弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士名川保男、同岩村辰次郎の上告理由は別紙記載のとおりである。
 上告理由第一点及第三点について。
 論旨は公職選挙法四八条、同法施行令三六条、同法六条を引用して、投票の効力
に関する同法施行前の最高裁判所の判例は変更されるべきものであるにもかかわら
ず、原判決が従前の判例に従つて本件選挙の投票の効力を判断したのは法令の解釈
を誤つた違法があるというのである。
 所論同法四八条は自ら候補者の氏名を記載することのできない選挙人のために代
理によつて投票することができることを定めているけれども、公職選挙法において
も投票は選挙人自ら記載することを原則としているのであつて、(同法四六条参照)
かかる代理投票がゆるされるに至つたからと言つて、自ら記載した投票の効力につ
いて所論のように厳格に決定すべき趣旨と解することはできない。次に同法施行令
三六条の汚損投票用紙引換に関する規定については、同法施行前の衆議院議員選挙
法施行令一七条(地方自治法施行令五一条によつて地方公共団体の選挙にも準用さ
れていた)にも同趣旨の規定があり、右三六条は従前の判例を変更すべき根拠には
ならない。又同法六条は選挙管理委員会の職務執行に関する規定であつて、選挙管
理委員会が同条の趣旨に従つて投票の方法等について選挙人に周知せしめたからと
言つて‘投票の効力に関する同法施行前の判例を変更しなければならない理由はな
い。
 論旨はまた同法六七条後段を引用して候補者の氏のみを記載した投票は無効であ
ると主張し、或は氏名以外の記載(同法六八条一項五号但書を除く)のある投票は
無意識的な記載であるとないとを問はず他事を記載したものとしてこれを無効とす
べしと主張するのであるが、右六七条後段は公職選挙法にあらたに加えられた条文
ではあるけれども、その趣旨は所論のように投票の効力について従前の判例よりも
一層厳格に解すべきものとする趣旨ではなく、かえつて選挙人の意思が投票の記載
で判断し得る以上は一層なるべくこれを有効とすべきものとする趣旨と解するを机
当とする。論旨はすべて理由がない。以上説明のほか論旨は「最高裁判所における
民事上告事件の審判の特例に関する法律」一号乃至三号のいずれにも該当せす、又
同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとは認められない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致した意見により主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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