弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告甲信託銀行株式会社及び被告乙信託銀行株式会社は,原告に対し,連
帯して1億1289万8547円及びこれに対する平成9年7月18日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告甲信託銀行株式会社及び被告乙信託銀行株式会社は,原告に対し,連
帯して3013万5120円及びこれに対する被告甲信託銀行株式会社は平
成17年12月30日から,被告乙信託銀行株式会社は同月29日から各支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告の被告甲信託銀行株式会社及び被告乙信託銀行株式会社に対するその
余の請求をいずれも棄却する。
4原告の被告大阪市に対する請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は,被告大阪市に生じた分は原告の負担とし,その余の分はこれ
を3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告甲信託銀行株式会社及び
被告乙信託銀行株式会社の負担とする。
6この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告らは,原告に対し,連帯して3億8977万5287円及びこれに対す
る平成9年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,原告に対し,連帯して1億6247万4448円及びこれに対す
る訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告大阪市は,原告に対し,1000万円及びこれに対する訴状送達の日の
翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告大阪市は,原告に対し,別紙目録1記載の謝罪広告を,別紙目録2記載
の形式で,別紙目録3記載の報道機関に各1回掲載せよ。
第2本件事案
1事案の概要
本件は,都市型立体遊園複合施設フェスティバルゲート内の飲食店舗用賃貸
区画を賃借して飲食店舗を経営している原告が,()賃貸人であり,本件施1
設を実質的に運営管理していた被告らに対し,原告経営の飲食店舗の収益が上
がらず損失を被ったところ,これは,被告らが,賃貸借契約締結の際,本件施
設は成算の見込みがなかったのにその旨の告知を怠り,誇大な広告等で詐欺的
勧誘をしたことや,本件施設の開業後においても,過大な警備費の支出を漫然
と継続して,遊戯施設の更新等の営業努力を怠り,本件施設の営業日や営業時
間を短縮したり,空き店舗を放置し,残存店舗の立ち退きを求めたりするなど
の背信的運営を行ったことによるものであるとして,共同不法行為ないしは賃
貸借契約上の債務不履行に基づき,連帯して,原告経営の飲食店舗に係る,①
当初投下費用合計3億8977万5287円及びこれに対する不法行為後の
日(賃貸借契約を締結した日の翌日)である平成9年7月18日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金(請求1項,②累積赤字1)
億6247万4448円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金(請求2項)の支払を求めるとと
もに,()被告大阪市に対し,③被告大阪市が申立てをした原告賃借区画2
の明渡しを求める調停事件や仮処分命令申立事件の際に,名誉ないし信用を毀
損されたとして,不法行為に基づき,慰謝料1000万円及びこれに対する訴
状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払(請求3項)と謝罪広告の掲載(請求4項)をそれぞれ求めている事案
である。
(,。)2争いのない事実等証拠を付さない事実については当事者間に争いがない
当事者等(1)
ア原告
(ア)有限会社F商店(以下「F商店」という)は,昭和41年10月。
7日に設立された,料理飲食店業等を目的とする資本金6200万円の
有限会社であるが,平成12年6月30日に解散決議を行った(丙3,
弁論の全趣旨。)
(イ)原告は,平成12年5月2日に設立された,飲食業等を目的とする
資本金1000万円の株式会社である。
(ウ)F商店は,平成12年7月1日,原告との間で,同月3日をもって
営業の全部を原告に譲渡する旨の契約を締結した(甲1。)
イ被告大阪市
被告大阪市は,浪速区所在の元市電電車車庫跡地(以下「本件土地」と
いう)の所有者であり,後記()のとおり,平成3年3月26日,C信託。2
株式会社(以下「C信託銀行」という,D信託銀行株式会社(以下「D。)
」。),(「」。)信託銀行というE信託銀行株式会社以下E信託銀行という
及びG信託銀行株式会社(以下「G信託銀行」という)の信託銀行らと。
の間で,本件土地の運用を目的とする土地信託契約を締結した者である。
ウ被告甲信託銀行株式会社及び同乙信託銀行株式会社
上記イの各信託銀行は,以下のような経過を経て,最終的には,被告甲
信託銀行株式会社及び同乙信託銀行株式会社にその地位が承継された。
(ア)E信託銀行は,平成12年4月1日,被告乙信託銀行株式会社(以
下「被告乙」という)に商号変更した。。
(イ)G銀行は,平成12年4月1日,被告乙に合併して,解散した。
(ウ)D信託銀行は,平成13年10月1日,H信託銀行株式会社に合併
して解散した。
(エ)C信託銀行は,平成14年1月15日,I信託銀行株式会社(以下
「I信託銀行」という)に商号変更した。。
(オ)H信託銀行株式会社は,平成17年10月3日,被告甲信託銀行株
式会社(以下「被告甲」という)に商号変更した。。
,,。(カ)I信託銀行は平成17年10月3日被告甲に合併して解散した
(キ)以上により,C信託銀行とD信託銀行の地位は,被告甲が承継し,
E信託銀行とG信託銀行の地位は,被告乙が承継した(以下,これらの
信託銀行を総称して「受託銀行ら」という。。)
信託契約等(2)
ア被告大阪市は,昭和61年の地方自治法の一部改正を受け,平成元年,
土地信託方式により本件土地を有効活用し,市営交通事業の経営の安定化
に資するとともに,地域の振興・発展に寄与するために「交通局霞町車,
庫跡地開発プロジェクト・土地信託事業計画提案競技」を実施した(甲1
7。)
イ上記アの競技において,受託銀行らの提案した都市型立体遊園地案が最
優秀提案に決定された。同案においては,建物から発生する賃料を事業収
入の根幹とする「管理運用型信託(Aゾーン)と建物と土地とを併せて」
売却する「処分型信託(Bゾーン)を併用しており,総事業費は約50」
4億円,予想信託配当は約129億円というものであった(甲17。)
ウ被告大阪市は,平成2年8月8日,受託銀行らとの間で,土地信託基本
協定を締結した。
エ被告大阪市は,平成3年3月26日,受託銀行らとの間で,信託期間を
同日から平成33年3月25日までとし,本件土地の運用を目的とする土
地信託契約(以下「本件土地信託契約」という)を締結した。。
オ受託銀行らは,その後の社会情勢の変化に対応するため,平成6年7月
1日,被告大阪市に対し,事業計画の修正案を提案した。同案は,建築予
定建物の延床面積を約15.1万平方メートルから約9.9万平方メート
ルに,総事業費を約749億円から約300億円に変更し,予想信託配当
は約130億円が約57億円になるというものであった。
カ被告大阪市は,上記オの提案を承認し,平成6年12月12日,受託銀
行らとの間で,土地信託契約の変更契約を締結した。
キ受託銀行らは,C信託銀行を代表受託者として,本件土地上に別紙物件
目録記載の建物(以下「本件施設」という)を建築し,平成9年1月,。
本件施設の運営管理会社として,各社本体または関連会社の出資によりフ
ェスティバルゲート株式会社(以下「運営管理会社」という)を設立し。
た上,同年7月以降は同社に本件施設の管理を委託して,本件施設のテナ
ントの募集及び運営管理に携わってきた。
ク本件施設は,平成9年7月18日,開業したところ,初年度は約656
,,万人の来場者を記録するなど活況を呈したが2年目には来場者が激減し
その後来場者数が回復することはなかった(甲17。)
ケD信託銀行は平成13年5月31日に,被告乙は同年7月23日に,I
信託銀行は平成14年3月11日に,東京地方裁判所に,本件信託事業は
実質的に破綻しており,契約書で定められた信託の目的及び信託事業の目
標を達成することが不可能であるなどとして,それぞれ信託受託者辞任許
可の申請をした(甲41の2,甲42の2,甲43の2。)
コその後,受託銀行らは,平成14年7月,信託目的・目標の達成は困難
,,になったとして大阪簡易裁判所に事業の再生及び事業形態の変更の検討
見直し並びに債務の弁済について調整を求める調停の申立てをおこなった
ところ,16回の調停期日を重ね,平成16年3月29日に至り,ようや
く両者間で調停が成立し,同年9月30日,被告大阪市との間で,本件土
地信託契約を合意解除した。
サ被告大阪市は,本件土地信託契約の合意解除後,本件施設の運営を引き
継いだため,本件施設のテナントに対する賃貸人たる地位も承継した。
,,(「」。)シ被告大阪市は平成16年9月30日J有限会社以下Jという
との間で,平成17年7月24日までに原告が本件施設の5階部分の店舗
を明け渡すことを停止条件として,本件施設の5階部分に交通記念館ゾー
ンを含む大阪乗り物おもちゃ箱(仮称)を設置する旨のマスターリース契
約を締結した(乙8。)
本件施設の収支状況等(3)
ア本件施設は,開業初年度である平成9年度は約656万人の来場者を記
録するなど活況を呈したが,その事業収支は多額の管理費や利息の負担等
により,初年度から8億円を超える赤字となった。開業2年目の平成10
年度は,来場者は激減したものの,売却処分したBゾーンの土地売却益を
,,計上したことにより約5億円の赤字と形式的には事業収支は改善したが
Bゾーンの土地売却益を除けば約25億円の赤字となることから,実質的
には事業収支は悪化の一途を辿っていた。平成11年度では,来場者数の
減少や,これに伴う入居テナントの減少により,約32億円もの赤字を計
上するに至った。平成12年度からは,警備費の削減等により事業収支は
やや改善の方向に向かったものの,抜本的な収支改善には至らず,毎年多
額の赤字を計上したことにより,平成14年度での累積赤字は約110億
円に達した(甲17。)
イ本件施設の警備費は,平成9年度は7月18日開業で実質8か月強であ
ったため約16億円であったが,平成10年度及び平成11年度はいずれ
も約24億円であり,削減に取り組んだ平成12年度は約19億円,平成
13年度は約10億円,平成14年度は約5億円,平成15年度は約2億
,.()。円でありこの期間の総事業収入の125倍にも上っていた甲17
本件施設内の区画の賃貸借契約等(4)
アF商店は,本件施設の開業日の前日である平成9年7月17日,受託銀
行らの代表受託者であるC信託銀行との間で,別紙物件目録記載1()及1
び()の各賃貸区画をそれぞれ以下の内容で賃借した(甲4の1,2。以2
下,(ア)の店舗を「本件5階店舗,その賃貸借契約を「本件5階店舗賃」
貸借契約といい(イ)の店舗を本件4階店舗その賃貸借契約を本」,「」,「
件4階店舗賃貸借契約」という。。)
(ア)別紙物件目録記載1()の賃貸区画1
使用目的飲食店舗
営業種目ビアレストラン
店名バスケット
契約期間施設開業日から10年
敷金2000万円
賃料営業による売上月額(消費税抜き)に対し,次の基準
により算定した金額を月額歩合賃料とする。
a売上月額2000万円以下の場合は,売上月額の1
0パーセント相当額に100万円を加算した額
b売上月額が2000万円超,2504万円以下の場
合は,売上月額にかかわらず,月額300万7980

c売上月額が2504万円を超える場合は,売上月額
の10パーセント相当額に売上月額から2000万円
を控除した額の10パーセント相当額を加算した額
(イ)別紙物件目録記載1()の賃貸区画2
使用目的飲食店舗
営業種目フードコート
店名フードプラザ
契約期間施設開業日から10年
敷金1500万円
賃料①固定賃料月額62万6000円
消費税分3万1300円
合計65万7300円
②歩合賃料営業による売上月額(消費税抜き)が1
200万円超の場合は,1200万円を超
えた部分の金額の10パーセント相当額
イF商店は,受託銀行らに対し,平成12年6月30日付けで,同年7月
1日以降,本件5階店舗賃貸借契約及び本件4階店舗賃貸借契約の各賃借
人をいずれも原告に変更する旨の変更届を提出した(乙2。)
ウ原告は,平成12年7月19日,C信託銀行との間で,本件4階店舗賃
貸借契約を合意解除した。
エ原告は,同日,C信託銀行から,別紙物件目録記載2の賃貸区画を以下
(。,「」,の内容で賃借した甲4の3以下この店舗を本件2階店舗といい
その賃貸借契約を「本件2階店舗賃貸借契約」という。。)
使用目的飲食店舗
営業種目ファースト・フード
店名ジェラテリア・ポンテ・ロッソ
契約期間平成12年7月20日から平成22年7月19日
敷金450万円
賃料①最低保証賃料月額30万8200円
消費税分1万5410円
合計32万3610円
②歩合賃料営業による売上月額(消費税抜き)が
1200万円超の場合は,1200万円
を超えた部分の金額の10パーセント相
当額
なお,本件4階店舗賃貸借契約が合意解除され,新たに本件2階店舗賃
貸借契約が締結されたのは,当時,4階では他の店舗が退店してしまい,
本件4階店舗のみの状態となり,赤字が累積してきたことから,人通りの
多い本件2階店舗へ移転することとなったためである。
オ被告大阪市は,平成16年9月30日,受託銀行らとの間の本件土地信
託契約を合意解除したことに伴い,同日付けで,本件2階店舗賃貸借契約
及び本件5階店舗賃貸借契約の賃貸人の地位を承継した。
調停及び仮処分の申立て(5)
ア原告は,平成15年2月7日,大阪地方裁判所に対し,I信託銀行及び
運営管理会社を債務者とする,営業日・営業時間の変更禁止,本件施設へ
の出入・営業に対する妨害排除を求める仮処分命令の申立て(大阪地方裁
判所平成15年(ヨ)第192号仮処分申立事件)をしたが(甲26,同)
裁判所は,同年3月31日,原告の申立てを却下する旨の決定をした(丙
1。)
イ被告大阪市は,平成17年5月27日,大阪簡易裁判所に,原告を相手
方とする本件2階店舗及び本件5階店舗の明渡しを求める調停(大阪簡易
裁判所平成17年(ユ)第140号事件,以下「本件調停」という)の申。
立てをしたが(甲34,甲46の1,同年6月16日,本件調停の申立)
てを取り下げた(甲46の3。)
ウ被告大阪市は,平成17年6月17日,大阪地方裁判所に対し,原告を
債務者として,原告が本件施設2階及び5階の各賃借店舗につき「営業管
理規則」に違反して営業時間を短縮するなどしているとの理由による契約
解除に基づく本件2階店舗及び本件5階店舗の明渡請求権を被保全権利と
して,上記各店舗の明渡しを求める仮処分命令の申立て(大阪地方裁判所
平成17年(ヨ)第866号仮処分命令申立事件,以下「本件仮処分命令申
立て」という)をしたが,同年7月27日,本件仮処分命令申立てを取。
り下げた(乙8。)
本件訴えの提起(6)
原告は,平成17年12月19日,本件訴えを提起した。
7争点及びこれに対する当事者の主張
被告甲及び同乙の責任の有無(1)
ア説明・告知義務違反の有無
(原告の主張)
(ア)説明・告知義務の法的根拠
一般的に,賃貸人は,賃貸借契約の締結に当たっては,賃借人が当該
物件を賃借するか否かを判断する上で重要な考慮要素であって,賃貸人
が知っていた又は容易に知り得たものについては,賃借人に告知すべき
信義則上の義務を負う(東京地裁平成8年12月19日判決。)
本件施設は,単なるテナントビルとは異なり,立体型遊園地・アミュ
ーズメントパーク等といったコンセプトで特に作られた複合施設であ
る。したがって,各テナントの収益は本件施設の運営及び集客力に大き
く依存するのであって,本件4階店舗及び本件5階店舗(以下「本件各
店舗」という)の各賃貸借契約(以下「本件各賃貸借契約」という)。。
の内容も本件施設全体の稼働との関係で設定されている。
すなわち,本件施設の賃借人は,営業管理規則や建物管理規則などに
よって,その営業活動は著しく拘束されており,営業種目や営業品目,
販売方法や接客サービス等について施設側の指導に服する義務を負い,
他方,営業時間及び休日の定めの変更ですら一切許されないというもの
であった。
その上,本件施設の提供者であり,施設全体構想を策定した受託銀行
,,,らはわが国有数の信託銀行であって多くの事業への投資実績を有し
その資金力・情報収集能力からしても,事業経営に関するノウハウの蓄
積を取得し活用することが可能であったのに対し,本件施設の各テナン
トは,原告を含めほとんどが個人事業者のようなものであって,資金力
・情報収集能力においても受託銀行らに遠く及ばない。また,収益性に
関する情報は賃貸人側に集中し,賃貸人の意思いかんでその後も容易か
つ大幅に収益性を左右し得るのである。
このように,本件各賃貸借契約では,継続的契約関係のみならず,本
件施設の収益性が賃借人の当該賃借物件における営業活動の根本を左右
する上に,その情報の偏在及びその後の収益性の変化が契約の一方当事
者の支配下にあるところに特殊性がある。このような契約において,本
件施設での収益活動に賃借人を拘束しておきながら,そこでの収益性に
ついて全くの自己責任を要求することは極めて当事者間の公平に反する
といわざるを得ない。
このような,本件施設の性格及び施設運営の実態,当事者の能力の格
差等に照らせば,受託銀行らは,本件各賃貸借契約の締結に至る前提と
して,本件施設の集客の予測,そのための事業計画等,客観的かつ具体
的な情報を賃借人側に提供すべき信義則上の義務を負っていたというべ
きである。
最高裁平成18年6月12日判決は,建築会社の担当者が,顧客に対
し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物
を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却すること
により融資の返済資金を調達する計画を提案し,顧客が,上記計画に従
って銀行から融資を受け建物を建築したが,その後上記土地の一部を予
定どおり売却することができず,融資の返済資金を調達できなくなった
,()という事案において返済計画の実現可能性は原則として借受人顧客
において検討すべき事情であるとしながら,特段の事情がある場合には
貸主(銀行)の側に建築基準法違反と判断される可能性があることを調
査し,説明すべき義務が認められるとして,銀行の説明責任を肯定して
いる。この判例では,特段の事情として,融資交渉の段階で上記土地の
一部の売却により融資の返済資金を調達することが前提になっていたこ
とが挙げられているが,本件各賃貸契約に係る交渉に当たって主として
。,,問題とされたのは賃料等の契約条件の設定であったすなわち原告は
本件施設での収益を目的としており,将来的な遊戯施設の更新による継
続的な集客力の確保が保障されていることを念頭に賃貸条件を交渉して
いたのであって,そのことは受託銀行らの担当者も当然の前提として交
渉を行っていた。このような交渉経過からすれば,賃貸人である受託銀
行らが賃借人に対し,本件施設での収益性について告知・説明すべき義
務を負担する特段の事情があるというべきである。
(イ)説明・告知義務違反
受託銀行らは,上記(ア)の義務を負っているにも関わらず,テナント
の勧誘にあたり,営業時間や休日等の大まかな説明をしたに留まり,施
設としての集客力やその維持に向けた具体的な方策など全く説明するこ
とはなかった。
また,異常に過大な警備費を支出する旨の警備業務委託契約の締結が
本件施設の収益性及び運営の継続性自体に関わる重大な事項であり,継
続的に本件施設での収益活動に拘束され,自らの収益が本件施設の収益
性に依存する賃借人にとって,このような事項が本件施設への出店の可
否を決する決定的な判断要素になることは疑いようがない。そして,原
告が本件各賃貸借契約を締結した平成9年7月17日時点では,既に収
支計画を上回る警備費の支出予定が明らかになっていたのであるから,
こうした事実は「過去の確定した重要な事実」であった。したがって,
,,,賃貸人たる受託銀行らは本件各賃貸借契約の締結の際賃借人に対し
警備費用の内容や支出額及びそれが本件施設の運営に及ぼす影響につい
て告知すべき義務があった。しかし,原告(F商店)は,このような本
件施設の計画ないし実態について,何らの説明も受けたことがなく,本
件調停の係属中に新聞報道等により初めて知ったのであって,受託銀行
らの告知義務違反は明白である。
(被告甲の主張)
(ア)説明・告知義務の不存在
原告が引用する東京地裁平成8年12月19日判決の事案は,契約時
(),点で賃貸物件そのものに一種の物理的な瑕疵があった事案であるが
本件では本件施設全体や共用部分に瑕疵があったわけではなく,事案を
異にする。
本件施設内の区画の賃貸借契約において見られる特殊な性質の表れと
して原告が指摘する諸事項は,一般的な店舗ビルの賃貸借契約の実務に
おいて普通に見られる極めて当然の事項ばかりである。駅ビルやオフィ
,,スビルでは主に駅やオフィスの利用者を来店者として想定しているが
それらと無関係に来店する者もいれば,オフィスが休みとなる土日や祝
日に営業しているケースもあるから,賃貸人が,飲食店や物販店を営む
各賃借人に対して,本件訴訟で原告が主張しているような説明・告知義
務を負っていないことは明らかであり,本件でも同様である。
原告引用の最高裁平成18年6月12日判決の事案にいう「特段の事
情」とは,銀行担当者が「本件投資プラン」の説明の際に前記土地の一
部の売却について銀行も取引先に働きかけてでも確実に実現させる旨を
述べたことをいうのであって,原告の理解は誤りである。
F商店及び原告は,受託銀行らに対し,集客・採算の予測やその根拠
となる事業計画に関する説明や告知を求めず,本件施設への出店の可否
及び採算の見通しを自ら検討し,合理的な判断を下すために必要な知識
や経験及び判断能力を十分に有しており,自らの責任とリスクの下で出
店を決断し,本件各賃貸借契約を締結したものである。
(イ)義務違反事実の不存在
平成9年5月29日に開催されたテナント会の設立総会では「営業,
管理規則」及び「建物管理規則」の他には「売上管理規則」や「施設,
運営説明資料「別表・別図「議案」が運営管理会社から配布されて」,」,
おり,当日欠席した者にも同様のものが後日配布された。
原告は,平成12年7月時点で既に本件施設全体の集客採算の状況が
芳しくないことは十分認識理解していたし,F商店自身の本件各店舗の
経営状況も芳しくなく赤字が累積していることを十分に自覚していたか
ら,原告に対する告知義務違反は存在しない。
(被告乙の主張)
原告が引用する東京地裁平成8年12月19日判決の事案は「過去の,
確定した重要な事実」を告げなかったという事案であり,そこで告知すべ
,,,。きとされた事実の内容性質は原告の主張と全く内容性質を異にする
本件施設の周辺環境や当時の経済情勢などの情報は,何ら賃貸人に独占
された情報ではないし,賃貸人と賃借希望者の属性から,両者間に特段の
集客予測や情報に関する格差はなく,足りない情報は賃貸人への照会を含
,,め自ら調査し出店の是非は各自の危険において判断すべきものであって
受託銀行らは説明・告知義務を負わない。
イ詐欺的勧誘の有無
(原告の主張)
賃貸人は,少なくとも,契約締結交渉に至った相手方に対しては,(ア)
過大に品質,形状,規模など目的物件に関して著しく事実に相違し,又
は実際より優良であるかのような説明ないし広告をすることは許され
ず,相手方において誤信のないよう説明に当たっても配慮すべき信義則
上の義務を負うというべきである。
よって,前記ア(ア)記載のような本件施設の特殊性等からすれば,当
初から運営が不可能であるような事業計画であるにもかかわらず,運営
が可能であるかのように装って賃借希望者を勧誘し,契約を締結させる
,,ことは実際には運用の意思がないにもかかわらず投資を募るに等しく
賃借人の募集をすること自体が詐欺的募集として信義則上違法の判断を
免れないというべきである。
(イ)aそもそも,本件施設のような集客施設においては,多数の来場者
の確保が直ちに収支に影響するため,いかにリピーターを確保するか
が成功・不成功を分けるポイントとなる。魅力ある施設としてリピー
ターを確保するには,新たな遊戯機器の設置や入替,目新しい遊具施
設やアトラクションの導入などが必須であって,そのためには不必要
な支出を抑え,設備投資への資金とすることが不可欠である。
ところが,実際には,本件施設の収支計画上では,収入は初年度月
額約2億9000万円,支出は月額1億9000万円であったにもか
かわらず,現実には,本件各賃貸借契約が締結された平成9年7月1
7日の時点で既に,月額2億1920万円にも上る警備費で本件施設
の外周警備(以下「本件外周警備」という)を委託しており,これ。
に基づき本件外周警備が実施された。
そもそも,本件土地信託契約に際して,処分したBゾーン(敷地面
積8622.86平方メートル,現在の商業施設「K」の敷地)の売
却益を本件施設の建築資金等に充当するというのが当初からの計画で
あったにもかかわらず,本件各賃貸借契約締結当時,Bゾーンの売却
代金が当初予定されていた金額を大幅に下回ることは明らかになって
いた。さらに,受託銀行らは,出店者を確保するために,本件施設全
体的に,当初予定していた賃料額より大幅に下げて賃貸借契約を締結
していた。
したがって,過大な警備費用の支出を別にしたとしても,受託銀行
らには,開業時点において,平成9年度以降の収支が大幅な赤字とな
ることが予測されていたはずである。
bそれにもかかわらず,受託銀行らが作成した本件施設の運営に関す
るパンフレットの記載は,いずれも実態を伴わない実現不能なもので
あった。例えば「訪れる人を興奮させるアーバンリゾート「遊ぶ,。」,
ことに慣れ親しんだ都会人にも,新鮮さと驚きで注目されることは間
違いありません「訪れるものを飽きさせない,面白さと楽しさ,目」,
新しさが充満したアーバンリゾートとして<フェスティバルゲート>
がこれからの都市の遊びの中心になります」などと,本件施設の集。
客性がより確実に保証されているかのように表示している。そして,
「目を引く催し物やパフォーマンスが,盛りだくさん「ライブエ。」,
ンターテイメントとして,年間を通じてさまざまなパフォーマンスも
計画。アミューズメント施設に並んで順番を待つお客様の前で繰り広
げられ,待ち時間も退屈させることなく過ごしていただけます」な。
どとして,ハード面のみならずソフト面の充実も図られることが謳わ
れている。
また,原告は,本件施設の事業(以下「本件事業」という)の計。
画(以下「本件事業計画」という)に係る霞町開発プロジェクト推。
進室に所属していたLら(以下「Lら」という)から,本件施設に。
おいては,将来は遊戯施設を更新したり,新たな遊戯施設を導入する
予定であり,そのための空きスペースが十分に確保されている旨の説
明を受けた。
原告(F商店)は,上記のような広告や勧誘が相まって,本件施設
,,,の収益性を誤信させられ本件各賃貸借契約に至ったのであり仮に
本件施設が当初から採算を無視した事業計画を掲げていることが明ら
かになっていれば,本件各賃貸借契約を締結することはなかった。
(被告甲の主張)
F商店は,受託銀行らに対し,集客や採算の予測及びその根拠となる本
件事業計画の説明,告知を求めておらず,それらを採算の見通しを検討す
るための重要な考慮要素であるとは考えていなかった。
F商店が本件施設への出店を決意したのは,約30年間にわたる多数の
遊園地やテーマパーク及び一般の商業ビルへの出店経験と,自らの判断と
勘によるところが大であった。したがって,自らの判断と勘が外れて営業
成績が芳しくなかったとしても,自己責任以外の何ものでもない。
(被告乙の主張)
Lらの説明及び勧誘の存在や内容は不知。
ウ賃貸人としての義務違反の有無
(原告の主張)
(ア)営業努力義務及び営業日・営業時間維持義務の法的根拠
賃貸借契約において,賃貸人の義務は,一義的には賃貸物件を賃借人
に使用収益させることであるが,単に賃借人の使用を容認すれば足りる
というものでなく,賃貸物件を賃貸借契約によって定まった使用収益を
するのに適した状態におく義務を負うものである(東京地裁平成10年
9月30日判決。)
本件施設には遊戯施設と物販や飲食の店舗が混然となってちりばめら
れ,遊戯施設と店舗が一体となって1つのアミューズメント施設を構成
するものであるから,本件施設内の店舗(とりわけ飲食店舗)は,遊戯
設備・機器と融合し,全体として遊戯施設としての一体性を持つもので
あって,各店舗の賃貸借契約は,遊戯施設内における店舗使用を目的と
するものであり,アミューズメント施設の運営と運命を一体とするとこ
ろに特徴がある。本件施設においては,各賃借人の営業を全面的に拘束
して本件施設の運営管理方針に従属させるものであったので,遊戯設備
・機器の稼働と別して,各店舗自体で独立して営業努力を図ることによ
,,って来店者の確保ないし増加を図ることはできないし本件施設周辺は
その特殊性により,元来客商売においては不利な立地にある。したがっ
て,本件各店舗を含めて本件施設内の飲食店等の経営を成り立たせるた
めには,本件施設自体に十分な入場者を確保することが必要不可欠なの
であり,そのためには,賃貸人たる受託銀行ら自体が多数の入場者を誘
引する営業努力を行うことが不可欠である。
以上を総合考慮すれば,本件における「賃貸借契約によって定まった
使用収益をするのに適した状態」とは,本件施設自体が入場者を誘引す
るに足りる十分に魅力的な状態にあることをいい,本件各賃貸借契約の
内容として,受託銀行らにおいては,Ⅰ遊戯施設への集客に十分な努力
を払うこと,Ⅱ本件建物への集客を損なうような遊戯施設経営は行わな
いことは黙示的にあるいは信義則上,盛り込まれており,そこから,以
下に述べる①営業努力義務,②営業日・営業時間維持義務が導かれる。
(イ)営業努力義務
a義務内容
,。受託銀行らは本件施設への集客を図るために営業努力義務を負う
具体的には,集客のための宣伝や勧誘のための努力,リピーターを誘
引するための遊戯施設の更新や催し・行事の企画の努力,空店舗を直
ちに補填し満店舗状態を維持する努力を行う義務が挙げられる。
b義務違反事実
本件施設は,開業当初は客を集めたものの,まもなく入場者数は激
減することとなったが,これに対し,受託銀行らは,集客のための宣
伝・勧誘のための努力及びリピーターを誘引するための遊戯施設の更
新や催し・行事の企画の努力をほとんど行わなかった。さらに,入場
者数が減ってくると,遊戯施設について,新たな客を招くような新設
や改装等は行わず,逆に既存の施設を次々と閉鎖していった。
また,受託銀行らは,文書上の明確な取り決めもしないまま,警備
会社からただ求められるに任せて収入をはるかに上回る過大な警備費
で警備業務を委託し,開業後も十分な見直しを行わないまま,漫然と
収入を遥かに上回る過大な警備費を支払い続けていた。
受託銀行らは,次々と空店舗が発生すると,新たなテナントを誘致
して空店舗を埋める努力を放棄し,空店舗跡をベニヤ板で覆いこれに
ペンキで絵を描いてごまかすなどしていた上,遊戯施設や店舗賃借人
,,に対して解決金名目で金銭を提供して積極的に賃貸借契約を解約し
立ち退かせていた。
(ウ)営業日・営業時間維持義務
a義務内容
本件施設のような遊園複合施設において遊戯施設の営業日を変更し
たり営業時間を短縮すれば,営業しない日及び短縮された時間帯には
入場者を得ることができなくなり,その結果,施設内の飲食店や物販
店にとって来客が全く期待できなくなるのは当然であるから,飲食店
や物販店にとって,遊戯施設の営業時間等は,本来,賃貸借契約の不
可欠の内容あるいは前提であり,賃貸人の一方的,恣意的な運用は許
されない。
本件では,特に,本件各賃貸借契約に係る契約書(以下「本件賃貸
借契約書」という)15条において「乙(賃借人)又は乙の使用人。
は,区画における営業および建物の管理にあたっては,甲(賃貸人)
の管理方針に従い甲が定める館内規則,指示事項等を遵守しなければ
ならない」と定められ,本件賃貸借契約書を受けて運営管理会社が。
定めた営業管理規則(以下「本件営業管理規則」という)8条にお。
いて,営業日は「原則,年中無休」とし,営業時間については「飲食
店舗10:00∼11:00」と定められている。AMPM
したがって,賃貸人には,条理上ないし信義則上,本件営業管理規
則所定の営業日・営業時間内は賃借人において当該店舗の営業が可能
な状態におく義務がある。
b義務違反事実
受託銀行らは,平成14年12月18日,第7回フェスティバルゲ
ート会理事会において,遊戯施設の運営時間を見直し,年間189日
ほどの繁忙日は従来どおりとするが,閑散日は午前10時から午後6
時までの8時間営業とし,屋上キッズランドについては,繁忙日のみ
の営業とし,平成15年1月から実施すると述べて,一方的に営業日
・営業時間の変更を行った。
(被告甲の主張)
(ア)営業努力義務の発生根拠の不存在
,,本件各賃貸借契約の目的は飲食店舗の使用であるが原告が主張する
賃貸物件を賃貸借契約によって定まった使用収益に適した状態におく義
務は,実質的には,賃借人に賃貸物件での経営を成り立たせ,利益を上
げさせる義務に等しい。当該物件を使用収益するためにはそれ以外の遊
戯施設や機器を使用する必要はなく,理論上,当該物件以外の物件を一
定の状態に保つ義務は導き出せない。
(イ)営業努力義務違反の不存在
受託銀行らは,集客のための各種宣伝や営業活動,催し・行事の企画
・開催等,本件事業の経営改善に向けて最大限の努力を行った。
,,本件外周警備については本件施設のオープンが夏休み時期に当たり
多数の入場者が押し寄せる可能性があったことなどを理由に,地元警察
から,大規模かつ厳重な警備体制を敷くように強い指導があった上,被
告大阪市からも同様の指示があったため,やむを得ずこれを実施した。
もっとも,開業後は段階的に規模を縮小していったが,警備会社との交
渉が思うように進まず,短期間での縮小ができなかったものである。
また,受託銀行ら及び運営管理会社は,退店者が出た場合には,受託
銀行らの取引先を含む各方面へのテナントの募集活動を最大限の努力を
もって行っていたが,結果的に,賃貸物件の調整等がつかず,空き区画
,,全てを即時に埋めることができなかったにすぎず受託銀行らにおいて
,。自ら積極的に賃貸借契約を解約しテナントを立ち退かせたことはない
(ウ)営業日・営業時間維持義務の不存在
,。本件賃貸借契約書には営業日や営業時間を定めた規定は存在しない
逆に,本件営業管理規則には,運営管理会社が営業日及び営業時間を変
更する場合には,出店者はその指示に従わなければならない旨定められ
ている。
よって,受託銀行には,営業日・営業時間維持義務など存しない。
(被告乙の主張)
原告が引用する東京地裁平成10年9月30日判決は,間接的に賃貸物
件の利用を妨げる行為を賃貸人の義務違反と認めたに過ぎず,賃借人の営
業に対する特別な便益の提供というような特殊な作為義務を認めたわけで
はない。
また,本件施設への集客努力や営業時間の維持は本件各賃貸借契約の内
容にはなっていない。
エ背信的運営の有無
(原告の主張)
本件施設のように,賃借人が,独自の営業活動を拘束され,施設に(ア)
よる収益活動の一部として活動し,施設全体が一体的収益活動を念頭に
設計されている場合において,施設を運営する賃貸人としても自ら営利
を目的として活動する以上,施設全体が経済合理性をもって運営される
であろうという賃借人の賃貸人に対する信頼は法的保護に値する。そう
であれば,賃貸人としても,全く自由な運営が許されるわけではなく,
施設全体の運営が経済合理性の範囲で制約を受けるというべきである。
,,,,よって賃貸人はこのような関係に立つ賃借人に対して信義則上
合理的に想定できる施設運営上の裁量を逸脱するような管理運営を行う
ことまでは許されない。
,,(イ)受託銀行らは開業当初からおよそ収支に合わない警備費を支払い
その後も警備費の見直しをせずに漫然と放置する一方で,営業日・営業
時間の一方的な変更や退店勧奨によりアミューズメント施設としての機
能を喪失させ,施設全体を破綻に至らせたものであって,背信的運営と
して違法の評価を免れない。
(被告甲の主張)
確かに,外周警備費の負担は,本件事業が破綻した原因の一つであった
が,バブル経済の崩壊とその後の長期間に及ぶ深刻な不況の到来,並びに
これに伴う国民の娯楽に対する嗜好の急激な変化こそが,本件事業が破綻
した最大の原因である。そして,本件事業計画が見直された平成6年当時
は,バブル経済の崩壊から立ち直って徐々に景気が上向くものと期待され
ていた時期であって,その後10年前後も景気が回復せず,深刻な不況が
続くことを予測することは困難であった。
また,本件施設の開業が夏休み時期であり,多数の来場者が押し寄せる
ことによる混乱が危惧されたことなどの理由から,大規模かつ厳重な警備
体制を敷くよう地元警察や被告大阪市から指示があったため,やむを得ず
本件外周警備を実施した。もっとも,開業後は段階的に規模が縮小された
が,警備会社との交渉が思うように進まず,短期間での縮小ができなかっ
たものである。
(被告乙の主張)
入場者の減少は,受託銀行らの努力を超えた長引く景気低迷という外部
的要因によるものである。
本件外周警備に係る業務委託契約(以下「本件外周警備業務委託契約」
という)はC信託銀行によって締結されたものであり,その経過は不知。
であるが,本件外周警備業務委託契約に基づく警備費が過大であったこと
は認める。
被告大阪市の責任の有無(2)
ア共同不法行為責任の有無
(原告の主張)
(ア)共同不法行為における「共同」の意義
「」,,,共同不法行為における共同とは客観的な関連共同性すなわち
共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えたと
評価できることをいい,ここにいう「客観的関連共同性」とは,結果の
発生に対して社会通念上全体として1個の行為と認められる程度の一体
性があることが必要であり,かつこれを以て足りる。
(イ)本件外周警備業務委託契約の締結経緯については,一切秘匿されて
いるが,少なくとも被告大阪市が関与し主導しており,そのため,運営
管理会社において容易に契約内容の変更が行えず,巨額の警備費用の支
出を継続せざるを得なかった。
(ウ)被告大阪市は,本件施設開業後も毎月,各店舗の売上高,賃料等の
支払状況や入退店状況などに関する月例報告書や年次報告書を受け取っ
ており,本件施設がおよそ当初予定された収支計画を著しく逸脱してい
ることを認識,熟知していた。
(エ)被告大阪市は,上記(イ)及び(ウ)のような問題を認識しており,か
つ,本件土地信託契約上これを改善するための権限(本件土地信託契約
に係る契約書40条「信託財産に関する調査及び報告」等)を行使する
ことが可能であったのであるから,受託銀行らに対し,このような権限
,,を行使した上で早期に損失の填補を要求していれば填補資金をもって
本件施設の空店舗を埋め,遊戯施設を更新したり,新規遊戯施設を導入
するなどしてリピーターの確保を図ることができたにもかかわらず,こ
れを行使せずに漫然と本件施設の累積赤字が膨らむのを放置した。
(被告大阪市の主張)
原告又はF商店と本件各賃貸借契約の締結交渉を行ったのは,受託銀行
らであって,被告大阪市は何らこれに関与していないから,被告大阪市が
告知義務違反や詐欺的勧誘として違法の評価を受けることはない。
本件外周警備のスキームを計画,決定したのは受託銀行らであって,被
告大阪市は何ら関知していない。
委託者兼受益者である被告大阪市の受託銀行らに対する監督的権能は,
いずれも被告大阪市自身の利益を守るために与えられた権限であり,信託
当事者以外の者である原告の利益を守るために与えられたものではないか
ら,被告大阪市が原告に対して法律上の作為義務を負うことはない。
受託銀行らの行為と被告大阪市の行為との間には,主観的にも客観的に
も関連共同性がない。
イ債務不履行責任の有無
(ア)平成16年9月末までの受託銀行らの債務不履行責任の承継の有無
(原告の主張)
本件において,受託銀行らは,本件各賃貸借契約が締結された平成9
年7月17日から平成16年9月末日に本件土地信託契約が合意解除さ
れるまでの期間について,上記営業努力義務違反ないし営業日・営業時
間維持義務違反に基づき債務不履行責任を負っていた。そして,被告大
阪市は,平成16年10月1日,受託銀行らから本件2階店舗及び本件
5階店舗の各賃貸借契約の賃貸人たる地位及びその地位に基づく上記債
務不履行責任を承継した。
(被告大阪市の主張)
被告大阪市は,平成16年10月1日,本件2階店舗及び本件5階店
舗の各賃貸借契約の賃貸人たる地位を承継したが,同日より前の原告に
対する債務不履行責任についてまで承継したわけではなく,債務引受け
の合意も存在しない。
(イ)平成16年9月末日以降の本件施設の運営管理に関する責任の有無
(原告の主張)
a営業努力義務及び営業日・営業時間維持義務の承継
被告大阪市は,前記争いのない事実等(4)オのように受託銀行らの
賃貸人としての権利義務を承継したものであるから,賃貸人としての
義務を当然に負うものである。そのため,被告大阪市においても,受
託銀行らと同様に営業努力義務と営業日・営業時間維持義務も負うも
のである。
b営業努力義務違反ないし背信的運営
被告大阪市は,将来にわたって多額の赤字が継続的に生じることを
十分に認識していたにもかかわらず,警備費用の削減を図ることもな
く,莫大な出費を更に継続した。しかも,平成9年9月当初は警備費
用の金額についての文書上の明確な取り決めもなく,大ざっぱな合意
のもとでただ求められるに任せて過大な警備費用を垂れ流すかのごと
く支出し続け,後日になってから既成事実に見合った「特別外周警備
」,,業務委託契約書を日付を遡らせて作成されたものと見られこれは
当初から正規の契約に基づいて支出する以上に施設の運営を危機に陥
らせる行為であり,背任ともいえるものである。このような施設の運
営を困難ならしめる行為が賃借人との関係でより一層の営業努力義務
違反を形成するのは明らかである。
被告大阪市は,本件施設の遊戯施設やテナントに対し,解決金名目
で金銭を提供して積極的に賃貸借契約を解約し,立ち退かせていた。
このように,立退料ないし解決金を提供してまで退去を勧奨すること
は,営業努力義務の一環としての店舗の維持・充実義務ないし使用収
益させる義務に真っ向から違反するものである。
営業日・営業時間維持義務違反c
被告大阪市は,営業時間を維持する努力は全く見せず,本件施設の
荒廃にまかせてますます営業時間の短縮を一方的に推し進めたのであ
って,被告大阪市の営業日・営業時間維持義務違反は明らかである。
(被告大阪市の主張)
a営業努力義務及び営業日・営業時間維持義務の不存在
原告が引用する東京地裁平成10年9月30日判決は,賃貸人の行
為により,賃貸フロアの一体的利用を妨げられたことから,賃貸人側
に一部債務不履行を認定しているにすぎないのに対し,原告が本件で
問題としている賃貸人側の行為は不作為であるから,事案をまったく
異にする。本件賃貸借契約書には,原告が主張するような努力義務を
定めた規定は存在しない。なお,本件営業管理規則には,運営管理会
社が営業日及び営業時間を変更する場合には,出店者はその指示に従
わなければならない旨が定められている。
,,。よって被告大阪市には営業日・営業時間維持義務など存しない
b営業努力義務違反ないし背信的運営の不存在
本件外周警備のスキームを計画,決定したのは,受託銀行らであっ
て,被告大阪市は何ら関知しておらず,被告大阪市がこれに関して違
法性を問われることはない。
被告大阪市は,受託銀行らから本件施設の運営を引き継いだ後,本
件施設を新たな商業施設として再生するための提案協議を行い,最優
秀案となったJによる再生計画を実現すべく,Jとの間で,本件施設
の管理委託及び条件成就後の賃貸借を内容とするマスターリース契約
を締結した。この中には,本件建物の5階部分について,他の集客施
設を入居させ,施設全体の集客力を増強させる計画が含まれていたの
であって,被告大阪市による放漫経営など存せず,原告に対する背信
的運営として違法となるものではない。
ウ名誉ないし信用の毀損の有無
(原告の主張)
被告大阪市は,原告に対し,本件施設からの追い出しを図って,何ら正
当な根拠もないにもかかわらず,以下のとおり,悪意に満ちた調停申立て
や仮処分申立てを行い,あたかも原告が不当な利益を求めて居座っている
かのごとく事実無根の主張を繰り返し,原告の名誉・信用を著しく毀損し
た。
(ア)調停申立てに係る名誉ないし信用の毀損
被告大阪市は,前記争いのない事実等()イのとおり,本件調停の申5
立てを行っておきながら,その調停期日の前日に至って,原告に対し,
従来の「立退料(2億円及び敷金全額の合計2億2450万円)に5」
000万円を上乗せするので立ち退いて欲しい旨の申入れを行い,原告
がこれに応じなければ本件調停を取り下げざるを得ないと述べた。
これは,被告大阪市が,本件調停の申立てにつき法的な理由が成り立
たないことを自認していたことを物語るものである。
そして実際に,被告大阪市は,平成17年6月16日,何ら調停手続
に入らないまま,即日本件調停の申立てを取り下げた。
このように,被告大阪市は,原告を含むテナントに対して誠実に話し
合いを行うなどの対応に出ず,かえって嫌がらせを行って退去を迫り,
あるいはテナントが営業の継続に耐えられず,自ら退去するのを待つと
いった不誠実な対応に終始している。
(イ)仮処分命令申立てに係る名誉ないし信用の毀損
被告大阪市は,本件調停を取り下げるや,原告を相手方・債務者とし
て,何らの正当な根拠もないままに,原告が本件営業管理規則に違反し
て営業時間を短縮するなどしているとの理由による契約解除に基づく本
件2階店舗及び本件5階店舗の明渡請求権を被保全権利として,両店舗
の明渡しを求める本件仮処分命令申立てを行った。
被告大阪市は,自らの責任を棚に上げ「原告が5階区画及び2階区,
画を明け渡すことによって経済的不利益を被ることはなく,かえって日
々発生する赤字の拡大を止めるということになる「赤字が日々発生。」,
・拡大するにもかかわらず,原告が占有を続けているのは,被告に対す
る金銭的要求にかかる交渉を有利に進める手段ないし戦術であるとしか
考えられない」などと,あたかも加害者・犯罪者が,被害者に非があ。
るかのような歪曲や非難を行うのである。
しかし,本件仮処分命令申立てについては,被保全権利の不存在が明
白であったことから,審尋における和解の試みが不調に帰するや,被告
大阪市は,決定がなされるに先立って申立てを取り下げるに至った。
(被告大阪市の主張)
,,,,(ア)被告大阪市が平成16年10月以後再三にわたり原告に対し
本件2階店舗及び本件5階店舗の各賃貸借契約の合意解除の申入れをし
てきたが,原告が要求する損失補填の金額と被告大阪市が妥当と考える
補償金額との開きがあまりに大きかったことから,調停委員の調整機能
に期待して本件調停を申し立てた。しかし,Jとの契約条件として平成
17年7月24日までに明渡交渉が成立する必要があったことから,被
告大阪市は,早期の調停成立に向けて,第1回調停期日前に原告との交
渉を行ったが,やはり開きが大きく,調停手続による調整はもはや不可
能と考え,やむなく本件調停の申立てを取り下げた。
(イ)仮処分命令における被保全権利及び保全の必要性の存在は,両当事
者の主張及び提出証拠に基づいて裁判所が判断する事項であり,かかる
仮処分命令の申立て自体及び申立ての理由として事実を主張したこと自
体が不法行為に該当しないことは明白である。
なお,被告大阪市が仮処分命令の申立てを取り下げたのは,Jとの約
束期限が経過したことによる保全の必要性が低下したからにすぎない。
(ウ)したがって,本件調停の申立てや本件仮処分命令の申立てによって
原告の名誉,信用が不当に侵害されたとは到底認められない。
損害の発生及びその額(3)
ア原告の信用の失墜,謝罪広告の必要と慰謝料
(原告の主張)
被告大阪市による本件仮処分命令申立ての事実及びその後の経緯が各紙
で広く報道された結果,実際には原告に何らの落ち度もなく,かつ,発端
からして被告大阪市の言いがかりであるにもかかわらず,あたかも明渡交
渉の不成立による被告大阪市の損失が原告一人の責めに帰するかのような
印象を一般に与えられた。これによって損なわれた原告の社会的信用は計
り知れない。特に公共施設への出店も多く手がける原告にとっては,かか
る状況は今後の出店に影響することが当然予想されるのであって,これが
放置されれば今後の原告の営業に対する悪影響は避けられない。
よって,本件において被告大阪市による前記()ウ(原告の主張)(ア)2
及び(イ)記載の行為につき謝罪の必要性が存する。また,被告大阪市の行
為により原告の被った社会的信用失墜を慰謝するに足る金額は1000万
円を下らない。
(被告大阪市の主張)
本件仮処分命令の申立てについて新聞に掲載されたことは認めるが,被
告大阪市は,報道機関からの事実確認に対し,本件仮処分命令の申立てを
した事実を申し述べただけで,その余の事実を発表したことはない。その
余は争う。
原告にどのような信用失墜があったかが全く具体的に明らかにされてい
ないし,その金銭的評価の根拠も不明であるから,原告の主張は理由がな
い。
イ経済的損害
(原告の主張)
原告は,被告らの不法行為ないしは債務不履行により,以下のとおり,
5億6224万9735円の経済的損害を被った。
(ア)当初投下費用合計3億8977万5287円
原告は,本件各賃貸借契約の締結により,出店のために当初投下費用
として以下の項目について自らの資金を投入した。
①内装工事代金・什器備品代
原告は,本件各賃貸借契約に基づいて,店舗を開設するために内装
,。,工事を行い開店のための什器備品を用意したそれに要した費用は
別紙「内装工事代金等」記載のとおり,総額3億7157万3386
円に上る。
②その他開業に要した費用
その他,原告は本件施設における開業に当たって,受託銀行らから
以下のとおり,総額1820万1901円の支出を余儀なくされた。
FGテナント総合保険56万7280円
内監費1156万5372円
建設協力金406万9249円
開業協力金200万円
(イ)累積赤字合計1億6247万4448円
本件施設は平成9年7月に開業したが,原告は,別紙「累積損失一覧
表」記載のとおり,初年度こそわずかばかりの黒字を計上することがで
きたものの,次年度以降は赤字を計上し続けており,その累積は平成1
7年9月現在で1億6247万4448円となっている。
(被告大阪市の主張)
原告は,商業施設におけるテナント経営の経験を有する事業者であると
ころ,平成10年7月時点あるいは遅くとも原告がF商店から営業を承継
した平成12年中ごろ時点において,本件施設の状況や自らの赤字状態も
認識していたにもかかわらず,営業を継続していたというのであるから,
いずれも自らの経営判断に基づく結果という他なく,そもそも投下費用や
累積赤字は「損害」とはいえず,百歩譲っても,被告大阪市の行為との相
当因果関係は認められない。
(被告甲の主張)
原告の主張(ア)①のうち,M株式会社に対する1268万6258円,
株式会社Nに対する300万円及び有限会社Oに対する76万0536円
の各支出については,請求書や領収書等に案件名や明細が記載されておら
ず,これだけでは①に含まれるとは認め難い。
(被告乙の主張)
不知
F商店から原告への損害賠償請求権の承継の有無(4)
(原告の主張)
ア原告とF商店は,平成12年7月1日,F商店の営業の全部を同月3日
付けで原告に譲渡する旨の合意(以下,この営業譲渡を「本件営業譲渡」
という)をしたが,その実態に鑑みれば,単に有限会社から株式会社に。
組織変更をしたにすぎない。他方,被告ら自身も,このような実態を承認
してきた。
イ当事者の合理的意思からすれば,本件営業譲渡の際,本件施設に関する
F商店の被告らに対する権利義務は,当然に原告に包括承継される旨の合
意があったと見るべきである。
引継貸借対照表等に投下費用や累積赤字に係る損害賠償請求権以下本(「
件損害賠償請求権」という)の記載がないのは,受託銀行らがその無策。
・乱脈経営について隠匿していたため,原告及びF商店において,本件損
害賠償請求権の存在を明確に認識できなかったからである。
受託銀行らは,本件営業譲渡後,何らの異議も述べずに原告から賃料を
受け取ったり,原告に対し本件営業管理規則違反による契約解除を主張し
たりするなど,原告がF商店の債権を包括承継したことを承諾していたこ
とは明らかである。
(被告大阪市の主張)
ア原告とF商店は別人格の法人であるところ,本件各賃貸借契約の当事者
はF商店である。
イ本件営業譲渡に伴い,原告がF商店から本件損害賠償請求権を承継した
り,譲り受けたりした事実は認められない。
(被告甲の主張)
アF商店と原告とは法的には別人格である。あえて営業譲渡という形式を
選択しておきながら,都合が悪くなると実態としては組織変更をしたにす
ぎず,実質的には同一の法人格であると主張するのは,信義則に反し許さ
れない。
イF商店と原告との間で作成された本件営業譲渡に係る契約書(以下「本
件営業譲渡契約書」という)及び関連書類の記載並びに当時のF商店及。
び原告の認識からして,本件損害賠償請求権が譲渡されたと解することは
できない。
F商店は,被告甲に対し,賃借権の譲渡承諾手続を採るべきところを単
なる変更届を提出したにとどまったため,被告甲は,後日になってF商店
と原告が別人格であることに気付いたのであって,黙示的に賃借権の譲渡
を承諾したわけではない。
受託銀行らが本件各店舗の賃借権の譲渡について承諾していたとして
も,本件損害賠償請求権の譲渡を承諾したわけではなく,原告が対抗要件
を具備するまでは原告に対する債権譲渡を認めない。
(被告乙の主張)
ア原告とF商店は法的に別個独立の存在であり,F商店の支出や損失が原
告のそれとなることはない。
イ本件営業譲渡契約書及び関連書類には本件損害賠償請求権の記載はな
く,原告とF商店の合理的意思として本件損害賠償請求権の承継を合意し
たという主張には無理がある。
消滅時効の成否(5)
(被告甲の主張)
,,仮に本件営業譲渡の際に本件損害賠償請求権も債権譲渡されたとしても
本件営業譲渡の日である平成12年7月1日から5年以上経過してから本訴
が提起されているから,本件損害賠償請求権については,商事時効が完成し
ている。
,,また原告が主張する説明・告知義務違反を原因とする損害賠償請求権は
,,,不法行為によるものであるから消滅時効期間は3年であるところ原告は
平成14年2月14日に,当時のC信託銀行に対し,本件訴訟での主張と同
趣旨の主張を述べて責任を追及する書面を送付しているのであるから,遅く
とも同日には損害賠償請求権の行使が可能な程度に損害及び加害者を知って
いたことになり,これについても消滅時効が完成している。
被告甲は,平成18年6月14日到達の準備書面により,原告に対し,上
記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
(原告の主張)
平成12年7月3日時点でF商店から原告に承継されたのは未だ潜在的な
,。損害賠償請求権でありこの時点では損害及び加害者を知ったとはいえない
,,,原告は受託銀行ら及び被告大阪市が本件施設開設前から今日に至るまで
著しく信義に悖る背信的運営・対応に終始していた実態について損害賠償請
求が可能であるという程度の認識と確信を有するに至ったのは,被告大阪市
が「再生計画」の名の下に,本件施設の「都市型立体遊戯施設」であること
を明確に放棄したことを知った時点である。
また,同日以降受託銀行らの無策,乱脈経営は継続し,原告の損害が発生
し続けているのであるから,いまだ消滅時効の進行は開始していない。
本訴提起が平成17年12月19日となったのは,受託銀行らが本件施設
の無策,乱脈経営を秘匿していたからであり,受託銀行らによる消滅時効の
援用は権利濫用に当たる。
第3争点に対する判断
1認定事実
証拠(甲2ないし4,7ないし11,13ないし37,41ないし61,乙
3ないし14,証人P,同Q)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。
本件施設の特徴(1)
ア本件施設のコンセプト
本件施設は,鉄骨鉄筋コンクリート造地上8階,地下1階の建物で,遊
園施設,劇場,飲食店,物販店,バス車庫,駐車場,駐輪場からなる遊戯
施設・飲食店・物販店を主要な施設とする「フェスティバルゲート」と称
する複合施設である。
当初の計画では,施設内を縦横無尽に駆けめぐる「デルピス」と称する
巨大なジェットコースター,宇宙での戦闘シミュレーションが楽しめると
いう「コスモファイター,垂直上昇・下降施設「テオスの塔,シューテ」」
ィング・シミュレーションの醍醐味をうたう「エキドナの洞窟,時空を」
超えた冒険旅行の類似体験をうたう「ザ・ラストアドベンチャー,異次」
元空間でゲームに夢中をうたう「ジュールヴェルヌの研究室,小さなお」
子さまもいっぱい楽しめる「屋上キッズランド」等の立体遊戯施設を5階
を中心とする上層階に配置し,このようなアミューズメント施設により来
場者を集めて上層階に集客して,そのような客が順次,下層階のテナント
にも訪れるという,いわゆる「シャワー効果」で施設全体の収益を図るこ
とが期待されていた。
イ本件施設の立地
また,本件施設の立地は,JR「新今宮駅」及び地下鉄「動物園前駅」
の直近で,東側には天王寺動物園や市立美術館,北側には通天閣を中心と
する新世界,南側には道路を隔てて,いわゆる「愛隣地区」が存在すると
いう位置関係であった。
ウ運営管理会社とテナントの関係
運営管理会社と各テナントとの間には,営業管理規則(甲13)や建物
管理規則(甲14)等により,細かい取り決めがなされており,テナント
は,営業方針,営業種目,営業日・営業時間については運営管理会社の指
,,示に従わなければならず行事・催事の実施や広告についても制約を受け
他方,施設全体のための費用支出や行事参加等が義務付けられていた。
エF商店の出店
F商店は,本件施設の目玉遊戯施設であったジェットコースター「デル
ピス」の乗降客及び「ザ・ラストアドベンチャー」や「キッズランド」と
いったアトラクションの入場者等の来店を期待して,それらの施設がある
5階及びその階下の4階に出店した。
本件施設開業当初の収支状況(2)
本件施設は,初年度は約656万人の来場者を確保することができたが,
事業収支は,22億円弱の収入を得たのに対し,後記の多額の警備費を負担
したことなどにより,30億円を超える支出を余儀なくされ,約8億460
0万円の赤字となった。
なお,F商店は,初年度は,本件5階店舗で1億6722万2196円,
本件4階店舗で7281万3148円の合計2億4003万5344円の売
上げを記録し,5086万1778円の黒字を計上することができた。
本件施設開業2年目以降の収支状況(3)
(),開業2年目の平成10年度平成10年7月から平成11年6月までは
来場者が636万人に激減したが,Bゾーンの土地の売却益として20億円
,,,強を計上できたため事業収支は形式上は5億円弱の赤字にとどまったが
実質的には,25億円の赤字となり,さらに悪化した。
,,,その後も入場者数は減り続け平成14年度には443万人まで減少し
テナントの退店が相次ぐようになり,事業収支も悪化の一途を辿った。
その原因は,霞町用地土地信託事業調査委員会において,多額の警備費の
負担の他,集客力の低下とそれに伴うテナントの入居率の低下及びテナント
賃料単価の引き下げによる賃料収入の低下にあると分析されている(甲1
7。)
警備費の負担(4)
,,本件施設の事業収支を圧迫した最大の原因は過大な警備費の負担であり
開業初年度は,実質8か月強であるにもかかわらず,16億1500万円の
出費となり,その後も,平成10年度は24億3200万円,平成11年度
は23億6200万円,平成12年度は19億4300万円,その後やや改
善されたものの,平成13年度は10億3400万円,平成14年度は5億
0800万円と,開業2年目以降,毎年収入を大幅に上回る警備費を負担し
続けた(甲17の資料17。)
テナントの状況(5)
,,,,本件施設のテナントは開業当初は飲食店33店舗物販店36店舗で
その入居率は92.1パーセントであったが,その後退店が相次ぐようにな
り,運営管理会社において新テナント確保に努めたが,入居率は低下の一途
を辿った。その結果,平成13年度末(平成14年6月)においては,店舗
数は,飲食店11店舗,物販店12店舗,入居率60.4パーセントという
状況に至った。それに伴い,賃料収入も,平成9年度の8億4100万円か
,(),(),ら6億0600万円平成10年度2億8400万円平成11年度
1億8600万円(平成12年度,1億3800万円(平成13年度)と)
減少し続けた(甲17の資料14−3,16。)
原告(F商店)と受託銀行らとの交渉(6)
F商店は,本件施設開業の翌年以降,本件施設への来場者数が激減し,次
第に撤退する店舗が増え始め,本件5階店舗の両側のアトラクションも撤退
したことから,運営管理会社や受託銀行らに対し,来場者数を増やすための
,,。措置を講じるよう度々要請したが特段効果的な対策は講じられなかった
そこで,原告は,赤字負担を軽減するため,本件4階店舗賃貸借契約を合意
解除し,面積が小さく,人通りの多い本件2階店舗に移転したが,本件5階
店舗については,面積が広く,投下資金も多額に及んでいたため,賃貸借契
約を維持しつつ,受託銀行らに対し,意見書や質問書等を送付しつつ,交渉
を継続した。
なお,原告は,本件5階店舗の一部を利用していなかったため,運営管理
会社から返還要求を受けたが,これには応じなかった。
本件土地信託契約の解消(7)
,,,,受託銀行らは平成13年5月31日以降東京地方裁判所に対し順次
信託の目的及び信託事業の目標を達成することが不可能であるとして,信託
受託者辞任許可の申請をし,被告大阪市との間で意見書や主張書面のやりと
りを繰り返したが,平成16年3月,大阪簡易裁判所において,被告大阪市
との間で合意解約に関する調停が成立したため,順次,上記申請を取り下げ
た。その後,受託銀行らと被告大阪市は,平成16年9月30日,本件土地
信託契約を合意解除した。
原告と被告大阪市との交渉(8)
被告大阪市は,平成16年9月18日,原告に対して立ち退きの申入れを
行ったところ,原告が条件によっては立ち退きの意思ありとの態度であった
ため,その後,両者の間で補償額等の交渉が行われたが,両者の補償提示額
が6064万7297円と9億8232万4841円という大きな開きがあ
るまま,なかなか歩み寄りができなかった。その後,本件調停の期日前には
被告大阪市側から2億5000万円に保証金2500万円の返還という条件
を提示したものの,原告側がこれを拒絶し,仮処分手続中には,原告から解
決金として5億8000万円の提示があり,裁判所からは「3億円に加えて
保証金返還による店舗明渡し,残余については訴訟による解決を図る」とい
う和解案が提案されたが,原告側がこれを拒絶して物別れとなった。
2被告甲及び同乙の責任の有無(争点())について1
()説明・告知義務違反及び詐欺的勧誘の有無(争点()ア及びイ)について11
ア説明・告知義務の有無について
(ア)a契約関係に入ろうとする者は,信義則上,互いに相手方に不測の
損害を生ぜしめることのないように配慮すべき義務を負い,賃貸借契
約に際しては,賃貸人になろうとする者は,賃借人になろうとする者
が当該物件を賃借するか否かを判断する上で重要な考慮要素であっ
て,賃貸人になろうとする者が知っていたか,又は容易に知り得た事
実については,賃借人になろうとする者に対し説明・告知すべき義務
を負うと解するのが相当である。
本件のような商業ビルの賃貸借契約において,賃借希望者の最大の
関心は,賃借物件における営業によりどの程度の収益を得ることがで
きるかという点にあり,賃貸人の事業との相乗効果を期待するのが通
常であるといえるから,契約締結の際,賃貸人が賃借希望者に対して
提供する事業内容等に関する情報は,賃借希望者が契約を締結するか
否かを判断するための重要な情報の一つというべきである。特に,本
件施設は,上記1()のとおり,単なる事務所ビルや商業ビルとは異1
なり,遊戯施設を集客の核とし,そのシャワー効果で物販店及び飲食
店舗が潤うという構造の複合的商業ビルであること(甲16,17,
証人Q)からすれば,遊戯設備と物販店や飲食店が有機的に一体とし
て設計されており,賃借人は,本件施設全体の収益活動の一部として
活動することが予定されているということができる。
また,本件賃貸借契約書(甲4の1ないし3)及び本件営業管理規
則(甲13)によれば,賃借人は,営業日・営業時間を変更すること
ができず(本件営業管理規則8条4項,本件施設建物内及びその敷)
地の指定する箇所,場所,方法以外に商号,店名,その他の表示,広
告・案内板を設置したり,事前の承認なしに本件施設内で行事・催事
及びフェスティバルゲートの名称を使用する広告を行ったりすること
ができない一方で(本件賃貸借契約書16条6項,本件営業管理規則
9条,11条2項,運営管理会社や本件施設が行う共同の行事・催)
事・広告については,運営管理会社の決定に従い,必ず参加しなけれ
ばならない上に(本件営業管理規則11条,開業協力金や販売促進)
費等を支払わなければならないこと(本件賃貸借契約書10条)にな
っていることが認められることからすると,賃借人は,独自の営業活
動を制限されるため,本件施設の集客力に依存せざるを得ないばかり
か,一方的に本件施設の事業に協力する義務までも負っているのであ
り,各賃借人の収益は本件施設の運営及び集客力による影響を避けら
れない関係にあるということができる。
このように,本件のような複合遊戯施設においては,賃借人にとっ
て,遊戯施設全体の集客力及び収益性が自らの営業活動に直結するに
もかかわらず,こうした情報は賃貸人側に集中している点や,遊戯施
設全体の収益性は賃貸人の事業内容や営業努力等により容易かつ大き
く左右される点に特殊性があり,賃貸人が十分な情報を提供しなかっ
た場合には,出店の可否に関する経営判断について賃借人に全責任を
負わせることは当事者間の公平を著しく害するものといわざるを得な
い。
bさらに,本件施設の敷地が被告大阪市が信託した市有地であって,
本件施設の事業目的が被告大阪市の交通事業の経営の安定に資するこ
となどにあること(乙5,証人Q)からすれば,条理上,受託銀行ら
には,本件施設を経済的合理性に基づき運営することが期待され,そ
のような期待を前提に本件施設の賃借を希望する者に対し,本件事業
の概要や実績等本件事業の収支に関連する事項について十分に説明す
ることが要請される。
cこのような,本件施設の目的や性質,構造,運営実態,当事者の能
力の格差等に照らせば,受託銀行らには,出店希望者に対し,本件事
業の計画や実績など受託銀行らが有する情報であって,出店者の収支
予測に重大な影響を与えるものを十分に説明・告知し,出店希望者が
出店の可否の判断を誤ることのないように配慮すべき信義則上の義務
があるというべきである。
(イ)被告甲は,本件施設と駅ビルやオフィスビルを同視し,後者におい
ては,賃貸人が説明・告知義務を負わないことから,本件施設でも同様
に説明・告知義務を負わない旨主張し,文献「最新ビルの経営と管理」
(丙7)を証拠として提出する。
しかし,駅ビルやオフィスビルは,乗降客ないしビジネスマンの利用
の必要や便宜とか,執務や商談の便宜などの点で存在の意義ないし理由
があり,飲食店舗の存在は特に不可欠ではないが,本件施設のような遊
戯施設では,入場者にできるだけ長時間本件施設に滞在し,遊戯設備を
たくさん利用してもらう必要があり,そのためには休憩場所の提供や,
食事を摂る飲食店等の設置は不可欠といえる。駅ビルやオフィスビルの
場合は,ビル内の飲食店を利用するために来店する客が少なからずいる
のに対して,本件施設のような遊戯施設においては,たとえ入場料が無
料であることを考慮しても,施設内の飲食店を利用するためにわざわざ
来店する客はそう多くはないといえる。また,本件施設の飲食店は,前
記(ア)のとおり,遊戯設備の稼働時間と無関係に営業時間を変更するこ
,,とができないから独自に営業努力を行うことが困難である点において
休日でも営業しているオフィスビル内の飲食店とも異なる。
このように,本件施設は,施設の目的・性質・機能の点で,駅ビルや
オフィスビルとは異なるもので,それらと同視することは相当でないか
ら,被告甲の上記主張は,採用できない。
イ説明・告知義務違反ないし詐欺的勧誘の有無について
(ア)a本件施設の収入状況の見通しについて
そもそも,本件事業計画において,当初は,処分したBゾーンの売
却益を本件施設の建築資金等に充当するという計画であったが(甲1
7,本件各賃貸借契約締結当時,Bゾーンの売却代金が34億43)
10万1000円にとどまり,当初予定されていた金額(52億16
82万円)を18億円近くも下回っていたと認められることからすれ
ば(甲17の資料12,本件施設の採算を確保するには当初計画以)
上に支出を大幅に制限することが必要な状況であったといえる。
また,本件事業計画において,賃料等による収入は19億6200
万円が見込まれており(甲17の資料14−3,これは予想収入全)
体の5分の4を占めるところ(証人Q,例えば,本件4階店舗の賃)
料が,当初の計画では坪単価1万8000円であったものが,本件4
階店舗賃貸借契約では坪単価1万円に減額されたり(甲4の3,甲5
7,本件5階店舗の賃料が,当初計画では月額530万8200円)
であったものが,本件5階店舗賃貸借契約では月平均約237万円で
あったというように(証人P,当初の計画から大幅に乖離した金額)
の賃料で契約することが,本件各店舗に限らず,本件施設全体で行わ
れていたと認められること(証人Q)からすれば,計画時の賃料に対
し,実際の賃料が大幅に下落していたのであり,当初計画が極めて杜
撰であって実態に合っていなかったにもかかわらず,その十分な見直
しをしないまま本件施設の開業に踏み切ったものであって,本件事業
,。の収入は開業前から予想収入を下回ることが確実であったといえる
このことは,本件施設開業からわずか9か月の平成10年4月22日
に,受託銀行の一つであった三井信託銀行からC信託銀行に宛てた内
容証明郵便(甲42の21)に「本事業の信託目的達成が不可能と,
なる懸念が大きいと判断せざるを得ません。したがって,弊社は,受
託銀行として,辞任等について検討したいと考えております」と記。
載されていることからも明らかである
b本件外周警備費の支出について
証拠(甲42の26)によれば,本件外周警備業務委託契約におけ
る警備費は,平成9年7月18日から8月31日までの間は1月当た
り2億1600万円,平成9年9月1日から平成10年2月15日ま
での間は1月当たり2億1920万円であると認められる。
そして,1月当たりの警備費が2億1920万円とすると,1年間
で26億3040万円を支出することになるが,これは,当初の管理
費の計画(平成9年度は6億4600万円。これは,平成9年7月か
ら翌年3月までの9か月のものであるが,1年間に換算しても約8億
6100万円となる)を大幅に上回るだけでなく,収入計画の全額。
年間26億0600万円をもってしても支払えない金額である甲()(
17の資料14−3。)
このように警備費の支出があまりに過大であることからすれば,事
業全体の収益性が低下し,遊戯設備のリニューアル費用といった将来
にわたる本件施設での収益性を担保するための経費の捻出が現実的に
は困難な収支状況となり,ひいては,徐々に集客力が低下し,事業全
体の成算が困難となることは容易に予見し得たといえる。
また,原告も,本件施設への出店が収益を上げることを目的として
いる以上,本件各賃貸借契約締結前に本件外周警備業務委託契約の内
容等について説明を受けていれば,本件施設への出店による収益の見
通しについて疑問を呈し,本件各賃貸借契約を締結することはなかっ
た可能性が高いと認められる(証人P。)
したがって,本件外周警備業務委託契約の内容が,本件施設の収益
性及び運営継続自体に関わる重大な事項であり,専ら本件施設の集客
力及び収益活動に自らの収益を依存せざるを得ない賃借人にとって,
本件施設への出店の可否を決する重要な判断要素となることは明らか
である。
そして,本件施設の開業前後におけるC信託銀行と警備会社との間
の交渉の状況等(甲41の14,甲42の22,証人Q)及び弁論の
全趣旨からすれば,契約当事者である受託銀行らは,遅くとも本件施
設の開業直前には,本件警備業務委託契約の概要(ポスト数,警備範
囲,警備単価等)について知っていたか,もしくは容易に知り得たは
ずであったと認めることができ,前記争いのない事実等()アのとお4
り,本件各賃貸借契約が締結されたのは本件施設開業日の前日である
ことからすれば,受託銀行らは,遅くとも本件各賃貸借契約の締結時
点で,本件外周警備費用が本件施設の収支計画に比して過大であるこ
とを認識していたか,認識可能であったといえる。
c以上のとおり,本件施設は,開業前から,計画どおりの賃料収入が
見込めないばかりか,Bゾーンの売却利益も当初の予想を大幅に下回
っていた一方で,収入計画を上回る多額の警備費の支出が予定されて
いたのであって,これらの事情に鑑みれば,受託銀行らは,本件施設
内の賃貸区画を賃借しようとする者に対し,本件施設の収支予測に関
する重大な事項としてこれらの事情を説明・告知すべき義務を負って
いたということができるところ,そのような説明・告知がなされた事
実を認めるに足りる証拠はない。
,,,,dかえって受託銀行らは本件各賃貸借契約締結の際原告に対し
本件施設のパンフレット甲3を交付したところ同書面には遊(),,「
ぶことに慣れ親しんだ都会人にも,新鮮さと驚きで注目されることは
間違いありません「訪れるものを飽きさせない,面白さと楽しさ,」,
目新しさが充満したアーバンリゾートとして<フェスティバルゲート
>がこれからの都市の遊びの中心になります」などと,本件施設開。
業後においても適宜新たな遊戯施設を導入したりして来場者を飽きさ
せない工夫を施し,本件施設の集客力が十分であるかのような表現が
,「,。」,なされたり目を引く催し物やパフォーマンスが盛りだくさん
「ライブエンターテイメントとして,年間を通じてさまざまなパフォ
ーマンスも計画。アミューズメント施設に並んで順番を待つお客様の
前で繰り広げられ,待ち時間も退屈させることなく過ごしていただけ
ます」などと,ハード面及びソフト面の両面からの充実が図られる。
ことが謳われており,本件事業が将来性や継続性のある魅力的な事業
であることを強調するのみであって,過大な警備費の負担や当初計画
とは乖離した実態でスタートすることなど根本的な問題点には何ら触
れられてはいなかった(証人P。)
,,,e以上を総合すると受託銀行らには本件各賃貸借契約締結の際に
詐欺的勧誘があったとまではいえないにしても,契約を締結するか否
かの重要な判断材料に関し,説明・告知義務違反があったということ
ができる。
(イ)なお,被告乙は,運営管理会社が,本件各賃貸借契約締結前に,原
告に対し,出店者の営業開始に必要不可欠な本件営業管理規則等の配布
書類(丙2)を交付した旨を主張し,これに沿う証拠として報告書写し
(丙8)があるが,上記配布書類中には前記のような収支状況や警備費
に関する具体的な記載はないから(丙2,当該主張事実をもって,受)
託銀行らにおいて求められる,説明・告知義務を尽くしたということは
できない。
賃貸人としての義務違反の有無(争点()ウ)について(2)1
ア営業努力義務の有無について
(ア)本件施設におけるような店舗の賃貸借契約においても,賃貸人であ
る受託銀行らと賃借人である原告は,基本的にはあくまで主従関係の存
在しない独立した事業体であり,賃借人は,本来,自己責任に基づく判
断と営業努力により経営を行うものであって,賃借人になろうとする者
が,施設全体が経済的な合理性をもって運営されるであろうと信頼して
いたとしても,それは賃貸人の事業の反射的効果にすぎないから,賃貸
人は,そのような信頼関係から賃借人に対する関係で,直ちに法的な意
味での営業努力義務を負うとまではいえない。
また,一般的に,商業ビルが実際に得ることのできる利益は,商圏内
における人口構成の変動,消費者の嗜好,経済情勢等の多種多様で不確
定な諸要素に左右されることは否定できないから,原告の主張するよう
な営業努力義務の内容自体も抽象的にならざるを得ない。仮にそのよう
な営業努力義務が認められたとしても,結果として集客やテナントの誘
致が思うようにうまくいかなかったからといって,それだけで営業努力
が足りなかったということもできない。
(イ)この点について,原告は,東京地裁平成10年9月30日判決を引

し,賃貸借契約における賃貸人の義務は,一義的には目的物件を使用収
益させることであるが,単に賃借人の使用を容認すれば足りるというも
のでなく,目的物件を賃貸借契約によって定まった使用収益に適した状
態におく義務を負うことを前提にした上で,本件施設内の店舗(とりわ
け飲食店舗)は,全体としてアミューズメント施設として,遊戯施設・
機器と融合し一体性を持つことなどを理由に,黙示的にあるいは信義則
上,営業努力義務や営業日・営業時間維持義務を負う旨の主張をする。
しかし,賃貸借契約における賃貸人の本来的義務は,目的物件を賃借
人に引き渡し,第三者が賃借人の使用収益を妨害していれば,これを排
除するという消極的な義務に止まるものと解するのが相当であるとこ
ろ,東京地裁平成10年9月30日判決の事案は,本件と事案が異なる
ばかりか,そこで示された賃貸人の義務とは,各貸室に至る共用通路や
階段,エレベーター等の移動経路についても,貸室への出入りが常時支
障なくできるようにするという内容であって,上記のような賃貸人の本
来的義務の延長線上にとどまるものといえる。逆に,原告の主張は,実
質的には,賃貸人に,目的物件での賃借人の経営を成り立たせ,利益を
上げさせる義務を負わせるに等しく,上記のような賃貸人の本来的義務
からは外れるものといわざるを得ない。
イ営業日・営業時間維持義務
(ア)証拠(甲4の1ないし3,甲13)によれば,本件賃貸借契約書に
は,本件施設の営業日や営業時間を定めた明文がなく,かえって,出店
者は,受託銀行らが作成する館内規則や指示事項等を遵守すべきことが
義務付けられていることや,これを受けて作成された本件営業管理規則
の8条1項及び3項には,本件施設の営業時間や定休日に関する定めが
置かれている上,同条2項には,運営管理会社が,臨時休業または営業
時間及び休日を変更する場合には,あらかじめ出店者に連絡することと
し,出店者は同社の指示に従わなければならないことが定められ,同条
4項には,出店者は,営業時間及び定休日を変更することができないこ
とが定められていることが認められる。
そして,本件賃貸借契約書及び本件営業管理規則の上記のような文言
からすれば,営業日や定休日を決定し,又は変更する権限は運営管理会
社に専属し,原告その他出店者にはそのような権限はないものと解釈す
るのが合理的である。
(イ)この点について,原告は,東京地裁平成10年9月30日判決を引
用し,賃貸借契約における賃貸人の義務は,一義的には賃貸物件を使用
収益させることであるが,単に賃借人の使用を容認すれば足りるという
ものでなく,目的物件を賃貸借契約によって定まった使用収益に適した
状態におく義務を負うことを前提にした上で,本件施設内の店舗(とり
わけ飲食店舗)は,全体としてアミューズメント施設として,遊戯施設
・機器と融合し一体性を持つことなどを理由に,黙示的にあるいは信義
則上,営業日・営業時間維持義務を負うと主張する。
,,しかし原告が主張するような本件施設の特殊性を考慮したとしても
前記(ア)のとおり,営業日や定休日を決定し,又は変更する権限が運営
管理会社に専属することを前提とする条項が明文(本件営業管理規則8
条2項及び4項)で定められており,他に原告が主張するような営業日
・営業時間維持義務を基礎づけるに足りる明確な客観的事情が認められ
ない以上,道義的にはともかく,黙示の合意や信義則を根拠として,上
記の定めと異なる法的義務を受託銀行らが負うと解釈することはできな
い。
(ウ)したがって,受託銀行らが,法律上の営業努力義務や営業日・営業
,,時間維持義務を負うとはいえないからこれを前提とする原告の主張は
その余について判断するまでもなく,採用できない。
背信的運営の有無(争点()エ)について(3)1
ア(ア)前記()ア(ア)のとおり,本件施設は,遊戯設備と物販店や飲食店1
が有機的に一体として設計されているといえ,賃借人は,本件施設全体
の収益活動の一部として活動することが予定されている。また,賃借人
は,独自の営業活動を制限されるため,本件施設の集客力に依存せざる
を得ないばかりか,一方的に本件施設の事業に協力する義務までも負っ
ているのであり,各賃借人の収益は本件施設全体の運営及び集客力によ
る影響を避けられない。
このように,本件のような複合遊戯施設においては,賃借人にとって
遊戯施設全体の収益性が自らの営業活動に直結するにもかかわらず,こ
うした情報は賃貸人側に集中している点や,遊戯施設全体の収益性は賃
貸人の事業内容や営業努力等により容易に,かつ大きく左右される点に
特殊性がある。
(イ)また,本件施設の敷地である本件土地が被告大阪市が信託した市有
地であって,本件施設の事業目的が被告大阪市の交通事業の経営の安定
に資することなどにあること(乙5,証人Q)からすれば,条理上,受
託銀行らには,本件施設を経済的合理性に基づいて適正に運用すること
が期待される。
(ウ)したがって,事業内容に関する情報を把握している賃貸人が,事業
計画が杜撰であり,事業成績が不振であるにもかかわらず,これらを秘
して漫然と運営を継続したことにより,賃貸人の営業の影響を受ける賃
借人が,賃貸人の営業状況を随時的確に把握することができない結果,
退店の判断を含む経営判断を誤り,損害を受けたような場合には,賃貸
人は賃借人に対し不法行為に基づく損害賠償責任を免れないというべき
である。
イ(ア)a本件事業の収入は,前記()イのとおり,計画時の賃料に対し,1
実効賃料が大幅に下落しており,開業前から予想収入を大幅に下回る
ことが確実であった。
bまた,以下の証拠によれば,以下の各事実が認められる。
,,(a)受託銀行らは当初の管理費の計画を大幅に上回るだけでなく
収入計画の全額(年間26億0600万円)をもってしても支払え
ない金額の警備費で本件外周警備業務を委託し,1月当たり2億1
920万円に上る警備費用を平成12年度頃まで支出し続けていた
(甲15,甲17の資料14−3,17。)
このような状況下では,事業全体の収益性が低下し,遊戯設備の
リニューアル費用といった将来にわたる本件施設での収益性を担保
するための経費の捻出が現実的には困難な収支状況となり,ひいて
は,集客力が減少するために売上げが減少し,各テナントからの賃
料収入がさらに低下するという悪循環に陥り,そのままでは事業全
体の成立が困難となることは容易に予見し得たといえる。
(b)そして,本件施設開業後,アミューズメントの入れ替えは1回
しか行われなかった(甲17。)
(c)また,受託銀行らは,本件外周警備業務を,被告大阪市交通局
の承諾なしに警備会社に委託し契約未締結のまま実施していた甲,(
42の9,23。ただし,甲42の24においては,本件外周警備
業務委託契約は,地元の雇用(人権)問題として,地元と交通局の
判断により締結に至ったと述べられており,地元警備会社に委託す
ること自体については,被告大阪市の関与があったことが窺われ
る。。)
すなわち,受託銀行らは,開業当初は警備費用の金額についての
文書上の明確な取り決めもなく,大ざっぱな合意のもとでただ求め
られるに任せて過大な警備費用を垂れ流すかのごとく支出し続け,
後日になってから既成事実に見合った「特別外周警備業務委託契約
書(甲42の26)を日付を遡らせて作成したものと考えられ,」
かかる杜撰な処理は,当初からの明確な契約に基づいて支出する場
合以上に施設の運営を危機に陥らせる行為であり,背任的行為と評
価されても致し方のないものである。
(d)そしてついには,受託銀行らは,平成13年5月31日以降,
順次,信託の目的及び信託事業の目標を達成することが不可能であ
ることは誰の目にも明らかであるとして,信託受託者辞任許可の申
請をするにまで至った(甲41の1ないし25,甲42のないし1
30,甲43の1ないし4。)
(e)その一方で,受託銀行らは,本件訴訟に至るまで原告を含む賃
借人には本件外周警備費等本件施設の運営状況について報告したり
説明したりすることはなかった(証人P。)
cこのように,受託銀行らは,自ら杜撰な運営をし,本件事業の経営
状況が芳しくなくなってきたら受託者を辞任する旨の許可申請をして
おきながら,原告を含む賃借人にはそのようなことを秘匿していたも
のであり,このような行為は背信的行為といわざるを得ず,原告は,
早期に本件事業の経営状況の説明を受けていれば,自己の営業状況等
をも勘案し,退店を含む適正な経営判断をもっと容易かつ迅速にする
ことができたといえる。
(イ)これに対し,受託銀行らは,本件施設の経営不振の原因はバブル経
済の崩壊とその後の長期間に及ぶ深刻な不況の到来にあったなどと主張
する。
しかし,霞町用地土地信託事業調査委員会が,本件事業がわずか数年
間で多額の負債を残して経営破綻に陥った原因は,バブル経済の崩壊の
他に,本件事業の計画策定段階から開発後の事業運営に至るまでさまざ
まな問題点があり,これらが複雑に絡み合った結果であると推測できる
旨の報告をしていること(甲17)や,平成6年の時点では,バブル崩
壊も深刻な状況になっており,そうした状況については十分認識するこ
とができたと認められること(甲41の24)からすれば,本件事業が
経営破綻に陥った原因が専らバブル経済の崩壊にあるとする被告甲及び
同乙の主張は,採用できない。
さらに,被告甲は,本件施設の収入面にとっては,バブル経済の崩壊
そのものよりも,その後長期間にわたり深刻な不況が続き,景気が回復
しなかったことが本件事業の破綻の大きな原因である旨の主張をする
が,受託銀行らが,平成6年当時,バブル経済崩壊後に不況が長期化す
ることが予測できていなかったため,本件事業計画の修正が甘かったと
しても,本件事業計画から大幅に逸脱するような過大な警備費を支出す
ることは,自ら本件事業計画を立てておきながら,それを自らの手で破
る行為であって,適切な運用が望まれる市有地を受託した者として許さ
れるものではなく,受託銀行らの杜撰な運営が本件事業の破綻の主要な
原因となっていることは否定できない。
ウしたがって,受託銀行らの運営は,賃借人らに対しても背信的であった
ということができ,前記()と合わせて一体として不法行為が成立するも1
のということができる。
3被告大阪市の責任の有無(争点())について2
()共同不法行為責任の有無(争点()ア)について12
ア共同不法行為における「共同」の意義
民法719条の「共同の不法行為」とは,行為の客観的関連共同性があ
れば足りると解されるところ,客観的関連共同性とは,結果の発生に対し
て社会通念上全体として1個の行為と認められる程度の一体性があること
が必要であり,かつこれを以て足りるというべきである。
イ客観的関連共同性の有無
(ア)説明・告知義務違反について
被告大阪市は,本件施設のテナントとは直接の法律関係はなく,原告
が本件各賃貸借契約を締結する際にも,原告に対して何らの接触もなか
ったのであるから,被告大阪市において,原告に対し,何らかの説明・
告知義務を負う根拠は存しない。
原告主張のとおり,被告大阪市と受託銀行らは,信託者と受託者の関
係にあり,受託者は信託業務を信託者の代わりに行っており,本件施設
のテナントが,本件事業が被告大阪市の委託事業であることを認識し,
それを信頼して本件施設に出店していることを最大限考慮したとして
も,そのことから直ちに,本件施設の賃借人との関係において,両者が
社会通念上一体であるとまではいえない。
したがって,説明・告知義務違反等を理由とする不法行為責任を被告
大阪市に問うことはできないというほかない。
(イ)背信的運営について
証拠によれば,以下の各事実が認められる。
a前記2()イ(ア)b(c)で述べたとおり,被告大阪市は,本件外周3
警備を地元警備会社に委託すること自体は,認識していたことが窺わ
れる。
b被告大阪市は,信託財産に関する調査等及び報告を求める権利(乙
5の40条)を有し,これを行使して受託銀行らが締結していた本件
外周警備業務委託契約の内容について適正に監視,監督することが可
能であったにもかかわらず,これを怠り,運営管理会社が外周警備を
含む警備について業務委託したことを認識した平成9年5月時点でに
おいて本件外周警備委託契約の内容の詳細について調査,報告を求め
なかった(甲41の14。)
c被告大阪市は,当初は,夏休み期間中の臨時警備として本件外周警
備を実施すると聞いていたにもかかわらず(甲41の14,平成1)
0年2月ころ,将来は赤字運転資金が必要になるとともに,信託終了
時に多額の借入金が残る可能性があることを認識しつつ(甲42の2
0,警備費の削減よりも早期にポスト数を削減することを優先し,)
警備会社が提案した業務委託契約案を受け入れて,平成10年3月末
日以降も本件外周警備を継続し,結果として莫大な出費の継続を容認
した(甲42の23。)
dその後,被告大阪市は,平成12年3月30日,受託銀行らに指示
し,新たな「警備業務委託契約」を締結させたが,それでも警備費用
は年間7億9000万円にも上り(甲42の27の1ないし4,平)
成12年度の管理費の計画に比べて過大であることに変わりはなかっ
た(甲17の資料14−3。)
以上のように,被告大阪市は,委託者として受託銀行らの本件外周警
備業務委託契約の締結,内容等に関して十分に監視,監督することがで
きていなかったといわざるを得ない面も存するが,委託者である被告大
阪市は信託財産に関する調査等及び報告を求める権利(乙5の40条)
を有するにとどまり,本件事業の具体的な内容に踏み込んだ監視,監督
をする権限ないし能力を十分に有していたとまではいえないから,上記
のような各事実をもって直ちに原告に対する不法行為と認めることはで
きないし,また,そのような被告大阪市の行為が,受託銀行ら背信的運
営と併せて社会通念上1個の行為と認めることも困難である。
ウしたがって,被告大阪市は,いかなる場面においても,受託銀行らと主
観的にも客観的にも関連共同性は認められず,共同不法行為責任を問うこ
とはできないというべきである。
債務不履行責任の有無(争点()イ)について(2)2
前記2()のとおり,受託銀行らは,本件施設のテナントに対し,営業努2
力義務及び営業日・営業時間維持義務を負わないから,受託銀行らから賃貸
人たる地位を承継した被告大阪市もこれらの義務を負わない。
また,被告大阪市は,本件土地信託契約の合意解除後,すなわち,賃貸人
としての地位を引き継いだ後は,本件施設を有効かつ効率的に利用するため
の方途を検討し,原告に対しても,賃貸人として,事態を改善するため立ち
退きを含めて話合いを継続していたのであるから,これをもって債務不履行
ということはできない。
名誉ないし信用の毀損の有無(争点()ウ)について(3)2
,,ア調停や仮処分命令の申立てが相手方に対する違法な行為といえるのは
当該申立てにおいて申立人の主張した権利や法律関係が事実的,法律的根
拠を欠くことが明白である上,申立人がそのことを知りながら,または,
通常人であれば容易にそのことを知り得たのに敢えて申し立てたなど,当
該申立てが制度の趣旨や目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる
ときに限られるものと解するのが相当である。
また,調停や仮処分命令の申立て等における主張立証行為は,その中に
相手方の名誉や信用を毀損するような部分があったとしても,それが訴訟
における正当な弁論活動と認められる限り,違法性を阻却されるものと解
すべきであり,当初から相手方当事者の名誉を毀損し,又は相手方当事者
の信用を害する意図で,ことさら虚偽の事実又は当該事件と何ら関連性の
ない事実を主張する場合や,あるいはそのような意図がなくとも,相応の
根拠もないままに,訴訟追行上の必要性を超えて,著しく不適切な表現で
主張し,相手方当事者の名誉を害し,又は相手方当事者の信用を毀損する
場合などには社会的に許容される範囲を逸脱したものとして違法性を帯び
るものというべきである。
イそもそも,調停は,当事者同士が調停委員等の立会いの下に話し合う中
で,相互に歩み寄ることによって自主的に紛争を解決する制度であり,一
方当事者が,早期の紛争解決を目指し,調停期日前に和解案を提示するこ
,,と自体は何ら不自然ではないばかりかむしろ合理的であるといってよく
当該和解案以上の譲歩が困難な場合,調停手続による自主的な調整はもは
や不可能と考え,調停を取り下げることも必ずしも不合理とはいえないの
であって,被告大阪市が,原告に対し,本件調停の期日の前日に,従来の
提案の「立退料(2億円及び敷金全額の合計2億2450万円)に50」
00万円を上乗せするので立ち退いて欲しい旨を申し入れ,これに応じら
れなければ本件調停を取り下げざるを得ないと付言したからといって(甲
25,乙8,証人P,同Q,直ちに本件調停の申立てにつき法的な理由)
がないことを自認していたことにはならない。
ウ原告は,被告大阪市が,本件仮処分命令申立てに係る申立書(以下「本
件仮処分命令申立書」という)において「原告が5階区画及び2階区画。,
を明け渡すことによって経済的不利益を被ることはなく,かえって日々発
生する赤字の拡大を止めるということになる「赤字が日々発生・拡大。」,
するにもかかわらず,原告が占有を続けているのは,被告に対する金銭的
要求にかかる交渉を有利にすすめる手段ないし戦術であるとしか考えられ
ない」などと,あたかも加害者・犯罪者が,被害者に非があるかのよう。
な歪曲や非難を行ったと主張する。
しかし,当該主張事実を認めるに足りる的確な証拠はなく,仮にそのよ
うな事実が認められるとしても,前記アで述べるところに照らし虚偽の事
実の主張であるとか,訴訟追行上の必要性を超えた著しく不適切な表現で
あると直ちに断じることはできない。
また,和解が不成立に終わったことや,本件仮処分命令申立てに関する
決定に先立って申立てを取り下げたというだけでは,被保全権利の不存在
が明白であったとはいえないし,他に,本件仮処分命令申立てが何らの正
当な根拠もないと認めるに足りる証拠もない。
エしたがって,本件調停申立てや本件仮処分命令申立てに違法性があると
いうことはできず,原告の名誉ないし信用の毀損による不法行為が成立す
るということはできない。
4損害の発生及びその額(争点())について3
本件においては,F商店は,受託銀行らが本件施設の警備費や収入状況(1)
等本件施設への出退店の判断に関わる重要な事項を説明しなかったことによ
り,本件施設の収支予測の判断を誤って本件各店舗を賃借して,当初投下費
用を支出し,その後も上記事項を知らないまま営業を継続した結果,累積赤
字が発生したといえる。
当初投下費用について(2)
ア内装工事代金・什器備品代について
(,,,,,,,(ア)証拠甲38の①②の12③④⑤の1ないし3⑥の1
,,,,,,2⑧の1ないし3⑨の12⑩の1ないし3⑫ないし⑭の各1
2,59)によれば,F商店は,本件各店舗の内装工事代金や什器備品
代として,少なくとも総額3億5812万6592円を支出していたこ
とが認められる。
(イ)なお,M株式会社に対する1268万6258円(別紙「内装工事
代金等」のNo7)及び有限会社Oに対する76万0536円(同No
),(,,)14の各支出については請求書や領収書甲38の⑦の12⑪
に案件名や明細等本件各店舗の内装工事又は什器備品との関連性を窺わ
せるような記載がなく,他にこれを認めるに足りる的確な証拠もないか
ら,本件の損害として認めることはできない。
(ウ)また,被告乙は,上記支出と対価関係に立つ設備造作,器具備品等
,,の資産がF商店に獲得されているから上記支出は損害たりえないとか
組織変更の際に,償却資産として減価償却されているので,原告の損害
として請求する根拠がないなどと主張するが,減価償却は税法上の処理
の問題にすぎないばかりか,受託銀行らの説明義務違反がなければ,原
告は本件各店舗を出店せず,そのための内装工事代金や什器備品代も出
捐せずに済んだのであって,それによって多大の利益を獲得できたなど
という特別の事情がない限り,これと引き換えに設備造作,器具備品等
の資産を獲得したか否かや,その後減価償却されたか否かにより原告の
損害額は影響を受けないというべきである。
(エ)したがって,被告らの不法行為によりF商店が被った内装工事代金
・什器備品代に関する損害は,3億5812万6592円であると認め
られる。
イその他開業に要した費用について
証拠(甲48ないし50の各1,2,甲58,59)及び弁論の全趣旨
によれば,F商店が本件施設における開業に要したその他の費用は,FG
テナント総合保険料(56万7280円,内監費(1156万5372)
円,建設協力金(406万9249円,開業協力金(200万円)の総))
額1820万1901円であると認められる。
ウしたがって,F商店が被った当初投下費用に関する損害は,上記ア及び
イの合計3億7632万8493円であると認められる。
累積赤字について(3)
ア証拠(甲9,24ないし28,59,丙2,証人P,同Q)及び弁論の
全趣旨によれば,本件施設が開業してから遊戯施設の更新等はほとんど行
われず,平成10年ころからテナントの撤退が始まって,平成12年6月
ころには十数店舗が撤退し,同年7月ころには特に本件施設4階で営業し
ている店舗は本件4階店舗のみとなったばかりか,F商店自身も平成11
年ころから収支が赤字となっており,その原因は本件施設に客が来ないか
らであると認識していたこと,F商店が今まで出店した店舗の中で赤字に
なった店舗は1軒もなかったこと,本件2階店舗への出店にはさらに敷金
450万円や内装費の負担が必要であったこと,原告は,平成15年2月
7日,大阪地方裁判所に対し,運営管理会社が本件施設の遊戯設備の運営
時間を短縮したことに対し「営業日・営業時間の変更禁止,施設への出,
入り・営業に対する妨害排除を求める仮処分」の申立てを行ったが,その
申立書(甲26)には,本件事業が「失敗例の一つの典型」である旨明示
されていること,そのころには,原告は,受託銀行らと被告大阪市との間
で,本件土地信託契約に関する民事調停が行われていることを知っていた
こと,原告は,平成15年5月8日付けで,被告大阪市の市長に対し,事
業運営の責任や補償問題を提起していること,これに対しては,被告大阪
市からは,受託銀行らと折衝されるべきであるとの回答がなされたこと,
その当時(平成15年6月末)においては,開業当初33店舗あった飲食
店が24店舗退店し,9店舗が残っているのみで,同様に,36店舗あっ
た物販店もわずか10店舗を残すのみとなっていたこと,原告が本件5階
店舗賃貸借契約を維持したのは,積極的に事業を継続するためではなく,
被告らとの間の補償交渉を有利に進めるためであって,原告において,納
得できる金額の補償金をもらえば翌日にでも退店する意向を有していたこ
とが認められる。
イこのように,原告においては,遊戯施設の更新等がほとんど行われず,
,,周囲の店舗が次々と撤退していく状況の中で自らの店舗も赤字が継続し
その原因が本件施設の収支の赤字にあることを認識していたのであるか
ら,赤字の増大を回避するために他の選択肢も存したにもかかわらず,敢
えて,補償交渉を有利に進めるために営業を継続したことが窺えることか
ら,遅くとも平成15年7月1日より後の累積赤字については,原告の自
己責任といえるから,受託銀行らの行為との間の相当因果関係が認められ
ない。
ウしたがって,受託銀行らの行為と因果関係のある損害として認められる
原告の累積赤字の範囲は平成9年7月18日から平成15年6月30日ま
でに限られ,証拠(甲51)によれば,当該期間の累積赤字の合計額は1
億0045万0403円であることが認められる。
5F商店から原告への損害賠償請求権の承継の有無(争点())について4
証拠(甲1の①,②−1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,同年7(1)
月1日,F商店との間で,同社の営業の全部を同月3日付けで原告に譲渡す
る旨の合意をするとともに,臨時株主総会を開催して,本件営業譲渡の承認
手続をしたことが認められる。
他方,証拠(甲1,4,5,40,59,乙2,証人P)及び弁論の全(2)
趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告は,F商店の事業を引き継ぐために新たに設立された株式会社であ
り,その出資者の構成や割合はF商店のそれとまったく同一で,何らの変
更も加えられていない。
イ原告は,本件営業譲渡に際して,F商店の従業員との雇用関係も全て引
き継いでおり,雇用条件等についても何らの変更も行わなかった(甲1の
①6条。)
,,,ウ原告は対外的にも売掛金・買掛金を含む取引関係一切をF商店から
そのまま引き継いでおり,本件施設内の店舗等の資産及び借入金等のすべ
ての負債を含めた一切の営業を引き継ぎ(甲1の②−2,従前とまった)
く異なることなく営業を継続してきた。
エF商店及び原告が営業譲渡という方法を採用したのは,かかる形式を採
った方が税法上の利点があるとの税理士の助言に従ったためであった。
オF商店は,本件営業譲渡に先立って解散決議を行っており,本件営業譲
渡によりすべての資産負債を原告に譲渡した結果,その後は,独自の経済
活動は行っておらず,平成12年8月31日に解散した。
カ本件各賃貸借契約書においては,賃借人の「住所,商号,店名又は代表
者の変更「会社組織の変更」については,遅滞なく賃貸人にその旨を届」
け出ることが規定されており(第22条,F商店及び原告は,平成12)
,,「,,,」年6月30日C信託銀行に対し住所氏名・名称代表者届出印
の変更として,同年7月1日より,F商店から原告に変更する旨の変更届
(乙2)を提出した。これに対し,受託銀行らは,特に異議を述べず,そ
の後は本件5階店舗の賃料等も原告から受け取っていた。
キC信託銀行は,平成12年7月19日,原告との間で,本件4階店舗賃
貸借契約を合意解約する旨の合意解約契約書(甲40)を作成し,F商店
,,が預託した敷金の一部を原告に返還する旨の合意をするとともにその後
上記敷金の一部を原告の銀行口座に振込入金した。
クまた,C信託銀行は,上記と同日,F商店に対する本件各店舗の未収工
事代金債権を原告との間で清算する措置を採り,その旨の覚書(甲5)を
作成したほか,その後,F商店から過剰に徴収していた金員を原告に返還
したりした。
以上の事実を総合すれば,F商店及び原告は,税務上の理由から法形式(3)
としては営業譲渡を採用したが,その実態は,組織変更と見ることも可能で
,,,あり受託銀行らにおいてもF商店と原告との間の法人格の異同について
明確に区別することなく,実質的に同一のものであることを前提として事務
処理を続けてきたことが認められる。
そうすると,税務対策上は営業譲渡という法形式を採用しておきながら,
他方で,実態は組織変更であると主張することには信義則上許されないとす
る被告甲の主張も理解できないわけではないが,受託銀行らにおいても,F
商店と原告との法人格の区別をしていなかった以上,少なくとも本件訴訟の
被告らとの間において,原告がF商店から本件損害賠償請求権を承継した旨
の主張をすることをもって,信義則に反するとまではいえない。
また,本件営業譲渡当時,前記1()のような説明,告知義務違反の事実1
がF商店及び原告には明るみになっていなかった以上,引継貸借対照表等に
何らの記載がなかったとしても,これをもって本件損害賠償請求権の承継が
なかったと認めることはできない。
したがって,原告は実質的にはF商店が組織変更したものと認めるのが(4)
相当であり,F商店が有していた本件損害賠償請求権は,実質的に原告に承
継されたものということができる。
6消滅時効の成否(争点())について5
上記5のとおり,原告は,実質的にはF商店が株式会社に組織変更をし(1)
たものにすぎないところ,F商店が平成12年7月1日の時点で前記1()1
ないし()のような本件施設の収入の減少や警備費等の具体的な内容につい4
,「」て知っていたと認めるに足りる証拠はない以上損害及び加害者を知った
(民法724条前段)とはいえないから,同日から消滅時効が進行している
とはいえない。
ところで,本件損害賠償請求権は,不法行為に基づく損害賠償請求権で(2)
あるから,消滅時効期間は3年であるところ,被告甲は,原告が,平成14
年2月14日に,C信託銀行に対し,本件訴訟での主張と同趣旨の主張を述
べて責任を追及する書面を送付しているのであるから,遅くとも同日には損
害賠償請求権の行使が可能な程度に損害及び加害者を知っていたことになる
として,消滅時効が完成している旨主張する。
確かに,証拠(丙9)によれば,原告がC信託銀行に対し,平成14年2
月14日付の文書により,受託銀行らが本件施設への来場者の減少に対して
何の努力もしなかったため,テナントの売上げが激減している旨訴えるとと
もに,その経営責任を追及していることが認められるものの,それは,本件
施設開業後の賃貸人の契約責任を追及しているものと認められるのであっ
て,本訴において請求している契約締結前の説明告知義務違反等の不法行為
に基づく請求とは内容が異なるものである。
むしろ,証拠(甲17,41ないし44,59,証人P)及び弁論の全趣
旨によれば,原告が,本訴において請求している被告らの不法行為の内容に
ついては,本件調停や本件仮処分命令申立て等を通じて,被告大阪市から提
出された主張や資料に基づいて初めて知ったことが窺えるところ,不法行為
の内容を確定できない以上「損害及び加害者」を知ったとはいえないので,
あって,本件訴えを提起時点において,時効期間が経過しているとは認めら
れない。
したがって,本件損害賠償請求権について,消滅時効が完成したという(3)
ことはできない。
7過失相殺
証拠(甲59,証人P)によれば,F商店は,昭和47年にエキスポラ(1)
ンドに出店して以来,6店舗以上もテーマパークに出店した経験があったこ
と,過去に出店したテーマパークの運営会社が転換社債の返済ができず,上
,,記テーマパークが売却されたため退店を余儀なくされた経験があったこと
本件各賃貸借契約の締結前に,本件4階店舗及び本件5階店舗が本件施設の
開業間近に至っても埋まっていなかったにもかかわらず,本件施設の運営管
理会社や賃貸人である受託銀行らに対し,本件施設の運営計画や入場者の予
測,売上げの見込み等について,何らの調査や問い合わせもせず,むしろ,
賃料の減額を期待して敢えて本件施設の開業日の前日まで待ってから本件各
,,賃貸借契約を締結したことが窺われることや開業前に本件施設を訪れた際
警備員の人数が多いことに奇異な感じを持ったのに,その費用や必要性に関
して何ら調査をしなかったこと,原告は,本件各賃貸借契約の締結に際し,
採算に関する具体的なシミュレーションなど行うことなく,主に経験や勘に
頼って本件各店舗への出店を決めたことが認められる。
本来,テナントの出店の可否については,賃借人の経営判断に基づきな(2)
,,,されるものでその結果については自己責任であるのが原則であるところ
本件においては,賃貸借契約の締結に際して,賃貸側に説明・告知義務違反
という不法行為が存するという特殊事情が存在するとしても,前記4()及2
び()で述べた損害の発生について,F商店において,上記()のとおり,相31
当程度の調査不足や経営判断の甘さがあったことは否定できないことから,
その賠償義務の範囲を決定するに際しては,過失相殺をすることが相当であ
るところ,上記の自己責任の原則を前提とした上で,以上のような事情に鑑
みれば,原告の過失割合は,7割とすることが相当である。
したがって,被告らにおいて賠償すべき原告の損害は,初期投下費用に(3)
ついては合計3億7632万8493円の3割である1億1289万854
7円となり,累積赤字については1億0045万0403円の3割である3
013万5120円となる。
8結論
以上によれば,原告の請求は,被告甲及び被告乙に対し,説明・告知義務違
反,背信的運営の共同不法行為に基づき,連帯して1億4303万3667円
及びうち1億1289万8547円に対する不法行為後の日(本件各店舗賃貸
借契約を締結した日の翌日)である平成9年7月18日から,うち3013万
5120円に対する訴状送達の日の翌日(被告甲について平成17年12月3
0日,被告乙について同月29日)からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容
し,その余は理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につ
き民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行宣言について同
法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第24民事部
裁判長裁判官村岡寛
裁判官岩松浩之
裁判官中村海山
(別紙)
目録1
謝罪広告
大阪市は,原告に対し「フェスティバルゲート」内所在の同社店舗賃貸借契約,
をめぐり,原告に契約違反がないにもかかわらず,違反があるかのような虚偽の理
由を付して仮処分申請を行い,あたかも同社に施設の損失拡大の責任があるかのよ
うな誤った情報を新聞機関に発表したことで,同社の社会的信用を著しく失墜させ
たことにつき深く陳謝いたします。
平成年月日
大阪市
代表者公営企業管理者
交通局長R
(別紙)
目録2
謝罪文掲載形式
1謝罪広告掲載場所目録3記載の各新聞関西版
2広告の大きさ縦17センチ横19センチ
3広告内容の活字の大きさ
(一「謝罪広告」という見出しは14ポイントのゴシック体文字)
(二)その他は12ポイントの明朝体文字
(別紙)
目録3
謝罪文掲載新聞
・日経新聞
・朝日新聞
・毎日新聞
・産経新聞
・読売新聞
(別紙)
物件目録
名称フェスティバルゲート
住居表示大阪市浪速区恵美須東f丁目g番h号
種類店舗・遊園施設・劇場他
構造鉄骨・鉄骨鉄筋コンクリート造地下1階,地上8階建
建物全体面積55275.74㎡(16720.91坪)
1賃借区画(平成9年7月17日)
()階数5階1
契約面積1169.88㎡(353.88坪)
()階数4階2
契約面積206.95㎡(62.60坪)
2賃借区画(平成12年7月)
階数2階
契約面積101.89㎡(30.82坪)

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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時給 当社規定による
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