弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人島田正純、同田中宗雄、同栗林敏夫の上告理由第一点について
 当事者適格は、訴提起のときに具備されていなくても、口頭弁論終結のときに具
備されていれば足りるから、本件訴を被上告人の原告適格に欠けるところのない適
法な訴であると認めた原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所
論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第二点について
 株式が未成年の子とその親権者を含む数人の共有に属する場合において、親権者
が未成年の子を代理して商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」を
指定する行為は、その者を親権者自身と指定するときであつても、利益相反行為に
あたるものではない。これと同趣旨の原審の判断は正当であつて、その過程に所論
の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第三点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、正当として是認することができ、その過程
に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
 同第四点について
 商法三五〇条三項によつて準用される同法三七八条の規定は、株式会社がその設
立後に定款を変更して株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めを設けた
場合において、株式譲渡制限の文言の記載されていない旧株券を回収してその文言
を記載した新株券を発行するにあたり、旧株券を提出することができない株主の保
護と会社の旧株券回収・新株券発行事務の迅速な処理をはかるために、公示催告手
続に比して簡便な異議催告手続を設けたものである。このような法の趣旨にかんが
みると、会社に対して異議催告公告を請求することができる者は必ずしも株主名簿
上の株主であることを要せず、株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた株主もま
たこれを請求することができ、その経過前の譲受けにより株式が名義書換を経てい
ない数人の共有に属することとなつた場合には、株主の権利を行使すべき者の指定
が株券提出期間経過後にされたときであつても、その者においてこれを請求するこ
とができるものと解するのが、相当である。これと同趣旨の原審の判断は正当とし
て是認することができ、論旨は採用することができない。
 同第五点について
 異議催告公告を請求する者において旧株券をその所在が不明であるとの事由によ
り会社に提出することができない場合においては、異議催告手続の制度の性質上、
所在不明となつた理由までも主張することを要するものではないと解すべきである。
本件の場合、原審の認定によれば、本件四〇〇〇株の旧株券の所在が不明であるた
め、被上告人はこれを上告会社に提出することができないというのであつて、右認
定は原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができるのであるから、株券が
所在不明となつた理由を具体的事実に基づいて確定する必要はない。原判決に所論
の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第六点について
 被上告人の請求する異議催告公告の新聞紙掲載を二段抜一倍ポイント活字をもつ
てすべきことを命じた原審の判断は、記録に照らし、被上告人の請求にそうものと
解され、右二段抜一倍ポイント活字によるべきことを相当と認めた理由を具体的に
判示しなくても、違法とはいえない。また、被上告人の負担すべき異議催告公告費
用に関し原審においてなんら主張のない本件の場合、原審がその点に関する判断を
示さなかつたことは、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はな
く、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    服   部   高   顯
            裁判官    環       昌   一

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