊行物には,上記認定のとおり,アンデス産ポテトに注目し
て,小粒でカラフルなポテトを製造することが記載されているのであり,また,引
用刊行物は,上記認定のとおり,アンデス産のポテトから,小粒なミニポテトを育
成しようとすれば,容易に選択される小粒のポテトである「ソラヌム・ステノトー
マム(Pitiguina),ソラヌム・ゴニオカリックス(Limena)及びソラヌム・フレ
ヤ(Phureja)」の3種が記載されているのであるから,これらを交配親として利用
して,小粒で多様な色及び形を有するポテトを作成しようとすることは,当業者が
引用発明から容易に想到し得ることである。本願明細書の請求項1に記載された各
栽培条件は,上記3種のポテトを交配して「一口大のミニポテト」を育成しようと
すれば,当業者が当然に採用するはずのよく知られた栽培技術であるにすぎない。
再構成後に実生による栽培をすることは,品種改良を行う際に一般的に採用される
方法であり,また,栄養繁殖に比べてイモの小さくなることもよく知られたことで
あるし(甲第7ないし第10号証),育苗箱等の容器等で根圏を制限して栽培する
と,地下部の生育が抑制され,いもが小さくなることもよく知られていることであ
って(甲第11ないし第17号証),小粒のポテトを収穫するために根圏を制御す
ることは,当業者が容易になし得ることである。ポテトの形成適温が約17℃であ
ることやポテトの発育時はやや短日条件がよいこと等も,よく知られた栽培条件で
ある(甲第18号証)。
 上述したところによれば,本願発明のこれらの各工程を組み合わせることが
当業者にとって容易であることは,明らかである。審決の判断に,原告主張の誤り
はない。
7 取消事由6(本願発明の顕著な効果の看過)について
 審決は,「本願発明の効果についても,刊行物1の記載及び周知技術から予
測し得るものと認められる。」(審決書5頁31行~32行)と判断した。
 原告は,本願発明により,食用のポテトが具備すべき特性を有する極小サイ
ズの完熟ミニポテトを高収量で安定して提供することが可能となったのである,本
願発明によれば,色,形,そして風味が様々な一口大のサイズのミニポテト一つ一
つをスナック菓子の感覚で楽しみながら食することができるのである,本願発明の
このような顕著な効果は,引用刊行物の記載及び周知技術から予測し得るものでは
ない,と主張する。
 しかし,上記認定の引用刊行物の記載からすれば,アンデス産のポテトは,
多様な色及び形を有するものであり,この中から2倍体で小粒であると説明されて
いる「ソラヌム・ステノトーマム,ソラヌム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フ
レヤ」の3種を選択して,適宜交配し,これに品種改良として通常採用される,育
種栽培,選抜,再構成,実生栽培等の工程と,小粒のポテトを得るために根圏を制
御するなどのよく知られた栽培条件を採用することにより,一口大で多様な色及び
形を有するポテトが高収量で安定して得られることが,当業者が容易に予測し得な
い,予想外の効果であるということはできない。また,新ジャガなどの小粒のポテ
トを皮ごとそのまま料理に利用することも,よく知られていることであるので,一
口大のミニポテトを,皮ごと料理に利用できることも,当業者が予測し得る範囲内
の効果であるにすぎない。
 原告は,本願発明によって得られるミニポテトは,根圏の制御による生育抑
制がポテトの数の減少ではなく,ポテト1個の重量の顕著な減少として現れるよう
改善を重ねたものである,と主張する。しかし,本願発明においては,多様な色及
び形を有するアンデス産のポテトの中から2倍体で小粒であるとされている「ソラ
ヌム・ステノトーマム,ソラヌム・ゴニオカリックス及びソラヌム・フレヤ」を選
択して,適宜交配し,その後,本願明細書の前記請求項1記載の方法により,「一
口大のミニポテト」を得ることができたものであり,根圏の制御は,その中の一つ
の要素にすぎず,これのみによってポテト1個の重量の減少が得られたものではな
いのであるから,原告の上記主張はその前提において誤っており,理由がない。
8 結論
 以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由はいずれも理由が
なく,その他,審決には,これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。そこで,原告
の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事
訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第6民事部
        裁判長裁判官    山  下  和  明
           裁判官     設  樂  隆  一
 
            裁判官    高  瀬  順  久

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