弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中、三〇日を原判決の本刑に算入
する。」との部分を破棄する。
     原審における未決勾留日数中一七日を第一審判決の本刑に算入する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 東京高等検察庁検事長竹内寿平の上告趣意について。
 記録によれば、被告人は、本件について、起訴前の昭和四三年三月二四日勾留状
の執行を受け、以来、第一審、原審および当審を通じて勾留を継続されているもの
であるが、これより先、被告人は、昭和三八年八月二二日横須賀簡易裁判所におい
て窃盗罪により懲役一年、三年間執行猶予に処せられ、その後執行猶予の言渡を取
り消されて刑の執行を受け、仮出獄中、仮出獄を取り消され、本件による勾留中の
昭和四三年五月一六日残刑の執行を開始され、同年八月一八日その執行を受け終え
たものであるところ、被告人は、同年六月七日、本件第一審判決に対し控訴を申し
立て、原審は、これに対し、同年九月五日、控訴を棄却するとともに、原審におけ
る未決勾留日数中三〇日を第一審判決の本刑に算入する旨の言渡をしたものである
ことが認められる。
 ところで、右のように、未決勾留が刑の執行と重複する場合、その重複期間の未
決勾留日数を本刑に算入することが許されないことは、所論引用の当裁判所大法廷
判例の判示するところである。従つて、原審が本刑に算入し得る未決勾留日数は、
刑の執行終了の日の翌日である昭和四三年八月一九日から原判決言渡の日の前日で
ある同年九月四日までの一七日である。ところが、原審が、これを越えて、原審に
おける未決勾留日数中三〇日を本刑に算入する旨の言渡をしたのは、刑法二一条の
適用について右判例と相反する判断をしたものといわなければならない。論旨は、
理由がある。
 よつて、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決
中「当審における未決勾留日数中、三〇日を原判決の刑に算入する。」との部分を
破棄し、刑法二一条により、原審における未決勾留日数中一七日を第一審の本刑に
算入し、その余の部分に対する上告は、上告趣意として何らの主張がなく、従つて、
その理由がないから、刑訴法四一四条、三九六条により、これを棄却し、なお、当
審における訴訟費用は、同法一八一条一項但書により被告人に負担させないことに
して、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 川口光太郎公判出席
  昭和四四年二月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一

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