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平成29年11月28日判決言渡
平成29年(行ケ)第10141号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成29年9月28日
判決
原告株式会社子供玩具研究所
同訴訟代理人弁理士吉永貴大
被告有限会社ハーベイ・ボール・
スマイル・リミテッド
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
特許庁が無効2016-890057号事件について平成29年6月13日にし
た審決のうち,「登録第5810622号の指定役務中,第35類『寝具類(まくら・
マットレスを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提
供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身
の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』につい
ての登録を無効とする。」との部分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,商標登録無効審判請求に対する一部無効・一部不成立審決のうち一部無
効部分の取消訴訟である。争点は,①手続違背(要旨変更の看過)の有無,②本件
商標と引用各商標の類否判断の誤りの有無である。
1本件商標
原告は,次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(弁論の全趣旨)。
(1)登録商標
(2)登録番号第5810622号
(3)出願日平成27年9月3日
(4)査定日平成27年11月19日
(5)登録日平成27年12月4日
(6)商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第35類織物及び寝具類(まくら・マットレスを除く)の小売又は卸売の業務
において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行
われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行
われる顧客に対する便益の提供,清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務にお
いて行われる顧客に対する便益の提供
2特許庁における手続の経緯
被告が,平成28年9月26日に本件商標についての商標登録無効審判請求(無
効2016-890057号)をしたところ,特許庁は,平成29年6月13日,
「登録第5810622号の指定役務中,第35類『寝具類(まくら・マットレス
を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の
小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の
小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』についての登録を
無効とする。その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。」との審決をし,
その謄本は,同月22日,原告に送達された(弁論の全趣旨)。
3審決の理由の要点
(1)本件商標は,前記1(1)のとおり,黄色に塗られた円状輪郭内の上部に目と
思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を二つ並べ,その下に口と思しき両端上がりの弧
線を描いてなるものであり,そのような外観的特徴から,簡潔,かつ,象徴的に描
いた人の笑顔であることを印象づけるものである。ただし,本件商標は,笑顔をモ
チーフとした描写は多種多様であることからすると,単に「笑顔」の観念や「エガ
オ」の称呼を生じるとまではいい難く,直ちに特定の図案やキャラクターを描いた
ものとは認識し得ないから,特定の称呼や観念を生じるものではない。
(2)登録第2353908号商標(以下,「引用商標1」という。)は,以下の
とおりの構成からなり,平成元年1月24日に登録出願,第17類「被服,布製身
回品,寝具類」を指定商品として,平成3年11月29日に設定登録,その後,平
成16年1月21日に指定商品を第5類「失禁用おしめ」,第9類「事故防護用手袋,
防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」,第10類「医療用手袋」,第
16類「紙製幼児用おしめ」,第17類「絶縁手袋」,第20類「クッション,座布
団,まくら,マットレス」,第21類「家事用手袋」,第22類「衣服綿,ハンモッ
ク,布団袋,布団綿」,第24類「布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバ
ー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登
録がされ,さらに,平成23年7月19日には,第20類,第24類及び第25類
についてのみ商標権の存続期間の更新登録がされたものであり,現に有効に存続し
ているものである。
引用商標1は,上掲のとおり,円輪郭内の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長
楕円形を二つ並べ,その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いてなるものであり,
そのような外観的特徴から,簡潔,かつ,象徴的に人の笑顔を描いたものであるこ
とを印象づけるものである。ただし,引用商標1は,笑顔をモチーフとした描写は
多種多様であることからすると,単に「笑顔」の観念や「エガオ」の称呼を生じる
とまではいい難く,直ちに特定の図案やキャラクターを描いたものとも認識し得な
いから,特定の称呼や観念を生じるものではない。
(3)登録第4805259号商標(以下,「引用商標2」という。)は,以下の
とおりの構成からなり,平成12年9月29日に登録出願,第25類「被服」を指
定商品として,平成16年9月24日に設定登録,その後,平成26年5月27日
に,商標権の存続期間の更新登録がされたものであり,現に有効に存続しているも
のである。
引用商標2は,上掲のとおり,円輪郭内の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長
楕円形を二つ並べ,その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いてなる図形を表し,
その上部に「LOVEEARTH」の文字を上向き弧状に表してなる。そして,
その図形部分と文字部分は上下に段を異にし,間隔を置いて配置されていることか
ら,視覚上分離して認識されるものである。文字部分は全体として「地球を愛する」
程度の意味合いを認識させる,比較的親しまれた英語よりなるものの,人の笑顔を
簡潔,かつ,象徴的に描いたものである図形部分とは直接的な観念上のつながりが
ないため,その図形部分と文字部分は分離して観察することが取引上不自然である
と思われるほど不可分的に結合しているものとはいえず,本件商標と引用商標2と
の類否判断に際して,当該図形部分を要部として取り出すことが許されるものであ
る。
そして,引用商標2の要部である図形部分は,上記のように,その外観的特徴か
ら,簡潔,かつ,象徴的に描いた人の笑顔であることを印象づけるものであるが,
笑顔をモチーフとした描写は多種多様であることからすると,単に「笑顔」の観念
や「エガオ」の称呼を生じるとまではいい難く,当該図形部分をして直ちに特定の
図案やキャラクターを描いたものとも認識し得ないから,特定の称呼や観念を生じ
るものではない。
(4)登録第4871727号商標(以下,「引用商標3」といい,引用商標1及
び2と併せて「引用各商標」という。)は,以下のとおりの構成からなり,平成13
年2月2日に登録出願,第24類「布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カ
バー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服,仮装用衣服」を指定商
品として,平成17年6月17日に設定登録,その後,平成27年6月9日には,
第25類についてのみ商標権の存続期間の更新登録がされたものであり,現に有効
に存続しているものである。
引用商標3は,上掲のとおり,円輪郭内の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長
楕円形を二つ並べ,その中には瞳を思わせる白抜きの点を配し,その下には口と思
しき両端上がりの弧線を描いてなるものであり,それらの外観的特徴から,簡潔,
かつ,象徴的に描いた人の笑顔であることを印象づけるものであるが,笑顔をモチ
ーフとした描写は多種多様であることからすると,単に「笑顔」の観念や「エガオ」
の称呼を生じるとまではいい難く,直ちに特定の図案やキャラクターを描いたもの
とも認識し得ないから,特定の称呼や観念を生じるものではない。
(5)本件商標と引用各商標の図形部分の各構成要素は,子細に対比すると,本
件商標は円状輪郭内が黄色に塗られており,引用各商標とは円輪郭内の色彩の有無
の差異があり,長さ,太さ及び曲率等においてそれぞれ微妙に差異を有するため,
表される表情は微妙に差異があるものの,これらはいずれも,互いに円輪郭,円輪
郭内部に配された二つの小さい黒塗りの縦長楕円形及びその下方に配した両端上が
りの弧線を基本的な構成要素とし,これらによって円形の顔に目と口を有する人の
笑顔を,簡潔かつ,象徴的に描写したものと看取される点において外観的な印象を
共通にするから,本件商標と引用各商標の図形部分は,見る者に似通った印象を与
えるものであり,本件商標と引用各商標の図形部分とは,外観において相紛らわし
いものといえる。また,本件商標と引用各商標の図形部分からは,前記(1)~(4)の
とおり,特定の称呼及び観念を生じないから,称呼及び観念において比較できない。
したがって,本件商標と引用各商標との類否は,その図形部分における称呼,観
念は比較できないから,外観によって取引者に与える印象,記憶,連想から判断す
ると,外観上相紛らわしい本件商標と引用各商標とは類似するものというべきであ
る。
(6)①本件商標の指定役務中の「寝具類(まくら・マットレスを除く)の小売
又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標1の指定商
品中の第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」及び第24類「かや,
敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」,②本件商標の指定役務
中の「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引
用各商標の指定商品中の第25類「被服」,③本件商標の指定役務中の「布製身の回
り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標
1の指定商品中の第24類「布製身の回り品」とは,それぞれ役務の提供と商品の
販売が同一事業者によって行われることが明らかであり,取扱商品に係る小売役務
が提供される場所と取扱商品が販売される場所とは一致し,需要者(顧客)の範囲
も一致するものといえるから,両者は互いに類似するというべきである。
(7)以上のとおり,本件商標は,引用各商標と類似の商標であり,また,本件
商標の指定役務中の「寝具類(まくら・マットレスを除く)の小売又は卸売の業務
において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行
われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行
われる顧客に対する便益の提供」は,引用各商標の指定商品と類似するものである
から,商標法4条1項11号に違反して登録されたものである。
(8)本件商標の指定役務中の「織物の小売又は卸売の業務において行われる顧
客に対する便益の提供」及び「清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務におい
て行われる顧客に対する便益の提供」と引用各商標の指定商品とは,役務の提供と
商品の販売が同一事業者によって行われることはなく,取扱商品に係る小売役務が
提供される場所と取扱商品が販売される場所とは一致せず,需要者(顧客)の範囲
も異なることから,類似するものとはいえない。
したがって,本件商標は,その指定役務中「織物の小売又は卸売の業務において
行われる顧客に対する便益の提供,清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務に
おいて行われる顧客に対する便益の提供」についての登録が商標法4条1項11号
に違反してされたとする理由は見いだせない。
第3原告主張の審決取消事由
1取消事由1(要旨変更の看過)
(1)被告は,無効理由の根拠条文を明示していないものの,審判請求書(甲1)
及び審判事件弁駁書(甲2)の内容に照らすと,審判請求書では,商標法4条1項
11号の無効理由があると主張していたにもかかわらず,審判事件弁駁書では,同
条1項19号の無効理由があると主張した。
これは,無効審判請求後に新たな無効理由を追加的に主張するものであって,請
求の理由の要旨を変更するものであるから,商標法56条が準用する特許法131
条の2第1項に違反するものであり,その無効審判請求書は決定をもって却下され
るべきである。
(2)審決は,原告が答弁書において上記(1)の主張をしたにもかかわらず,要旨
変更について何らの説示もすることなく,商標法4条1項11号に基づいて,本件
商標の登録を一部無効としたが,要旨変更を看過した違法があるから,取り消され
るべきである。
2取消事由2(本件商標と引用各商標の類否判断の誤り)
審決は,「円輪郭」,「円輪郭内部に配された二つの小さい黒塗りの縦長楕円形」,
「その下方に配した両端上がりの弧線」が共通することをもって,本件商標と引用
各商標とが類似すると判断したが,誤りである。
一般に,人間は,人の顔に関しては識別力が非常に高く,笑顔の程度が大きいか
小さいか,顔が左右対称であるか非対称であるか,目の大きさが大きいか小さいか,
口角が上がっているか下がっているか等,それらを個々の構成要素で比較したとき
にさほど大きいとはいえない違いであっても,全体的には印象が大きく異なるとい
うことが経験則的に明らかである。
また,被告が商標権者である登録商標のうち,少なくとも15の商標は,引用各
商標よりも後に出願・登録され,第25類「被服」に類似する商品を指定し,かつ,
「円輪郭」,「円輪郭内部に配された二つの小さい黒塗りの縦長楕円形」,「その下方
に配した両端上がりの弧線」を基本構成とするものであり(甲3),審決の上記判断
基準では,いずれも無効理由を有していることになってしまう。
したがって,笑顔の表情をモチーフとした図形商標の類否判断は,単に「円輪郭」,
「円輪郭内部に配された二つの小さい黒塗りの縦長楕円形」,「その下方に配した両
端上がりの弧線」を基本構成とする程度では類似とはいえず,さらに詳細な部分に
ついて子細に対比されるべきものである。
このように,本件商標と引用各商標とが「人間の笑顔の表情を模したもの」であ
るという特有の事情を考慮すると,比較的簡単な構成要素からなる両商標にあって
は,個々の構成要素を個別に比較したときにその差がさほど大きくない場合であっ
ても,全体としては両者の視覚的印象に与える影響は大きくなるものであり,これ
に接する看者は両者を異なったものとして認識するとみるのが相当である。
第4被告の主張
1取消事由1(要旨変更の看過)に対し
被告は,審判事件弁駁書(甲2)において,商標法4条1項19号の無効理由を
追加していない。被告は,法律の専門家ではないことから,表現に不適切な点があ
ったかもしれないが,原告の全体的な企業姿勢を説明したにすぎない。
2取消事由2(本件商標と引用各商標の類否判断の誤り)に対し
本件商標と引用各商標との類似性は,引用各商標と類似するとして拒絶査定され
た35件の被告出願商標と引用各商標との類似性よりも強いから(乙1),本件商標
は引用各商標に類似するとの審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(要旨変更の看過)
審判事件弁駁書(甲2)によると,被告は,同弁駁書において,「被請求人の答弁
書に対して,下記弁駁をする。」として,その直下から,本件商標と引用商標1及び
3との類似性について,外観,称呼,観念の各要素を順次検討して,本件商標と引
用商標1及び3とは類似すると主張した上,被告の出願(商願2015-7415
号)に係る商標(以下,「被告出願商標」という。)が引用各商標及び本件商標と類
似するとして拒絶査定を受けたことに触れ,被告出願商標と引用各商標及び本件商
標との類似性よりも,本件商標と引用各商標との類似性の方が高いので,本件商標
は無効にすべきものと主張したこと,そして,その上で,被告が商標権者である3
08件の登録商標を踏まえると,本件商標の登録審査が不完全であったこと,被告
は,スマイル・マークを創作したハーベイ・ボールの子を会長として設立されたハ
ーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の知的財産権を管理する日本法人である
こと,原告は,スマイル・マークのカバン類,洋服類の商標登録を有していないに
もかかわらず,被告の警告を無視してスマイル・マークの偽物商品を製造・販売し
ており,本件商標の登録は,被告関連のスマイル・マーク商標の世界的な著名性や
素晴らしいイメージに便乗して,金儲けをしようという意図であり,不正の目的が
あることなどを主張したことが認められる。
上記の認定事実によると,被告は,審判事件弁駁書(甲2)において,本件商標
は引用各商標と類似し,商標法4条1項11号の無効理由があるという審判請求書
(甲1)における主張を維持し,これを敷衍して主張したことを認めることができ
る。
審判事件弁駁書(甲2)には,商標法4条1項11号の無効理由に加えて同項1
9号所定の無効理由を追加する旨の明示の記載はなく,同項19号所定の「他人の
業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の
間に広く認識されている商標」に関して,「スマイル・マーク」や「スマイル商標」
という記載はあるものの,これらの商標は引用されておらず,同号所定の周知商標
の特定がされているとは認められないのであるから,被告が,同弁駁書において,
同項11号の無効理由を維持した上で,新たに同項19号の無効理由を追加したも
のと認めることはできない。
そうすると,審決に要旨変更を看過した違法がある旨の取消事由1は,理由がな
い。
2取消事由2(本件商標と引用各商標の類否判断の誤り)
(1)本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,黄色に塗られた円状輪郭内の上部
に目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を二つ並べ,その下に口と思しき両端上が
りの弧線を描いてなるものであり,そのような外観的特徴から,一見して人の笑顔
を簡潔,かつ,象徴的に表現したものと認識されるものである。
(2)引用商標1は,前記第2の3(2)のとおり,円状輪郭内の上部に目と思しき
小さい黒塗りの縦長楕円形を二つ並べ,その下に口と思しき両端上がりの弧線を描
いてなるものであり,そのような外観的特徴から,簡潔,かつ,象徴的に人の笑顔
を描いたものであることを印象付けるものである。
(3)引用商標2は,前記第2の3(3)のとおり,円状輪郭内の上部に目と思しき
小さい黒塗りの縦長楕円形を二つ並べ,その下に口と思しき両端上がりの弧線を描
いてなる図形を表し,その上部に「LOVEEARTH」の文字を上向き弧状に
表してなるものである。
そして,その図形部分と文字部分は,上下に段を異にし,間隔を置いて配置され
ていることから,視覚上分離して認識されるものである。また,文字部分は全体と
して「地球を愛する」程度の意味合いを認識させるものの,それ自体が,人の笑顔
を簡潔,かつ,象徴的に描いたものと認識される図形部分と,直接的な観念上のつ
ながりがあるということはできない。
そうすると,引用商標2は,その構成における図形部分と文字部分とを分離して
観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと
はいえず,本件商標との類否判断に際して,視覚上,最も強く印象に残る図形部分
を要部として取り出すことができるというべきである。
(4)引用商標3は,前記第2の3(4)のとおり,円状輪郭内の上部に目と思しき
小さい黒塗りの縦長楕円形を二つ並べ,その中に瞳と思しき白抜きの点を配し,そ
の下には口と思しき両端上がりの弧線を描いてなるものであり,そのような外観的
特徴から,簡潔,かつ,象徴的に描いた人の笑顔であることを印象付けるものであ
る。
(5)本件商標と引用商標1及び3,引用商標2の要部である図形部分とを比較
すると,これらは,いずれも,円状輪郭,円状輪郭内の上部に配された二つの小さ
い黒塗りの縦長楕円形,その下方に配した両端上がりの弧線を基本的な構成要素と
し,これらによって,円形の顔に目と口を有する人の笑顔を,簡潔,かつ,象徴的
に描写したものと看取される点において外観的な印象を共通にするから,場所と時
間を異にした離隔的観察において,類似するものと認められる。細部において相違
する点があることは,この判断を左右するものではない。
したがって,本件商標と引用各商標は,類似するものと認められる。
(6)原告は,一般に,人間は,人の顔に関しては識別力が非常に高く,笑顔の
程度が大きいか小さいか,顔が左右対称であるか非対称であるか,目の大きさが大
きいか小さいか,口角が上がっているか下がっているか等,それらを個々の構成要
素で比較したときにさほど大きいとはいえない違いであっても,全体的には印象が
大きく異なるということが経験則的に明らかであり,本件商標と引用各商標とが「人
間の笑顔の表情を模したもの」であるという特有の事情を考慮すると,比較的簡単
な構成からなる両商標にあっては,個々の構成要素を個別に比較したときにその差
がさほど大きくない場合であっても,全体としては両者の視覚的印象に与える影響
は大きくなるものであり,これに接する看者は両者を異なったものとして認識する
などと主張する。
しかし,本件商標と引用各商標における原告指摘の笑顔の程度,顔の対称性,目
の大きさ,口角等の諸点は,本件商標と引用各商標を場所と時間を異にして離隔的
に観察する需要者にとって,円状輪郭,円状輪郭内の上部に配された二つの小さい
黒塗りの縦長楕円形,その下方に配した両端上がりの弧線という基本的な構成要素
に比し,わずかな差異にすぎないことが明らかであり,原告指摘の諸点を踏まえて
も,本件商標と引用各商標とを離隔的観察において外観上識別し得るものとは認め
られない。
(7)原告は,被告が商標権者である登録商標のうち,少なくとも15の商標は,
引用各商標よりも後に出願・登録され,第25類「被服」に類似する商品を指定し,
かつ,「円輪郭」,「円輪郭内部に配された二つの小さい黒塗りの縦長楕円形」,「その
下方に配した両端上がりの弧線」を基本構成とするものであり,審決の判断基準で
は,いずれも無効理由を有することになってしまうなどと主張する。
しかし,これらは,いずれも本件商標とは異なる商標に係る事情であり,その当
否にかかわらず,本件商標についての前記判断を左右するものではない。
(8)以上によると,本件商標と引用各商標とが類似しない旨の取消事由2は,
理由がない。
3結論
よって,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却
することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森義之
裁判官
永田早苗
裁判官
古庄研

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