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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1処分行政庁が原告に対し,平成19年2月26日付けでした平成15年1月
1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成15年12月課税期間」
という。)の消費税の更正処分のうち納付すべき税額565万8800円を超
える部分及び同課税期間分の地方消費税の更正処分のうち納付すべき譲渡割額
141万4700円を超える部分並びにこれらに対する過少申告加算税の各賦
課決定処分(ただし,いずれも平成19年7月19日付けの処分行政庁の異議
決定及び平成20年6月16日付けの国税不服審判所長の裁決により一部取り
消された後のもの)をいずれも取り消す。
2処分行政庁が原告に対し,平成19年2月26日付けでした平成16年1月
1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成16年12月課税期間」
という。)の消費税の更正処分のうち納付すべき税額562万1300円を超
える部分及び同課税期間分の地方消費税の更正処分のうち納付すべき譲渡割額
140万5300円を超える部分並びにこれらに対する過少申告加算税の各賦
課決定処分(ただし,いずれも平成19年7月19日付けの処分行政庁の異議
決定により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
3処分行政庁が原告に対し,平成19年2月26日付けでした平成17年1月
1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成17年12月課税期間」
という。)の消費税の更正処分のうち納付すべき税額1067万3400円を
超える部分及び同課税期間分の地方消費税の更正処分のうち納付すべき譲渡割
額266万8300円を超える部分並びにこれらに対する過少申告加算税の各
賦課決定処分(ただし,いずれも平成19年7月19日付けの処分行政庁の異
議決定により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
第2事案の概要
本件は,カーレースへの参戦及びその企画運営を行う有限会社(会社法の施行
に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「会社法整備法」という。)1条3
号の規定による廃止前の有限会社法の規定による有限会社であって,会社法整備
法2条1項に基づき会社法の規定による株式会社として存続するもの)である原
告が,平成15年から平成17年にわたる各課税期間(これらの課税期間を総称
して「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」とい
う。)について,麻布税務署長から,平成19年2月26日付けで,国外売上げで
あって課税対象となる売上げに当たらないとした売上げが課税対象となるとし,
課税控除の対象となるとした国外仕入に係る仕入金額が課税仕入に係る支払対価
の金額に該当しないことを理由として,それぞれ更正処分を受けたことから,上
記課税仕入に係る支払対価の金額については争わず,各スポンサー企業との間の
スポンサー契約(以下「本件各スポンサー契約」という。)における役務提供地
が国外であり,同契約の契約金が国外売上げであって課税対象となる売上げに該
当しないこと(不課税取引)を理由として,麻布税務署長の異議決定,国税不服
審判所長の裁決を経て一部取り消された後の上記各更正処分の一部及びこれらに
係る過少申告加算税賦課決定処分の各取消しを求めている事案である。
1関係法令等の定め
以下,各条文等のうち,本件に関係のある部分のみを略記する。
(1)消費税法2条(定義)
この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,アないしカに定める
ところによる。(1項)
ア国内この法律の施行地をいう。(1号)
イ略(2号及び3号)
ウ事業者個人事業者及び法人をいう。(4号)
エ略(5号ないし7号)
オ資産の譲渡等事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並
びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資
産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定める
ものを含む。)をいう。(8号)
カ略(9号ないし20号)
(2)消費税法4条(課税の対象)
ア国内において事業者が行った資産の譲渡等には,この法律により,消費
税を課する。(1項)
イ資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は,次の(ア)又は
(イ)に掲げる場合の区分に応じ(ア)又は(イ)に定める場所が国内にあるか
どうかにより行うものとする。(3項)
(ア)資産の譲渡又は貸付けである場合当該譲渡又は貸付けが行われる
時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶,航空機,鉱
業権,特許権,著作権,国債証券,株券その他の政令で定めるものであ
る場合には,政令で定める場所)(1号)
(イ)役務の提供である場合当該役務の提供が行われた場所(当該役務
の提供が運輸,通信その他国内及び国内以外の地域にわたって行われる
ものである場合その他の政令で定めるものである場合には,政令で定め
る場所)(2号)
(3)消費税法施行令6条
上記(2)イ(イ)に規定する政令で定める役務の提供は,次のアないしキに掲
げる役務の提供とし,上記(2)イ(イ)に規定する政令で定める場所は,当該役
務の提供の区分に応じ当該役務の提供が行われる際におけるアないしキに定
める場所とする。(2項)
ア国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客又は貨物の輸送当該
旅客又は貨物の出発地若しくは発送地又は到着地(1号)
イ国内及び国内以外の地域にわたって行われる通信発信地又は受信地
(2号)
ウ国内及び国内以外の地域にわたって行われる郵便又は信書便(民間事業
者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)2条2項(定
義)に規定する信書便をいう。(中略))差出地又は配達地(3号)
エ保険保険に係る事業を営む者(保険の契約の締結の代理をする者を除
く。)の保険の契約の締結に係る事務所等の所在地(4号)
オ情報の提供又は設計情報の提供又は設計を行う者の情報の提供又は設
計に係る事務所等の所在地(5号)
カ専門的な科学技術に関する知識を必要とする調査,企画,立案,助言,
監督又は検査に係る役務の提供で次に掲げるもの(以下この号において「生
産設備等」という。)の建設又は製造に関するもの当該生産設備等の建
設又は製造に必要な資材の大部分が調達される場所(6号)
(ア)建物(その附属設備を含む。)又は構築物((イ)に掲げるものを除
く。)(イ)
(イ)鉱工業生産施設,発電及び送電施設,鉄道,道路,港湾設備その他
の運輸施設又は漁業生産施設(ロ)
(ウ)(ア)又は(イ)に掲げるものに準ずるものとして財務省令で定めるも
の(ハ)
キ上記アないしカに掲げる役務の提供以外のもので国内及び国内以外の地
域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明
らかでないもの役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在
地(7号)
2前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認められる事実)
(1)原告とインディーレーシングリーグ
ア(ア)原告は,本件各課税期間当時,東京都港区α×番16号に本店事務
所を置き,①国内外におけるカーレースへの参戦をするためのカーレー
スチームの企画,運営,②広告の制作とその取扱業,③映画,テレビ,
ラジオ,写真,広告,新聞,雑誌,書籍等への筆稿,出演,掲載等のマ
ネージメント,④経営コンサルタント業等を行う法人(有限会社)であ
る。(乙4)
(イ)原告は,本店事務所のほか,カート事務所を設けている。また,原
告は静岡県御殿場市内に工場(以下「P1工場」という。)を有してい
る。(乙5ないし8)
イ(ア)インディーレーシングリーグ
インディーレーシングリーグ(以下「インディー」という。)は,ア
メリカ合衆国(以下「アメリカ」という。)を中心として開催されてい
る自動車レースであり,1年間に一定数のレースを開催し,レースごと
の成績に応じてドライバー,チームに付与されるポイントを通算し,ド
ライバーチャンピオン,チームチャンピオン等が決定されている。(甲
9)
(イ)a原告は,P2株式会社(以下「P2」という。)との間で,平成
14年12月10日,IRLスポンサーシップ契約を締結した(以下
「P2との平成15年スポンサー契約」という。)。また,ほぼ同様
の内容で,平成15年12月25日,平成16年12月22日にもI
RLスポンサーシップ契約(以下,それぞれ,「P2との平成16年
スポンサー契約」,「P2との平成17年スポンサー契約」といい,
平成15年ないし平成17年にわたり締結された上記の各契約を総称
して「P2とのスポンサー契約」という。)を締結した。(甲1の1
ないし3,甲9)
b原告は,P3株式会社(以下「P3」という。)との間で,平成1
5年2月1日,IRLスポンサー契約(以下「P3とのスポンサー契
約」という。)を締結した。(甲2,甲9)
c原告は,株式会社P4(以下「P4」という。)との間で,平成1
5年1月21日,IndyRacingLeague-IndyCarシリーズスポンサー契約
(以下「P4とのスポンサー契約」という。)を締結した。(甲3,
甲9)
d原告は,P5株式会社(以下「P5」という。)との間で,P5の
代理人である株式会社P6(以下「P6」という。)を介し,平成1
5年3月20日,IRLスポンサー契約(以下「P5とのスポンサー
契約という。」)を締結した。(甲4,甲9)
(ウ)インディーは,平成15年には,3月2日から10月12日まで,
合計16レースが開催され(うち1レースが栃木県内において4月13
日に開催されている。),平成16年には,2月29日から10月17
日まで,合計16レースが開催され(うち1レースは栃木県内において
4月17日に開催されている。),平成17年には,3月6日から10
月16日まで17レースが開催(うち1レースが栃木県内において4月
30日に開催されている。)された。
そして,原告は,P7社との間において締結したレーシングオペレー
ション契約(以下「本件オペレーション契約」という。)に基づき,P
8の名称の下に,上記各シーズンにおけるインディーに参戦した。なお,
実際にレースに参戦するまでに,インディーカーレース参戦用の車両(シ
ャーシー)及び必要な部品を調達し,P7社が有しているアメリカのイ
ンディアナポリスの工場において,レース参戦用車両の調整及びテスト
を行い,車両を各レースが行われるサーキットに搬送し,サーキットに
おいて再調整及びテストを行った上,レースに参戦している。
(以上につき,甲1,甲5,甲9,乙25)
(2)本件訴訟に至るまでの経過
ア原告の確定申告
原告は,本件各課税期間の消費税等について,各確定申告書に別表Ⅰ1
ないし3の各「確定申告欄」のとおり記載して,それぞれ,平成16年3
月1日,平成17年2月28日及び平成18年2月28日に,麻布税務署
長に提出した。(甲5,甲6,乙1ないし3)
イ麻布税務署長の更正処分
麻布税務署長は,平成19年2月26日,原告の上記の確定申告に基づ
き,本件各課税期間について,別表Ⅰ1ないし3の各「更正決定」欄のと
おりの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下において,
各課税期間における更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を併せ
て「更正処分等」といい,本件各課税期間における各更正処分等をそれぞ
れ「平成15年12月課税期間更正処分等」,「平成16年12月課税期
間更正処分等」及び「平成17年12月課税期間更正処分等」という。)
をした。(甲5,甲6)
ウ異議申立て
原告は,上記各更正処分等について,平成19年4月20日,異議の申
立てをしたところ,麻布税務署長は,同年7月19日付けで別表Ⅰ1ない
し3の各「異議決定」欄のとおり,麻布税務署長の本件各課税期間におけ
る各更正処分等について,それぞれその一部を取り消し,その余を却下す
る旨の異議決定をした。(甲5,甲6)
エ審査請求
原告は,本件各課税期間についての異議決定を経た後の各更正処分等に
ついて,平成19年7月27日に国税不服審判所長に対して審査請求をし
たところ,国税不服審判所長は,平成20年6月16日付けをもって,別
表Ⅰ1ないし3各「審査裁決」欄のとおり,麻布税務署長の平成15年1
2月課税期間更正処分等(上記異議決定において一部取り消された後のも
の)の一部をそれぞれ取り消し,その余を棄却する旨の裁決をした。(甲
5)
なお,本件訴訟において被告が主張する原告の本件各課税期間の消費税
等に係る課税標準額及び納付すべき税額等は別表Ⅱ1ないし3のとおりで
あり,その根拠及び計算に関する被告の主張は別紙1「課税の根拠及び計
算」のとおりである。
オ本件訴訟の提起
原告は,平成20年12月16日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)
3争点
本件各スポンサー契約に基づいて原告がした役務の提供の不課税取引該当性
(消費税法4条3項2号,消費税法施行令6条2項7号の適用の有無)
4争点に関する当事者の主張の要旨
(原告の主張の要旨)
(1)本件各スポンサー契約は,以下のとおり,国外レースへの参戦を目的とし
て締結され,原告の役務提供は国外で行われることが契約において予定され
ていると認められるというべきであるから,本件各スポンサー契約における
契約金は,国外での役務提供の対価であり,消費税の課税対象とならない。
ア本件各スポンサー契約について
(ア)P2とのスポンサー契約について
P2とのスポンサー契約においては,P2がインディーへの参戦をす
ることについて契約金を支払うとされ(第1条),原告がP7社と協力
して,インディーの平成15年及び平成16年の全16戦及び平成17
年の全17戦の各レースに参戦するチームを運営し(第2条),原告が
各インディーへ参戦することが義務付けられており,その対価として契
約金が規定されている。そして,上記レースに参戦する義務に付随して
各種の付随義務を負担することが規定されているから,原告の役務提供
がインディーへの参戦にあることは明らかである。
本件各インディーの開催地は,契約時において,各年とも1戦のみが
本邦国内であり,その他はアメリカ国内であることが確定していたので
あって,その役務提供地は具体的に特定しており,年間16ないし17
戦の各レース開催地が役務の提供地となる。
(イ)P3とのスポンサー契約
P3とのスポンサー契約においては,原告のインディーへの参戦が義
務付けられ(第1条),参戦義務に基づいて複数の義務が課せられてお
り(第2条),その対価として契約金が規定され(この点,レース数の
減少に伴う金額の調整に関する規定(第4条)が設けられ,対価額の規
定(第3条)が各年度のインディーのレース数を16戦として規定され
ていることからも明らかである。),その他の付随的義務は,いずれも
インディーへの参戦義務に付随するものであるといえるから,その役務
提供の場所は,上記(ア)と同様,特定されていたといえる。
(ウ)P4とのスポンサー契約
P4とのスポンサー契約においては,原告はインディー全戦に参戦し
(第1条),その対価として契約金が支払われ(第2条),その余の当
該レース参戦義務に付帯して原告が求められる事項については対価を要
せず,これらの義務はインディーのレギュレーションに抵触しない範囲
内を限度とすること(第3条)が定められているから,その役務提供の
内容がレース参戦にあることは明らかであり,その役務提供の場所は,
上記(ア)と同様,特定されていたといえる。
(エ)P5とのスポンサー契約
P5とのスポンサー契約は,原告にインディーへの参戦が義務付けて
おり(第1条),その参戦への義務に基づいて複数の義務が定められ(第
2条),この義務の対価として契約金が定められており(この点,レー
ス数の減少に伴う金額の調整に関する規定(第4条)が設けられ,対価
額の規定(第3条)が平成15年のインディーのレース数を15戦とし
て規定されていることからも明らかである。),各役務提供がレース参
戦に付随するものであることが明らかであることからすれば,その役務
提供の場所は,上記(ア)と同様,特定されているものといえる。
イ本件各スポンサー契約における義務の内容
(ア)原告の具体的な事業は,原告がレースに参戦するため,レーシング
チームをコーディネイトして,その参戦費用を各企業に拠出してもらい,
又は,レースに参戦したいとする企業の依頼に基づいて,レースチーム
をコーディネイトして,当該企業のためにレースに参戦することにある。
原告と契約する企業は,商号・商品名・ロゴマークをチーム名に付し
たり,そのステッカーをレーシングカーやドライバースーツ等に貼付し,
当該レーシングカーやドライバーがレースに参戦することによってメデ
ィアを通じて広告をすることができるのであり,原告は,各企業の広告
宣伝のためレースに参戦し,その対価として契約金を受領する。
したがって,原告においては,レースに参戦するという役務が本来的
役務であり,レーシングチーム関係者のイベントへの参加やチーム全員
の肖像権の使用許諾等を通じて当該企業の広告宣伝活動等に協力する義
務は上記本来的役務に付随するものにすぎず,役務提供に対する対価を
生じることはない。
(イ)そして,上記(ア)のとおり,本件各スポンサー契約における契約金
は,原告において,レース参戦に必要な費用の見積りをした上でこれを
基礎に算定したものであるから,レース数を基礎に合理的に区分するこ
とができ,本件各スポンサー契約の契約書においてもレース数の増減に
伴う契約金の調整について定めた条項が存在することに照らしても,国
内で実施されるレース数と国外において実施されるレース数の割合で区
分することができる。したがって,少なくとも平成15年及び平成16
年の本件各スポンサー契約における契約金の16分の15,平成17年
の本件各スポンサー契約における契約金の17分の16については,国
外における役務提供の対価とされるものである。
(2)本件における役務の提供に係る事務所は日本国内に存しないこと
原告がP7社との間で締結した本件オペレーション契約において,原告の
インディー参戦に際しては,P7社のインディアナポリスに所在する工場を
チームの固定的施設として使用し,レース期間中レース地との往復作業を行
う旨が取り決められている。原告は,かかる工場及び年間16又は17レー
スの各レース場において各レースチームに割り当てられている,いわゆるガ
レージエリア,ピットエリア及びパーキングエリア等を役務提供の拠点とし
ている。また,各レースにおいては,原告の担当職員をインディアナポリス
又は各レース場に派遣するなどして事務を行わせていた。
したがって,インディーに関する各スポンサーとの間の契約の役務提供に
係る「事務所等」はアメリカのインディアナポリス及び各レース場に存した
以上,本邦において開催された毎年の1レース分を除き,その役務の提供は
国外で行われていたものとなる。
(被告の主張の要旨)
(1)本件各スポンサー契約に基づいて原告が行う役務の提供は,消費税等の課
税の対象となること
ア本件各スポンサー契約の各契約書の記載によれば,原告は各種の義務を
負っているところ,これらに基づいて原告が行う役務の提供場所は,国内
と国外の双方と認められ,対価の額について,国内対応分と国外対応分と
に区別されていない。そうすると,「同一の者に対して行われる役務の提
供で役務の提供場所が国内と国外の双方で行われるもののうち,その対価
の額が合理的に区別されていないもの」(消費税法基本通達5-7-15
後段)に該当する。
したがって,これら原告が行う役務の提供は,「国内において事業者が
行った資産の譲渡等」(消費税法4条1項)に該当し,消費税等の課税の
対象となる。
なお,原告は,対価性が認められる原告の役務の提供がレース参戦のみ
であったとするが,本件各スポンサー契約において,役務の提供に係る対
価の額は一括して定められており,国内対応分と国外対応分とを合理的に
区別することはできないし,原告の業務量と各スポンサーにとっての広告
効果が異なることは明らかであるから,合理的とはいえない。
イレースへの参戦以外の役務はそれに付随するものにすぎず,消費税等の
課税対象とはならないとする原告の主張が失当であること
(ア)P2とのスポンサー契約(甲1の1ないし3)に基づく原告の役務
の提供に対価性があること
P2とのスポンサー契約の各契約書には,原告がインディーに参戦す
ることのみならず,各種の義務を履行することを条件にP2が契約金を
支払う旨規定した条項があるから,本件各契約書に記載された原告の義
務それぞれに対価性があることは明らかである。
(イ)P3とのスポンサー契約(甲2)に基づく原告の役務の提供に対価
性が認められること
P3とのスポンサー契約の契約書には,原告がインディーに参戦する
ことのみならず,販売促進活動への協力,レーシングカーの無償貸出し,
チーム写真の広報用途への無償使用等の役務の提供が明記されている
(第2条。なお第3条参照)から,P3が原告に対して支払う契約金が,
P3が指定するロゴマークを貼付してインディーに出走するのみなら
ず,P3の広告宣伝活動等の役務の提供の対価であることは明らかであ
る。
他方,原告がレースごとに独立性の根拠とする本件契約書第4条は,
当初取り決められたレース数について,予定よりも実際のレースが増減
した場合の取決めにすぎず,原告が提供する役務の内容を決する条項で
はない。
(ウ)P4とのスポンサー契約(甲3)に基づく原告の役務の提供に対価
性が認められること
P4とのスポンサー契約の契約書の第3条2項は,P4指定のロゴマ
ークの貼付に関する事項について,レースシリーズのレギュレーション
に抵触しない範囲を限度とする旨規定しているにすぎず,レース参戦以
外の役務の提供に対価性がないことの根拠となるものではない。
また,P4は,P4が本件契約書に基づいて原告に対して支払う契約
金が,本件契約書に基づいて原告が行う役務の提供の対価であると判断
していた。
(エ)P5とのスポンサー契約(甲4)に基づく原告の役務の提供に対価
性が認められること
P5とのスポンサー契約の契約書には,第2条に原告の義務として,
原告がインディーに参戦することのみならず,P5の広告宣伝活動及び
販売促進活動に協力すること等の役務の提供が明記されているから,P
5が原告に対して支払う契約金が,P5が指定するロゴマークを貼付し
てインディーに参戦するほか,P5の広告宣伝活動等の役務の提供の対
価であることは明らかである。
本件契約書第4条は,単にレース数の増減があった場合の規定にすぎ
ない。
(2)本件における原告の役務の提供に係る事務所等がインディアナポリスに
所在するP7社の工場であるとは認められないこと
原告が事業を行うに当たって使用している施設は,本店事務所,カート事
務所及びP1工場であり,いずれも国内に所在している。
本件オペレーション契約(乙25)に記載されたP7社が履行すべき業務
(3項A・D)によれば,P7社のインディアナポリスに所在するとされる
工場は,P7社が本件オペレーション契約に基づいて原告から委託された業
務を行う施設であるにすぎず,原告に係る「事務所等」(消費税法施行令6
条2項7号)に該当するものではない。したがって,原告の役務の提供に係
る事務所等は国内にしか存在しない。
第3当裁判所の判断
1消費税法4条1項は,国内において事業者が行った役務の提供を含む資産の
譲渡等に消費税を課するとし,同条3項2項は,資産の譲渡等が国内において
行われたかどうかの判定について,「役務の提供」は当該役務の提供が行われ
た場所が国内にあるかどうかにより行うとした上で,当該役務の提供が運輸,
通信その他国内及び国内以外の地域にわたって行われるものである場合等につ
いては政令で定めるとする。そして,これを受けた消費税法施行令6条2項7
号は,1号ないし6号において列挙された役務の提供以外のもので国内及び国
内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場
所が明らかでないものについては,役務の提供を行う者の役務の提供に係る事
務所等の所在地が国内にあるかどうかにより判断するものとしている。
消費税法施行令6条2項7号の趣旨は,消費税法上の原則的な扱いとしては
役務の提供が行われた場所を管轄の基準とするが,個々の役務の提供が国内及
び国内以外の地域にわたって行われる場合には,役務の提供場所の把握が事実
上極めて困難であることにかんがみ,国内に事務所等の物理的な存在のある事
業者についてのみ課税を行うことで課税上の便宜及び明確化を計ったものと解
される(乙28)。そうすると,国内及び国内以外の地域にわたって行われる
役務の提供であっても,当該役務の現実的な提供場所が国内と国内以外の地域
とに区分することができ,かつ,これら役務の提供に係る対価の額が国内の役
務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区分さ
れるものは,国内の役務に対応する対価の額をもって消費税等の課税標準を定
めることが可能である(消費税法28条1項参照)から,同号にいう「国内及
び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供」には当
たらないものと解される。一方,国内及び国内以外の地域にわたって行われる
役務の提供のうち,役務の提供に係る対価の額が国内の役務に対応するものと
国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区分されていないものにつ
いては,当該役務の現実的な提供場所が国内と国内以外の地域とに区分するこ
とができたとしても,対価の額に対応する役務の提供場所の特定ができないか
ら,同号の趣旨が当てはまるものといえる。
したがって,同号における「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役
務の提供」とは,役務の提供が国内と国外との間で連続して行われるもののほ
か,同一の者に対して行われる役務の提供で役務の提供場所が国内及び国内以
外の地域にわたって行われるもののうち,その対価の額が国内の役務に対応す
るものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されていない
ものをいうと解するべきである(消費税法基本通達5-7-15後段参照)。
以下,上記の観点から本件各スポンサー契約において原告が提供する役務が
消費税法施行令6条2項7号に該当するか検討する。
2P2とのスポンサー契約について
(1)アP2とのスポンサー契約において原告が提供する役務が「国内及び国内
以外の地域にわたって行われる役務の提供」(消費税法施行令6条2項7
号)に当たるかを判断するためには,スポンサー契約において原告が負担
する役務の内容を明らかにする必要があるところ,前記前提事実,証拠(甲
1の1ないし3,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認
めることができる。
(ア)インディーは,アメリカを中心として開催されている自動車レース
であり,1年間に一定数のレースを開催し,レースごとの成績に応じて
付与されるポイントを通算し,ドライバーチャンピオン,チームチャン
ピオン等が決定されている。
平成15年中のインディーは,同年3月2日から同年10月12日ま
で,アメリカ国内において15レース,栃木県内において1レース(同
年4月13日開催)の合計16レースが開催され,平成16年中のイン
ディーは,同年2月29日から同年10月17日まで,アメリカ国内に
おいて15レース,栃木県内において1レース(同年4月17日開催)
の合計16レースが開催され,平成17年中のインディーは,同年3月
6日から同年10月16日まで,アメリカ国内において16レース,栃
木県内において1レース(同年4月30日開催)の合計17レースが開
催されており,原告はP7社と協力して結成したチームによりこれらに
参戦をしている。
(以上につき,甲9)
(イ)平成14年12月10日,原告は,P2との間で,P2との平成1
5年スポンサー契約を締結しているところ,その概要は,以下のとおり
である(甲1の1)。
a原告は,平成15年インディー全16戦(以下,当該契約について
は「本レース」という。平成15年3月2日から同年10月12日ま
で開催され,日本国内において開催される1レースを含む合計16戦)
において,十分な競争力を保って競技するため,原告が選定しP2が
承諾した米国インディアナ州P7社と本レースへの参戦について本件
オペレーション契約を締結し,相互に協力して本レースに参戦するチ
ームを運営する。(2条)
b原告は,本レースへの参戦につき,①原告が選定しP2が承認し
たドライバー(以下「ドライバー」という。)との間で,P2の指示
及び了解を得て下記cに定める業務を行わせるために必要な契約を締
結し,ドライバーの管理及びマネジメント業務を行う。(3条1項)
c原告は,本レースへの参戦につき,チームをして,①P2が指定
するレーシングスクール又はドライビングスクールの参加者に対して
運転技術の指導を行うこと,②P2が推進するオーバルコースを活
用したレース及びそのレース車両の開発に協力すること,③P2及
びP2の関係会社が国内外で開催する講演,デモンストレーション走
行,その他プロモーションイベントに協力すること,④P2が指定
する映画,テレビ番組及びラジオ番組へ出演すること,⑤P2が指
定する新聞,雑誌その他の出版物へのコメント及び声明を発表するこ
と,⑥P2及びP2の関係会社の広告宣伝及び販売促進活動に協力
すること,などを遵守させる(3条2項)。
dP2は,契約金として総額470万米ドル及びこれに係る消費税等
相当額を分割(平成14年12月27日から平成15年8月25日ま
で,22万米ドルから100万米ドルまでの不均等額による9回の分
割払。)して銀行振込の方法により原告に支払う。(4条)
e本レースにおいて決勝が行われたレースの回数が16回より増減し
た場合には,契約金の総額から1レース当たり9.8万米ドルを増額
又は減額する。原告又はP7社の責めに帰すべき事由によりドライバ
ーが本レースに出走できなかった場合には,契約金の総額から1レー
ス当たり9.8万米ドルを減額する。(5条1項,2項)
f原告は,本レースにおいて使用されるレーシングカー,ドライバー
スーツ,ヘルメットその他P2の指定する物のP2が指示する場所に
P2指定のステッカー又はワッペンを合計5か所以上貼付する。(6
条1項)
gP2は,ドライバー,チームスタッフ及びレーシングカーをP2又
はP2の指定する者が撮影した写真,映画,ビデオその他の著作物を
予めその使用方法を原告に通知し,承認を得た上でP2の販売促進及
び宣伝のために使用し又はP2若しくはP2の関係会社の製品を販売
する者に全世界において無償で使用させることができる。(7条1項)
h本契約の有効期間は,平成14年12月10日から平成15年12
月31日までとする。(13条本文)
(ウ)上記契約金470万米ドルは,原告とP2において,インディーへ
の参戦費用が,年間720万米ドル必要であるとの見積りがされ,この
金額から他のスポンサー企業からの契約金を差し引いた額をP2が負担
するという条件を提示し,P3が250万米ドルを負担することになっ
たことから,その残額(470万米ドル)として決められた。
(エ)平成15年12月25日,原告は,P2との間で,P2との平成1
6年スポンサー契約を締結した(甲1の2)。その内容は,P2との平
成15年スポンサー契約とほぼ同様であり,日本国内における開催レー
スを含む全16戦(平成16年2月29日から同年10月17日まで),
契約金470万米ドル(同年1月25日から同年9月25日まで,22
万米ドルから100万米ドルまでの不均等額による9回の分割払。)と
されていた。そして,P2との平成16年スポンサー契約の有効期間は,
同年1月1日から同年12月31日までとされていた(13条)。
(オ)平成16年12月22日,原告は,P2との間で,P2との平成1
7年スポンサー契約を締結した(甲1の3)。その内容は,レース数及
び契約金額を除き,P2との平成16年スポンサー契約とほぼ同様であ
り,日本国内における開催レースを含む全17戦(平成17年3月6日
から同年10月16日まで),契約金493万0500米ドル(同年1
月25日から同年9月25日まで,20万米ドルから113万0500
米ドルまでの不均等額による9回の分割払。)とされていた。そして,
P2との平成17年スポンサー契約の有効期間は,同年1月1日から同
年12月31日までとされていた(13条)。
イ以上の事実によれば,インディーは,開催レースごとに順位が付される
ものの,その一方で,1年間に行われた各レースの成績を通算し,ドライ
バーやチームの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチー
ムのスポンサーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績
に応じた宣伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,P2
とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,年間全16戦な
いし17戦行われる各レースへの参戦のみならず,P7社と本件オペレー
ション契約を締結してレースに参戦するチームを運営すること,ドライバ
ーの管理及びマネジメント業務やドライバー等の肖像権をP2が無償で使
用することの許諾等が明記され,これら義務が約1年間(各レースが行わ
れていないシーズン前後の各2か月(計4か月)も含まれている。)にわ
たって継続する内容とされており,出資者が期待を寄せる宣伝効果がより
高くかつレース参戦時以外においても持続するような義務内容とされてお
り,原告が負担する役務の内容も年16回ないし17回の個々のレースへ
の参戦に尽きるとはいい難いものとなっている(その意味において,P2
とのスポンサー契約3条において原告が負担する各種の役務について,格
別対価に関する定めが設けられていない点についても,契約当事者の合理
的意思としては,契約金において評価されており,別途対価を徴収しない
趣旨と理解できる(乙34参照)。)。
他方,P2とのスポンサー契約において原告が負担する役務の対価とし
てP2が支出する契約金は,平成15年分及び平成16年分には各470
万米ドル,平成17年分には493万0500米ドルとされているところ,
いずれも総額が記されるにとどまり,個々のレース参戦に応じた契約金・
支払とはされていない上,その支払方法はいずれの年度も不均等額による
9回払とされており,年間のレース数やスケジュールとの個別的な対応を
見いだすことはできない(なお,平成15年及び平成16年と平成17年
では,上記契約金額を開催レース数で割る方法により算出した1レース当
たりの金額も異なる上,個々のレース参加に要する費用もレースの開催場
所等にかかわらず同額とは解されない。)。そして,上記のとおりP2と
のスポンサー契約は,毎年,12月31日までの約1年間の有効期間(た
だし,平成15年分は平成14年12月10日から平成15年12月31
日まで)が設けられ,契約金もその期間を前提として定められている。加
えて,契約の更新についても,前年の6月から10月までの間にP2が申
し出ることによって翌年の1年間の契約の更新がされる内容とされてい
る。
加えて,原告とP2との間において,P2とのスポンサー契約が締結さ
れるまでには,インディーに参戦すること及び年間を通じて必要とされる
参戦費が決められ,後記P3が負担する額を控除した残額をP2が負担す
るものとされて契約金が決められたという経緯があり,各年における個々
のレース参戦における原告の役務内容やそれに対するP2の経済的評価等
の存在をうかがうことはできない。レースの回数が増減した場合に,契約
金の総額から1レース当たり9.8万米ドルを増額し又は減額する旨の約
定はあるが,そのことによって個々のレースごとに役務提供の対価が定め
られているということができないことは,後記6(1)において説示するとお
りである。
そうであるとすれば,P2とのスポンサー契約において原告が負担した
役務の提供は各年の個々のレース参戦に限定されていると評価することは
到底できず,上記のとおりドライバーの管理及びマネジメント業務やドラ
イバー等の肖像権のP2による無償使用等にわたるものと解するべきであ
り,各年における16戦ないし17戦のレース参戦と上記のその余の役務
提供に対し,一括して470万米ドル又は493万0500米ドルの契約
金が定められたものといえ,もとより,これら原告が受領する対価が,国
内を提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の
対価とに合理的に区別できるとも解されない。
したがって,原告がP2とのスポンサー契約において負担した上記役務
の提供は,その全体が各年の契約金を対価としているものと認められ,そ
の対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応す
るものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみる
としても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行わ
れるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと
国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはい
えない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提
供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。
(2)そうすると,原告とP2とのスポンサー契約において原告の役務の提供に
係る事務所等の所在地(消費税法施行令6条2項7号)が国内にあるか否か
により課税対象該当性の有無が判断される。そして,同号にいう「事務所等」
とは,役務の提供に直接関連する事業活動を行う施設をいうものと解され,
その所在地をもって,役務の提供場所に代わる課税対象となるか否かの管轄
の基準としている趣旨からすれば,当該役務の提供の管理・支配を行うこと
を前提とした事務所等がこれに当たると解されるというべきである。
しかるに,上記(1)のとおり,P2とのスポンサー契約において原告が負担
した役務の提供はレース参戦に尽きるものではなく,ドライバーの管理及び
マネジメント業務,ドライバー等の肖像権の無償使用等にわたるものである
ところ,原告は,前記前提事実(1)アのとおり,国内に本店事務所,カート事
務所及びP1工場を有する一方,レースについてはアメリカのP7社とのレ
ースオペレーション契約(乙25)に基づいて専ら同社により行われている
ことから,原告の上記役務の提供に係る事務所等に当たるのは原告の本店事
務所であると認められる(なお,原告はアメリカのインディアナポリスに所
在するP7社の工場内に原告の役務の提供に係る事務所が存在する旨主張す
るが,当該主張を採用することができないことは後記6(4)に説示する。)。
したがって,原告がP2とのスポンサー契約よって行った役務の提供に係る
事務所等の所在地は日本国内であると認められる。
(3)小括
よって,原告とP2との間に締結されたスポンサー契約において原告が負
担する役務の提供であるインディー参戦等は,国内及び国内以外の地域にわ
たって行われる役務の提供に当たり,その役務の提供を行う者の役務の提供
に係る事務所等は,いずれも日本国内に存在すると認められるから,上記役
務の提供は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に当たり,消費税の
課税対象となる。
3P3とのスポンサー契約について
(1)ア前記前提事実,証拠(甲2の1,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,
前記2(1)ア(ア)の事実の外,原告とP3とのスポンサー契約に関して,以
下の事実を認めることができる。
(ア)平成15年2月1日,原告は,P3との間で,P3とのスポンサー
契約を締結しているところ,その概要は,以下のとおりである(甲2)。
a原告は,平成15年から平成17年のインディーに「P8」(以下,
本契約において「チーム」という。)として参戦し,チームとしてレ
ーシングカー1台とレーシングドライバー1人でインディーのレース
の全戦に参戦するほか,以下の義務を負う。(1条,2条1項)
(a)平成15年のインディーのレースは16戦(平成15年3月2
日から同年10月12日まで開催され,日本国内において開催され
る1レースを含む合計16戦)とする。(2条2項)
(b)原告はチームが使用するレーシングカー並びにレーシングスー
ツ及びヘルメットに,P3指定のロゴマークを所定の場所に貼付す
る。(2条4項,5項)
(c)原告は,インディーにおける又はそれを利用したP3の販売促
進活動に,インディーのレースに支障を来さない範囲においてでき
る限り協力する。(以下略)(13項)
(d)原告は,上記(c)に伴い,P3が日本国内において,原告が展
示用として保持しているレーシングカーを必要とする場合には,こ
れを無償で貸し出すものとする。(以下略)(14項)
(e)上記(c)に伴い,P3がチーム責任者であるP9若しくはレー
シングドライバー又はチーム員の参加を求めた場合には,原告はイ
ンディーのレース活動に支障を来さない範囲において,それに協力
しなければならない。(以下略)(15項)
(f)原告はインディーのチームのレース活動の写真をP3の広報用
としての用途に限り無償で提供する。(以下略)(17項)
(g)原告はチームのレーシングドライバー,チーム員(P9を含む),
レーシングカーの肖像権を無償にて提供する。(以下略)(18項)
bP3は,上記aの原告の義務の対価として,毎年250万米ドル(消
費税別)を支払う。(3条)
なお,平成15年は,平成15年2月28日に31万2500米ド
ル,同年4月30日に218万7500米ドルを,平成16年は,平
成16年2月27日に31万2500米ドル,同年4月30日に21
8万7500米ドルを,平成17年は,同年2月28日に31万25
00米ドル,同年4月28日に218万7500米ドルを,それぞれ
支払う。
cインディーのレース数が16戦を上回るか下回る場合には,1戦当
たり5万2000米ドル(消費税別途)を前条規定の対価から増減す
るものとする。原告の過失に基づく事由によりチームが,インディー
のレースに参戦できなかった場合には,P3はペナルティとして15
万6000米ドル(消費税別途)を請求することができる。(以下略)
(4条,10条)
d本契約の有効期間は平成15年2月1日から平成17年12月31
日までとする。(以下略)(5条)
(イ)なお,上記契約金250万米ドルは,インディーへの参戦費用が,
年間720万米ドル必要であるとの見積りがされ,この金額から他のス
ポンサー企業からの契約金を差し引いた額をP2が負担するという条件
を提示されたことを受け,まず,P3が250万米ドルを負担すること
とし,その残額である470万米ドルがP2の契約金とされた。
イ前記2イのとおり,インディーは,開催レースごとに順位が付されるも
のの,その一方で,1年間の各レースの成績を通算し,ドライバーやチー
ムの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチームのスポン
サーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣
伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,上記事実によれ
ば,P3とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,P7社
と共にチームとしてインディー全戦に参戦すること,その使用するレーシ
ングカー等にロゴマーク等を貼付すること,展示用レーシングカーの無償
貸出し,ドライバー等の肖像権のP3による無償使用の許諾等が明記され,
これらの義務が約3年間(各レースが行われていないシーズンも含む。)
にわたって継続する内容とされており,出資者が期待を寄せる宣伝効果が
より高くかつレース参戦時以外においても持続するような義務内容とされ
ていることに加え,本契約締結時においては,平成15年中の個々のレー
スの開催場所は既に決まっていたものの,平成16年以降のレースの開催
場所・開催数は明確になっていなかったことを考慮すると,契約当事者と
しても個々のレースへの参戦のみに着目して契約を締結したとみることは
できず,P3とのスポンサー契約において原告が負担する役務の内容も年
16回ないし17回の個々のレースへの参戦に尽きるとは到底認められな
いものとなっている(その意味において,P3とのスポンサー契約2条1
4項,17項及び18項における「無償」との記載についても,契約当事
者の合理的意思としては,契約金において評価されており,別途対価を徴
収しない趣旨と理解できる(乙34参照)。)。
他方,P3とのスポンサー契約において原告が負担する債務の対価とし
てP3が支出する契約金は,平成15年から平成17年にかけて毎年25
0万米ドルとされているところ,いずれも1年分の総額が記されるにとど
まり,個々のレース参戦に応じた契約金・支払とはされていない上,その
支払方法は年度も2月及び4月の不均等額による2回払とされており,年
間のレース数やスケジュールとの個別的な対応を見いだすことはできな
い。そして,上記のとおりP3とのスポンサー契約は約3年間の有効期間
が設けられており,契約金もその期間を前提として定められている。さら
に,上記のとおりP3とのスポンサー契約締結時点において,平成16年
以降のレースの開催場所等が明確にされていなかった(現に,平成17年
には17レースとされている。)にもかかわらず,高額な対価の支払が約
されていることに照らせば,契約当事者において,各シーズンにおける個々
のレースへの参戦というよりは,シーズンを通じてのレース参戦・宣伝効
果を念頭におき,それを前提として契約を締結したものと解される。
加えて,原告とP3との間において,P3とのスポンサー契約が締結さ
れるまでには,ひとまず原告とP2との間においてインディーに参戦する
こと及び年間を通じて必要とされる参戦費を決めた上で,P3が負担する
額を控除した残額をP2が負担するものとして各契約金が決められたとい
う経緯があり,各年における個々のレース参戦における原告の役務内容や
それに対するP3の経済的評価等の存在をうかがうことはできない。レー
スの回数が増減した場合に,契約金の総額から1レース当たり5万200
0米ドルを増額し又は減額する旨の約定はあるが,そのことによって個々
のレースごとに役務提供の対価が定められているということができないこ
とは,後記6(1)において説示するとおりである。
そうであるとすれば,P3とのスポンサー契約において原告が負担した
役務の提供は各年における個々のレース参戦に限定されていると評価する
ことは到底できず,上記のとおりドライバー等の肖像権のP3による無償
使用等にわたるものと解すべきであり,各年における16戦ないし17戦
のレース参戦と上記役務提供に対し,一括して250万米ドルの契約金が
定められたものといえ,もとより,これら原告が受領する対価が,国内を
提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価
とに合理的に区別できるとも解されない。
したがって,P3とのスポンサー契約において原告が負担する上記役務
の提供は,その全体が各年の契約金を対価としているものと認められ,そ
の対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応す
るものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみる
としても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行わ
れるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと
国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはい
えない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提
供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。
(2)そうすると,P3とのスポンサー契約により原告が提供する役務に係る事
務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断され
るところ,前記2(2)のとおり,原告は,本店事務所,カート事務所及びP1
工場を有するも,それらの他に上記(1)において認定した役務の提供の管理・
支配を行うことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告がP3と
のスポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は日本
国内であると認められる。
(3)小括
よって,P3との間に締結されたスポンサー契約において原告が負担する
役務の提供は,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当
たり,その役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は日本国内に存
在すると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った
資産の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。
4P4とのスポンサー契約について
(1)ア前記前提事実,証拠(甲3,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,前
記2(1)ア(ア)の事実の外,原告とP4とのスポンサー契約に関して,以下
の事実を認めることができる。
平成15年1月21日,原告は,P4との間で,P4とのスポンサー契
約を締結しているところ,その概要は,以下のとおりである(甲3)。
(ア)原告は,以下の体制をもって,インディーに参戦する。(1条)
(イ)P4は,上記(ア)のレース活動に対するスポンサーとなり,1年当
たり3000万円(消費税額含)を毎年2月末日までに半額,9月末日
までに残額(半額)を銀行振込の方法により支払う。(2条)
(ウ)原告は,P4の広告宣伝・販促への協力として,レース車両・レー
シングスーツ等へのP4指定ロゴマークの貼付等を実施し,これらにつ
いて特別の定めがある場合を除いて特別の対価は不要とする。(3条)
(エ)P4は,レースドライバーその他のチームスタッフ,及びレース車
両・展示用模擬車両を用いて制作した広告宣伝・販促物を,国内・海外
を問わず無償で,P4及びP4のグループ会社(販売店等を含む。)の
広告宣伝・販促活動に自由に使用することができるものとし,原告は,
これに支障のないよう,関係者から肖像等の利用について許諾を得てお
くものとする。(4条)
(オ)本契約の有効期間は平成15年1月1日から平成17年12月31
日までの3年間とする。(5条)
(カ)原告が正当な理由なしにインディー全戦に参戦しないときなど,P
4は催告その他何らの手続なしに直ちに本契約を解約することができ
る。(以下略)(6条)
イ前記2イのとおり,インディーは,開催レースごとに順位が付されるも
のの,その一方で,1年間の各レースの成績を通算し,ドライバーやチー
ムの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチームのスポン
サーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣
伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,上記事実によれ
ば,P4とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,チーム
としてインディー全戦に参戦すること,その使用するレーシングカー等に
ロゴマーク等を貼付すること,展示用のレーシングカーの無償貸出し,ド
ライバー等の肖像権のP4による無償使用の許諾等が明記され,これら義
務が3年間(各レースが開催されていない期間を含む。)にわたって継続
する内容とされており,出資者が期待を寄せる宣伝効果がより高くかつ継
続する内容とされていることに加え,本契約締結時においては,平成15
年中の個々のレースの開催場所は既に決まっていたものの,平成16年以
降のレースの開催場所・開催数は明確になっていなかったことを考慮する
と,契約当事者としても個々のレースへの参戦のみに着目して契約を締結
したとみることはできず,P4とのスポンサー契約において原告が負担す
る役務の内容も年16回ないし17回の個々のレースへの参戦に尽きると
は到底認められないものとなっている。(その意味において,P4とのス
ポンサー契約4条における「無償」との記載についても,契約当事者の合
理的意思としては,契約金において評価されており,別途対価を徴収しな
い趣旨と理解できる(乙34参照)。)
他方,P4とのスポンサー契約において原告が負担する債務の対価とし
てP4が支出する契約金は,平成15年から平成17年にかけて毎年30
00万円とされているところ,いずれも1年の総額が記されるにとどまり,
個々のレース参戦に応じた契約金・支払とはされていない上,その支払方
法はいずれの年も2月末日及び9月末日の2回払とされており,上記レー
ス数やスケジュールとの個別的な対応を見いだすことはできない。そして,
上記のとおりP4とのスポンサー契約は約3年間の有効期間が設けられて
おり,契約金もその期間を前提として定められている。さらに,P4との
スポンサー契約締結時点において,平成16年以降のレースの開催場所等
が明確にされていなかった(現に,平成17年は17レースとされている。)
にもかかわらず,高額な対価の支払が約されていることに照らせば,契約
当事者において,各シーズンにおける個々のレースへの参戦というよりは,
シーズンを通じてのレース参戦・宣伝効果を念頭におき,それを前提とし
ていたものと解される。
加えて,P4とのスポンサー契約は,3シーズン・3年度分の契約が一
括して行われているところ,P4とのスポンサー契約は,P4において,
原告が正当な理由なしにシリーズレースの全戦に参戦しないときに解約す
ることが認められているのであって,各シーズンにおける個々のレース参
戦の積算という契約構造とみることはできない。
そうであるとすれば,P4とのスポンサー契約において原告が負担した
役務の提供は各年における個々のレース参戦に限定されていると評価する
ことは到底できず,その負担する役務の提供は年間を通じてされるもので
あって,これに対する契約金についても1年分を一括して3000万円と
定められたものといえ,もとより,原告が受領する上記対価が,国内を提
供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価と
に合理的に区別できるとも解されない。
したがって,P4とのスポンサー契約において原告が負担する上記役務
の提供は,その全体が各年の契約金を対価としているものと認められ,そ
の対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応す
るものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみる
としても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行わ
れるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと
国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはい
えない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提
供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。
(2)そうすると,P4とのスポンサー契約において原告が提供する役務に係る
事務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断さ
れるところ,前記2(2)のとおり,原告は,本店事務所,カート事務所及びP
1工場を有するも,それらの他に上記(1)において認定した役務の提供の管
理・支配を行うことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告がP
4とのスポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は
日本国内であると認められる。
(3)小括
よって,P4とのスポンサー契約において原告が負担する役務の提供は,
国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当たり,その役務
の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は,いずれも日本国内に存在す
ると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産
の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。
5P5とのスポンサー契約について
(1)ア前記前提事実,証拠(甲4,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,前
記2(1)ア(ア)の事実の外,原告とP5とのスポンサー契約に関して,以下
の事実を認めることができる。
平成15年3月20日,原告は,P5(P5の代理人P6)との間で,
P5とのスポンサー契約を締結しているところ,その概要は,以下のとお
りである(甲4)。
(ア)原告は平成15年のインディーにチームとして参戦し,以下の義務
を負う。(1条,2条)
a原告はチームとしてレーシングカー1台とレーシングドライバー1
人でインディーのレースの全戦に参戦する。(1項)
b平成15年のインディーのレースは15戦(既に開催されている1
レースを除く,平成15年3月23日から同年10月12日まで開催
され,本邦国内において開催される1レースを含む合計15戦)とす
る。(2項)
c原告はチームが使用するレーシングカー並びにレーシングスーツ及
びヘルメットに,P5指定のロゴマークを所定の場所に貼付する。(4
項)
d原告は,インディーにおける若しくはそれを利用したP5の広告宣
伝活動及び販売促進活動に,インディーのレースに支障を来さない範
囲において最大限協力する。(以下略)(7項)
e原告は上記(d)に伴い,P5が日本国内において,原告が展示用と
して保持しているレーシングカーを必要とする場合には,これを無償
で貸し出すものとする。(以下略)(8項)
f上記dに伴い,P5若しくはP6がレーシングドライバー又はチー
ム員の参加を求めた場合には,原告はインディーのレース活動に支障
を来さない範囲において,それに協力しなければならない。(以下略)
(9項)
g原告はインディーのチームのレース活動の写真をP5の広報用(中
略)としての用途に限り無償で提供する。(以下略)(11項)
h原告はチームのレーシングドライバー,チーム員,レーシングカー
の肖像権を無償にて提供する。(以下略)(12項)
(イ)上記原告の義務の対価として,P5は5000万円(P6の本契約
の業務管理費1000万円を含む。消費税別途)を平成15年5月30
日までに支払う。(3条)
(ウ)上記(イ)は平成15年のインディーのレース数を15戦として規定
したものであり,主宰者の事情によりインディーのレース数が第1戦マ
イアミを除くシリーズ15戦を下回る場合には,P5,P6及び原告は
上記(イ)の対価の扱いに関して別途協議の上処理するものとする。(4
条)
(エ)本契約の有効期間は平成15年3月1日から同年12月31日まで
とする。また本契約の更新に関しては同年8月末日までに,原告はP6
を通じP5に対して書面による更新提案を行い同年10月末日までにP
5,P6及び原告による協議の上書面により確認決定する。(5条)
(オ)原告の過失に基づく事由によりチームが,インディーのレースに参
戦できなかった場合には,P5はペナルティとして1レースにつき27
0万円(消費税別途)の返還を請求することができる。(以下略)(1
0条)
イ前記2イのとおり,インディーは,開催レースごとに順位が付されるも
のの,その一方で,1年間の各レースの成績を通算し,ドライバーやチー
ムの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチームのスポン
サーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣
伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,上記事実によれ
ば,P5とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,チーム
としてインディー全戦に参戦すること,その使用するレーシングカー等に
ロゴマーク等を貼付すること,展示用のレーシングカーの無償貸出し,ド
ライバー等の肖像権のP5による無償使用の許諾等が明記され,これら義
務がレース終了後の平成15年末まで継続する内容とされており,出資者
が期待を寄せる宣伝効果がより高くかつ継続する内容とされている(更新
をする場合には,前年の8月末日までに原告から書面による更新提案をし,
10月末日までに確認決定するとされ,レースごとに更新する旨の記載は
ない。)といえ,P5とのスポンサー契約において原告が負担する役務の
内容は年16回(15回)の個々のレースへの参戦に尽きるとはいい難い
ものとなっている。
他方,P5とのスポンサー契約において原告が負担する債務の対価とし
てP5が支出する契約金は,平成15年分として5000万円(P6の本
契約の業務管理費1000万円(消費税別途)を含む。)とされていると
ころ,総額が記されるにとどまり,個々のレース参戦に応じた契約金・支
払とはされていない。そして,上記のとおりP5とのスポンサー契約は8
か月間の有効期間が設けられていることに照らせば,契約金もその期間を
前提として決められていると解され,契約当事者において,個々のレース
への参戦というよりは,シーズンを通じてのレース参戦・宣伝効果を念頭
におき,それを前提としていたものと解される。
そして,P5とのスポンサー契約は1シーズン(ただし,1回目のレー
スを除いた15レース分)・8か月の有効期間を有する契約であるところ,
原告の過失に基づく事由により,チームがインディーの個々のレースに参
戦できなかった場合には,P5はペナルティとして各1レースにつき27
0万円(消費税別途)の返還を請求することができるとされてはいるもの
の,レース数の増減については,これが直ちに契約金額に反映するもので
はなく,契約関係者の協議で定めるものとされているのであって,P5と
のスポンサー契約は,個々のレースへの参戦の積算という契約構造とはな
っていない。
そうであるとすれば,P5とのスポンサー契約において原告が負担した
役務の提供は個々のレース参戦に限定されていると評価することはできな
いし,その負担する役務の提供は契約期間を通じてされるものであって,
これに対する契約金も契約期間を一括して5000万円と定められたもの
といえ,もとより,原告が受領する上記対価が,国内を提供場所とする役
務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価とに合理的に区別
できるとも解されない。
したがって,P5とのスポンサー契約において原告が負担する上記役務
の提供は,その全体が契約金全額を対価としているものと認められ,その
対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応する
ものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみると
しても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行われ
るものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと国
内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはいえ
ない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」
(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。
(2)そうすると,P5とのスポンサー契約において原告の提供する役務に係る
事務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断さ
れることとなるが,原告は,前記2(2)のとおり,本店事務所,カート事務所
及びP1工場を有するも,それらの他に上記(1)において認定した役務の提供
の管理・支配を行うことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告
がP5とのスポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在
地は日本国内であると認められる。
(3)小括
よって,P5とのスポンサー契約において原告が負担する役務の提供は,
国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当たり,その役務
の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は,いずれも日本国内に存在す
ると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産
の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。
6原告の主張について
(1)以上に対し,原告は,前記第2の4のとおり,①本件各スポンサー契約
の条項によれば,個々のレース参戦はそれぞれ独立した役務であり,その対
価も個々のレースごとに合理的に区別されることは明らかである,②本件
各スポンサー契約において規定されているレース参戦以外の原告の義務は原
告のレース参戦義務の付随義務であるから対価を観念することができない,
③原告は,アメリカ国内インディアナポリスに所在するP7社の工場内に
事務所を有している旨主張するので,これらの点について検討する。
(2)①について
確かに,本件各スポンサー契約においては,レース数の増減等の場合に対
応するため,増減したレース数に応じて契約金を増減する条項や欠場したレ
ース数に対応する返還額を定める条項が存在する。
しかし,本件各スポンサー契約においては,個々のレースの開催場所に応
じてレース参戦に要する費用が均一であることをうかがわせる事情が存在し
ないにもかかわらず(原告において,実際の費用を把握し得ない事情もうか
がわれない。),年間の契約金の総額のみが定められ,個々のレースにおけ
る価格(費用)についての定めは存在しない上,例えば,P2とのスポンサ
ー契約においては,開催レース数の増減及び原告(及びP7社)の責めに帰
すべき事由によりドライバーが出走できなかった場合についての条項が存す
るが,増減額はレースの開催場所等を問わず一律に1レース9.8万米ドル
と定められている(しかも,その額は年間契約金額を予定レース数で除した
額とも異なる。)。(なお,これに対して,乙23においては,P4が指定
するタイヤを装着した競技用車両を用いてのレース出場に関する契約書であ
るところ,所定の競技車両及びドライバーを用いて平成16年1月1日から
同年12月31日までの間に開催される所定のレースに参戦し,勝利を収め
るよう努力することなどの原告の役務(義務)に対し,P4が支払う対価と
して,広告・宣伝協力費とタイヤ使用料が区別して計上され,タイヤ使用料
は第1戦分から第7戦分まで区別され,それぞれ支払期が定められている。)
したがって,本件各スポンサー契約においては,個々のレースごとに役務
提供の対価が合理的に区別されているとはいえず,原告の主張①を採用する
ことはできない。
(3)②について
確かに,本件各スポンサー契約の中には,レース参戦以外の原告の義務を
明記した上で原告がその対価を請求することができない旨を明記したものも
存在する(肖像権等の無償使用等)。
しかし,原告が付随的義務として主張する内容は,本件各スポンサー契約
において内容に幅があり,ドライバーの管理及びマネジメント業務,レーシ
ングカーへのロゴの貼付等から,レーシングドライバー等の肖像権に関する
事項まで多岐に及ぶ(甲1の1ないし甲4)ところ,これらの義務の内容を
みるに,いずれも経済的評価が可能であり,本件各スポンサー契約の相手方
当事者であるP2等において上記経済的評価をおよそ考慮していなかったと
いう事情をうかがうことはできない(乙34及び乙35各参照)上,前記の
とおり本件各スポンサー契約において,原告は,個々のレースが終了した後
もその有効期間内においてレース参戦以外の義務を引き続き負担しており,
前記2(1)イ,同3(1)イ,同4(1)イ及び同5(1)イのとおり契約金の算定に
当たりこれらの義務が考慮されていると解される(本件各スポンサー契約に
おける対価を請求することができない旨を定めた各条項も,契約金において
考慮済みであるから,これに重複する形で別途対価を請求することができな
いことを明記したものと解される。)。したがって,(仮に対価を請求する
ことができない旨明記された義務については,契約金(対価)に対応する役
務の提供を観念することができないと解するとした場合を含め,)本件各ス
ポンサー契約におけるレース参戦以外の義務のすべてをして単なる付随義務
にすぎずその対価を考慮することができないとする原告の主張は失当といわ
ざるを得ない(もっとも,本件各スポンサー契約に基づいて原告が負担する
役務の提供のうちレース参戦に関するものだけに着目したとしても,個々の
レースについての役務の提供ごとの対価が合理的に区別されていないことは
前記2(1)イ,同3(1)イ,同4(1)イ及び同5(1)イにそれぞれ説示したとお
りである。)。
したがって,原告の主張②を採用することはできない。
(4)③について
確かに,レース参戦までに実際に行われるレーシングカーに関する作業等
としては,インディー参戦用の車両(シャーシー)及び必要な部品を調達し,
P7社が有しているアメリカのインディアナポリスの工場において,レース
参戦用車両の調整及びテストを行い,さらに各レースが行われる場所に搬送
して再調整等を行った上でレースに参戦しており,また,原告の上記③の主
張に沿う内容の陳述書(甲8。P7社の工場内に原告の事務所を構え,担当
職員がレース期間中以外は常駐していたなどとするもの。)も存在する。
しかし,消費税法施行令6条2項7号にいう「事務所等」とは,前記2(2)
のとおり当該役務の役務の管理・支配を行うことを前提とするものであるこ
とを要するところ,本件各スポンサー契約において原告が負担する役務の提
供は,前記2(1)イ,同3(1)イ,同4(1)イ及び同5(1)イにそれぞれ説示し
たとおりレース参戦にとどまるものではないことに加え,本件各スポンサー
契約においても,契約金の額と併せてこれに係る消費税等についての定めが
設けられ(前記2(1)ア(イ)d等,同3(1)ア(ア)b,同4(1)ア(イ)及び同5
(1)ア(イ)各参照),レース参戦の個々の役務の提供が行われる場所が必ずし
も日本国内に存在しないにもかかわらず,本件各スポンサー契約に基づく役
務の提供が消費税の課税対象となることを前提とする内容とされていること
に照らせば,本件各スポンサー契約を締結した原告においても,その役務の
提供に係る事務所等の所在地が日本国内に存するとの理解をしていたものと
うかがわれる。さらに,P7社の工場に設けられていた原告の事務所は平成
15年には存在せず,同年中はレースごとに担当職員が渡米して業務を行っ
ていたと述べていること(甲8)に加え,レース期間中には職員が常駐せず,
レース参戦の実質が後記のとおりP7社に委託されていたことを考慮すれ
ば,本件各スポンサー契約に基づいて行う原告の役務の提供を管理・支配し
ていたのは日本国内における本店事務所等というべきであって,少なくとも
インディアナポリスに所在するP7社の工場において上記役務の提供を管
理・支配していたとみることはできないから,P7社の工場内の事務所をし
て原告の役務の提供に係る「事務所等」に該当すると解することはできない。
仮にレース参戦についてのみに着目したとしても,P7社の工場は,原告
とP7社との間の本件オペレーション契約(乙25)によってP7社が原告
から委託を受けた業務(インディーに出走するための2台のレーシングカー
を取得し,整備及び改良を行う(3項A))を行う場であり,P7社におい
て,レーシングカーを整備,維持及び出場させるための費用及び経費を全額
支払わなければならず,チームのメンバーは,原告との協議に基づき,P7
の従業員,契約社員及びその他の関係者の中から選定されること(乙25)
に照らせば,上記工場はP7社が本件オペレーション契約に基づいて委託さ
れた業務を行う施設にすぎないというべきである。加えて,原告の職員が上
記工場内に設けられた事務所において行っていた業務内容は,原告の広報,
日本と米国との連絡,ドライバーのスケジュール管理等の現地事務であり(甲
8),広報や連絡等に関する現地事務等が中心であって,当該職員において
も平成15年はレースごとに渡米して業務を行っていたと述べていることに
照らしても,レースの参戦という役務に実質的にかかわるものということは
できない(むしろ,レース参戦の管理事務等が日本国内において行われてい
たからこそ現地(P7社の工場等)との連絡担当職員が必要であったことの
証左ともうかがわれる。)。そうであるとすれば,P7社の工場が本件各ス
ポンサー契約に基づいて原告が行うレース参戦という役務の提供を管理・支
配する「事務所等」に当たるということはできない。
したがって,原告の主張③を採用することはできない。
7以上より,本件各スポンサー契約に基づいて原告が提供した役務は,課税対
象該当性が認められるから,以下これを前提として原告の本件各課税期間につ
いて検討する。
(1)平成15年12月課税期間分
原告の平成15年12月課税期間についてみると,被告が本訴において主
張する別紙1「課税の根拠及び計算」の第1の1(1)記載の本件更正処分の根
拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて計算した原告の納付す
べき税額は,同別紙の第1の2記載のとおりであると認められ,別表Ⅰ1の
「平成15年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載の平成15年1
2月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定及び国税不服審判所長の裁
決により一部取り消された後のもの)における原告の納付すべき税額と一致
するから,平成15年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定及
び国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)は適法という
べきである。
そして,平成15年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定及
び国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)が適法である
場合に賦課すべき過少申告加算税の額は,別紙1「課税の根拠及び計算」の
第2記載のとおりであるところ,原告は,消費税等税について,別表Ⅰ1「平
成15年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載のとおり,納付すべ
き税額を過少に申告していたものであり,かつ,過少に申告していたことに
ついて国税通則法(以下「通則法」という。)65条4項に規定する正当な
理由の存在をうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はないことから,同課
税期間分の過少申告加算税としてこれと同額の税額を課した平成15年12
月課税期間賦課決定処分も適法というべきである。
(2)平成16年12月期分
原告の平成16年12月課税期間についてみると,被告が本訴において主
張する別紙1「課税の根拠及び計算」の第1の1(2)記載の本件更正処分の根
拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて計算した原告の納付す
べき税額は,同別紙の第1の2記載のとおりであると認められ,別表Ⅰ2の
「平成16年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載の平成16年1
2月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後
のもの)における原告の納付すべき税額と一致するから,平成16年12月
課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のも
の)は適法というべきである。
そして,平成16年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定に
より一部取り消された後のもの)が適法である場合に賦課すべき過少申告加
算税の額は,別紙1「課税の根拠及び計算」の第2記載のとおりであるとこ
ろ,原告は,消費税等税について,別表Ⅰ2「平成16年12月課税期間の
消費税等に関する経緯」記載のとおり,納付すべき税額を過少に申告してい
たものであり,かつ,過少に申告していたことについて通則法65条4項に
規定する正当な理由の存在をうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない
ことから,同課税期間分の過少申告加算税としてこれと同額の税額を課した
平成16年12月課税期間賦課決定処分も適法というべきである。
(3)平成17年12月期分
原告の平成17年12月課税期間についてみると,被告が本訴において主
張する別紙1「課税の根拠及び計算」の第1の1(3)記載の本件更正処分の根
拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて計算した原告の納付す
べき税額は,同別紙の第1の2記載のとおりであると認められ,別表Ⅰ3の
「平成17年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載の平成17年1
2月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後
のもの)における原告の納付すべき税額と一致するから,平成17年12月
課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のも
の)は適法というべきである。
そして,平成17年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定に
より一部取り消された後のもの)が適法である場合に賦課すべき過少申告加
算税の額は,別紙1「課税の根拠及び計算」の第2記載のとおりであるとこ
ろ,原告は,消費税等税について,別表Ⅰ3「平成17年12月課税期間の
消費税等に関する経緯」記載のとおり,納付すべき税額を過少に申告してい
たものであり,かつ,過少に申告していたことについて通則法65条4項に
規定する正当な理由の存在をうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない
ことから,同課税期間分の過少申告加算税としてこれと同額の税額を課した
平成17年12月課税期間賦課決定処分も適法というべきである。
8よって,原告の請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,
訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官川神裕
裁判官林史高
裁判官新宮智之
(別紙1)
課税の根拠及び計算
第1本件各更正処分
1本件各更正処分の根拠
被告が本訴において主張する原告の本件各課税期の消費税等に係る課税標準
額及び納付すべき税額は,以下のとおりである。
(1)平成15年12月課税期間
平成15年12月課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税
額は,以下のとおりである。
ア課税標準額(別表Ⅱ1①欄)14億7028万1000円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額(国税通則
法(以下「通則法」という。)118条1項の規定に基づき千円未満の端
数金額を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。
(ア)確定申告における課税標準額17億6457万5393円
上記金額は,原告が平成16年3月1日に麻布税務署長に提出した平
成15年12月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「平成15年1
2月課税期間消費税等確定申告書」という。乙1。)に記載された課税
標準額(千円未満の端数金額を切り捨てる前のもの。)である。
(イ)課税標準額から減額すべき金額2億9429万4031円
上記金額は,前記(ア)の確定申告における課税標準額に含まれていた
次のaないしcの合計金額であり,課税標準額から減額すべき金額であ
る。
a平成15年12月課税期間更正処分で課税標準額から減額された金
額2609万7467円
上記金額は,原告がP7社から受け取ったインディーに係る賞金の
額2740万2341円から当該金額の105分の5に相当する金額
を控除した金額であり(消費税法28条1項本文括弧書き参照。以下同
じ。),当該賞金に係る役務の提供が行われた場所が国外であること
から,消費税等の課税対象外である。
b異議決定で課税標準額から減額された金額549万0948円
上記金額は,株式会社P10に対する業務に係る役務の提供の対価
の額576万5496円から当該金額の105分の5に相当する金額
を控除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた場所が
国外であることから,消費税等の課税対象外である(甲6,異議決定
書別紙「異議決定の理由」3(1)ホ・別紙の3枚目参照)。
c裁決で課税標準額から減額された金額2億6270万5616円
上記金額は,株式会社P11に対する業務に係る役務の提供の対価
の額2億7584万0897円から当該金額の105分の5に相当す
る金額を控除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた
場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である(甲5,裁
決書3(3)ロ及びハ・25及び26ページ参照)。
イ課税標準額に対する消費税額(別表Ⅱ1②欄)5881万1240円
上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に税率100
分の4を乗じて算出した金額である。
ウ控除対象仕入税額(別表Ⅱ1③欄)2361万7128円
上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額であり,次の
(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額6億1994万9616円(課
税仕入に係る支払対価の額)に105分の4を乗じて算出した金額である。
(ア)平成15年12月課税期間消費税等確定申告書に記載された課税仕
入に係る支払対価の額17億0425万9169円
上記金額は,平成15年12月課税期間消費税等確定申告書(乙1)の
付表2の「課税仕入に係る支払対価の額(税込み)欄」に記載された金
額である。
(イ)課税仕入に係る支払対価の額の過大額10億8430万9553円
上記金額は,上記(ア)の金額のうち次のa及びbの国外の企業に対す
る外注費の額の合計金額であり,課税仕入に係る支払対価の額に該当し
ない金額である。
aP7社に対する外注費の額7億7068万1256円
上記金額は,P7社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る
役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外であ
る。
bP12社(P12GmbH)に対する外注費の額
3億1362万8297円
上記金額は,P12社に対する外注費の額であり,当該外注費に係
る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外で
ある。
エ差引税額(別表Ⅱ1④欄)3519万4100円
上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した金額(通則法1
19条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以
下同じ。)である。
オ地方消費税の課税標準額(別表Ⅱ1⑤欄)3519万4100円
上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び7
2条の82の規定に基づくものである。
カ譲渡割額(別表Ⅱ1⑥欄)879万8500円
上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記オの金額に税
率100分の25を乗じて算出した金額(ただし,地方税法20条の4の
2第3項により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)
である。
(2)平成16年12月課税期間
平成16年12月課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税
額は,以下のとおりである。
ア課税標準額(別表Ⅱ2①欄)15億6372万7000円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額である。
(ア)確定申告における課税標準額16億1422万2495円
上記金額は,原告が平成17年2月28日に麻布税務署長に提出した
平成16年12月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「平成16年
12月課税期間消費税等確定申告書」という。乙2。)に記載された課
税標準額(千円未満の端数金額を切り捨てる前の金額のもの。)である。
(イ)課税標準額から減額すべき金額5049万4848円
上記金額は,前記(ア)の確定申告における課税標準額に含まれていた
次のa及びbの合計金額であり,課税標準額から減額すべき金額である。
a平成16年12月課税期間更正処分で課税標準額から減額された金
額4673万2299円
上記金額は,原告がP7社から受け取ったインディーに係る賞金の
額4906万8914円から当該金額の105分の5に相当する金額
を控除した金額であり,当該賞金に係る役務の提供が行われた場所が
国外であることから,消費税等の課税対象外である。
b異議決定で課税標準額から減額された金額376万2549円
上記金額は,課税標準額に含まれていた株式会社P10に対する業
務に係る役務の提供の対価の額395万0677円から当該金額の1
05分の5に相当する金額を控除した金額であり,当該業務に係る役
務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象
外である(甲6・異議決定書別紙「異議決定の理由」3(1)ホ・別紙の
3枚目参照)。
イ課税標準額に対する消費税額(別表Ⅱ2②欄)6254万9080円
上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に税率100
分の4を乗じて算出した金額である。
ウ控除対象仕入税額(別表Ⅱ2③欄)2819万7416円
上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額であり,次の
(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額7億4018万2185円(課
税仕入に係る支払対価の額)に105分の4を乗じて算出した金額である。
(ア)平成16年12月課税期間消費税等確定申告書に記載された課税仕
入に係る支払対価の額15億4737万1901円
上記金額は,平成16年12月課税期間消費税等確定申告書(乙2)の
付表2の「課税仕入に係る支払対価の額(税込み)欄」に記載された金
額と同額である。
(イ)課税仕入に係る支払対価の額の過大額8億0718万9716円
上記金額は,上記(ア)の金額のうちP7社に対する外注費の額であり,
当該外注費に係る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の
課税対象外である。
エ差引税額(別表Ⅱ2④欄)3435万1600円
上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した金額である。
オ地方消費税の課税標準額(別表Ⅱ2⑤欄)3435万1600円
上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び7
2条の82の規定に基づくものである。
カ譲渡割額(別表Ⅱ2⑥欄)858万7900円
上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記オの金額に税
率100分の25を乗じて算出した金額である。
(3)平成17年12月課税期間
平成17年12月課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税
額は,以下のとおりである。
ア課税標準額(別表Ⅱ3①欄)17億6245万2000円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額である。
(ア)確定申告における課税標準額17億6857万6329円
上記金額は,原告が平成18年2月28日に麻布税務署長に提出した
平成17年12月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「平成17年
12月課税期間消費税等確定申告書」という。乙3。)に記載された課
税標準額(千円未満の端数金額を切り捨てる前のもの。)である。
(イ)異議決定で課税標準額から減額された金額612万4065円
上記金額は,株式会社P10に対する業務に係る役務の提供の対価の
額643万0269円から当該金額の105分の5に相当する金額を控
除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた場所が国外で
あることから,消費税等の課税対象外である(甲6・異議決定書別紙「異
議決定の理由」3(1)ホ・別紙の3枚目参照)。
イ課税標準額に対する消費税額(別表Ⅱ3②欄)7049万8080円
上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に,税率10
0分の4を乗じて算出した金額である。
ウ控除対象仕入税額(別表Ⅱ3③欄)2831万6947円
上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額で,次の(ア)
の金額から(イ)の金額を控除した金額7億4331万9862円(課税仕
入に係る支払対価の額)に105分の4を乗じて算出した金額である。
(ア)平成17年12月課税期間消費税等確定申告書に記載された課税仕
入に係る支払対価の額16億7741万7231円
上記金額は,平成17年12月課税期間消費税等確定申告書(乙3)の
付表2の「課税仕入に係る支払対価の額(税込み)欄」に記載された金
額である。
(イ)課税仕入に係る支払対価の額の過大額9億3409万7369円
上記金額は,上記(ア)の金額のうち次のa及びbの国外の企業に対す
る外注費の額の合計金額であり,課税仕入に係る支払対価の額に該当し
ない金額である。
aP7社に対する外注費の額1億6298万3332円
上記金額は,P7社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る
役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外であ
る。
bP13社(P13AG)に対する外注費の額
7億7111万4037円
上記金額は,P13社に対する外注費の額であり,当該外注費に係
る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外で
ある。
エ差引税額(別表Ⅱ3④欄)4218万1100円
上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した金額である。
オ地方消費税の課税標準額(別表Ⅱ3⑤欄)4218万1100円
上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び7
2条の82の規定に基づくものである。
カ譲渡割額(別表Ⅱ3⑥欄)1054万5200円
上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記オの金額に税
率100分の25を乗じて算出した金額である。
2本件各更正処分
上記1のとおり,被告が本訴において主張する原告の本件各課税期間におけ
る納付すべき消費税等は,①平成15年12月課税期間については,納付す
べき消費税額3519万4100円(前記1(1)エ),納付すべき地方消費税額
879万8500円(前記1(1)カ),納付すべき消費税等の合算額4399万
2600円,②平成16年12月課税期間については,納付すべき消費税額
3435万1600円(前記1(2)エ),納付すべき地方消費税額858万79
00円(前記1(2)カ),納付すべき消費税等の合算額4293万9500円,
③平成17年12月課税期間については,納付すべき消費税額4218万1
100円(前記1(3)エ),納付すべき地方消費税額1054万5200円(前記
1(3)カ),納付すべき消費税等の合算額5272万6300円である。
これらの金額は,平成15年12月課税期間更正処分(異議決定及び裁決に
より取り消された後のもの。),平成16年12月課税期間更正処分(異議決
定により取り消された後のもの。)及び平成17年12月課税期間更正処分(異
議決定により取り消された後のもの。)における納付すべき税額とそれぞれ同
額であるから,本件各更正処分(いずれも異議決定ないし裁決により取り消さ
れた後のもの。以下同じ。)はいずれも適法である。
第2本件各賦課決定処分
前記第1の2のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,原告は,
本件各課税期間の消費税等について,納付すべき税額を過少に申告していたもの
であり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて,通則法65条4項
に規定する「正当な理由」は存在しないことから,本件各更正処分に伴って課さ
れるべき過少申告加算税の額は,それぞれ以下のとおりである。
1平成15年12月課税期間賦課決定処分518万3000円
上記金額は,通則法65条1項及び2項並びに地方税法附則9条の4第2項
及び9条の9に基づき,平成15年12月課税期間更正処分によって新たに納
付すべき消費税等の合算額(納付すべき消費税等の合算額4399万2600
円のうち期限内申告税額の合算額707万3500円を超える部分)3691
万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切
り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額369万
1000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費
税等の合算額3691万9100円のうち期限内申告税額の合算額707万3
500円を超える部分に相当する税額2984万円(ただし,同法118条3
項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分
の5の割合を乗じて計算した金額149万2000円との合計額である。
2平成16年12月課税期間賦課決定処分503万5000円
上記金額は,通則法65条1項及び2項並びに地方税法附則9条の4第2項
及び9条の9に基づき,平成16年12月課税期間更正処分によって新たに納
付すべき消費税等の合算額(納付すべき消費税等の合算額4293万9500
円のうち期限内申告税額の合算額702万6600円を超える部分)3591
万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切
り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額359万
1000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費
税等の合算額3591万2900円のうち期限内申告税額の合算額702万6
600円を超える部分に相当する税額2888万円(ただし,同法118条3
項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分
の5の割合を乗じて計算した金額144万4000円との合計額である。
3平成17年12月課税期間賦課決定処分619万8000円
上記金額は,通則法65条1項及び2項並びに地方税法附則9条の4第2項
及び9条の9に基づき,平成17年12月課税期間更正処分によって新たに納
付すべき消費税等の合算額(納付すべき消費税等の合算額5272万6300
円のうち期限内申告税額の合算額855万1700円を超える部分)4417
万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切
り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額441万
7000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費
税等の合算額4417万4600円のうち期限内申告税額の合算額855万1
700円を超える部分に相当する税額3562万円(ただし,同法118条3
項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分
の5の割合を乗じて計算した金額178万1000円との合計額である。
4本件各賦課決定処分
被告が本訴において主張する本件各課税期間の過少申告加算税の額は,それ
ぞれ,平成15年12月課税期間518万3000円,平成16年課税期間5
03万5000円及び平成17年12月課税期間619万8000円であると
ころ,本件各賦課決定処分(いずれも異議決定ないし裁決により取り消された
後のもの。以下同じ。)における過少申告加算税の額は,上記の各金額と同額
であるから,本件各賦課決定処分は適法である。
以上

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