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平成17年(ワ)第24370号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日平成18年5月19日
判決
原告株式会社平和
訴訟代理人弁護士鎌田真理雄
訴訟復代理人弁護士辻哲哉
被告甲
訴訟代理人弁護士西山彬
主文
1被告は,パチンコ・スロットの打ち子募集・攻略情報提供と称する役務の広
告について,「プロジェクトヘイワ」「ProjectHEIWA」その他「ヘイワ」又は「H
EIWA」の文字を含む表示を使用してはならない。
2被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成17年11月30日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,これを4分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担
とする。
5この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項に同じ。
2被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成17年9月26日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,被告が開設したインターネット上のウェブページ
において使用された表示により,原告の有する商標権が侵害され又は不正競争防止
法2条1項1号・2号上の原告の営業上の利益が侵害されたと主張して,商標法3
6条1項又は不正競争防止法3条1項に基づき,その表示の使用差止めを求めると
ともに,商標権侵害(不法行為)又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償を請求し
た事案である。
1前提事実
(1)原告は,ぱちんこ遊技機,回胴式遊技機(以下,それぞれ「パチンコ機」,
「スロット機」という。)等の開発・製造・販売等を行う株式会社である。
(弁論の全趣旨)
(2)本件商標権
原告は,以下の商標権を有する(以下「本件商標権」といい,その登録商標を
「本件登録商標」という。)。
商標登録番号第4128717号
登録商標別紙商標目録のとおり
商品及び役務の区分第41類
指定役務技芸・スポーツ又は知識の教授,(以下省略)
登録日平成10年3月27日
出願日平成8年4月24日
(争いのない事実)
(3)本件ウェブページ1
ア被告は,平成17年8月下旬,別紙ウェブページ目録1記載のウェブペー
ジ(以下「本件ウェブページ1」という。)を開設し,同年10月6日に閉鎖される
まで,「ProjectHEIWA」「プロジェクトヘイワ」(以下,順に「本件アルファベッ
ト表示」「本件カナ表示」といい,両者を併せて「本件各表示」という。)を用い
て,パチンコ機及びスロット機の「打ち子」を募集し,登録した「打ち子」には
「メーカー情報」を含むパチンコ機,スロット機の攻略情報を提供するとの内容を
掲載した。
イなお,原告は,本件ウェブページの開設時期が平成17年7月ころである
ことにつき,自白が成立し,原告は自白の撤回に異議がある旨主張するが,被告は,
原告の援用により自白が成立する前に,本件ウェブページの開設時期は平成17年
8月下旬であると主張を訂正しているから,原告の上記主張は,理由がない。
(争いのない事実,甲4,弁論の全趣旨)
(4)本件ウェブページ2
ア被告は,平成17年8月下旬,別紙ウェブページ目録2記載のウェブペー
ジ(以下「本件ウェブページ2」といい,本件ウェブページ1と併せて「本件ウェ
ブページ」という。)を開設し,同年11月末ころまで,本件各表示を用いて,
「”パチンコ・パチスロキズネタ発覚”サクラメンバー緊急大募集のお知らせ」
などと表示して,パチンコ機及びスロット機の打ち子を募集し,登録した「打ち
子」には「メーカー情報」を含むパチンコ機,スロット機の攻略情報を提供すると
の内容を掲載した。
イ原告は,本件ウェブページ2は平成18年2月1日まで開設されていた旨
主張するが,平成17年12月以降も開設されていたことを認めるに足りる証拠は
ない。
(争いのない事実,甲19,弁論の全趣旨)
2争点
(1)商標権侵害の成否
(2)不正競争防止法2条1項1号又は2号違反の成否
(3)原告の損害額
3争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(商標権侵害の成否)
ア原告の主張
(ア)役務の類似
a本件ウェブページは,パチンコ機・スロット機の攻略情報を提供する旨広
告している。
bこの情報提供は,パチンコ機,スロット機に係る技芸の教授であり,本件
商標権の指定役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授」と同一ないし類似する。
(イ)商標の類似
a本件各表示のうち,「Project」「プロジェクト」は「企画,計画事業」
等を意味する日常用語であり,特別の識別力を有しないこと,後記のとおり,パチ
ンコ・スロット遊戯の分野において,原告の商号である「(株式会社)平和」は,メ
ーカーとして周知著名であることを考慮すると,本件各表示の要部は「HEIWA」
「ヘイワ」である。
b本件アルファベット表示の上記要部は,本件登録商標と称呼,外観,観念
とも同一であり,本件カナ表示の要部は,本件登録商標と称呼,観念が同一である。
cよって,本件各表示は,本件登録商標に類似する。
(ウ)取引の実情
①本件各表示は,パチンコ・スロットの「打ち子」募集,パチンコ機等の攻略情
報提供をうたう本件ウェブページにおいて使用され,②本件ウェブページ1は,提
供する情報が正確であることの根拠として,「メーカー情報」を得ていることを挙
げており,しかも,③パチンコ・スロット遊戯の分野において,原告の商号である
「(株式会社)平和」は,メーカーとして周知著名である。
(エ)出所の混同のおそれ
これらの事実からすると,本件各表示の使用された本件ウェブページに接した需
要者は,本件ウェブページによる役務の提供の主体が原告であると誤認混同するお
それがある。
イ被告の主張
(ア)役務の類似
原告の主張(ア)は否認する。
(イ)商標の類似
a同(イ)は否認する。
bごく一部のパチンコ愛好家であればともかく,一般的な社会人からすれば,
原告の会社名や本件登録商標は周知・著名とはいえない。むしろ,「平和」「へい
わ」「ヘイワ」なる表示は,国民の等しく願望する平和を表現するものとして,平
和堂,平和貿易,平和ハイツ,平和通,平和町などのように,会社名,店舗名,ア
パート名,街路名などに広く使用されている。
したがって,本件各表示は,その全体を比較の対象とすべきであり,本件登録商
標とは類似していない。
(ウ)取引の実情
同(ウ)は否認する。
(エ)出所の混同のおそれ
同(エ)は否認する。
(2)争点(2)(不正競争防止法2条1項1号又は2号違反の成否)
ア原告の主張
(ア)周知著名な商品等表示
パチンコ・スロット遊戯の需要者において,原告の商品等表示である本件登録商
標は,著名又は少なくとも周知である。
(イ)商品等表示の類似
本件各表示は,上記(1)ア(イ)のとおり,本件登録商標に類似する。
(ウ)混同のおそれ
パチンコ・スロット遊戯の需要者が,本件各表示の使用された本件ウェブページ
に接すれば,本件ウェブページからの情報の提供が原告又は原告と何らかの関係が
ある者によるものと誤信するおそれがある。
(エ)営業上の利益の侵害
パチンコに関する「打ち子募集・攻略情報提供」と称するもののほとんどは,登
録料などの名目で金銭を振り込ませる詐欺等の犯罪行為であるから,本件各表示の
使用により,原告の営業上の利益が侵害されている。
(オ)まとめ
以上のとおり,本件各表示の使用は,不正競争防止法2条1項1号又は2号所定
の不正競争行為に当たる。
イ被告の主張
(ア)周知著名な商品等表示
a原告の主張(ア)は否認する。
bごく一部のパチンコ愛好家であればともかく,一般的な社会人からすれば,
原告の会社名や本件登録商標は周知・著名とはいえない。
(イ)商品等表示の類似
a同(イ)は否認する。
b本件各表示は,上記(1)イ(イ)のとおり,本件登録商標に類似していない。
(ウ)混同のおそれ
a同(ウ)は否認する。
b被告は,パチンコの営業活動そのものをしておらず,原告の営業活動又は
営業の人的・物的施設に競争関係を存在させたことはなく,混同を生じさせていな
い。
(エ)営業上の利益の侵害
同(エ)は否認する。
(オ)まとめ
同(オ)は否認する。
(3)争点(3)(原告の損害額)
ア原告の主張
(ア)信用毀損による損害
a原告は,昭和24年に創業し,昭和63年にはパチンコ機メーカーとして
初めて株式を店頭売買銘柄として登録し,テレビCM等の広告宣伝に巨額の費用を
投入し,その結果,平成15年にはCM好感度で総合248位,平成16年にはC
M効率の部門で9位と認定され,さらに,パチンコ・パチスロ機メーカーとして初
めてサッカーJリーグのオフィシャルスポンサーとなるなど,ブランドイメージを
構築し維持している。
b原告は,本件ウェブページから「打ち子」募集,パチンコ機,スロット機
の攻略情報提供の情報を送信されたことにより,本件ウェブページを利用した詐欺
行為が原告の営業ではないかと誤認混同されたため,信用を毀損され,かつ,その
ブランドイメージを著しく毀損された。
c原告が年間約20億円の広告宣伝費を投入していることからすると,信用
毀損により原告が被った損害は,1日当たり547万9452円,原告が本件ウェ
ブページ1の存在を認識した平成17年9月19日から,原告が本件ウェブページ
2が閉鎖されていることを確認した平成18年2月1日まで135日間で,7億3
972万6020円を下らない。
2,000,000,000÷365≒5,479,452
5,479,452×135=739,726,020
(イ)商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項
a被告は,他の3名の者とともに活動していると考えられるところ,従業員
5人程度のパチンコ攻略会社は,1か月当たり270万円程度の利益を得ていると
されているから,被告の月当たりの利益は,少なくとも月270万円を下らないと
推定できる。
b平成17年7月1日から本件ウェブページ2が閉鎖されていることを確認
した平成18年2月1日まで(7か月と1日)に発生した被告の収益は,1899
万円を下らない。
2,700,000×(7+1/30)=18,990,000
cよって,商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項により,この額が
原告の損害と推定される。
(ウ)調査費用
a原告は,本件に関する調査費用として,平成17年9月19日以降,少な
くとも58万6000円(甲41)を支出したのに加え,被告の住民票の申請費用と
して1090円及び鑑定委託費(甲39)として30万円,合計88万7090円
を支出した。
bこの損害項目も,被告の不法行為と相当因果関係を有する損害である。
(エ)一部請求
原告は,以上の損害の内金として,1000万円を請求する。
イ被告の主張
(ア)信用毀損による損害
同(ア)のうち,aは不知,b及びcは否認する。
(イ)商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項
同(イ)は否認する。
被告は,本件ウェブページを開設し,広告宣伝費等を支出したものの,ほとんど
売上げがなく,全くの赤字であった。
(ウ)調査費用
同(ウ)のうち,aは不知,bは否認する。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(商標権侵害の成否)
(1)役務の類似
前提事実(3),(4)のとおり,本件ウェブページによって提供される役務は,パチ
ンコ機,スロット機の攻略情報を提供するというものであるから,パチンコ機,ス
ロット機に係る「技芸の教授」といい得るものであり,本件商標権の指定役務であ
る「技芸・スポーツ又は知識の教授」と類似すると認められる。
(2)商標の類似
ア要部
(ア)弁論の全趣旨によれば,本件各表示のうち「Project」「プロジェクト」
は「企画,計画事業」等を意味する日常用語であることが認められる。
(イ)弁論の全趣旨によれば,本件各表示のうち「HEIWA」の部分は,一般的に
は,日本語の「平和」をそのままローマ字表記したものと解されるところ,「平
和」は「やすらかにやわらぐこと,戦争がなくて世が平穏であること」(広辞苑第
5版)を意味する日常用語であることが認められる。
しかし,証拠(甲3,7,22)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,株式会社矢
野経済研究所の2004年(平成16年)の調査(甲22)によるとパチンコファン全
体において73.1%の認知率を有するなど,パチンコ・スロット遊戯の需要者の
間ではパチンコ機・スロット機のメーカーとして広く認識されており,本件登録商
標「HEIWA」も,原告の商品等表示として広く認識されていることが認められる。
(ウ)さらに,本件アルファベット表示は,「Project」が小文字を含むのに対
し,「HEIWA」の部分は,本件登録商標と同様に大文字のみで構成されていること
が認められる。
(エ)これらの事実によれば,パチンコ機,スロット機の攻略情報を提供する役
務との関係で使用されれば,本件各表示のうち「HEIWA」「ヘイワ」の部分が識別
力を有する要部となると認められる。
イ称呼等の類似
(ア)本件アルファベット表示の要部は,本件登録商標と称呼,外観が同一であ
り,また,パチンコ機・スロット機のメーカーである原告自身の観念が生じる点で,
観念も同一であると認められる。
(イ)本件カナ表示の要部は,本件登録商標と外観は異なるが,称呼,観念が同
一であると認められる。
ウまとめ
よって,本件各表示は,本件登録商標に類似するものと認められる。
(3)取引の実情
ア前提事実(3),(4)のとおり,本件各表示は,パチンコ・スロットの「打ち
子」募集,攻略情報提供をうたう本件ウェブページにおいて使用されたものである。
イ証拠(甲4(3枚目下))によれば,本件ウェブページ1は,提供する情報が
正確であることの根拠として,「プロジェクトヘイワ」がメーカー各社から情報を
得ていることが記載されていることが認められる。
ウそして,前記(2)アのとおり,パチンコ・スロット遊戯の分野において,原
告の名称は周知である。
エただし,証拠(甲4(1枚目上),19)によれば,本件ウェブページ1には
「最新機種に内部欠陥発覚のため,各地プロジェクトメンバー緊急募集」と記載さ
れ,本件ウェブページ2には「パチンコ・パチスロキズネタ発覚」と記載されて
いることが認められるところ,パチンコ機・スロット機メーカーが自らが製造する
機械の欠陥に乗じたプロジェクトを実施することは通常考えられないから,上記メ
ンバー緊急募集等の記載は,混同のおそれを減じる方向に働く事実である。
また,パチンコ機・スロット機メーカーが「打ち子募集」やパチンコ機等の攻略
情報の提供を行うことも通常考えられないから,本件ウェブページにおいて上記の
ような募集,情報提供を行っていることも,混同のおそれを減じる方向に働く事実
である。
(4)まとめ
ア差止め
以上の事実によれば,上記(3)エの混同のおそれを減じる方向に働く事実の存在
を考慮しても,本件各表示の使用された本件ウェブページに接した需要者が,本件
ウェブページによるパチンコ機等の攻略情報の提供の主体は原告であると混同する
おそれがあると認められる。これに反する被告の主張は,採用することができない。
そして,被告は,現在,本件ウェブページを閉鎖したとはいえ,本訴において商
標権侵害等を争っていることからすると,差止めの必要性があると認められる。
イ損害賠償
被告に過失があったことは推定されるから(商標法39条,特許法103条),被
告は,上記不法行為により原告に生じた損害を賠償する義務がある。
2争点(2)(不正競争防止法2条1項1号又は2号違反の成否)
(1)周知著名な商品等表示
前記1(2)アのとおり,本件登録商標は,パチンコ・スロット遊戯の需要者の間
で,原告の商品等表示として広く認識されているものと認められる。
(2)商品等表示の類似
前記1(2)のとおり,本件各表示は,原告の商品等表示である本件登録商標に類
似するものと認められる。
(3)混同のおそれ
前記1(2)及び(3)によれば,パチンコ・スロット遊戯の需要者がパチンコ機等の
攻略情報の提供を行う本件ウェブページに接し,パチンコ・スロット遊戯の需要者
の間で原告の商品等表示として広く認識されている本件登録商標に類似する本件各
表示を見つければ,当該パチンコ機等の攻略情報を提供する営業が原告又は原告と
何らかの資本関係,系列関係などの緊密な営業上の関係がある者によるものと誤信
するおそれがあり,広義の混同を生じるおそれがあると認められる。
(4)営業上の利益の侵害
証拠(甲10~13,20,27,40)及び弁論の全趣旨によれば,パチンコ
機・スロット機の「打ち子募集・攻略情報提供」と称する営業の大部分は,登録料
などの名目で金銭を振り込ませて騙し取る詐欺であることが認められるから,上記
(3)の混同のおそれは,原告の営業上の利益を侵害するものと認められる。
(5)まとめ
ア差止め
以上のとおり,被告による本件各表示の使用は,不正競争防止法2条1項1号の
不正競争行為に該当し,原告の営業上の利益を侵害する(同法3条1項)。
被告は,現在,本件ウェブページを閉鎖したとはいえ,本訴において商標権侵害
等を争っていることからすると,差止めの必要性があると認められる。
イ故意過失
被告の上記不正競業行為が故意,少なくとも重大な過失によることは,明らかで
あるから,被告は,上記不正競業行為により原告に生じた損害を賠償する義務があ
る。
3争点(3)(原告の損害額)
(1)信用毀損による損害
ア各項に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)原告は,パチンコ・スロット遊戯の需要者の間においては,パチンコ機,
スロット機のメーカーとして周知であり(以上,前記認定のとおり),「全国的」
「伝統的」等のブランドイメージを有している。
(甲3,7,22)
(イ)パチンコ機・スロット機の「打ち子募集・攻略情報提供」と称する営業の
大部分は,登録料などの名目で金銭を振り込ませて騙し取る詐欺であるところ(前
記認定のとおり),このことは,業界関係誌で伝えられていただけでなく,パチン
コ店に掲示されるポスターや全日遊連(全日本遊技事業協同組合連合会)のホームペ
ージで注意喚起され,一般週刊誌においても報道されていた。
(甲10~13,20)
イ前提事実,前記1,2及び上記(1)アに認定の事実によると,①本件ウェブ
ページ1は1箇月半程度,本件ウェブページ2は3箇月程度,インターネット上で
公開されていたこと,②本件各表示を用いた本件ウェブページは,それを閲覧する
者に対し,詐欺である可能性が高い同ウェブページの開設者と原告との間に,広義
の混同を生じさせるものではあるが,パチンコ機等のメーカーが自ら製造した機械
の欠陥に乗じたプロジェクトを実施することは通常考えられないという混同のおそ
れを減じる方向に働く事情も認められる。これらの事実に,後記(2)のとおり被告
が得た利益の額を認定できないため,原告の損害を推定できないことも総合考慮す
ると,原告の信用毀損による損害額を170万円と認めるのが相当である。
これに反する原告の主張は,採用することができない。
(2)商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項による損害
ア原告は,被告の利益を推定する根拠として,従業員5人程度のパチンコ攻
略会社は1か月当たり270万円程度の利益を得ているとの文献(甲40)を挙げ
ているが,この記載が1つのモデルケースを記載したものにすぎないことは,その
記載内容から明らかであり,この記載から,被告が同額の利益を得ていると認定す
ることはできない。
他に,被告が得た利益を認めるに足りる証拠はない。
イよって,商標法38条2項又は不正競争防止法5条2項により損害の推定
をいう原告の主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(3)調査費用
ア鑑定委託費(甲39)が本件の不法行為又は不正競業行為と相当因果関係
を有するものと認めることはできない。
イ証拠(甲41)及び弁論の全趣旨によれば,原告は調査費用として58万6
000円及び被告の住民票の申請費用として1090円を支出したことが認められ
るが,本件に現れた諸般の事情によれば,それらの費用のうち30万円は本件の不
法行為又は不正競業行為と相当因果関係があると認められるが,それを超える部分
が相当因果関係を有することを認めるに足りる証拠はない。
(4)遅延損害金の起算点について
原告は,損害金全額につき平成17年9月26日からの遅延損害金を請求してい
るが,原告の損害は,本件ウェブページの公開により日々発生したものと認めるべ
きであるから,本件ウェブページが閉鎖された平成11月30日以降については理
由があるが,それ以前については理由がない。
(5)まとめ
したがって,原告の損害賠償請求は,上記(1)及び(3)の合計200万円及びこれ
に対する平成17年11月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金を求める限度で理由がある。
4結論
よって,本件商標権侵害及び不正競争防止法2条1項1号違反を理由に主文第1
項記載の差止めを求める請求は,理由があるから認容し,商標権侵害(不法行為)及
び不正競争防止法4条に基づき損害賠償を求める請求は,主文第2項の限度で理由
があるからその限度で認容し,その余を棄却し,金銭請求に対する仮執行宣言につ
いては,相当と認め,これを付することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官市川正巳
裁判官大竹優子
裁判官頼晋一
(別紙)
ウェブページ目録
1下記URLのウェブページ
http://www.pro-heiwa.jp/pc_index.html
http://www.pro-heiwa.jp/pc_hajimete.html
http://www.pro-heiwa.jp/pc_taiken.html
http://www.pro-heiwa.jp/pc_inquiry.html
http://www.pro-heiwa.jp/pc_0en.html
http://www.pro-heiwa.jp/pc_qa.html
http://www.pro-heiwa.jp/pc_company.html
2下記URLのウェブページ
http://www.peach-inc.net/

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