弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人松尾菊太郎の上告趣意第一点について。
 所論は、原判決が、法律の規定によらず又は法律に定める手続によらないで被告
人以外の者の所有に属する物を没収したのは、憲法二九条、三一条、三二条に違反
し、憲法九八条により無効であるというにあつて、要するに他人の所有権を対象と
して違憲を主張するに帰するものである。
 しかし、訴訟において、他人の権利に容喙し、これが救済を求めるが如きことは、
本来許されないのであるから、他人の所有権を対象として基本的人権の侵害がある
とするような違憲の主張は許されないと解すべきものであることは当裁判所大法廷
の判例とするところである(昭和二八年(あ)三〇二六号、同三五年一〇月一九日
大法廷判決、昭和二九年(あ)三六五五号、同三五年一〇月一九日大法廷判決各参
照)。
 されば、本件没収につき所論違憲ありとする論旨は採るを得ない。
 同第二点について。
 所論は、被告人の本件行為は、旧関税法(昭和二五年四月法律第一一七号による
改正以後のもの)七六条一項にいわゆる「輸出」に当らないというのである。
 しかし、同条項所定の輸出行為は、海上にあつては、目的の物品を日本領土外に
仕向けられた船舶に積載するによつて完成するものであることは、当裁判所の判例
とするところである(昭和二三年(れ)第四五〇号、同年八月五日第一小法廷判決
集二巻九号一一三四頁、昭和二五年(れ)第九四五号、同年九月二八日第一小法廷
判決集四巻九号一八二〇頁各参照)。
 原判決が適法に確定した事実によれば、「被告人らは共謀の上、香港に貨物を密
輸出しようと企て、被告人AがBからC名義で賃借し、船長として支配占有する機
帆船共進丸をこれに使用するため、福岡県大牟田市大字a港に回港させた上、昭和
二七年九月一九日頃免許を受けないで、被告人Dが同市で入手したカ―ボンブラツ
ク一五瓩入二百袋、亜鉛華二〇瓩入二袋、染料六〇瓩入四罐を同船に積載し、同月
二一日午後一一時頃a港を香港に向け出帆し、同港E製煉所岸壁沖合約二〇米まで
航行した」というのであるから、原判決が被告人の右所為を以て前記旧関税法七六
条一項に該当するものと判断したのは正当であつて、所論違法があるとは認められ
ない。それゆえ論旨は採るを得ない。
 被告人Dの上告趣意について。
 所論は要するに事実誤認の主張に帰し(所論調書が強制による自白を録取したも
のであるとの事実は記録上これを認めがたい)、刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。
 よつて同四〇八条により、主文のとおり判決する。
 この判決は、弁護人松尾菊太郎の上告趣意第一点に対する裁判官入江俊郎の反対
意見あるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 弁護人松尾菊太郎の上告趣意第一点に対する裁判官入江俊郎の反対意見は、次の
とおりである。
 わたくしは、多数意見には反対である。所論違憲の主張は刑訴四〇五条の適法な
上告理由に該当するものであり、そして本件第三者没収が憲法三一条に違反するも
のであるとの論旨は、本件没収にかかる機帆船共進丸の所有者Bに対し、事実審の
公判廷において、予め告知、聴問の機会を与えていない点において、結局理由ある
に帰し、原判決はこの点において破棄、差戻を免れないものと考える。その理由と
するところは、当裁判所の昭和二八年(あ)第三〇二六号、同三五年一〇月一九日
大法廷判決におけるわたくしの反対意見を引用する。
 また所論中、本件第三者所有の船舶の没収が憲法二九条に違反するとの点は、当
裁判所の昭和二六年(あ)第一八九七号、同三二年一一月二七日大法廷判決の趣旨
に従い、船舶の所有者において、本件犯罪行為が行われることをあらかじめ知つて
おり、その犯罪行為が行われた時から引きつづきこれを所有していた場合に限り没
収のなされるものであると解すべきところ、原判決の認定によれば、本件船舶は被
告人AがBからC名義で賃借したものであるというのであり、また、前記Bに対す
る司法警察員の参考人供述調書その他記録によれば、同人はむしろ善意であつたこ
とがうかがわれるけれども、原審の確定した事実関係の下においては、未だこの点
に関する審理を尽したものとは認められない。それ故、原判決はこの点において審
理不尽を免れず、本件第三者没収が憲法二九条に違反するとの論旨は結局理由ある
に帰し、この点においても、破棄、差戻を免れないものと考える。
 なお、所論は、憲法三二条違反をいうが、本件第三者没収が執行せられた場合に
おいて、右第三者が、これを違憲、違法として没収執行の行政処分に対していわゆ
る抗告訴訟を提起するか、または、所有権に基づく民事訴訟を提起することは可能
であつて、原判決は何らこれを否定したものではないから、この点に関する違憲の
主張は、前提を欠くものであつて、採るを得ない。
  昭和三五年一二月二二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛