弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人Aの上告理由は末尾添附の書面記載のとおりであつて、これに対し当裁判
所は次のように判断する。
 「地盛費について」の論旨について。
 論旨は、上告人が賃借地上に施した地盛費の償還請求権に基く留置権の抗弁を排
斥した原判示を非難する。しかし、上告人が貨借地につき地盛費を支出したとすれ
ば、その償還債権は本件土地に関して生じた債権であるから、土地の引渡の請求が
ある場合、右費用の償還があるまで該土地を留置し得るであろうが、被上告人Bは
上告人に対し右地上建物の明渡を求めるものであつて土地の明渡を求めるものでな
い。このような場合上告人は土地に関する留置権をもつて家屋の明渡を拒み得ない
ものと解するを相当とする。そうだとすれば上告人の留置権の抗弁はこの点におい
て失当であるから、これを排斥した原判決は結局において正当なるに帰し、論旨は
理由がない。
 「請求趣旨について」の論旨について。
 論旨には、被上告人Bの本件家屋明渡の請求は、本件家屋中(4)(5)(6)
の部分につきその理由なきことに確定しているにかゝわらず、原審はこの既判力に
反する判断をした違法があるのみならず、被上告人Bは本件家屋中(1)(2)(
3)及び(4)の二階の部分につき上告人の明渡義務を認めた右確定判決後その当
事者Dの地位を承継したものであつて、右判決は被上告人のためにも効力を有する
から、本訴は同一訴訟物についての再訴であつて、権利保護の利益がないという主
張を含むものと解される。しかし、所論乙第四号証ノ一乃至三はDが上告人との間
の所論確定判決の主文に表示された建物の坪数に所論(4)(5)(6)の部分を
包含させるため申立てた判決更正申立の却下決定であつて、該決定が確定したこと
は記録上認められるが、これがため、直ちに右(4)(5)(6)の部分につきD
の明渡の請求が理由なしとして排斥されたものとは言えない。また本件建物中(1)
(2)(3)及び(4)の二階の部分については、上告人が前記確定判決の強制執
行により一旦これを明渡した後再び新にこれを占有しているものであること、原審
の確定しているところであるから、右部分の明渡を求める請求は確定判決後生じた
新たな事実を前提とするものである。従つて右各部分を包含する本件家屋全部の明
渡の請求を容認したからとて、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由が
ない。
 なお論旨中違憲の文字を使用するが、その実質は原審における証拠の採否事実認
定を非難するものであつて、違憲の主張には当らない。
 その余の論旨はすべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する
法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、
又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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