弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審の訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人天野郷三提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるか
らここにこれを引用し、これに対し次のように判断する。
 論旨は、被告人は昭和二十六年以来東京都新宿区a町b番地に工場を設け政府に
申告して物品税法にいわゆる第二種の物品であるブランコ、シーソー等の遊戯具の
製造をなし、昭和三十二年三月同都足立c町d番地に工場を移転し今日に至つたも
のであるが、物品税法第十五条に規定する製造者の申告義務は同条所定の物品を製
造せんとするとき即ち製造開始の時一回これをなせば足り、その後廃業しない限り
更に同条に基く申告の義務はない。唯製造場を移転したときは同法施行規則第十条
による移転の申告をなす義務はあるが同法第十五条による申告義務はないのに被告
人の本件所為を同法第十条違反に問疑した原判決は法令の適用を誤つたものである
というに在る。
 よつて按ずるに、物品税法第十五条は製造者の申告義務として、第二種又は第三
種の物品を製造せんとする者は命令の定むる所に依り政府に申告すべし、製造を廃
止せんとするとき亦同じと規定し、右物品を製造しようとする者が如何なる申告書
を政府の如何なる機関に提出して為すべきかは一切これを命令の定むるところに委
任しているのである。そして右規定に基き同法施行規則第四条第一項は、製造の申
告につき、物品税法第一条第一項(課税物件)に掲ぐる第二種又は第三種の物品を
製造せんとする者は、製造場及び製造すべき物品を定めその住所及び氏名又は名称
を記載したる申告書を製造場所轄税務署に提出すべき旨及び同規則第七条は右申告
した事項に異動を生じたるときはその都度所轄税務署に申告すべき旨を各規定し、
また同規則第九条は製造の廃止につき、第二種又は第三種の物品の製造を廃止せん
とするときはその旨を所轄税務署に申告すべき旨規定している一方物品税法第四条
は、物品税は第二種又は第三種の物品に付いては、製造場より移出された物品の価
格又は数量に応じ、製造者より徴収することを、同法第八条は第二種の物品の製造
者は、毎月その製造場より移出した物品に付その品名毎に数量を記載した申告書を
翌月十日迄に政府に提出すべきことを各定め、同法第十六条は、第二種又は第三種
の物品の製造者に帳簿を備え命令の定める事項をこれに記入すべきことを命じ、同
法第十七条は収税官吏は、右物品の製造者に質問し、又は、製造者の所持する帳簿
書類若くは製造上必要な建築物、機械器具その他の物を検査し監督上必要な処分を
することができる旨を規定しているのに徴す<要旨第一>れば物品税法第十五条のい
わゆる製造者の申告は、物品税の徴収を確保するため製造者(納税義務者)及び
造場の所在を明らかにすると共に、収税官吏が同法所定の質問、検査
又は監督を行う必要上これを為さしめるものであることが明らかである。してみれ
ば物品税法第十五条の製造者の申告は同条所定の物品の製造場毎にこれをなすべき
ことを規定したものと解するを相当とする。してみれば同法の規定に基く前記物品
税法施行規則の各規定は物品税法第十五条の委任の範囲内で制定されたものという
べきである。所論は被告人の所為は物品税法施行規則第十条に規定する製造場移転
の申告義務違反であつても、物品税法第十五条の無申告製造には<要旨第二>該当し
ないと主張するのであるが、右規則第十条は製造者の申告義務について、第二種又
は第三種の物品の製造者は製造場を移転せんとするときは移転の事実を
具し、第四条(製造開始の申告書の提出)及び前条(製造等の廃止の申告)の規定
に準じ申告を為すべしと規定しているのであつて、即ち製造場を移転せんとすると
きは、旧製造場については移転につき廃止する旨を同規則第九条に準じその所轄税
務署に申告し、移転先の製造場については旧製造場より移転し製造を開始する旨を
同規則第四条に準じその所轄税務署に申告すべきもので、物品税法上いわゆる製造
場移転の申告なるものは存しないのである。然らば被告人の本件所為を物品税法第
十五条第十八条第一項第一号同法施行規則第四条に問擬した原判決の法令適用は正
当であつて論旨は理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条第百八十一条第一項本文に則り主文のとおり判
決する。
 (裁判長判事 岩田誠 判事 渡辺辰吉 判事 司波実)

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