弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A同B、弁護人大竹武七郎同小野四郎の各上告理由は末尾添附別紙記載の
如くでありこれに対する当裁判所の判断は次きの通りである。
 被告人Aの上告理由に付て。
 論旨は被告人の経歴、本件犯罪を犯すに至つた経緯及び犯罪当時の状況等につい
て述べ併せて被告人の現在の心境を披瀝し結局寛大な処分を望むと言うのであつて
法律違背を理由とするものでないから上告の理由とならない。
 被告人Bの上告理由に付て。
 被告人が上告趣意書において縷々陳述するところは要するに被告人の経歴、本件
犯罪を犯すに至つた経緯及び犯罪当時の状況等を述べると共に、足部の傷を治療す
るため保釈又は勾留の執行停止を望み尚第一審及び第二審において言渡された懲役
一〇年の刑は、重きに過ぎるから寛大な裁判を求めると言うに過ぎない。結局前段
は、法律違反を理由とするものではなく又後段は刑の量定が甚だ不当だと言うので
あるが日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第一三条第二
項によると憲法施行の日から刑事訴訟法第四一二条の規定は之を適用しないことに
なつたから所論のようなことは上告の理由とすることは出来ない。結局いづれもそ
の理由がない。
 弁護人大竹武七郎、同小野四郎の上告理由に付て。
第一点 原判決がその主文掲記の拳銃四挺を没収するに当りその適条中に所論のよ
うな理由によつて之を没収する旨を説示していることは、所論の通りである。
 判決に挙示すべき証拠説明は判示の犯罪事実について之を為すべきもので罪とな
るべき事実でないものについては証拠によつて之を認めた理由を明示する必要はな
い。押収物件が犯人以外のものに属するかどうかの認定は、もとより罪となるべき
事実の認定でないから所論のように原判決引用の証拠によつて本件押収になつてい
る拳銃四挺が犯人以外のものに属しないかどうかが明でないとしてもこれを以て原
判決が違法のものであるとはいえない、論旨は理由がない。
第二点 論旨中(イ)は上告申立を取下げた被告人Cのみに関するものであるから
説明をしない。(ロ)は被告人D、同E、同F、及び同Bに対する原判決の証拠説
明には、理由不備の違法がある即ち判示第一の(一)(F関係)第一の(二)(D、
F、B関係)第一の(三)(D関係)第一の(一三)(D、A関係)第二(B関係)
及び第三(D、A関係)の各事実について、数種の証拠を挙げそれ等を「通じ」て
夫々判示に照応する強盗難被害顛末の記載かある等と証拠説明をしているか之では
どの証拠中に判示事実のどの部分に対する如何なる証拠かあると言うことか判らな
いと言うのであるが被告人D、同E、同F及び同Bに対する原判決の証拠説明中に、
判示第一の(一)の点に関しG及びH、提出の各強盗被害届書、(記録、昭和二一
年(公)第二七七号中六二丁、六四丁参照)を通じ、判示第一の(二)の点に関し
I及びJ提出の各強盗被害届書(前同記録中八八丁、九〇丁参照)を通じ判示第一
の(三)の点に関しK提出の集団強盗被害届書及び盗難被害追加届(前回記録中、
一一三丁、一五六丁参照)を通じ又判示第一の(一三)の点に関しL提出の強盗被
害届書及び始末書(記録、昭和二一年(予)第一八八号―第二冊中五五〇丁五八二
丁参照)を通じ夫々判示関係部分に照応する強盗被害顛末の点を認定する証拠とし
更に判示第二の点に関し、原審第九回公判調書、並、同調書引用(記録、昭和二一
年(公)第二七七号中、三〇二八丁三〇二九丁参照)の被告人B並、Mに対する司
法警察官の聽取書(記録、昭和二二年(公)第五九六号中一四五丁二一三丁参照)
を通じN、O、Pに対する各聽取書(前同記録中、三八丁、四六丁、五三丁参照)
を通じ判示第三の点に関し被告人Aに対する予審第一回訊問調書、並、同調書に引
用の被告人、Dに対する予審第二回訊問調書(記録昭和二一年(公)第二七七号中
一五六〇丁一五〇四丁参照)を通じ夫々判示関係部分についての各事実を認定する
証拠に供していることは所論の通りである。
 刑事訴訟法第三六〇条第一項に、「証拠により之を認めた理由を説明し」とある
のは、犯罪事実に対する証拠を示して、その証拠と犯罪事実との関係を明かにする
ことを言うのであつて、その関係か明かにされている以上証拠説明の方法について
は何等制限するところはないのである要は証拠と犯罪事実との間の連結を明かにす
る程度に説示すれば足り必ずしも証拠の内容を一々甄別して顕さなければならない
と言うものではない、而して原判決が判示各事実を認定する証拠の一つとして夫々
挙示している前示数種の証拠を通じその一つ一つについて、その認定事実と対照し
て見ると、優に、それ等の各証拠も通じて判示関係部分についての事実を認定する
ことか出来るから証拠によつて犯罪事実を認めた理由の説明として何等欠けるとこ
ろがなく論旨は理由がない。
 よつて上告を理由なしとし刑事訴訟法第四四六条に従ひ主文の如く判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二三年一二月一四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    河   村   又   介

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