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裁判例


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平成24年10月31日判決言渡
平成23年(行コ)第279号懲戒処分取消等請求控訴事件
主文
1原判決中控訴人P1,同P2,同P3,
同P4,同P5,同P6,同P7,
同P8,同P9,同P10,同P11
ことP12,同P13,同P14,同P15こと
P16,同P17,同P18,同P19,同
P20,同P21,同P22,同P23に関
する部分を次のとおり変更する。
(1)東京都教育委員会が,別紙2懲戒処分等一覧表の
「処分日」欄記載の日付で,上記1の各控訴人らに
対して行った同一覧表の「処分内容」欄記載の各懲
戒処分(ただし,同一覧表記載番号「30-1」,
「32-1」,「49-1」の懲戒処分を除く。)
をいずれも取り消す。
(2)上記1の控訴人らのその余の請求をいずれも棄却
する。
2上記1の控訴人らを除くその余の控訴人らの本件各
控訴をいずれも棄却する。
3控訴人P6,同P8及び同P17と
被控訴人との間に生じた訴訟費用は,第1,2審を通
じてこれを4分し,その3を同控訴人らの負担とし,
その余を被控訴人の負担とし,上記1の控訴人らのう
ち上記3名を除く控訴人らと被控訴人との間に生じた
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その
1を同控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担
とし,その余の控訴人らの控訴費用は,同控訴人らの
負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中控訴人らに関する部分を取り消す。
2東京都教育委員会が,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付
で,各控訴人に対して行った同一覧表の「処分内容」欄記載の各懲戒処分
(ただし,同一覧表記載番号「21-2」の懲戒処分を除く。)をいずれも
取り消す。
3被控訴人は,控訴人らに対し,各控訴人に対応する別紙2懲戒処分等一覧
表の「請求金額」欄記載の金員及びこれに対する平成19年10月11日
(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が,東京都内の都
立高等学校又は都立養護学校の教職員であった控訴人らについて,平成17
年3月4日から平成18年4月7日までの間に控訴人らの所属校で行われた
卒業式又は入学式(以下「卒業式等」という。)において,各所属校の校長
(以下「本件各校長」という。)から,事前に,①国旗に向かって起立し,
国歌を斉唱することを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず,国歌斉
唱時に起立せず(控訴人P24及び同P25を除く控訴人らの関係),②
国歌斉唱時にピアノによる国歌の伴奏をすることを命ずる職務命令を受けて
いたにもかかわらず,ピアノ伴奏を行わなかった(控訴人P24及び同P2
5の関係)のは,地方公務員法(以下「地公法」という。)32条,33条
に違反するとして,地公法29条1項1号ないし3号に基づき,控訴人らに
対し,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付で,同一覧表の
「処分内容」欄記載の各懲戒処分(以下,各懲戒処分を併せて,「本件各処
分」という。)をしたことから,控訴人らが,本件各処分は憲法13条,1
9条,20条,23条,26条,31条,教育基本法(ただし,平成18年
法律第120号による改正前のもの。以下同じ。)10条1項に違反するな
どと主張して,本件各処分(ただし,同一覧表の番号「21-2」の懲戒処
分を除く。)の取消しを求めるとともに,本件各処分により精神的苦痛を被
ったと主張して,都教委の設置者である被控訴人に対し,国家賠償法(以下
「国賠法」という。)1条1項に基づき,損害賠償(慰謝料)を求める事案
である。
2原審は,控訴人らの請求はいずれも理由がないとして,これを棄却した。
そこで,控訴人らが,これを不服として,本件各控訴を提起した。なお,原
審共同原告であったP26及び同P27は,原審の敗訴判決に対して控訴を
提起しなかった。
3前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,当
審における当事者の主張を後記4及び5のとおり加えるほかは,原判決の
「事実及び理由」中「第2事案の概要等」の2及び3並びに「第3争点
に関する当事者の主張」のうちの控訴人らと被控訴人に関する部分に記載の
とおりであるから,これを引用する。
(1)原判決12頁6行目の「(以下,これを「本件不伴奏」という。)」
を「(以下,国家斉唱時にピアノ伴奏をしないことを「不伴奏」といい,
上記控訴人2名のピアノ不伴奏を「本件不伴奏」という。)」に改め,8
行目の「略称し,」の次に「不伴奏と,併せて「不起立等」といい,」を
加え,18行目の次に行を改めて次のように加える。
「ウ(ア)控訴人P10は,都立P28養護学校の平成15年度の卒業式
(平成16年3月24日)において起立斉唱するよう同校長から職
務命令を受けたが,これに従わなかったとして,都教委から平成1
6年4月6日付けで,減給処分10分の1・1月の(以下「P10
先行減給処分」という。)を受けた。
(イ)最高裁判所は,平成24年1月16日,P10先行減給処分を
取り消す旨の判決をした(最高裁平成○年(行ツ)第○号,同年
(行ヒ)第○号平成24年1月16日第一小法廷判決(裁判所時報
1547号10頁。以下「最高裁平成24年判決②」とい
う。)。」
(2)原判決54頁9行目の「最高裁平成8年3月8日判決・民集50巻3
号469頁」を「最高裁平成8年3月8日第二小法廷判決・民集50巻3
号469頁(以下「最高裁平成8年判決」という。)」に改める。
4当審における控訴人らの主張
(1)本件各職務命令の発令につき本件各校長に裁量がなかったことについ

本件通達の発出をめぐる議論の経過や本件通達発出後の都教委の本件各
校長に対する指導態様,及び,例外なく全ての都立学校で包括的職務命令
が発せられ,2校以外は全て文書による個別職務命令が発せられたという
事実等に鑑みると,本件各校長が,本件通達発出後,本件実施指針の定め
る卒業式等の実施のために職務命令を発する必要性を自ら判断して控訴人
らに対する本件各職務命令を発したとの事実はない。この事実は多くの校
長経験者の証言等からも明らかである。
(2)本件通達の発出の真の意図について
都教委は,平成11年通達における国旗国歌条項にいう「指導」とは,
国旗掲揚,国家斉唱という集団行動を「学校が実施する」ということであ
り,そのような集団行動に「教職員や生徒の参加を求めること」ではない
と理解していた。そして,都立学校における国旗掲揚,国歌斉唱の実施率
は,平成12年度卒業式等以降100%になったから,都教委としては,
当時において,国旗国歌条項における指導上の課題はなくなっていた。
にもかかわらず,本件通達が発出されたのは,平成▲年に都知事に就任
したP29やその任命に係る教育長らが,教職員に国旗国歌を強制すると
いった偏った政治信念を有していたためである。本件通達,更に本件各職
務命令は,国旗国歌条項についての都教委の指導による改善が見られなか
ったため発せられたものではなく,国旗国歌という国家シンボルに「敬意
を表明」することができないという教職員の世界観・歴史観や教育観,信
仰に対する否定的評価をし,これらの者に制裁を加えるといった政治的意
図をもって発せられたものである。したがって,本件通達は,平成11年
通達と質的に異なり,その延長線上に位置付けられるものではない。
(3)公権力が国家シンボルに対する特定の行為を強制することは許されな
いことについて
ア国家シンボルに対する特定の具体的行為(国歌を起立して斉唱する,
国歌をピアノで伴奏するなど)を公の儀式で行うことを唯一正しいこと
と決め付け,これを国民に強制することは,国民に対する国家への統合
の強制であり,個人の尊厳を否定するものであるから,立憲主義に反し,
客観的に違法である。
イ最高裁判例によれば,個人が自主的に決定すべき事柄等については,
多数決原理によっても協力義務を課すことができないところ,個人が国
家シンボルとどのように向き合うかは個人が自由に決定すべき事柄であ
るから,多数決原理をもって国家への帰属に肯定的な価値を認め,国家
を中心に個人を肯定する考えや態度を強制することは許されない。
アメリカ連邦最高裁は,国家シンボルを尊重しつつも,これに対する
儀礼的行為を国民に強制することは違憲である旨一貫して判断している。
(4)起立斉唱等の義務付けは憲法19条に反することについて
ア(ア)憲法19条は個々人の思想及び良心の自由を保障したものである
から,一般的,客観的に見て思想及び良心との結び付きが認められな
い行為であっても,当該個々人が個別的,主観的に「思想及び良心」
と結び付くと考える行為については,これを公権力により強制するこ
とは,その個人の思想及び良心と抵触することになる。
したがって,一般的客観的基準により思想及び良心の自由の保護範
囲を画定するのは誤りである。
(イ)上記(ア)によれば,儀礼的所作であっても,これを強制すること
は,当該強制を受ける個人との関係で,思想及び良心の自由の制約の
問題になる場合がある。
(ウ)思想及び良心の自由につき,直接的制約と間接的制約に分けて考
えることは,合憲性審査基準の適用回避となり,両者の区別が判然と
しないから,有害無益であり,間接的にせよ公権力による思想及び良
心の自由に対する制約がある場合には,当該制約が憲法上許容される
か否かは,厳格な合憲性審査基準によって審査されなければならない。
イ思想及び良心の自由は,精神的自由の中枢に位置し,個人の尊厳を支
える不可欠の条件であるから,その自由の保障は絶対的なものであり,
制約が正当化できるかどうかは厳格な合憲性審査基準により判断される
べきである。
いわゆる猿払事件の最高裁判決(最高裁昭和49年11月6日大法廷
判決・刑集28巻9号393頁)の合憲性審査基準である目的審査,目
的と手段の関連性審査,利益均衡の審査によると,本件通達及び本件各
職務命令は,控訴人らの思想及び良心の自由を侵害するものであり,許
されない。
ウ学校行事における秩序・規律の維持及び学校における意思統一という
目的や学校教育法,学習指導要領及び国旗国歌法は,起立斉唱等を強制
することの正当化根拠にはならない。また,子どもの学習権を充足させ
るといった教師に求められる職務の公共性等に照らすと,控訴人らが公
務員であり,その職務に公共性があることをもって,起立斉唱等を強制
することを正当化する根拠とすることはできない。
エ国旗に向かい起立斉唱をすることは,客観的に見て国家に対する忠誠
を示す意味があるから,一定の思想性を持つ行為である。国家とどう向
き合うかは,個人の自律的判断に委ねられる事柄であるから,上記行為
を国家が強制することは許されない。
オ起立斉唱等の強制は,これをすることができない思想を有する教師を
あぶり出す効果があるから,沈黙の自由を侵害する。
カ本件各処分は,起立斉唱等をすることができない思想・信条を有して
いることを理由にされた不利益取扱いであり憲法19条に反する。
キバーネット判決は,国旗に向かって国歌を斉唱することの義務付けが
憲法上許されないことを示すアメリカ連邦最高裁の判例であり,本件に
おいても参考となる。
(5)本件通達,本件各職務命令及び本件各処分が憲法20条に違反するこ
とについて
ア(ア)起立斉唱等の強制が信仰の自由に対する間接的制約であるとすれ
ば,その合憲性は厳格な審査基準により判定されるべきである。
(イ)「日の丸」や「君が代」は宗教国家の象徴であり,国家宗教の象
徴でもあった。「日の丸」や「君が代」は,歴史的に国家神道という
宗教そのものと深く結び付いており,現在においても中立的なものと
認められるに至っていない。このような「日の丸」や「君が代」の宗
教性とこれを受容し難いと考える控訴人らの信念に鑑みると,本件通
達,本件各職務命令は,同控訴人らに「日の丸」や「君が代」を式次
第に含む儀式への参加を強制するものとして,憲法20条2項違反に
当たる。また,同強制は控訴人P2ら3名の信仰の自由を直接侵害す
る行為であり,本件各処分は信仰を理由に不利益をもたらすものとし
て憲法20条1項に違反する。
イ信仰の自由の制約についての合憲性判定基準としては,目的審査,手
段審査及び目的と手段との関連審査を中心とする厳格な審査基準が要求
される。
(6)本件通達及び本件各職務命令が憲法13条,23条及び26条に違反
することについて
教師には,公権力によって一方的な見解を教授することを強制されない
自由があり,教育の本質的要請から,教授の具体的内容及び方法につき創
意工夫や一定程度の裁量が保障されている。
本件通達及び本件各職務命令は,教職員に対し,「国旗に向かって起立
し,国歌を斉唱すること」という特定の行動を義務付けるものであり,国
歌斉唱時に「起立斉唱」以外の行為を認めないことは,「国歌斉唱時に起
立斉唱することが正しい」との一方的な観念に基づく指導を強制されるこ
とにほかならないから,教師の上記裁量の余地を奪っていることは明らか
である。
したがって,本件通達及び本件職務命令は,控訴人ら教師の教授の自由
を侵害し,違憲である。
(7)学習指導要領(国旗国歌条項)の法的拘束力について
昭和51年大法廷判決の趣旨を踏まえると,国旗国歌条項は,飽くまで
大綱的基準としての法的拘束力を有するだけであるから,教師に対し一方
的な観念や理論を生徒に教えるように強制する趣旨を含まない上,教師に
は創造的かつ弾力的な教育の余地が残されているというべきである。この
限りで,国旗国歌条項は,教育の目的に沿った全国的な最小限基準,合理
的基準と認められるものである。
したがって,教師に対し,一律に起立斉唱等を命じたり,生徒に対する
内心の自由の説明を禁止したりすることは,国旗国歌条項の上記の大綱的
基準性を否定することにほかならず,学習指導要領の趣旨に反する。
(8)本件通達及び本件各職務命令が教育基本法10条1項が禁止する「不
当な支配」に当たることについて
ア昭和51年大法廷判決は,公立学校においては,教育委員会は,学校
に対する管理権に基づき,学校の教育課程の編成について基準を設定し,
一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,「特に必要な場合」
には,具体的な命令を発することができると判示した。
行政調査ではない純粋な教育活動について,その内容又は方法に関し
て教育委員会が校長に対しある特定の教育活動を禁止する具体的な職務
命令を発することが「特に必要な場合」は,原則として考えられないか
ら,本件通達の発出が特に必要であったとはいえない。
イ都教育庁指導部長が都立高等学校長宛てに平成10年11月20日に
通知した「入学式及び卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導
の徹底について」の別紙「都立高等学校における国旗掲揚及び国歌斉唱
に関する実施指針」(以下「平成10年実施指針」という。)が徹底さ
れていない実態が見られたという事実はないから,これを理由として本
件通達の発出が特に必要であったとはいえない。なお,国旗を掲揚した
三脚を舞台袖の見えない所に置いたり,国歌斉唱時に起立をしない教職
員がいたとしても,そのことが上記の「特に必要な場合」を基礎付ける
事情にはならない。
ウ平成10年実施指針における国旗を式典会場の正面に掲げるという方
法は,十分に徹底されていたから,本件通達における国旗掲揚について
の指示内容は,校長の裁量を不当に制約するものである。また,会場設
営の方法につきフロア式・対面式の禁止は,学校ごとの実態や生徒の発
達段階及び特性に合わせて生徒達に「厳粛かつ清新な気分」を味合わせ
るために行われていた卒業式等を禁止するものであり,校長の裁量権を
不当に制約するものである。さらに,校長が教師に対し起立を促すかど
うか,起立斉唱や伴奏の方法をどのようにするかは,校長の教育的配慮
に基づく裁量に属することであり,本件通達はこれを不当に制約するも
のである。
(9)本件通達及び本件各職務命令が自由権規約18条に違反することにつ
いて
ア市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下,「自由権規約」とい
う。)18条の解釈に当たっては,条約法条約31条及び自由権規約の
関係規定に基づき,自由権規約委員会による一般的見解,最終意見及び
見解等の有権的解釈が十分に尊重されなければならないところ,これら
によれば,本件通達及び本件各職務命令による起立斉唱等の強制は,自
由権規約18条1項に反することが明らかである。
イ児童の権利に関する条約12条及び14条によって保護される利益
(子どもの意見表明権,思想及び良心の自由並びに宗教の自由)は,公
共の利益である上,控訴人らの利益に反するものではないから,控訴人
らが本件各処分の違法性を基礎付ける根拠として,本件通達及び本件職
務命令が同条約12条及び14条に違反する旨主張することは,行訴法
10条1項に反しない。
(10)本件各処分は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるこ
とについて
ア最高裁平成23年(行ツ)第242号,同年(行ヒ)第265号平成
24年1月16日第一小法廷判決(裁判所時報1547号3頁。以下
「最高裁平成24年判決①」という。)及び最高裁平成○年(行ツ)第
○号,同年(行ヒ)第○号平成24年1月16日第一小法廷判決(最高
裁平成24年判決②。以下,両判決を併せて「最高裁平成24年両判
決」ともいう。)は,起立斉唱等を命じる職務命令違反につき,戒告処
分とすることは,過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等
にかかわらず,基本的に懲戒権者の裁量の範囲内に属する事項というこ
とができるとする一方,減給処分以上の重い処分を選択することが許容
されるためには,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行
為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の処分歴等」とい
う。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益
の内容との権衡との観点から,当該処分を選択することの相当性を基礎
付ける具体的事情が認められる場合であることを要すると解すべきであ
る旨判示した。
(ア)最高裁判所が上記後半部分の判示に至った理由は,①不起立等
の行為の動機が思想及び良心の自由に由来するものであり,行為態様
が積極的な妨害行為を伴うものでないこと,②減給処分は直接の給
与上の不利益があり,将来の昇給等にも影響を及ぼすこと,③卒業
式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると,短期
間で不利益が拡大していくことにあると解される。
上記①及び③は,減給処分のみならず戒告処分にも当てはまる。ま
た,②についても,減給処分と戒告処分との間には質的差異はなく,
量的な差もごく小さい。さらに,不起立等により処分を受けた教職員
が被る不利益の最大のものは,思想及び良心の自由の制約ないし否定
であるから,その苦痛の程度は減給処分と戒告処分とで異ならない。
(イ)また,控訴人らが本件不起立等を行った原因・動機は,憲法上保
障を受けるべき思想及び良心の自由に由来するものであるから,処分
の量定の際の考慮事項としては極めて重要であり,他の考慮事項であ
る,例えば,公務員関係の秩序維持など憲法的価値でないものと比較
できないほど大きい。
(ウ)したがって,最高裁平成24年両判決の採用する論理によっても,
本件各処分のうちの各戒告処分は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫
用したものとして違法である。
イ(ア)最高裁判所は,いわゆる神戸税関事件において,懲戒処分が公務
員関係の秩序維持のために科される制裁である旨判示した(最高裁昭
和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁。
以下「神戸税関事件最高裁判決」という。)が,教育部門においては,
生徒の価値観の多様性や個性の尊重の保障という教育本来の目的に適
合した行政が行われなければならないから,「公務員秩序の維持」の
名の下に教育公務員に対する非教育的な行為の強制を行ったり,これ
に違反したとして懲戒処分をすることは,行政権力の教育に対する不
当な支配を目的とするものであり,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを
濫用するものとして違法となる。
本件各処分は,本件通達によって控訴人らに対し上記の強制をし,
これに違反したとしてされたものであるから,裁量権の範囲を逸脱し
又はこれを濫用したものとして違法である。
(イ)最高裁平成8年判決は,宗教上の信条に基づき高等専門学校にお
ける剣道の実技を拒否した生徒に対する退学処分を,裁量権の範囲を
超えるものとして違法であると判示した。その審査基準を本件に当て
はめると,本件各処分は社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲
を逸脱し又はこれを濫用したものであるから,違法である。
ウ(ア)本件各処分は,公務員秩序の維持といった本来の懲戒処分の目的
をもってされたものではなく,起立斉唱等に反対する教職員をあぶり
出し,懲戒処分をすることによって教育現場から排除することを目的
としたものであるから,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したも
のとして違法である。
(イ)戒告処分は,減給処分と異なり本給の減額はないものの,それ以
外の教職員の給与や身分に関わる不利益は減給処分と全く同じである。
すなわち,戒告処分においても,勤勉手当の減額,昇給延伸・圧縮を
受け,処分を受けた年度の特別昇給はなく,生涯賃金,退職金,年金
支給額も影響を受ける。また,戒告処分は,懲戒処分の履歴への記載
や永年勤続表彰に伴うリフレッシュ休暇,退職時の感謝状授与の有無
等の扱い,さらに処分を受けたことによる再雇用職員・非常勤職員へ
の不採用,再発防止研修の受講強制についても減給処分と同様の不利
益を受ける。減給処分と戒告処分は,同じ根拠法令によって規律・運
用されており,両処分の間において,その不利益が「直接的」,「間
接的」などという区別はない。
したがって,減給処分と戒告処分によって受ける被懲戒者の不利益
の違いによって,懲戒権者の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無
を区別するとの考えは,およそ根拠がない。
エ本件において,減給処分及び停職処分を受けた控訴人らは,いずれも,
本件通達発出以降の卒業式等で不起立等をしたことにより過去に戒告等
の処分を受け,本件不起立により,更に処分を受けた者であって,最高
裁平成24年両判決において裁量権の範囲を超えるものとして違法であ
ると判断されて停職処分及び減給処分10分の1・1月を取り消された
2名と基本的に同様の事情がある(なお,最高裁平成24年判決②にお
いて上記減給処分10分の1・1月を取り消されたのは,控訴人らのう
ち減給処分10分の1・6月の処分を受けた控訴人P10である。)。
そして,上記控訴人らは,いずれも国旗・国歌に関連して,過去に不起
立等以外に「非違行為」として懲戒処分等を受けたことはなく,卒業式
等を積極的に妨害する等により秩序を乱したこともない。
以上によれば,最高裁平成24年両判決の基準に照らしても,本件各
処分のうち停職処分及び各減給処分は違法であり,取り消されるべきで
ある。
(11)控訴人らに生じた損害について
ア控訴人らは,教育の本質である生徒と教師との人格的接触による数々
の教育活動の経験を経て,自らの教師としての「職業倫理」を獲得した。
そして,この職業倫理のゆえに,本件通達及び本件各職務命令による起
立斉唱等の強制に従うことのできない「起立できない教師」となった。
「起立できない教師」である控訴人らが,起立斉唱等の強制に直面して
精神的葛藤を生じ,「君が代症候群」ともいうべきストレス障害となっ
たことについては,反対尋問にも耐えたP30証人の証言及び意見書が
その機序及び程度を明らかにしており,その内容は十分に信用できる。
イ控訴人らの精神的苦痛は,本件通達及び本件各職務命令が発せられた
時,更に卒業式等が行われた時のみならず,その後も続いている。すな
わち,控訴人らは,処分を受けたことを理由に,担任を持たせてもらえ
ない,再雇用を拒否される,主任から外される,永年勤続感謝状をもら
えない等の不利益を被っている。そして,控訴人らが処分を受けたこと
に起因して「卒業式・入学式に参列できないこと」,「担任を持たせて
もらえないこと」,「異動させられること」,「主任から外されるこ
と」,「再雇用職員として採用されないこと」による精神的苦痛につい
ては,本件各処分が取り消されても慰謝されることはない。
ウ控訴人らは,本件各処分により以下の経済的不利益を受けている。
(ア)戒告処分を受けた控訴人らは,昇給欠格基準により昇給延伸3箇
月,勤勉手当の10%カットとなった。
(イ)減給処分10分の1・1月の懲戒処分を受けた控訴人らは,給料
の10%カット1箇月,昇給延伸3箇月,勤勉手当の10%カットと
なった。
(ウ)減給処分10分の1・6月の懲戒処分を受けた控訴人P10は,
給料の10%カット6箇月,昇給延伸3箇月,賞与(夏季手当)の1
0%カット,賞与に際して勤勉手当の10%カットとなった。
(エ)停職処分1月の懲戒処分を受けた控訴人P7は,平成18年3月
30日に処分がされた翌日である同月31日付けで早期退職をしたが,
同月31日分の給与相当額である2万2426円を返納させられた。
(オ)減給処分・停職処分が取り消されれば本給の減額によって生じる
経済的不利益は回復するが,回復までには時間がかかり,費やした時
間を回復することはできない。
また,戒告処分により生じる経済的被害は,訴状記載のシミュレー
ションのとおりであり,戒告処分時41歳,勤続17年,戒告処分時
の号給が2級7号の者は定年退職時までに103万7424円の実損
を被る。このように,戒告処分においても経済的不利益が生じ,これ
が取り消されることによってその経済的不利益が回復されることはな
い。
(カ)本件不起立等により本件各処分を受けた控訴人らは,定年後の再
雇用につき採用拒否となり,得べかりし利益を失った。
(キ)控訴人らの中には,本件各処分を受けたことにより,定年を待た
ずに退職した者も多い。定年までの収入が得られなくなったことも,
本件通達に起因する損害である。
(ク)戒告処分以上の被処分者は,「昇給時期の短縮」や「6箇月短縮
の永年勤続特別昇給」の対象から除外され,損害を被った。
(ケ)戒告処分と減給処分とは,「本給の減額」の有無しか違いがなく,
戒告処分によっても相当の経済的不利益が生じている。
戒告処分については,特別昇給,勤続永年表彰が遡って実施された
ものとして給与の再計算が行われなければ,処分によって生じた経済
的不利益は回復されることなく残されることになる。また,懲戒処分
が事後的に取り消されたとしても,再雇用職員としての採用拒否,早
期退職を余儀なくされた者について,その損害が回復されることには
ならない。
(コ)以上のような処分の取消しだけでは慰謝されることのない控訴人
らの精神的苦痛を慰謝し,あるいは経済的不利益を回復するために相
当な金額は少なくとも1処分当たり50万円を下ることはなく,また,
被控訴人の不法行為と相当因果関係のある損害となる弁護士費用は,
上記損害額の1割である各5万円を下ることはない。
5当審における被控訴人の主張
(1)ア最高裁平成24年両判決について
(ア)最高裁平成24年両判決は,起立斉唱等を命じる職務命令違反に
ついて減給処分以上の重い懲戒処分を選択することが許容されるため
には,過去の非違行為による処分歴等に鑑み,学校の規律や秩序の保
持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡との観点から,当該
処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情が認められる場
合であることを要すると解すべきである旨判示した。
したがって,上記「相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる
場合」には,起立斉唱等を命じる職務命令違反について減給処分以上
の重い懲戒処分をすることが許されるというべきである。
(イ)控訴人らのうち減給処分以上の懲戒処分を受けた以下の21名
(以下「控訴人P1ら21名」という。)には,後記イ以下に述べる
とおり,過去の処分歴に係る非違行為の内容,頻度等に照らすと,上
記相当性を基礎付ける具体的事情があるから,上記控訴人らに対する
減給処分以上の重い懲戒処分には,懲戒権者としての裁量権の範囲の
逸脱又はその濫用はない。
イ控訴人P1(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号2)について
控訴人P1は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月31
日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故
再発防止研修を受講した。なお,控訴人P1は,都教委による事情聴取
において「理不尽な職務命令には従う必要はありません。」などと述べ
た上で,事情聴取書への署名,押印を拒否し(乙106の2),また,
上記研修の受講報告書に「こうした研修を行うことが法治国家で認めら
れていいのだろうか。…質問,応答が認められない研修があっていいの
だろうか。」などと記載し(乙106の4),反省の態度を示さなかっ
た。
控訴人P1は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもかか
わらず,平成16年度卒業式において校長,副校長の指示を無視し,本
件不起立をして職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表
記載番号「2」の処分(以下「本件P1減給処分」という。)を受けた。
なお,控訴人P1は,平成16年度卒業式の前日のホームルームにおい
て,生徒に対し,国旗国歌に関する行動については,内心の自由がある
から,自分の考えで行動してよいとの発言をした(控訴人P1は,この
ことにより平成17年5月27日付けで,指導部長から厳重注意を受け
た。乙106の12~15)。控訴人P1は,本件不起立に関する都教
委の事情聴取の際に「責任を取る必要は全くありません。」,「本件通
達は明らかに憲法違反,法令違反,教育基本法に違反している。」など
と述べた上で,事情聴取書への署名,押印を拒否しており(乙106の
2),上記研修における行動などに照らせば,本件不起立の前後におけ
る上記態度は,上司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得
ないものであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到
底放置,容認することができないから,都教委において,控訴人P1に
対し減給処分を選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な事
情」が認められることは明らかである。
ウ控訴人P2(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号5)について
控訴人P2は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月31
日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故
再発防止研修を受講した。なお,控訴人P2は,上記不起立に関する校
長の事実確認や都教委による事情聴取に応じず(乙107の1・2),
また,上記研修の受講報告書に「現在係争中ですので,記述を留保いた
します。」などと記載し(乙107の4),反省の態度を示さなかった。
控訴人P2は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもかか
わらず,平成16年度卒業式において,校長,副校長の指示を無視し,
本件不起立という職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧
表記載番号「5」の処分(以下「本件P2減給処分」という。)を受け
た。控訴人P2は,本件不起立に関する都教委の事情聴取を拒否してお
り(乙107の6),上記研修における行動などに照らしても,本件不
起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的に拒否したも
のといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観
点からすれば,到底放置,容認することができないから,都教委におい
て,控訴人P2に対し減給処分を選択することについて「相当性を基礎
付ける具体的な事情」が認められることは明らかである。
エ控訴人P3(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号15)について
控訴人P3は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月31
日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故
再発防止研修を受講した。なお,控訴人P3は,上記不起立に関する校
長の事実確認や都教委による事情聴取に応じず(乙108の2),また,
上記研修中,質問を発したり,ビデオ撮影をしようとしたりした(乙1
08の4)。
控訴人P3は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもかか
わらず,平成16年度卒業式において,校長,副校長の指示を無視し,
本件不起立をして職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧
表記載番号「15」の処分(以下「本件P3減給処分」という。)を受
けた。控訴人P3は,本件不起立に関する校長からの事実確認,都教委
の事情聴取を拒否しており(乙108の5・6),上記研修における行
動などに照らしても,控訴人P3の本件不起立の前後における上記態度
は,上司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ず,「学校
の規律や秩序の保持」等の観点からすれば到底放置,容認することがで
きないから,都教委において,控訴人P3に対し減給処分を選択するこ
とについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは明
らかである。
オ控訴人P4(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号24)について
控訴人P4は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月31
日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故
再発防止研修を受講した。なお,控訴人P4は,上記研修の受講報告書
の所感欄に,「今後とも日本国憲法および教育基本法に基づいた教育を
行なっていきたいと考えています。」と記載した(乙109の4)。
控訴人P4は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもかか
わらず,平成16年度卒業式において校長,副校長の指示を無視し,不
起立をして職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載
番号「24」の処分(以下「本件P4減給処分」という。)を受けた。
控訴人P4は,本件不起立に関する都教委の事情聴取においても,弁護
士の同席を要求し,これを拒否しており(乙109の6),上記研修に
おける行動などに照らしても,控訴人P4の本件不起立の前後における
態度は,上司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないも
のであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば到底放置,
容認することができないから,都教委において,控訴人P4に対し減給
処分を選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認
められることは明らかである。
カ控訴人P5(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号25)について
控訴人P5は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月31
日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故
再発防止研修を受講した。控訴人P5は,上記不起立に関する校長の事
実確認に対し正面から回答せず(乙110の1),都教委による事情聴
取に応じず(乙110の2),また,上記研修の受講報告書に,「今回,
『思想・良心の自由』(憲法19条)について係争中であり,記述を留
保する。なお,講義は90分予定を60分で打ち切った。質問には全く
答えず退出した講師こそ,地方公務員の職務専念義務違反ではない
か。」などと記載した(乙110の4)。
控訴人P5は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもかか
わらず,平成16年度卒業式において本件不起立をして職務命令違反行
為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「25」の処分(以下
「本件P5減給処分」という。)を受けた。控訴人P5は,本件不起立
に関する校長の事情聴取,都教委の事情聴取をも拒否しており(乙11
0の5・6),上記研修における行動などに照らせば,控訴人P5の本
件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的に拒否す
るものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保持」等
の観点からすれば,到底放置,容認することができないから,都教委に
おいて,控訴人P5に対し減給処分を選択することについて「相当性を
基礎付ける具体的な事情」が認められることは明らかである。
キ控訴人P6(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号30-1・2)につい

控訴人P6は,職務命令に違反する不起立により平成17年3月31
日付け戒告処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「30-1」の処
分)を受けた。なお,控訴人P6は,上記不起立に関する都教委による
事情聴取に対し弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙111
の2)。
控訴人P6は,上記戒告処分を受けたにもかかわらず,上記戒告処分
のわずか1週間後に行われた平成17年度入学式において校長,副校長
の指示を無視し,本件不起立をして職務命令違反行為を繰り返し,別紙
2懲戒処分等一覧表記載番号「30-2」の処分(以下「本件P6減給
処分」という。)を受けた。控訴人P6は,その後の都教委の事情聴取
も拒否しており(乙111の5),これらの行動などに照らせば,控訴
人P6の本件不起立の前後における態度は,上司の職務命令を確信的に
拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保
持」等の観点からすれば到底放置,容認することができないから,都教
委において,控訴人P6に対し減給処分を選択することについて「相当
性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは明らかである。
ク(ア)控訴人P7(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号31-1・2)に
ついて
控訴人P7は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分(以下「P7戒告処分」という。)を受け,教育公
務員としての自覚を促すための服務事故再発防止研修を受講した。
その後,控訴人P7は,校長から平成16年度卒業式において起立
斉唱するよう職務命令書を交付された際に,校長が適法に発した職務
命令について「法的根拠がない」などと述べた上,校長,副校長の指
示を無視し,本件不起立をして職務命令違反を行い,別紙2懲戒処分
等一覧表記載番号「31-1」の処分(以下「本件P7減給処分①」
という。)を受けた。控訴人P7は,非違行為後の校長の事実確認,
都教委の事情聴取をも拒否したものであって(乙112の5・6),
服務事故再発防止研修における行動などに照らせば,控訴人P7の本
件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的に拒否
するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保
持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができないから,
都教委において,控訴人P7に対し減給処分を選択することについて
「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは明らかであ
る。
(イ)控訴人P7は,本件P7減給処分①を受け,再度,服務事故再発
防止研修の受講を再度命じられたが,基本研修は受講したものの,専
門研修についてはこれを拒否したため(乙112の8・10),これ
を処分事由として,平成17年12月1日付け減給10分の1・6月
の処分(以下「P7減給処分②」という。)を受けた。控訴人P7は,
上記非違行為後の都教委からの事情聴取の際に,ネクタイに小型マイ
クを仕掛けて録音しようとし,再三にわたり録音を止めるように言わ
れたもののこれに従わなかったため,結果的に事情聴取を行うことが
できないという事態を招いた(乙112の9)。控訴人P7は,上記
のP7減給処分②を受けた後,服務事故再発防止研修(基本研修・専
門研修)の受講を再度命じられ,同研修を受講した。
しかし,控訴人P7は,平成17年度卒業式において,校長,副校
長の指示を無視し,本件不起立をして職務命令違反行為を行い,別紙
2懲戒処分等一覧表記載番号「30-2」の処分(以下「本件P7停
職処分」という。)を受けた。控訴人P7は,上記職務命令を受けた
際,事前に校長からの職務命令書の受取りを拒否するなどの抵抗を示
し,また,非違行為後に関する校長の事実確認を拒否し,都教委の事
情聴取には出頭すらしなかったのであり(乙112の14~16),
上記研修命令拒否を含め服務事故再発防止研修における行動などに照
らせば,控訴人P7の本件不起立の前後における態度は,上司の職務
命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校
の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認すること
ができないから,都教委において,控訴人P7に対し本件停職処分を
選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認めら
れることは明らかである。
ケ控訴人P8(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号32-1・2)につい

控訴人P8は,職務命令に違反する不起立により平成17年3月31
日付け戒告処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「32-1」の処
分)を受けた。なお,控訴人P8は,上記不起立に関する校長の事実確
認や都教委による事情聴取に応じず,事情聴取書への署名,押印も拒否
した(乙113の1~3)。
控訴人P8は,上記戒告処分を受けたわずか1週間後の平成17年度
入学式において,校長,副校長の指示を無視し,本件不起立をして職務
命令違反行為を再び行い,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「32-
2」の処分(以下「本件P8減給処分」という。)を受けた。控訴人P
8は,本件不起立に関する校長からの事実確認では回答を拒否し(乙1
13の4・6),都教委の事情聴取については出頭すらしなかったので
あり(乙113の5),以上の行動などに照らせば,控訴人P8の本件
不起立の前後における態度は,上司の職務命令を確信的に拒否するもの
といわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観点
からすれば,到底放置,容認することができないから,都教委において,
控訴人P8に対し減給処分を選択することについて「相当性を基礎付け
る具体的な事情」が認められることは明らかである。
コ控訴人P9(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号35)について
控訴人P9は,職務命令に違反する不起立により平成16年4月6日
付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故再
発防止研修を受講した。なお,控訴人P9は,上記不起立に関する都教
委による事情聴取を拒否し(乙114の2),また,上記研修の受講報
告書に,研修に対する批判等を記載した上,「『10.23通達』は
『憲法』『教育基本法』に違反しているから無効です。」などの記載が
ある「『服務事故再発防止研修』について私の意見」と題する文書を添
付した(乙114の4・5)。
控訴人P9は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもかか
わらず,平成16年度卒業式において,校長,副校長の指示を無視し,
本件不起立をして職務命令違反行為を行い,別紙2懲戒処分等一覧表記
載番号「35」の処分(以下「本件P9減給処分」という。)を受けた。
控訴人P9は,本件不起立に対し関する校長の事実確認に対しては「職
務命令書は受け取りましたがこの様な調査は遺憾です,報告内容は,管
理職が判断して下さい,こういう態度だということを報告しても構わな
いです。」と述べるなど反抗的な態度を示し(乙114の6・8),ま
た,都教委の事情聴取は拒否しており(乙114の7),上記研修にお
ける行動などに照らせば,控訴人P9の本件不起立の前後における態度
は,上司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないもので
あり,「学校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容
認することができないから,都教委において,控訴人P9に対し減給処
分を選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認め
られることは明らかである。
サ控訴人P10(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号36)について
(ア)控訴人P10は,平成14年度の都立P28養護学校の入学式の
打合せにおいて,入学式における国旗掲揚,国歌斉唱を取り止めるよ
う校長に申し入れ,同入学式においては,国旗掲揚,国歌斉唱に反対
し,抗議する意思を表明すべく,ブラウスの,①右胸に縦約10㎝,
横約15㎝の黒の枠を,また,その枠内の中央に直径約3㎝の塗りつ
ぶした赤い丸を描き,この絵柄に向かって左上から右下方向に黒色の
斜線を入れた模様を手書きするとともに,②背中に直径約20㎝の
ハートの絵柄に鎖を描いた模様等を手書きし,上記ブラウスを着用し
て臨んだ(乙115の3・4)。
校長は,入学式当日,副校長から,控訴人P10が上着を脱いでお
り,ブラウスに上記図柄が記載されているとの報告を受けたため,控
訴人P10に対し,ブラウスの上に上着を着用するよう口頭で職務命
令を発出したが,控訴人P10は上記職務命令に従わなかった。
都教委は,控訴人P10に対し,上記職務命令違反により,平成1
4年11月6日付けで,戒告処分(以下「P10戒告処分」とい
う。)をした。控訴人P10は,上記行為に対する関する校長の事
情聴取に応じず,かえって校長に対する抗議をした(乙115の5・
6)。
(イ)控訴人P10は,都立P28養護学校の平成15年度の卒業式に
おいて,職務命令違反により不起立をしたため,平成16年4月6日
付けで,減給10分の1・1月の処分(P10先行減給処分)を受け
た。
控訴人P10は,校長からの事実確認を拒否し,都教委からの事情
聴取についても,弁護士の同席を要求し,これを拒否した(乙115
の10~12)。
控訴人P10は,服務事故再発防止研修の基本研修を受講したが,
受講報告書に「不起立は憲法を尊重する教育公務員として,違法な職
務命令に従えなかったからだ。違法な服務研修に抗議する。」(乙1
15の13),「憲法19条を侵す職務命令および根拠となる200
3.10.23通達のみなおしが求められる。」などと記載し(乙1
15の17),反省の態度を示さなかった。
なお,P10先行減給処分は,最高裁平成24年判決②において取
り消された。
(ウ)控訴人P10は,上記戒告処分及び減給処分を受けたにもかかわ
らず,平成16年度卒業式において,校長,副校長の指示を無視し,
本件不起立をして職務命令違反行為を行い,別紙2懲戒処分等一覧表
記載番号「36」の処分(以下「本件P10減給処分」という。)を
受けた。控訴人P10は,本件不起立に関する校長からの事実確認や
都教委からの事情聴取を拒否する等をしており(乙115の18~2
0),上記研修における行動など上記一連の行動に照らしても,控訴
人P10の本件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を
確信的に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律
や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができ
ないから,都教委において,控訴人P10に対し減給処分を選択する
ことについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められること
は明らかである。
シ控訴人P11ことP12(以下「控訴人P12」という。別紙2懲戒
処分等一覧表記載番号43)について
控訴人P12は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P12は,上記不起立に関し,
校長からの事実確認を拒否し(乙116の1),都教委による事情聴取
においても回答を拒否し,事情聴取書への署名,押印も拒否した(乙1
16の2)。
控訴人P12は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもか
かわらず,再度,平成17年度卒業式において本件不起立をして職務命
令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「43」の処
分(以下「本件P12減給処分」という。)を受けた。控訴人P12は,
職務命令書交付時には抵抗を示し(乙116の7),本件不起立を現認
した副校長が起立を促したのに,これを拒否して本件不起立を続け,卒
業式後における校長からの事実確認を拒否し(乙116の5・7),ま
た,都教委の事情聴取において,「特に反省する必要はないと考えてい
ます。」などと述べ,事情聴取書への署名,押印を拒否した(乙116
の6)。これらのことや服務事故再発防止研修における行動などに照ら
しても,控訴人P12の本件不起立の前後における上記態度は,上司の
職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学
校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認すること
ができないから,都教委において,控訴人P12に対し減給処分を選択
することについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められるこ
とは明らかである。
ス控訴人P13(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号44)について
控訴人P13は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P13は,上記不起立に関す
る校長からの事実確認に対し,答える必要はありませんと述べてこれを
拒否し(乙117の1),都教委からの事情聴取も拒否し(乙117の
2),上記研修の受講報告書にも「(服務事故と)無関係の者が命令に
より講義をきかされていることに強い苦痛を感じている。」などと記載
した(乙117の4)。
控訴人P13は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもか
かわらず,再度,平成18年度入学式において本件不起立をして職務命
令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「44」の処
分(以下「本件P13減給処分」という。)を受けた。控訴人P13は,
平成18年度の入学式当日のホームルームにおいて,生徒に対し,起立
斉唱等に関し不適切な指導をした(控訴人P13は,このことにより平
成18年6月9日付けで,指導部長から厳重注意を受けた。乙117の
11)。また,控訴人P13は,上記の職務命令書の交付を受けても,
それを会議室内にそのまま置いていくという不謹慎な態度を示したばか
りか,本件不起立の際,副校長が2度も起立を促したのに,あえてそれ
を無視し,起立しなかったものである。のみならず,控訴人P13は,
本件不起立に関する校長からの事実確認,都教委からの事情聴取をも拒
否しているのであり(乙117の5~7),服務事故再発防止研修にお
ける行動などに照らしても,本件不起立の前後における上記態度は,上
司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないものであり,
「学校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認する
ことができないから,都教委において,控訴人P13に対し減給処分を
選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められ
ることは明らかである。
セ控訴人P14(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号46)について
控訴人P14は,職務命令に違反する不起立(国歌斉唱時に式場から
退席)により平成16年2月17日付け戒告処分を受け,教育公務員と
しての自覚を促すための服務事故再発防止研修を受講した。なお,控訴
人P14は,同研修の受講報告書に「(地公法)32条に違反している
のは明らかに,都教委側と考える。」,「一方的に都側が正しいとする
スタンスで,このような研修を行うこと自体がおかしいのではない
か。」などと記載した(乙118の4)。
控訴人P14は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもか
かわらず,平成17年度卒業式において,校長,副校長の指示を無視し,
本件不起立をして職務命令違反を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記
載番号「46」の処分(以下「本件P14減給処分」という。)を受け
た。上記服務事故再発防止研修における行動などに照らせば,控訴人P
14の本件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的
に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の
保持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができないから,
都教委において,控訴人P14に対し減給処分を選択することについて
「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは明らかである。
ソ控訴人P15ことP16(以下「控訴人P16」という。別紙2懲戒
処分等一覧表記載番号47)について
控訴人P16は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P16は,上記不起立に関す
る校長からの事実確認を拒否し,都教委からの事情聴取にも応じなかっ
た上(乙119の1~3),研修の受講報告書に,「ほとんどお題目だ
けの内容のない講義であった。」,「教育公務員として新たに本質的な
ことを学ぶ場とは全くならなかった。」と記載した(乙119の4)。
控訴人P16は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにも
かかわらず,再度,平成17年度卒業式において本件不起立をして職
務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「4
7」の処分(以下「本件P16減給処分」という。)を受けた。控訴
人P16は,本件不起立を現認した副校長が起立を促したにもかかわ
らず,あえてこれを無視して起立しなかった(乙119の5)。のみ
ならず,控訴人P16の卒業式における座席は生徒や保護者などから
よく見える場所に位置しており,本件不起立については,参列者の目
にとまり,厳粛なる式典の雰囲気に悪影響を与えた。
しかも,控訴人P16は,都教委からの事情聴取においては,自ら
の職務命令違反について,「責任を感じておりません。」,「職務命
令は誤ったものであり,これを出した校長,出させた東京都教育委員
会が誤りである。全体の奉仕者として一点のやましい所,責任もあり
ません。」などと述べているのであり(乙119の6),服務事故再
発防止研修における行動などに照らせば,控訴人P16の本件不起立
の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的に拒否するもの
といわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観
点からすれば,到底放置,容認することができないから,都教委にお
いて,控訴人P16に対し減給処分を選択することについて「相当性
を基礎付ける具体的な事情」が認められることは明らかである。
タ控訴人P17(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号49-1・2)につ
いて
控訴人P17は,職務命令に違反する不起立により平成18年3月3
1日付け戒告処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「49-1」の処
分)を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事故再発防止研
修を受講した。なお,控訴人P17は,上記不起立に関する都教委によ
る事情聴取において,本件通達は法的に誤っている旨述べた(乙120
の2)。
控訴人P17は,上記戒告処分を受けたにもかかわらず,そのわず
か1週間後の平成18年度入学式において,校長,副校長の指示を無
視し,本件不起立をして職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処
分等一覧表記載番号「49-2」の処分(以下「本件P17減給処
分」という。)を受けた。控訴人P17は,都教委による事情聴取に
おいても,憲法及び国法に違反した内容が職務命令として出されたな
どと述べた(乙120の5)。これらの行動などに照らせば,控訴人
P17の本件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確
信的に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や
秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができな
いから,都教委において,控訴人P17に対し減給処分を選択するこ
とについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは
明らかである。
チ控訴人P18(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号50)について
控訴人P18は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。控訴人P18は,同研修の受講報告書に
「一般論,理念として伺いました。」など記載して何ら反省を示さなか
った(乙121の4)。
控訴人P18は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにも
かかわらず,平成17年度卒業式において,再度,本件不起立をして
職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「5
0」の処分(以下「本件P18減給処分」という。)を受けた。控訴
人P18は,本件不起立を見た副校長から起立を促されたのに,あえ
てこれを無視し,また,卒業式後に校長から本件不起立について確認
された際も,控訴人P18は何も答えず無言を貫いた(乙121の
7)。のみならず,控訴人P18は,都教委からの事情聴取において,
自らの職務命令違反について,「東京都に対して責任を取る必要はな
い。」,「生徒に対する責任についても,とる必要はない。」,「1
0.23通達は,行政による教育への介入だ。」,「教育基本法10
条に違反しているので,職務命令に従う必要はない。」などと述べて
いるのであり(乙121の6),また,上記再発防止研修における行
動などに照らせば,控訴人P18の不起立行為の前後における上記態
度は,上司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないも
のであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放
置,容認することができないから,都教委において,控訴人P18に
対し減給処分を選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な
事情」が認められることは明らかである。
ツ控訴人P19(という。別紙2懲戒処分等一覧表記載番号51)につ
いて
控訴人P19は,職務命令に違反する不起立により平成16年5月2
5日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P19は,上記不起立に関す
る都教委による事情聴取を拒否し(乙122の2),また,同研修の受
講報告書に「地方公務員として30年余働いてきて,今まで何も問題に
されたこともないのに,退職近くになって,今さら地公法についての講
義を受ける必要がなぜあるのかわからなかった。」などと記載した(乙
122の4)。
控訴人P19は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもか
かわらず,再度,平成17年度卒業式において本件不起立をして職務
命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「51」
の処分(以下「本件P19減給処分」という。)を受けた。控訴人P
19は,副校長が起立を促したのに,あえて起立しなかったものであ
り(乙122の5・7),都教委による事情聴取について,弁護士の
同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙122の6)。これに加え,
服務事故再発防止研修における行動などに照らせば,控訴人P19の
本件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的に拒
否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序の保
持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができないものな
のであり,都教委において,控訴人P19に対し減給処分を選択する
ことについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められること
は明らかである。
テ控訴人P20(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号54)について
控訴人P20は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月
31日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服
務事故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P20は,上記研修の
受講報告書に「今回職務命令に従わなかったのは,これが『明白に違
法』だからと考えるからだ。」などと記載(乙123の4),何ら反
省を示さなかった。
控訴人P20は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにも
かかわらず,再度,平成18年度入学式において校長,副校長の指示
を無視し,本件不起立をして職務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲
戒処分等一覧表記載番号「54」の処分(以下「本件P20減給処
分」という。)を受けた。控訴人P20は,副校長から3回も起立す
ることを促されたにもかかわらず,あえてこれを無視して起立しなか
ったのであり(乙123の5~7),都教委による事情聴取において
も,「自分の行動は都民の期待に答えたものです。今回の職務命令や
通達については違法なものであると考えます。このことに責任を取れ
と言われても,違和感があります。」などと述べた(乙123の6)。
これらのことに加え,上記研修における行動などに照らせば,控訴人
P20の本件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確
信的に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や
秩序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができな
いから,都教委において,控訴人P20に対し減給処分を選択するこ
とについて「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは
明らかである。
ト控訴人P21(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号57)について
控訴人P21は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P21は,上記不起立に関す
る都教委からの事情聴取を拒否した(乙124の2)。
控訴人P21は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにもか
かわらず,再度,平成17年度卒業式において本件不起立をして職務
命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「57」
の処分(以下「本件P21減給処分」という。)を受けた。控訴人P
21は,本件不起立に関する校長からの事実確認にも素直に答えず,
また,都教委からの事情聴取を拒否したことに加え(乙124の4・
5),上記再発防止研修における行動などに照らしても,控訴人P2
1の本件不起立の前後における上記態度は,上司の職務命令を確信的
に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩序
の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができない。
さらに,控訴人P21の本件不起立は,卒業式という厳粛な儀式の
雰囲気を壊しただけでなく,生徒たちに対して教育上重大問題となる
悪影響を与えたのであって,その非違行為は決して看過できるもので
はない。すなわち,控訴人P21は,不起立をしたことにより過去に
処分された事実を生徒たちに話したことから,生徒たちが控訴人P2
1の卒業式における行動に大きな関心を寄せていた状況の下において,
生徒たちと目を合わせた後に,あえて着席したものであり,卒業式の
後に,生徒たちから「筋を通したんだ。」などと声をかけられている。
このように,控訴人P21の不起立は,厳粛な式典の雰囲気に悪影響
を与えるにとどまらず,生徒たちに重大な悪影響を及ぼしたものであ
り,教育公務員の行為として決して許されないものである。控訴人P
21の上記行為は,正に学習指導要領の「国歌を斉唱するよう指導す
るものとする」という教師に与えられた指導上の責務に反する。
以上のとおり,控訴人P21の本件不起立に関しては,都教委におい
て,減給処分を選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な事
情」が認められることは明らかである
ナ控訴人P22(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号64)について
控訴人P22は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P22は,上記不起立に関す
る校長の事実確認に答えず,都教委からの事情聴取も拒否し(乙125
の1・2),また,上記研修の受講報告書に「一般的な事例としてのこ
れまでの服務事故に今回の不起立がどのように位置づけられるかも不明
であった。」などと記載しており(乙125の4),何ら反省の態度を
示さなかった。
控訴人P22は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにも
かかわらず,再度,平成17年度卒業式において本件不起立をして職
務命令違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「6
4」の処分(以下「本件P22減給処分」という。)を受けた。しか
も,その態様は,副校長が起立を促したのに,あえて起立しないとい
う悪質なものである(乙125の5・7)。さらに,卒業式終了後,
校長が控訴人P22の不起立について確認しようとしても,控訴人P
22は,これを無視したり,「だから不当だと発言したんですよ」と
発言するなどして,反抗的態度を示し,都教委からの事情聴取を拒否
した(乙125の5・6)。これらに加え,上記再発防止研修におけ
る行動など本件不起立の前後における態度は,上司の職務命令を確信
的に拒否するものといわざるを得ないものであり,「学校の規律や秩
序の保持」等の観点からすれば,到底放置,容認することができない
から,都教委において,控訴人P22に対し減給処分を選択すること
について「相当性を基礎付ける具体的な事情」が認められることは明
らかである。
ニ控訴人P23(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号66)について
控訴人P23は,職務命令に違反する不起立により平成16年3月3
1日付け戒告処分を受け,教育公務員としての自覚を促すための服務事
故再発防止研修を受講した。なお,控訴人P23は,上記不起立に関す
る校長からの事実確認や都教委からの事情聴取を拒否し(乙126の1
~3),また,上記研修の受講報告書の所感欄に「現在係争中なので,
この件についての記述は留保します。」と記載した(乙126の4)。
控訴人P23は,生徒に対し,卒業式で立つ,立たない,歌う,歌わ
ないは生徒一人一人の判断の問題である旨発言したことについて,平成
17年5月30日付けで,不適切な指導を理由に,都教委指導部長から
厳重注意を受けた(乙126の5)。
控訴人P23は,上記戒告処分を受け,再発防止研修を受けたにも
かかわらず,平成17年度卒業式において本件不起立をして職務命令
違反行為を繰り返し,別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「66」の処
分(以下「本件P23減給処分」という。)を受けた。控訴人P23
は,本件不起立に関する校長の事情聴取,都教委の事情聴取を拒否し
ているのであり(乙126の6~8),上記再発防止研修における行
動などに照らせば,控訴人P23の本件不起立の前後における上記態
度は,上司の職務命令を確信的に拒否するものといわざるを得ないも
のであり,「学校の規律や秩序の保持」等の観点からすれば,到底放
置,容認することができないから,都教委において,控訴人P23に
対し減給処分を選択することについて「相当性を基礎付ける具体的な
事情」が存在したことは明らかである。
(2)控訴人らの国家賠償請求が失当であることについて
ア国賠法上の違法性及び過失が認められないことについて
(ア)本件各処分は適法であるが,仮に本件各処分のうち減給処分以上
の処分が処分量定につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとし
て取り消されるべきものとしても,そのことから直ちに被控訴人の損
害賠償責任が肯定されるわけではない。
すなわち,本件の被控訴人に対する損害賠償請求は,国賠法1条1
項によるものであるから,控訴人らの請求が認容されるには,被控訴
人の公務員の行為に違法性が認められなければならない。
そして,国賠法1条1項所定の違法が認められるためには,「国又
は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担
する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えた」ことが必
要であり(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39
巻7号1512頁),また,行政処分の違法を理由とする場合には,
当該処分が効力発生要件適合性を欠くだけでは足らず,当該公務員が
「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすこと」をしなかったと認め
得るような事情があったことを必要とする(最高裁昭和53年10月
20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁,最高裁昭和57
年3月12日第二小法廷判決・民集36巻3号329頁,最高裁平成
元年6月29日第一小法廷判決・民集43巻6号664頁,最高裁平
成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁)。
行政処分取消訴訟における違法性は,行政処分の法的効果発生の前
提である法的要件充足性の有無を問題とするのに対し,国家賠償請求
訴訟における違法性は,損害補塡の責任を誰に負わせるのが公平かと
いう見地に立って行政処分の法的要件以外の諸種の要素も対象として
総合判断すべきものであるから,国賠法1条1項にいう違法性は,行
政処分の効力発生要件に関する違法性とはその性質を異にするもので
ある(最高裁判所判例解説民事篇平成5年度(上)377頁)。
(イ)また,国賠法1条1項による損害賠償責任の要件たる公務員の故
意・過失については,法令の解釈につき異なる見解が対立して疑義を
生じており,よるべき明確な判例学説がなく,実務上の取扱いも分か
れていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公
務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは,後にその執
行が違法と判断されたからといって,直ちに当該公務員に過失があっ
たとすることはできない(最高裁昭和46年6月24日第一小法廷判
決・民集25巻4号574頁,最高裁昭和49年12月12日第一小
法廷判決・民集28巻10号2028頁)。
(ウ)本件において,控訴人らに職務命令違反があり,懲戒事由該当性
が認められること自体は明らかであって,都教委が控訴人らを懲戒処
分に付したこと自体には,何ら職務上通常尽くすべき注意義務違反も,
過失もなかったことは明らかである。
減給以上の処分を受けた控訴人P1ら21名は,いずれも過去に懲
戒処分を受けていたものであり,懲戒権者たる都教委が,処分量定に
おいて,控訴人らの処分歴を考慮すること自体については,神戸税関
事件最高裁判決が「懲戒権者は,…当該公務員の右行為の前後におけ
る態度,懲戒処分等の処分歴…等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分
をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択
すべきか,を決定することができる」と判示しており,何ら違法では
ない。
(エ)最高裁平成24年両判決は,不起立等については,個人の歴史観
ないし世界観等に起因するものであるとの特殊性があり,不起立等に
対する懲戒において減給処分以上の処分を選択するには,過去の1回
の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴があること
のみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合
に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規
律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴
が減給処分の不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保
持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要すると判
示している。
しかしながら,上記判示は,最高裁平成24年両判決によって初め
て示された判断であって,神戸税関事件最高裁判決においては,懲戒
処分の処分量定において懲戒権者は過去の処分歴等を考慮することが
でき,また,懲戒処分は社会観念上著しく不合理でない限り,裁量権
の範囲内のものとして適法であるとされていた。
(オ)以上によれば,都教委が上記控訴人P1ら21名に対し,減給処
分以上の処分に付することを裁量の範囲内の適法行為であると判断し
たことはやむを得ないことであって,都教委には,職務上通常尽くす
べき注意義務違反も,過失もない。
イ慰謝すべき損害がないことについて
(ア)本件各処分のうち,停職処分を受けた控訴人P7については,P
7停職処分が違法として取り消されれば,取消判決の効力によって経
済的不利益は遡って回復される。
また,本件停職処分を受けたこと自体による精神的苦痛については,
公務員には就労請求権が認められていないことからすれば,処分自体
が取り消されれば回復する。
したがって,控訴人P7について慰謝すべき損害はない。
(イ)また,上記控訴人P1ら21名に対する本件各処分については,
控訴人P7に対する本件停職処分のほかは全て減給処分であり,減給
処分については,その不利益はもっぱら経済的不利益にとどまるもの
である。
仮に上記控訴人らに対する減給処分が違法として取り消されれば,
取消判決の効力によって上記経済的不利益は遡って回復される。
減給処分を受けたこと自体による精神的苦痛についても,処分自体
が取り消されれば回復する。
したがって,減給処分を受けた上記控訴人らについては,慰謝すべ
き損害は存在しない。
第3当裁判所の判断
1事実関係
本件判断の前提となる事実関係は,次のとおり補正するほかは,原判決の
「事実及び理由」中「第4争点に対する判断」の1のうちの控訴人らと被
控訴人に関する部分に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決77頁13行目の「改善されていはいるが」を「改善されては
いるが」に改める
(2)原判決96頁13行目の「平成16度卒業式」を「平成16年度卒業
式」に改める。
(3)原判決99頁1行目の「平成17度卒業式」を「平成17年度卒業
式」に改める。
(4)原判決100頁14行目の次に行を改めて次のように加える。
「カ都教委の懲戒処分の量定基準について
都教委は,教職員の非違行為への対応として,過去の非違事例を類
型化し,これらに対する懲戒処分の標準的な処分量定を作成して公表
していること,本件各処分当時の当該処分量定の内容は,概要,以下
のとおりであることが認められる(甲278)。
(ア)処分量定の決定
以下①~③のほか,適宜,非違行為後の対応等も含め総合的に考
慮の上判断するものとする。処分量定を定める表(省略)における
処分量定は,飽くまで標準であり,個別の事案の内容や処分の加重
によっては,同表に掲げる処分量定以外とすることもあり得る。ま
た,同表に掲げられていない非違行為についても,懲戒処分の対象
となり得る。
①非違行為の態様,被害の大きさ及び司法の動向など社会的重大
性の程度
②非違行為を行った職員の職責,過失の大きさ及び職務への影響
など信用失墜の度合い
③日常の勤務態度及び常習性など非違行為を行った職員固有の事

(イ)処分量定の加重
過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同
様の非違行為を行った場合は,量定を加重する(以下「同種再非違
行為加重方針」という。)。
(ウ)職務命令違反に関する処分量定
上記表では,職務に伴う非行としての勤務態度不良(職務命令違
反,職場離脱等)についての処分量定は,減給と戒告としている。
キ本件各処分の量定について
(ア)証拠(乙71,86の2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の
事実が認められる。
都教委は,控訴人らの本件不起立等について,以下a~dの4事
項を考慮するとともに,過去の同種事案に関する処分内容を参考と
して処分量定を行っており,都教育庁人事部職員課における事情聴
取,処分量定案の検討,教職員懲戒分限審査委員会に対する諮問,
同委員会による答申,都教委における決定という一連の手続を経て
本件各処分を行った。
a本件不起立等は,児童・生徒にとって学校生活に有意義な変化
や折り目をつけるために重要な学校行事である卒業式等の場にお
いて,公教育を担う教育公務員が,公教育の根幹である学習指導
要領に基づき教育課程を適正に実施するために発せられた重要な
職務命令に違反するという重大な非違行為であること。
b本件不起立等は,卒業式等の来賓,保護者はもとより,適正に
国旗・国歌指導を受けることとされている児童・生徒を目の前に
して教職員が行ったものであり,教育上好ましくないこと。
c本件不起立等は,平成11年通達以後,校長が適正に卒業式等
を実施するよう指導を繰り返し行い,さらに,本件通達が発せら
れた後にも,本件通達に基づいて校長が教職員に対して適正に卒
業式等を実施するように指導を行った経過があったにもかかわら
ず,発生した職務命令違反であること。
d学校も組織である以上,上司の職務上の命令に従うことは当然
のことであり,本件不起立等は,組織人としての職務上の義務違
反であること。
(イ)起立斉唱等を命ずる職務命令に違反した教職員に対する懲戒処
分については,本件通達発出後本件各処分時までにおいては,初回
の非行は戒告処分,再非行の場合は,前記の同種再非違行為加重方
針により,例外なく前回処分よりも重い処分とされていた。
都教委は,それまでの同種事案の懲戒処分例を参考にし,控訴人
らに対し本件各処分をしたが,戒告処分については,上記a~dの
事項により,決して軽微な非行とはいえないことが考慮され,減給
処分以上の処分については,これに加え,繰り返し同様の非違行為
を行った責任は重いとして,前記の同種再非違行為加重方針により
処分が加重された。」
2争点(1)(本案前の争点)及び(2)(本案の争点)のアないしコについて
(1)争点(1)(本案前の争点)及び(2)(本案の争点)のアないしコについ
ての判断は,当審における控訴人らの主張に対する判断を後記(2)のとお
り加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第4争点に対する判
断」の2ないし10(原判決100頁15行目冒頭から138頁25行目
末尾まで)のうちの控訴人らと被控訴人に関する部分に記載のとおりであ
るから,これを引用する。
(2)当審における控訴人らの主張に対する判断
ア本件各職務命令の発令についての本件各校長の裁量について
控訴人らは,本件通達の発出をめぐる議論の経過や本件通達発出後の
都教委の本件各校長に対する指導態様,及び,例外なく全ての都立学校
で包括的職務命令が発せられ,2校以外は全て文書による個別職務命令
が発せられたという事実などに鑑みると,本件各校長が,本件通達発出
後,本件実施指針の定める卒業式等の実施のために本件各職務命令を発
する必要性を自ら判断して控訴人らに対する本件各職務命令を発したと
の事実はなく,このことは多くの校長経験者の証言等からも明らかであ
る旨主張する(前記第2の4(1))。
(ア)本件通達の発出をめぐる議論の経過について
aまず,本件通達をめぐる議論については,甲13によれば,本件
通達が発出された直前である平成15年10月1日の第3回対策本
部幹事会における討議では,「通達名が,指導でいいのかどう
か。」,「文言にふくみをもたせないようにするべきである。」,
「『職務命令を発した場合において』とある。これだと,職務命令
を発しなければ処分しないということになる。」という発言がされ
たことが認められる。
しかし,通達名を「指導」としないことが直ちに校長の裁量を否
定することにはつながらないし,その余の発言は,その文脈からす
ると,職務命令を発しない場合に処分しない,逆に言えば,職務命
令を発した場合にだけ処分をすると理解される表現は避けるべきで
あるというものであり,職務命令に関する校長の裁量を否定すべき
であるとの意見であるとは解されない。
bまた,甲14によれば,平成15年10月9日の第4回対策本部
幹事会では,「この通達は校長に対しての職務命令であるから,教
職員への周知は必要である。」,「入学式や卒業式の適正実施に向
けて,教職員に対し繰り返し指導していただく。それでも,校長の
指導に従わないときは,職務命令を発するということだ。」との発
言がされたことが認められるが,上記発言のうち前者は校長の裁量
とは関係がないし,後者は,むしろ校長に起立斉唱等に関する職務
命令を発する裁量があること前提とするものであることが明らかで
ある。
cさらに,甲15によれば,平成15年10月17日の第3回対策
本部会合においては,通達及び実施指針案が提示されたが,その中
には,校長の職務命令に関する条項が復活し,従来の「校長が,…
職務命令を発した場合において…教職員が…服務上の責任を問われ
ることがあることを,教職員に周知すること」との文言が,「教職
員が本通達に基づく校長の指示に従わない場合は,服務上の責任が
問われることを,教職員に周知すること」に変更されたことが認め
られる。
しかし,上記の「本件通達に基づく校長の指示」との文言は,校
長が本件通達に基づき必ず上記指示(職務命令)を発令しなければ
ならないことを意味するとは解されないし,甲15には,上記の文
言の変更が上記のような趣旨で行われたことをうかがわせる記載も
ない。また,「校長の指示に従わない場合は,服務上の責任が問わ
れる」との文言は,上記の「指示」(後に「職務命令」と変更)が
出されている場合で,かつ,教職員がこれに従わない場合に当該教
職員の責任を問うことを想定したものであり,上記文言の変更が校
長の裁量を否定する根拠となるとは解されない。
dそして,平成11年通達が廃止されたこと(甲1)も,本件通達
において,校長の裁量を否定する根拠となるとは解されず,他に,
本件通達をめぐる議論の経過の中に,本件各職務命令を発すること
につき本件各校長に裁量がないことを裏付けるものはない。
e証拠(甲11~15)及び弁論の全趣旨によれば,本件通達発出
をめぐる議論においては,卒業式等における起立斉唱等の適正実施
のためには,校長が教職員に対し職務命令を発し,教職員がこれに
従わない場合には,服務上の責任を問うことが実効的である旨議論
されたことが認められるものの,校長には上記職務命令を発するか
否かについての裁量はなく必ずこれを発しなければならない旨の議
論はされていなかったことが認められる。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(イ)本件通達発出後の都教委の本件各校長に対する指導態様について
a前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中の1(5)
ウ及びエ(原判決85頁10行目冒頭から91頁17行目末尾ま
で)に説示のとおり,本件通達発出以後の都教委の本件各校長に対
する指導については,平成15年10月23日の「教育課程の適正
実施にかかわる説明会」におけるP31人事部長の指導,同日の校
長連絡会における主任指導主事による指導,同月から同年11月に
かけて予定されていた都立学校15校の周年式典に向けた指導主事
等による各校校長に対する個別的指導(甲607~610),同年
12月9日の都立高校校長連絡会及び平成16年1月30日におけ
るP32指導課長による指導,同年2月10日の都立高校校長連絡
会後の学区毎の連絡会における指導主事による指導等が行われたこ
とが認められる。そして,上記各指導の内容は,卒業式等における
起立斉唱等の適正実施(本件実施指針の適正実施)のためには,校
長が教職員に対し職務命令を発し,教職員がこれに従わない場合に
は服務上の責任を問うことが実効的であることを前提に,職務命令
発令の方法(書式を含む。)や発令する際の注意事項等を細かく教
示するものであり,これらの指導の結果,平成15年度及び16年
度の卒業式において全ての学校で職務命令が発せられていることを
併せ考えると,上記の指導は相当強力なものであったことが認めら
れる。
しかし,教職員に対する職務命令を発令する権限は各校長にあり
(学校教育法28条3項,40条,51条及び76条),その権限
を行使するかどうかについては当然に校長に裁量が認められるべき
ところ,上記各証拠によっても,都教委が本件各校長から,起立斉
唱等を適正に実施するために職務命令を発するかどうかの判断権を
法的に奪う措置を採った事実は認められず,他にこれを認めるに足
りる証拠はない。もとより,起立斉唱等を確実に実施するためには,
教職員に対する職務命令を発することが実効的であることは明らか
であるから,各学校において上記適正実施がされなかった場合に学
校管理者として責任を負う立場にある各校長が,自らの判断で職務
命令を発することは十分に考えられるところであり,平成15年度
及び16年度の卒業式において全ての学校で職務命令が発せられて
いる事実をもって,校長に上記の裁量がなかったということもでき
ない。
b控訴人らは,校長経験者の人事委員会における発言によれば,職
務命令を発するか否かにつき本件各校長に裁量がなかったことは明
らかである旨主張し,これに沿う証拠として,甲23,24,55
2,576,624~626等を挙げ,また,被控訴人提出に係る
乙41の1~25(枝番号があるものはその全てを含む。)にも,
上記主張に沿う部分がある旨主張する。
しかし,上記各証拠における校長経験者の各発言は,当時におい
て,職務命令を出さざるを得ない状況にあった旨を述べるものであ
るが,上記aに説示のとおり,起立斉唱等を確実に実施するために
は,各校長において教職員に対する職務命令を発することが実効的
であったところ,各学校において起立斉唱等の確実な実施がされな
かった場合に学校管理者として責任を負う立場にある各校長が,そ
の確実な実施のためには職務命令を発するしかないと自ら判断して
これを発することは十分に考えられるところであり,各校長がこの
ような立場にあったからといって法的に職務命令を発する裁量が都
教委によって奪われていたということはできない。したがって,上
記の旨を述べる校長経験者の発言をもって,控訴人らの上記主張を
裏付けるものとはいえない。なお,上記乙41の1~25中には,
各校長が都教委からの命令ではなく,自らの判断で職務命令を発令
した旨を発言した部分もある(乙41の3〔539項〕・5〔80,
136,137,147,149,150頁〕・11〔10項〕・
18〔379,380項〕,なお,乙72(1~5,7頁),86
の3(2~9頁)中にも同様の発言がある。)。
cしたがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(ウ)以上によれば,本件各校長が,本件通達発出後,本件実施指針の
定める卒業式等の実施のための職務命令を発することにつき裁量がな
かった旨の控訴人らの主張は,採用することができない。
イ本件通達の発出の意図について
(ア)控訴人らは,本件通達が発出されたのは,国旗国歌条項について
の都教委の指導による改善が見られなかったからではなく,平成▲年
に都知事に就任したP29やその任命に係る教育長らが,国旗国歌と
いう国家シンボルに「敬意を表明」することができない教職員の世界
観・歴史観や教育観,信仰に対し否定的評価をし,これらの者に対し
制裁を加えるという政治的目的で発出されたものである旨主張する
(前記第2の4(2))。
しかしながら,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判
断」中の7(2)のア及びイ(原判決121頁21行目冒頭から123
頁11行目末尾まで)に認定説示のとおり,都立高等学校における国
旗掲揚,国歌斉唱の実施率は,平成12年度卒業式から100%とな
ったものの,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えないところに置いた
り,国歌斉唱時に教員が起立しないなどの実態があったこと,都教委
は,このような実態を踏まえ,平成14年11月には平成11年通達
に基づいて一層の改善を図るよう依頼する通知を発出するなどして指
導を継続したが,平成14年度卒業式及び平成15年度入学式におけ
る国旗掲揚の方法等についての調査結果は,平成10年度実施指針で
定められた方針どおりに国旗掲揚等を行った都立学校等は全体の半分
にも満たないものであり,また,国歌斉唱時に起立をしない教員がい
るなどの実態がなおあったこと,そこで,都教委は,平成15年6月
に本件対策本部を設置し,卒業式等の適正実施について検討した結果
を取りまとめ,以上の課題を解決するためには各学校で国旗掲揚及び
国歌斉唱の実施についてより一層の改善,充実を図る必要があるとし
て,同年10月23日,都立学校長に対し,本件通達を発出したこと
が認められる。
そして,上記の本件通達発出までの経過に加えて,本件通達の内容
が,国旗掲揚及び国歌斉唱によって国旗・国歌を尊重する態度を育て
ることが求められている卒業式等の学校行事において,児童・生徒に
範を示すべき立場にある教職員らに対して儀式的行事における儀礼的
所作として国歌斉唱時に起立を求めるものであって,合理性を有する
ものであることにも鑑みると,平成▲年に都知事に就任したP29や
その任命に係る教育長らが,国旗国歌という国家シンボルに「敬意を
表明」することができない教職員の世界観・歴史観や教育観,信仰を
否定し,これらの者に対し制裁を加えるという政治的目的をもって本
件通達を発出したものということはできないというべきである。
(イ)控訴人らは,上記主張に沿う証拠として,甲92,95~97,
170の1・3,171等を挙げるが,これらによって上記控訴人ら
の主張を認めることはできず,他に控訴人らの上記主張を認めるに足
りる証拠はない。
また,控訴人らは,上記(ア)の認定説示につき,国家斉唱時に教員
が起立しないなどの実態があった旨の校長経験者等の供述(乙62,
70,72~79,84,85,86の1・3~5)は,都教委の支
配下にある者の供述であり,客観性がなく信用できない旨主張するが,
供述内容は具体的で,相互に信用性を補完し合っている上,平成14
年度卒業式及び平成15年度入学式における国旗掲揚の方法等につい
ての調査結果(甲11,557)とも合致しているから,十分信用で
き,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
ウ公権力が国家シンボルに対する特定の行為を強制することは許されな
いとの主張について
(ア)控訴人らは,公権力が国家シンボルに対する特定の具体的行為
(国歌を起立して斉唱する,国歌をピアノで伴奏するなど)を公の儀
式で行うことを唯一正しいことと決め付け,これを国民に強制するこ
とは,国民に対する国家への統合の強制であり,個人の尊厳を否定す
るものであるから,立憲主義に反し客観的に違法であるし,最高裁判
例によれば,個人が自主的に決定すべき事柄等については,多数決原
理によっても協力義務を課すことができないところ,個人が国家シン
ボルとどのように向き合うかは個人が自由に決定すべき事柄であるか
ら,多数決原理をもって国家への帰属に肯定的な価値を認め,国家を
中心に個人を肯定する考えや態度を強制することは許されない旨主張
する(前記第2の4(3)ア及びイ)。
(イ)しかしながら,本件通達及び本件各職務命令は,国民一般を対象
とするものではなく,生徒等に対し法令等に従って教育指導を行う義
務を負う公務員である控訴人らに対するものであるから,国民一般に
対する行為の強制と控訴人らに対する行為の強制とを同一に論ずるこ
とはできない。そして,前記引用に係る原判決の「第4争点に対す
る判断」中の3(原判決101頁24行目冒頭から111頁24行目
末尾まで)に説示のとおり,本件通達及び本件各職務命令は,公務員
であり都立学校の教職員である控訴人らに対し,卒業式等の教育上の
特に重要な節目となる儀式的行事において,生徒等への配慮を含め,
教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図る目
的で発せられたものであり,その内容は,卒業式等の式典における慣
例上の儀礼的所作として,かつ,国旗国歌条項に沿った教育指導の一
つとして,国歌斉唱時の起立斉唱を求めるものであって,学校教育の
目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の
諸規定の趣旨に沿い,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性
を踏まえたものということができ,思想及び良心の自由について間接
的な制約となる面はあるものの,その目的,内容,これによってもた
らされる制約の態様等を総合的に較量すれば,制約を許容し得る程度
の必要性及び合理性が認められ,憲法19条に反しないし,また,前
記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中の4ないし10
(原判決111頁25行目冒頭から138頁25行目末尾まで)に説
示のとおり,憲法13条,20条,23条,26条などにも反しない
というべきである。
したがって,本件通達及び本件各職務命令は,国民一般を対象とす
るものではないことはさておいても,憲法に違反して,控訴人らに対
し,国家への統合を強制したり,個人の尊厳を否定し,多数決原理で
国家への帰属に肯定的な価値を認めて国家を中心に個人を肯定する考
えや態度を強制するものとはいえないから,控訴人らの上記主張は,
採用することができない。
エ起立斉唱等の義務付けは憲法19条に反しないことについて
(ア)a控訴人らは,憲法19条は個々人の思想及び良心の自由を保障
したものであるから,一般的,客観的に見て思想及び良心との結び
付きが認められない行為であっても,当該個々人が個別的,主観的
に「思想及び良心」と結び付くと考える行為については,これを公
権力により強制することは,その個人の思想及び良心と抵触するこ
とになり,儀礼的所作であっても,これを強制することは,当該強
制を受ける個人との関係で,思想及び良心の自由の制約の問題にな
る場合がある旨主張する(前記第2の4(4)ア(ア)及び(イ))。
しかし,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中
の3(2)(原判決102頁18行目冒頭から104頁23行目末尾
まで)に説示のとおり,人の思想及び良心の本質又は核心部分を直
接否定するような外部的行為を強制することは,その人の思想及び
良心を侵害することにほかならないから,憲法19条違反の問題が
生じ得ると解されるところ,各人が自己の思想及び良心の本質又は
核心部分を直接否定する外部的行為であると独自に考え,主張しさ
えすれば当該外部的行為を強制されない自由が一般的に認められる
とするならば,社会生活が成り立たず,社会秩序が維持できないこ
とは明らかであり,これを承認することはできないことからすると,
ある外部的行為を強制することが思想及び良心の本質又は核心部分
を直接否定し,ひいては思想及び良心の自由を侵害することになる
かどうかは,その外部的行為自体を一般的,客観的な見地から判断
して行うのが相当であると解される。
そうすると,社会一般において儀礼的所作であると承認されてい
る行為を強制する行為は,仮に当該行為を強制される個人が主観的,
個別的に「思想及び良心」と結び付くと考えたとしても,思想及び
良心の自由を直接侵害する行為とはいえないというべきである。な
お,これが思想及び良心の自由に対する間接的な制約となる場合が
あることは,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」
中の3(3)(原判決104頁24行目冒頭から107頁15行目末
尾まで)に説示のとおりであり,この場合は,制約の目的及び内容
並びにこれによってもたらされる制約の態様等を総合的に考量して,
制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かの観
点から判断するのが相当であり,これが認められれば,当該制約は
許容されるというべきである(最高裁平成23年6月6日第一小法
廷判決・民集65巻4号1855頁参照)。
以上によれば,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
b控訴人らは,上記のように,思想及び良心の自由につき,直接的
制約と間接的制約に分けて考えることは,合憲性審査基準の適用回
避となり,両者の区別が判然としないから,有害無益であり,間接
的にせよ公権力による思想及び良心の自由に対する制約がある場合
には,当該制約が憲法上許容されるか否かは,厳格な合憲性審査基
準によって審査されなければならない旨主張する(前記第2の4
(4)ア(ウ))。
しかし,思想及び良心の自由の制約の態様が直接的か,あるいは
間接的かといった制約の態様の違いによって,合憲性の判定の仕方
が異なるのは当然であるから,控訴人らの上記主張は,採用するこ
とができない(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決参
照)。
(イ)控訴人らは,思想及び良心の自由は,精神的自由の中枢に位置し,
個人の尊厳を支える不可欠の条件であるから,その自由の保障は絶対
的なものであり,制約が正当化できるかどうかは厳格な合憲性審査基
準により判断されるべきであり,いわゆる猿払事件の最高裁判決(最
高裁昭和49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁)の
合憲性審査基準である目的審査,目的と手段の関連性審査,利益均衡
の審査によると,本件通達及び本件各職務命令は,控訴人らの思想及
び良心の自由を侵害するものであり,許されない旨主張する(前記第
2の4(4)イ)。
思想及び良心の自由が,精神的自由の中枢に位置し,個人の尊厳を
支える不可欠の条件であることは明らかであり,それが内心にとどま
る限りその自由の保障は絶対的なものであることは疑いのないところ
である。
しかし,思想及び良心の自由が外部的行為として現れ,社会一般の
規範等と抵触する場合には,その保障が絶対的であるということはで
きない。この場合は,制約が合憲か否かが問題となり得るのであり,
その制約が正当化できるか否かの判断基準も,上記のとおり,制約の
態様によって異なるものであるというべきである。
本件では,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中
の3(3)(原判決104頁24行目冒頭から107頁15行目末尾ま
で)に説示のとおり,控訴人らが,本件通達及び本件各職務命令によ
り,個人の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし
教育上の信念等に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的
行動を求められる限りにおいて,控訴人らの思想及び良心の自由に対
する間接的な制約となる面があることは否定し難いところ,このよう
な間接的な制約が許容されるか否かは,本件通達及び本件各職務命令
の目的及び内容並びにこれによってもたらされる制約の態様等を総合
的に考慮して,制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められ
るか否かという観点から判断するのが相当である(前掲最高裁平成2
3年6月6日第一小法廷判決参照)。控訴人ら主張に係るいわゆる猿
払事件の最高裁判決は,本件のように思想及び良心の自由に対する間
接的な制約が問題となった事案ではなく,公務員の政治活動に対する
直接的な制約が問題となった事案であり,事案が異なるから,その判
断基準を本件に適用することはできない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(ウ)控訴人らは,学校行事における秩序・規律の維持及び学校におけ
る意思統一という目的や学校教育法,学習指導要領及び国旗国歌法を
もって,起立斉唱等を強制することの正当化根拠にはならないし,子
どもの学習権を充足させるといった教師に求められる職務の公共性等
に照らすと,控訴人らが公務員であり,その職務に公共性があること
をもって,起立斉唱等を強制することを正当化する根拠とすることは
できない旨主張する(前記第2の4(4)ウ)。
しかし,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中の
3(3)(原判決104頁24行目冒頭から107頁15行目末尾ま
で)に説示のとおり,卒業式等の教育上の特に重要な節目となる儀式
的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわし
い秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるところ,
学校教育法は,小・中・高等学校における教育目標として,国家の現
状と伝統についての正しい理解と国際協調の精神の涵養を掲げ(18
条2号,36条1号,42条1号),国旗国歌条項も,学校の儀式的
行事の意義を踏まえて国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を行う旨
を定めており,また,国旗国歌法は,従来の慣習を法文化して,日の
丸を国旗とし,君が代を国歌とする旨を定めているのであるから,住
民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を
遂行すべきこととされる地方公務員である控訴人らにとっては,その
地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地公法30条,
32条)に鑑み,児童・生徒に対する学習指導要領(国旗国歌条項)
に沿った教育指導の一つとして行われる卒業式等において起立斉唱等
するよう発せられた本件各職務命令に従わなければならないのは当然
である。そして,上記の説示によれば,控訴人らが,本件通達や本件
各職務命令に従うことは,生徒の学習権の充足にも資するものであっ
て,これをないがしろにするものとは到底解されない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(エ)控訴人らは,国旗に向かい起立斉唱をすることは,客観的に見て
国家に対する忠誠を示す意味があるから,一定の思想性を持つ行為で
あるところ,国家とどう向き合うかは,個人の自律的判断に委ねられ
る事柄であるから,上記行為を国家が強制することは許されない旨主
張する(前記第2の4(4)エ)。
しかし,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中の
3(2)及び(3)(原判決102頁18行目冒頭から107頁15行目末
尾まで)に説示のとおり,卒業式等において起立斉唱する行為は,一
般的,客観的に見て,出席する教職員にとって通常想定される行為で
あり,卒業式等における慣例上の儀礼的所作としての性質を有する行
為ということができ,かつ,そのような所作として外部からも認識さ
れるものというべきであって,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要
素が含まれることを否定することはできないものの,国家に対する忠
誠を示す意味があるとまでは認められない。そして,本件通達及び本
件各職務命令が憲法19条等に反しないものであることは前記ウ(イ)
に説示のとおりである。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(オ)控訴人らは,起立斉唱等の強制は,これをすることができないと
の思想を有する教師をあぶり出す効果があるから,沈黙の自由を侵害
する上,本件各処分は,起立斉唱等をすることができないとの思想・
信条を有していることを理由にされた不利益取扱いであり憲法19条
に反する旨主張する(前記第2の4(4)オ及びカ)。
しかし,控訴人らの上記主張に理由がないことは,前記引用に係る
原判決の「第4争点に対する判断」中の3(4)ウ(原判決109頁
23行目冒頭から110頁12行目末尾まで)に説示のとおりである。
(カ)控訴人らは,バーネット判決は,国旗に向かって国歌を斉唱する
ことの義務付けが憲法上許されないことを示すアメリカ連邦最高裁の
判例であり,本件においても参考となる旨主張する(前記第2の4
(4)キ)。
しかし,バーネット判決と本件とでは事案が異なることは,前記引
用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中の3(4)オ(原判決
110頁20行目冒頭から111頁21行目末尾まで)に説示のとお
りであるから,控訴人らの上記主張は,採用することができない。。
オ本件通達,本件各職務命令及び本件各処分が憲法20条に違反しない
ことについて
(ア)a控訴人らは,起立斉唱等の強制が信仰の自由に対する間接的制
約であるとすれば,その合憲性は厳格な審査基準により判定される
べきである旨主張する(前記第2の4(5)ア(ア))。
しかし,信仰の自由についても,その制約が許容されるか否かの
判断については,前記の思想及び良心の自由の場合と同様に,その
制約の態様が直接的か,あるいは間接的かといった制約の態様の違
いによって差があり,合憲性の判定の仕方も異なるというべきであ
る。
本件では,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」
中の4(原判決111頁25行目冒頭から113頁2行目末尾ま
で)に説示のとおり,控訴人P2ら3名が,本件通達及び本件各職
務命令によって,その信仰に由来する行動(敬意の表明の拒否)と
異なる外部的行動を求められる限りにおいて,控訴人P2ら3名の
信教の自由についての間接的な制約があるというべきである。そし
て,この場合に制約が許容されるか否かについては,制約の目的及
び内容並びに制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に考量して,
上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否
かという観点から判断するのが相当である。なお,本件通達及び本
件各職務命令の目的及び内容並びに制限を介して生ずる制約の態様
等を総合的に考量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及
び合理性が認められる。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
b控訴人P2ら3名は,「日の丸」や「君が代」は,宗教国家及び
国家宗教の象徴でもあった上,歴史的に国家神道という宗教そのも
のと深く結び付いており,現在においても中立的なものと認められ
るに至っていないから,これらの宗教性を受容し難いと考える同控
訴人らの信念に鑑みると,本件通達,本件各職務命令は,同控訴人
らに「日の丸」や「君が代」を式次第に含む儀式への参加を強制す
るものとして,憲法20条2項違反に当たり,また,同控訴人らの
信仰の自由を直接侵害する行為であり,本件各処分は信仰を理由に
不利益をもたらすものとして同条1項に違反する旨主張する(前記
第2の4(5)ア(イ))。
しかし,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中
の4(原判決111頁25行目冒頭から113頁2行目末尾まで)
に説示のとおり,卒業式等における起立斉唱等は,儀式的行事にお
ける都立学校職員という社会的な立場にある者としての行動にすぎ
ず,本件通達及び本件各職務命令が,同控訴人らの有する信仰を否
定したり,その信仰の有無について告白を強要したりするものであ
るということはできないし,また,卒業式等における国歌斉唱時の
起立斉唱は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素が含まれるこ
とは否定できないものの,一般的,客観的に見て,儀式的行事にお
ける儀礼的所作に当たる行為であり,それを超えて,宗教的意味合
いを持つ行為であるということはできない。そして,控訴人P2ら
3名が,本件通達及び本件各職務命令によって,その信仰に由来す
る行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動を求められること
となり,その限りにおいて,その信教の自由についての間接的な制
約となる面があるとしても,本件通達及び本件各職務命令の目的及
び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡
量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認め
られるものである。
そうすると,同控訴人らに対する関係で本件通達及び本件各職務
命令は信教の自由を侵害しないから,控訴人P2ら3名に対する本
件各職務命令違反を理由としてされた本件各処分が信教の自由を侵
害するものであるということはできない。
したがって,同控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(イ)控訴人P2ら3名は,信仰の自由の制約についての合憲性判定基
準は目的審査,手段審査及び目的と手段との関連審査を中心とする厳
格な審査基準が要求される旨主張する(前記第2の4(5)イ)。
しかし,信仰の自由についても,その制約が許容されるか否かの判
断については,前記の思想及び良心の自由の場合と同様に,その制約
の態様が直接的か,あるいは間接的かといった制約の態様の違いによ
って差があり,合憲性の判定の仕方も異なるというべきであり,本件
における控訴人P2ら3名に対する関係では,前記(ア)に説示のとお
り,間接的制約が問題になるにすぎないから,同控訴人らの上記主張
は,採用することができない。
カ本件通達及び本件各職務命令が憲法13条,23条及び26条に違反
しないことについて
控訴人らは,教師には公権力によって一方的な見解を教授することを
強制されない自由があり,教育の本質的要請から,教授の具体的内容及
び方法につき創意工夫や一定程度の裁量が保障されているところ,本件
通達及び本件各職務命令は,教職員に対し,「国旗に向かって起立し,
国家を斉唱すること」という特定の行動を義務付けるものであり,国家
斉唱時に「起立斉唱」以外の行為を認めないことは,「国家斉唱時に起
立斉唱することが正しい」との一方的な観念に基づく指導を強制される
ことにほかならず,教師の上記裁量の余地を奪っていることは明らかで
あるから,控訴人ら教師の教授の自由を侵害し,違憲である旨主張する
(前記第2の4(6))。
しかし,国旗・国歌を尊重することが国際慣習となっていることは周
知の事実であることに加え,前記引用に係る原判決の「第4争点に対
する判断」中の3(2)(原判決102頁18行目冒頭から104頁23
行目末尾まで)に説示のとおり,卒業式等における起立斉唱等は,儀式
的行事において,都立学校職員という社会的な立場にある者として通常
想定される行動であり,教職員の教育上の信念等を否定したり,特定の
思想や観念と結び付くものであると評価することはできないから,本件
通達及び本件各職務命令によって卒業式等における起立斉唱等を教師に
対して義務付けることが,教師に対し,一方的な見解や観念を児童・生
徒に教授したり,植え付けたりすることを強制し,教師に認められた指
導上の裁量を不当に制約するものということはできない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
キ学習指導要領(国旗国歌条項)の法的拘束力について
控訴人らは,昭和51年大法廷判決の趣旨を踏まえると,国旗国歌条
項は,飽くまで大綱的基準としての法的拘束力を有するだけであるから,
教師に対し一方的な観念や理論を生徒に教えるように強制する趣旨を含
まない上,教師には創造的かつ弾力的な教育の余地が残されているとい
うべきであるから,教師に対し,一律に起立斉唱等を命じたり,生徒に
対する内心の自由の説明を禁止したりすることは,国旗国歌条項の上記
の大綱的基準性を否定することにほかならず,学習指導要領の趣旨に反
する旨主張する(前記第2の4(7))。
しかし,前記カに説示のとおり,本件通達及び本件各職務命令は,控
訴人らに対し,一方的な見解や観念を生徒に教えるように強制する趣旨
を含まないから,これらを発することが,学習指導要領(国旗国歌条
項)又はその大綱的基準性に反するとはいえない。なお,本件各職務命
令は,控訴人らに対し,内心の自由の説明を禁止することを命令するも
のではない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
ク本件通達及び本件各職務命令が教育基本法10条1項が禁止する「不
当な支配」に当たらないことについて
(ア)控訴人らは,昭和51年大法廷判決が,公立学校においては,教
育委員会は学校に対する管理権に基づき,学校の教育課程の編成につ
いて基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,
「特に必要な場合」には,具体的な命令を発することができると判示
したところ,行政調査ではない純粋な教育活動について,その内容又
は方法に関して教育委員会が校長に対しある特定の教育活動を禁止す
る具体的な職務命令を発することが「特に必要な場合」は,原則とし
て考えられないから,本件通達の発出が特に必要であったとはいえな
い旨主張する(前記第2の4(8)ア)。
しかしながら,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判
断」中の7(2)のア及びイ(原判決121頁21行目冒頭から123
頁11行目末尾まで)に認定説示のとおり,都立高等学校における国
旗掲揚,国歌斉唱の実施率は,平成12年度卒業式から100%とな
ったものの,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えない所に置いたり,
国歌斉唱時に教員が起立しないなどの実態があったこと,都教委は,
このような実態を踏まえ,平成14年11月には平成11年通達に基
づいて一層の改善を図るよう依頼する通知を発出するなどして指導を
継続したが,平成14年度卒業式及び平成15年度入学式における国
旗掲揚の方法等についての調査結果は,平成10年度実施指針で定め
られた方針どおりに国旗掲揚等を行った都立学校等は全体の半分にも
満たないものであり,また,国歌斉唱時に起立をしない教員がいるな
どの実態がなおあったこと,そこで,都教委は,平成15年6月に本
件対策本部を設置し,卒業式等の適正実施について検討した結果を取
りまとめ,以上の課題を解決するためには各学校で国旗掲揚及び国歌
斉唱の実施についてより一層の改善,充実を図る必要があるとして,
同年10月23日,都立学校長に対し,本件通達を発出したこと,こ
れら本件通達発出の経緯に照らすと,本件通達を発出する必要性が認
められ,また,上記のように,校長を通じて平成10年実施指針の徹
底を指導したにもかかわらず,これが徹底されていない実態が広く見
られたことに照らせば,これを実現するために,卒業式等における国
旗掲揚及び国歌斉唱の実施方法等も定めた本件通達により具体的な命
令を発することが「特に必要」であったということができる。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(イ)控訴人らは,平成10年実施指針が徹底されていない実態が見ら
れたという事実はないから,これを理由として本件通達の発出が特に
必要であったとはいえないし,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えな
い所に置いたり,国歌斉唱時に起立をしない教職員がいたとしても,
そのことが上記の「特に必要な場合」を基礎付ける事情にはならない
旨主張する(前記第2の4(8)イ)。
しかし,平成10年実施指針が徹底されていない実態が見られたの
は,前記(ア)のとおりである。
また,国旗国歌条項の制定趣旨等は,前記引用に係る原判決の「第
4争点に対する判断」中の6の(1)ア(原判決116頁5行目冒頭
から117頁5行目末尾まで)に説示のとおりであり,生徒等に国旗
・国歌に対する一層正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育
てることなどを目的として,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱
による教育指導を求めるということにあることに照らすと,国旗国歌
条項が,単に国旗掲揚及び国歌斉唱を実施すれば足りるという趣旨で
定められたものであると解することはできないから,平成13年以降
全ての都立学校の卒業式等において国旗掲揚及び国歌斉唱を実施して
いるとはいえ,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えない所に置いたり,
教師が起立斉唱をしないといった実態は,上記の国旗国歌条項の制定
趣旨等に鑑み,国旗・国歌に関する教育,指導の在り方として望まし
くないものというべきであり,このような実態を踏まえて国旗・国歌
の指導をより一層改善,充実することを目的としてされた本件通達の
発出は,前記「特に必要な場合」の要件を満たすものであった。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(ウ)控訴人らは,①平成10年実施指針における国旗を式典会場の
正面に掲げるという方法は,十分に徹底されていたこと,②会場設
営の方法につきフロア式・対面式の禁止は,学校ごとの実態や生徒の
発達段階及び特性に合わせて生徒達に「厳粛かつ清新な気分」を味わ
うことを可能にするために行われていた卒業式等を禁止するものであ
ること,③校長が教師に対し起立を促すかどうか,起立斉唱や伴奏
の方法をどのようにするかは,校長の教育的配慮に基づく裁量に属す
るものであることからすると,本件通達における国旗掲揚についての
指示内容は,校長の裁量を不当に制約するものである旨主張する(前
記第2の4(8)ウ)。
しかし,上記①については,平成10年実施指針における国旗を式
典会場の正面に掲げるという方法が十分に徹底されていなかったこと
は前記(ア)に認定説示のとおりである。
また,上記②については,前記引用に係る原判決の「第4争点に
対する判断」中の7(3)オ(イ)(原判決126頁20行目冒頭から1
27頁8行目末尾まで)に説示のとおり,本件実施指針において,会
場設営の方法について,「卒業式を体育館で実施する場合には,舞台
壇上に演台を置き,卒業証書を授与する」,「入学式,卒業式等にお
ける式典会場は,児童・生徒が正面を向いて着席するように設営す
る。」等としており,相当程度具体的に指示する内容のものであると
こころ,会場設営の方法としては,これ以外の方法(いわゆるフロア
方式等)も考えられるが,卒業生に対する卒業証書の授与を式典会場
の正面舞台の壇上において行い,参列者が当該授与の場面(正面舞
台)を注目するという形式の会場設営の方法は,卒業式等に参列する
児童・生徒(特に卒業生)に対して,厳粛かつ清新な気分を味わせて
教育効果を高めるものということができるから,上記指示内容は相当
であり,このような会場設営の方法を具体的に命じることが,卒業式
等の実施における校長の裁量権を不当に制約するものとはいえない。
さらに,上記③については,前記アに説示のとおり,本件通達は,
卒業式等において,教職員に対し,起立斉唱等をするよう職務命令を
発することを義務付けるものではないから,職務命令を発することに
関する校長の裁量は何ら制約されていないというべきである。また,
本件実施指針の定める起立斉唱の方法(式典会場において,教職員は,
会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。)は,
一般的な方法であり,伴奏の方法(国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により
行う。)も,卒業式等に参列する児童・生徒に対し,厳粛かつ清新な
気分を味わせて教育効果を高めるという観点からも通常望ましいもの
であり,これらの方法は相当であるから,上記方法の指示が卒業式等
の実施における学校(校長)の裁量権を不当に制約するものというこ
とはできない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
ケ本件通達及び本件各職務命令が自由権規約18条に違反しないことに
ついて
(ア)控訴人らは,自由権規約18条の解釈に当たっては,条約法条約
31条及び自由権規約の関係規定に基づき,自由権規約委員会による
一般的見解,最終意見及び見解等の有権的解釈が十分に尊重されなけ
ればならないところ,これらによれば,本件通達及び本件各職務命令
による起立斉唱等の強制は,自由権規約18条1項に反することが明
らかである旨主張する(前記第2の4(9)ア)。
しかし,本件通達及び本件各職務命令が憲法19条,20条に違反
するものではないことは,前記引用に係る原判決の「第3争点に対
する判断」中の3及び4(原判決101頁24行目冒頭から113頁
2行目末尾まで)に説示のとおりであるから,本件通達及び本件各職
務命令が自由権規約18条1項に反するとはいえず,控訴人主張に係
る上記自由権規約委員会による一般的見解,最終意見及び見解等の有
権的解釈によっても,上記結論が左右されるものではない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(イ)控訴人らは,児童の権利に関する条約12条及び14条によって
保護される利益(子どもの意見表明権,思想及び良心の自由並びに宗
教の自由)は,公共の利益である上,控訴人らの利益に反するもので
はないから,控訴人らが本件各処分の違法性を基礎付ける根拠として,
本件通達及び本件職務命令が同条約12条及び14条に違反する旨主
張することは,行訴法10条1項に反しない旨主張する(前記第2の
4(9)イ)。
しかし,仮に,控訴人らの上記主張が,行訴法10条1項に反しな
いとしても,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判断」中
の8(2)(原判決134頁11行目冒頭から末行末尾まで)に説示の
とおり,本件通達は,本件実施指針に定められていないことについて
は,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地があり,弾力的な実施が
可能であり,卒業式等の実施方法について,各学校の裁量の余地を残
しているということができるから,本件通達(本件実施指針)に基づ
いて国旗・国歌の指導を行うことが,児童・生徒の思想及び良心の自
由又は信教の自由を侵害するという関係にあるということはできない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
3争点(2)ケ(本件各処分は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したもの
であるか)について
(1)職務命令に違反する不起立等に対する懲戒処分における懲戒権者の裁
量について
ア(ア)公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当
すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほ
か,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,
選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考
慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にい
かなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断
は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又
はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される
(最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1
101頁,最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1
号1頁参照)。
(イ)地方公務員に対する懲戒処分は,軽い順に,戒告,減給,停職,
免職の4種類がある(地公法29条1項)。戒告処分は,その責任を
確認してその将来を戒める処分であり,減給処分は,処分それ自体に
よって一定期間給与が減額されるという直接の給与上の不利益が及ぶ
処分であり,停職処分は,処分それ自体によって地方公務員たる法的
地位に一定の期間における職務の停止及び給与の全額の不支給という
直接の職務上及び給与上の不利益が及ぶ処分である。なお,戒告処分
においては,本給の減額はないが,昇給の延伸や勤勉手当の減額が条
例に基づいて行われる。
イ(ア)本件において,前記ア(ア)の諸事情についてみると,本件不起立
等の性質,態様は,全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒
業式等において行われた教員による職務命令違反であり,本件不起立
等は,その結果,影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序
や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより
式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。
(イ)他方,本件不起立等の動機,原因は,控訴人らの信念等に基づく
もので,控訴人らの歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」や
「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに,本件各職務命令により求
められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動と
が相違することであり,個人の歴史観ないし世界観等に起因するもの
である。また,本件不起立等の性質,態様は,上記のとおり,その結
果,影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一
定程度損なう作用をもたらすものであって,それにより式典に参列す
る生徒への影響も伴うことは否定し難い面がある一方,卒業式等に対
する積極的な妨害等の作為ではなく,物理的に式次第の遂行を妨げる
ものではない。そして,本件不起立等の結果,影響も,上記のような
面がある一方で,本件不起立等のこのような性質,態様に鑑みると,
当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかにつ
いて客観的な評価の困難な事柄であり,本件不起立等により卒業式等
の運営,進行に具体的に支障が生じた事実を認めるに足りる証拠はな
い。
ウ本件各職務命令は,前記引用に係る原判決の「第4争点に対する判
断」中の3ないし10(原判決101頁24行目冒頭から138頁25
行目末尾まで)に説示のとおり,憲法19条,23条などに違反するも
のではなく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等
を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質
及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事
にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって
(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決参照),このような観
点から,その遵守を確保する必要性があるものということができる。こ
のことに加え,前記のとおり,その結果,影響として,学校の儀式的行
事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすもので
あって,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難
い面があることによれば,本件各職務命令の違反に対し,教職員の規律
違反の責任を確認してその将来を戒める処分である戒告処分をすること
は,学校の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付けられる
ものであって,法律上,処分それ自体によって教職員の法的地位に直接
の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではないことも併せ考慮す
ると,前記認定した将来の昇給等への影響や勤勉手当への影響を勘案し
ても,過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等にかかわら
ず,基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができ
ると解される。
前記イ(イ)においてみた事情に関しては,本件不起立等に対する懲戒
において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて,
本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする事情であるとはい
えるものの,このことを勘案しても,本件各職務命令の違反に対し懲戒
処分の中で最も軽い戒告処分をすることが裁量権の範囲の逸脱又はその
濫用に当たるとは解し難い。また,本件各職務命令の違反に対し1回目
の違反であることに鑑みて訓告や指導等にとどめることなく戒告処分を
することに関しては,これを裁量権の範囲内における当不当の問題とし
て論ずる余地はあり得るとしても,その一事をもって直ちに裁量権の範
囲の逸脱又はその濫用として違法の問題を生ずるとまではいい難い(最
高裁平成24年判決②参照)。
エ他方,前記イ(イ)においてみた事情によれば,本件不起立等に対する
懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することにつ
いては,事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。
そして,減給処分は,処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の
期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,
将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上,本件通達を踏まえて毎年度2回
以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重される
と短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案すると,上
記のような考慮の下で本件不起立等に対する懲戒において戒告を超えて
減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲
戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて
「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必
要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択する
ことの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを
要すると解すべきである。
したがって,不起立等に対する懲戒において減給処分を選択すること
について,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるために
は,例えば過去の1回の卒業式等における不起立等による懲戒処分の処
分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるに
は足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容
や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるな
ど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案して
もなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであ
ることを要するというべきである(最高裁平成24年判決②参照)。
オ(ア)以上の点について,控訴人らは,まず,戒告処分も,これより重
い減給以上の処分と同様に,不起立等の行為の動機が思想及び良心の
自由に由来するものであり,行為態様が積極的な妨害行為を伴うもの
でないこと,給与上の不利益には,質的差異はなく,量的な差もごく
小さいこと,卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加
重されると,短期間で不利益が拡大していくものであることを挙げ,
戒告処分についても,減給処分などと同様に慎重な考慮が必要である
旨主張する(第2の4(10)ア(ア))。
しかし,本件各処分のうち戒告処分を受けた控訴人らの本件不起立
等の動機が,思想及び良心の自由に由来し,行為態様も積極的な妨害
行為を伴うものでないことことは認められるものの,給与上の不利益
については,戒告処分が,勤勉手当の減額という条例上の不利益や将
来の昇給等への間接的な影響を受けるのにとどまるのに対し,減給や
停職処分は,法律上の不利益として一定期間,給与そのものが直接減
額ないし不支給とされるのみならず,その結果が期末手当,退職金,
年金等に直接影響するなど多大な不利益を伴うものである。それゆえ,
減給以上の処分は,短期間に懲戒処分が累積して加重されると,重ね
て戒告処分をされるのと比較し,重大な法律上の不利益が短期間に拡
大していくことになるものである。これらの事情に照らすと,戒告処
分とこれより重い減給や停職処分とで,処分選択の際に要求される慎
重さの程度に差があることはやむを得ないものというべきである。
控訴人らは,戒告処分は,減給処分と異なり,本給の減額はないも
のの,それ以外の教職員の給与や身分に関わる不利益は全く同じであ
るなどと主張し,戒告処分においても,退職金,年金支給額に影響を
受ける旨主張する(第2の4(10)ウ(イ))が,弁論の全趣旨によれば,
戒告処分による退職金及び年金支給額への影響は,本給の昇給の延伸
や圧縮による間接的なものであり,その額も減給処分と比べて相当低
いことが認められるから,採用することができないし,控訴人ら主張
に係るその他の主張も上記説示に照らし,採用することができない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(イ)また,控訴人らは,本件不起立等を行った原因・動機は,憲法上
保障を受けるべき思想及び良心の自由に由来するものであり,公務員
関係の秩序維持など憲法的価値でないものと比較できないほど大きい
から,処分の量定の際の考慮事項としては極めて重要であり,戒告処
分においてもより慎重な対応をすべきである旨主張する(第2の4(1
0)ア(イ))。
しかし,前記ウに説示のとおり,本件各職務命令は憲法19条など
に違反するものではなく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の
意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公
務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を
含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進
行を図るものであって(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判
決参照),その遵守を確保する必要性は大きいというべきである。な
お,公務員の選定罷免権を国民固有の権利とし,全ての公務員が全体
の奉仕者であるなどと定める憲法(15条1項,2項)が,公務員秩
序の維持を憲法的価値と認めていないとはいえない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(2)本件各処分のうち戒告処分を受けた控訴人らについて
ア控訴人P33,同P34,同P35,同P36,同P37,同P38,同
P39,同P40,同P41,同P42,同P43,同P44,同P45,
同P46,同P47,同P48,同P49(以下「控訴人P49」とい
う。),同P50,同P51,同P52,同P53,同P54,同P55,
同P6,同P8,同P56,同P57,同P58,同P59,同P60,
同P61,同P24,同P62,同P63,同P17,同P64,同P6
5,同P66,同P25,同P67,同P68,同P69,同P70,同
P71,同P72,同P73は,前記引用に係る原判決の「第4争点に
対する判断」の1(6)のイ(原判決96頁9行目冒頭から98頁2行目末
尾まで)及びオ(原判決98頁23行目冒頭から100頁14行目末尾ま
で)に認定のとおり,卒業式等における本件不起立等を処分事由として,
いずれも本件各処分のうちの戒告処分を受けたが,上記戒告処分は上記控
訴人らにとって初めて受けた懲戒処分であったことが認められる。
しかし,前記(1)ウの説示によれば,このように過去に処分歴のない
者に対してされた戒告処分であっても,社会観念上著しく妥当を欠くも
のとはいえず,上記控訴人らに対する各戒告処分は,懲戒権者としての
裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとはい
えないものと解するのが相当である。
イ(ア)控訴人らは,懲戒処分は公務員関係の秩序維持のために科される
制裁であるが,教育部門においては,生徒の価値観の多様性や個性の
尊重の保障という教育本来の目的に適合した行政が行われなければな
らないから,本件通達によって「公務員秩序の維持」の名の下に教育
公務員に対する非教育的な行為の強制を行ったり,これに違反したと
して懲戒処分をすることは,行政権力の教育に対する不当な支配を目
的とするものであり,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するもの
として違法となる旨主張する(前記第2の4(10)イ(ア))。
しかし,前記(1)ウに説示のとおり,本件通達や本件各職務命令は,
憲法19条,23条などに違反するものではなく,学校教育の目標や
卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定
の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏
まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保
とともに式典の円滑な進行を図るものであって(前掲最高裁平成23
年6月6日第一小法廷判決参照),教育に対する不当な支配を目的と
して,控訴人らに非教育的行為を強制するものとはいえない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(イ)控訴人らは,最高裁平成8年判決における審査基準を本件に当て
はめると,本件各処分は社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲
を逸脱し又はこれを濫用したものであるから,違法である旨主張する
(前記第2の4(10)イ(イ))。
しかし,最高裁平成8年判決は,宗教上の信条に基づいて剣道実技
を拒否した学生が,原級留置,退学処分という極めて重い不利益処分
の取消しを求めた事案であって,本件とは事案を異にするから,控訴
人らの上記主張は,採用することができない。
(ウ)控訴人らは,本件各処分は,公務員秩序の維持といった本来の懲
戒処分の目的をもってされたものではなく,起立斉唱等に反対する教
職員をあぶり出し,懲戒処分をすることによって教育現場から排除す
ることを目的としたものであるから,裁量権の範囲を逸脱し又はこれ
を濫用したものとして違法である旨主張する(前記第2の4(10)ウ
(ア))。
しかし,本件各処分の目的が,起立斉唱等に反対する教職員をあぶ
り出し,懲戒処分をすることによって教育現場から排除することを目
的としたものでないことは,前記(1)ウに説示のとおりである。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(3)ア本件各処分のうち減給処分及び停職処分を受けた控訴人らについて
前記(1)のとおり,最高裁平成24年両判決によれば,職務命令に違
反する不起立等に対する懲戒処分において,戒告処分を超えて減給以上
の重い処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲
戒処分等の処分歴や不起立等の前後における態度等に鑑み,学校の規律
や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から
当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められ
る場合であることを要すると解すべきである。
そうすると,上記控訴人らに対する減給又は停職の懲戒処分が懲戒権
者の裁量の範囲内のものであるかを判断するに当たっては,最高裁平成
24年両判決のいう具体的事情の有無について検討する必要があるので,
以下では,上記控訴人らの本件不起立につき,上記具体的事情の有無を
個別に検討する。
なお,被控訴人は,取消請求の対象となった減給処分及び停職処分が
された時以降の事情についても主張しているが,懲戒処分の違法性の判
断の基礎とすべき事情は,処分時に存在した一切の事情であって,処分
後の事情は含まれないから,処分後の事情については,最高裁平成24
年両判決のいう具体的事情として考慮されない。
イ控訴人P1,同P2,同P3,同P4,同P5,同P6,同P8,同
P9,同P12,同P13,同P14,同P16,同P17,同P18,
同P19,同P20,同P21,同P22及び同P23について
(ア)控訴人P1(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号2)について
a処分歴等について
控訴人P1は,都立P74高校の平成15年度卒業式(平成16
年3月16日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わなかった(乙106の1・3)。
控訴人P1は,都教委による平成16年3月25日の事情聴取に
おいて,「理不尽な職務命令には従う必要はありません。」などと
述べた上で,事情聴取書への署名,押印を拒否した(乙106の
2)。
都教委は,控訴人P1に対し,上記不起立につき,同月31日付
けで,戒告処分をした。
その後,控訴人P1は,同年8月2日に服務事故再発防止研修
(基本研修)を受講したが,受講後に提出した受講報告書に,「こ
うした研修を行うことが法治国家で認められていいのだろうか。…
質問,応答が認められない研修があっていいのだろうか。」などと
記載した(乙106の4)。
b本件P1減給処分について
控訴人P1は,都立P74高校の平成16年度卒業式(平成17
年3月17日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から起立を促
されたが,これに応じなかった(乙106の5・7)。
控訴人P1は,都教委による平成17年3月24日の事情聴取に
おいて,不起立について「責任を取る必要は全くありません。」,
「10・23通達は明らかに憲法違反,法令違反,教育基本法に違
反している。」などと述べた上で,事情聴取書への署名,押印を拒
否した(乙106の6)。
都教委は,懲戒処分の量定の決定に際して,過去に非違行為を行
い懲戒処分を受けたにもかかわらず再び同様の非違行為を行った場
合には量定を加重するという処分量定の方針(同種非違行為加重方
針)を採っており(甲278),控訴人P1に対し,本件不起立に
つき,同月31日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P1
減給処分)をした。
なお,控訴人P1は,平成18年度入学式当日のホームルームに
おいて,生徒に対し,国旗国歌に関する行為については,内心の自
由があるから,自分の考えで行動してよい旨発言し,本件P1減給
処分後,このことにより指導部長から平成17年5月27日付けで,
厳重注意を受けた((乙106の12~15)。
(イ)控訴人P2(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号5)について
a処分歴等について
控訴人P2は,都立P75高校の平成15年度卒業式(平成16
年3月5日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受け
たが,これに従わなかった(乙107の1・3)。
控訴人P2は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,「答
えられません」と述べてこれを拒否し(乙107の1),都教委か
らの平成16年3月18日の事情聴取において「私は,本日動揺し
ていますので,弁護士の同席の有無にかかわらず受けたくありませ
ん。このことについては,弁護士と都教委の間で確認した上で,別
の機会を設けていただけますか。」と述べ,同月25日に設定され
た事情聴取にも結局応じなかった(乙107の2)。
都教委は,控訴人P2に対し,上記不起立につき,同月31日付
けで戒告処分をした。
その後,控訴人P2は,同年8月9日に服務事故再発防止研修
(基本研修)を受講したものの,受講後に提出した受講報告書に,
「現在係争中ですので,記述を留保いたします。」などと記載した
(乙107の4)。
b本件P2減給処分について
控訴人P2は,都立P75高校の平成16年度卒業式(平成17
年3月16日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わず(乙107の5・7),不起立を現認した副
校長から起立を促されたが,これに応じなかった。
控訴人P2は,都教委による平成17年3月25日の事情聴取を
拒否した(乙107の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P2に対し,本件不起立につき,同月3
1日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P2減給処分)を
した。
なお,控訴人P2には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(ウ)控訴人P3(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号15)について
a処分歴等について
控訴人P3は,都立P76高校の平成15年度卒業式(平成16
年3月3日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受け
たが,これに従わなかった(乙108の1・3)。
控訴人P3は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,起立
しなかった点は弁護士同席でなければ答えられない旨述べ(乙10
8の1),都教委からの平成16年3月25日の事情聴取について
も,「事情聴取を受けることは希望する,ただし,代理人である弁
護士との同席が条件である。」として,これに応じなかった(乙1
08の2)。
都教委は,控訴人P3に対し,上記不起立につき,同月31日付
けで戒告処分をした。
控訴人P3は,同年8月9日に服務事故再発防止研修(基本研
修)を受講したものの,研修中,質問を発したり,ビデオ撮影をし
ようとしたりした(乙108の4)。ただし,これにより,同研修
の実施が妨げられたことを認めるに足りる証拠はない。
b本件P3減給処分について
控訴人P3は,都立P76高校の平成16年度卒業式(平成17
年3月4日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受け
たが,これに従わず,不起立を現認した副校長から起立を促された
が,これに応じなかった(乙108の5・7)。
控訴人P3は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,弁護
士の同席がないとして,不起立だったかどうかに答えず(乙108
の5),都教委からの平成17年3月24日の事情聴取にも応じな
かった(乙108の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P3に対し,本件不起立につき,同月3
1日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P3減給処分)を
した。
なお,控訴人P3には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(エ)控訴人P4(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号24)について
a処分歴等について
控訴人P4は,都立P77高校の平成15年度卒業式(平成16
年3月13日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わなかった(乙109の1・3)。
都教委は,控訴人P4に対し,上記不起立につき,平成16年3
月31日付けで戒告処分をした。
控訴人P4は,同年8月9日に服務務事故再発防止研修(基本研
修)を受講したものの,受講後に提出した受講報告書の所感欄に,
「今後とも日本国憲法および教育基本法に基づいた教育を行なって
いきたいと考えています。」と記載した(乙109の4)。
b本件P4減給処分について
控訴人P4は,都立P77高校の平成16年度卒業式(平成1
7年3月15日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,不起立を現認した副校長から起立を促さ
れたが,これに応じなかった(乙109の5・7)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P4に対し,本件不起立につき,平成1
7年3月31日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P4減
給処分)をした。
なお,控訴人P4には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(オ)控訴人P5(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号25)について
a処分歴等について
控訴人P5は,都立P78高校の平成15年度卒業式(平成16
年3月12日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わなかった(乙110の1・3)。
控訴人P5は,卒業式終了後の校長からの事実確認において,起
立しなかったかどうかについては答えず(乙110の1),都教委
からの平成16年3月24日の事情聴取を拒否した(乙110の
2)。
都教委は,控訴人P5に対し,上記不起立につき,平成16年3
月31日付けで,戒告処分をした。
控訴人P5は,同年8月2日に服務事故再発防止研修(基本研
修)を受講したものの,受講後に提出した受講報告書に,「今回
『思想・良心の自由』(憲法19条)について係争中であり,記述
を留保する。なお,講義は90分予定を60分で打ち切った。質問
には全く答えず退出した講師こそ,地方公務員の職務専念義務違反
ではないか。」などと記載した(乙110の4)。
b本件P5減給処分について
控訴人P5は,都立P78高校の平成16年度卒業式(平成17
年3月12日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わなかった(乙110の5・7)。
控訴人P5は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,「弁
護士の立会いがなければ,不起立だったかどうかは答えられませ
ん。」と述べて事実確認を拒否し(乙110の5),都教委による
平成17年3月23日の事情聴取においても,弁護士の立会いを要
求し,事情聴取を拒否した(乙110の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P5に対し,本件不起立につき,同月3
1日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P5減給処分)を
した。
なお,控訴人P5には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(カ)控訴人P6(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号30-1・2)に
ついて
a処分歴等について
控訴人P6は,都立P79高校の平成16年度卒業式(平成17
年3月11日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わず,不起立を現認した副校長から2回起立を促
されたが,これに応じなかった(乙111の1・3)。
控訴人P6は,都教委による平成17年3月22日の事情聴取に
対して,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙111の
2)。
都教委は,控訴人P6に対し,上記不起立につき,同月31日付
けで,戒告処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「30-1」の
処分)をした。
b本件P6減給処分について
控訴人P6は,都立P79高校の平成17年度入学式(平成17
年4月7日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受け
たが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から2回起立を
促されたが,これに応じなかった(乙111の4・6)。
控訴人P6は,平成17年4月15日の都教委からの事情聴取に
対し,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙111の
5)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P6に対し,本件不起立につき,同年5
月27日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P6減給処
分)をした。
なお,控訴人P6には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(キ)控訴人P8(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号32-1・2)に
ついて
a処分歴等について
控訴人P8は,都立P80高校の平成16年度卒業式(平成17
年3月11日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わず,不起立を現認した副校長から起立を促され
たが,これに応じなかった(乙113の1・3)。
控訴人P8は,卒業式後の校長からの事実確認に対し,昨年の卒
業式の審理が出ていないので,今回のことについて確認する必要は
ないなどとして,繰り返し回答を拒否し(乙113の1・3),都
教委による平成17年3月23日の事情聴取に対しても,ほとんど
の質問に回答せず,責任を感じるとか,責任の意味が分からないと
述べ,事情聴取書への署名,押印も拒否した(乙113の2)。
都教委は,控訴人P8に対し,上記不起立につき,同月31日付
けで,戒告処分をした。
b本件P8減給処分について
控訴人P8は,都立P80高校の平成17年度入学式(平成17
年4月7日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受け
たが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から起立を促さ
れたが,これに応じなかった(乙113の4・6)。
控訴人P8は,入学式終了後の校長からの事実確認において,回
答を拒否し(乙113の4・6),都教委による平成17年4月1
4日の事情聴取については,出頭しなかった(乙113の5)。
都教委は,前記の同種の再非違行為につき加重する量定の方針に
従い(甲278),控訴人P8に対し,本件不起立につき,同年5
月27日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P8減給処
分)をした。
なお,控訴人P8には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(ク)控訴人P9(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号35)について
a処分歴等について
控訴人P9は,都立P81養護学校の平成15年度卒業式(平成
16年3月19日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令
を受けたが,これに従わなかった(乙114の1・3)。
控訴人P9は,都教委による平成16年3月26日の事情聴取に
ついて,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙114の
2)。
都教委は,控訴人P9に対し,上記不起立につき,同年4月6日
付けで,戒告処分をした。
控訴人P9は,同年8月9日に服務事故再発防止研修(基本研
修)を受講したが,受講後に提出した受講報告書には,研修に対す
る批判等を記載した上,「『10.23通達』は『憲法』『教育基
本法』に違反しているから無効です。」などの記載がある「『服務
事故再発防止研修』について私の意見」と題する文書(乙114の
4・5)を添付した。
b本件P9減給処分について
控訴人P9は,都立P81養護学校の平成16年度卒業式(平成
17年3月18日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令
を受けたが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から起立
を促されたが,これに応じなかった(乙114の6・8)。
控訴人P9は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対して,
「職務命令書は受け取りましたがこの様な調査は遺憾です,報告内
容は,管理職が判断して下さい,こういう態度だということを報告
しても構わないです。」と述べ(乙114の6・8),都教委によ
る平成17年3月25日の事情聴取に対しては,弁護士の同席を要
求し,事情聴取を拒否した(乙114の7)。
都教委は,前記の同種の再非違行為につき加重する量定の方針に
従い(甲278),控訴人P9に対し,本件不起立につき,同月3
1日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P9減給処分)を
した。
なお,控訴人P9には,上記各処分の対象とされた非違行為以外
に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(ケ)控訴人P12(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号43)について
a処分歴等について
控訴人P12は,都立P75高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月5日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わなかった(乙116の1・3)。
控訴人P12は,卒業式後の校長からの事実確認に対し,思想,
信条に関することなので答えられないとして,これを拒否し(乙1
16の1),都教委による平成16年3月18日の事情聴取におい
ても,事実関係の確認に対して,「質問には答えられません。職務
命令があったとしても無効と考えます。」などと述べて,回答を拒
否し,事情聴取書への署名,押印も拒否した(乙116の2)。
都教委は,控訴人P12に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分をした。
控訴人P12は,同年8月9日に服務事故再発防止研修を受講し
た(乙116の4)。
b本件P12減給処分について
控訴人P12は,都立P75高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月10日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,副校長から起立を促されたが,拒否した
(乙116の5・7)。なお,控訴人P12は,職務命令書の受取
りも拒否した(乙116の7)。
控訴人P12は,卒業式後の校長からの事実確認に対し,一切お
答えするつもりはありませんと述べて,これを拒否し(乙116の
5・7),都教委による平成18年3月23日の事情聴取において
も,上記職務命令違反について,「特に反省する必要はないと考え
ています。」などと述べ,事情聴取書への署名,押印を拒否した
(乙116の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P12に対し,本件不起立につき,同月
31日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P12減給処
分)をした。
なお,控訴人P12には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(コ)控訴人P13(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号44)について
a処分歴等について
控訴人P13は,都立P82高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月12日)において起立斉唱をするよう校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,本件不起立を現認した教頭から起立を促
されたが,これに応じなかった(乙117の1・3)。なお,控訴
人P13は,校長から手渡された職務命令書を会議室内に放置した
(乙117の1)。
控訴人P13は,卒業式後の校長からの事実確認に対し,答える
必要はありませんと述べてこれを拒否し(乙117の1),都教委
からの平成16年3月25日の事情聴取も拒否した(乙117の
2)。
都教委は,控訴人P13に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分をした。
控訴人P13は,同年8月9日に服務事故再発防止研修を受講し
たが,受講報告書には,「服務事故の例として,体罰,セクハラ等
があげられたが,そのようなことと無関係の者が命令により講義を
きかされていることに強い苦痛を感じている。」などと記載した
(乙117の4)。
b本件P13減給処分について
控訴人P13は,平成17年4月1日に都立P83高校に異動し,
同校長から,同校の平成18年度入学式(平成18年4月7日)に
おいて起立斉唱をするよう職務命令を受けたが,これに従わず,本
件不起立を現認した副校長から「ご起立下さい」と2度促されたに
もかかわらず,これに応じなかった(乙117の5・7)。
控訴人P13は,卒業式後の校長からの事実確認に対し,答えた
くありませんなどと述べて,事実確認を拒否し(乙117の5・
7),都教委からの平成18年4月24日の事情聴取についても,
弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙117の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P13に対し,本件不起立につき,同年
5月26日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P13減給
処分)をした。
なお,控訴人P13は,平成18年度入学式当日のホームルーム
において,生徒に対し,宗教上の理由で国歌を歌えない生徒がいた
としても,異なる考えを認め合うことが大切である旨の発言をした
(控訴人P13は,本件P13減給処分後,このことにより平成1
8年6月9日付けで指導部長から厳重注意を受けた(甲545,5
46,乙117の11)。
(サ)控訴人P14(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号46)について
a処分歴等について
控訴人P14は,平成15年11月8日の都立P84高校の創立
40周年記念式典(周年行事)において起立斉唱するよう同校長か
ら職務命令を受けたが,司会者が国歌斉唱と発声したときに自席を
離れ,後方の出口から式場外へ出て,国歌斉唱が終わり,校歌斉唱
となった時点で自席に戻った(乙118の1・3)。
都教委は,控訴人P14に対し,上記行為につき,平成16年2
月17日付けで,戒告処分をした。
控訴人P14は,同年8月9日に服務事故再発防止研修(基本研
修)を受講したが,受講後に提出した受講報告書には,「(地公
法)32条に違反しているのは明らかに,都教委側と考える。」,
「一方的に都側が正しいとするスタンスで,このような研修を行う
こと自体がおかしいのではないか。」などと記載した(乙118の
4)。
bP14減給処分について
控訴人P14は,都立P84高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月10日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から起立を
促されたが,これに応じなかった(乙118の5,乙118の7)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P14に対し,上記行為につき,平成1
8年3月31日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P14
減給処分)をした。
なお,控訴人P14には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(シ)控訴人P16(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号47)について
a処分歴等について
控訴人P16は,都立P85高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月16日)において起立斉唱をするよう同校長から職務命令
を受けたが,これに従わなかった(乙119の1・3)。
控訴人P16は,卒業式後の校長からの事実確認に対し,何も答
えず,これを拒否し(乙119の1・3),都教委からの平成16
年3月24日の事情聴取に対しても「答えられません。」と述べた
(乙119の2)。
都教委は,控訴人P16に対し,上記行為につき,同月31日付
けで,戒告処分をした。
控訴人P16は,同年8月9日に服務事故再発防止研修を受講し
たが,受講報告書に,「ほとんどお題目だけの内容のない講義であ
った。」,「教育公務員として新たに本質的なことを学ぶ場とは全
くならなかった。」と記載した(乙119の4)。
b本件P16減給処分について
控訴人P16は,都立P85高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月15日)において起立斉唱をするよう同校長から職務命令
を受けたが,これに従わず,不起立を現認した副校長から起立を促
されたが,これに応じなかった(乙119の5・7)。なお,控訴
人P16の上記卒業式における席は,壇上正面に向かって右側最前
列に位置し,生徒や保護者からよく見える場所にあったが,当日の
卒業式は,特に混乱もなく執り行われた(弁論の全趣旨)。
控訴人P16は,都教委からの平成18年3月23日の事情聴取
において,自らの職務命令違反について「責任を感じておりませ
ん。」,「職務命令は誤ったものであり,これを出した校長,出さ
せた東京都教育委員会が誤りである。全体の奉仕者として一点のや
ましい所,責任もありません。」などと述べた(乙119の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P16に対し,本件不起立につき,同月
31日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P16減給処
分)をした。
なお,控訴人P16には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(ス)控訴人P17(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号49-1・2)
について
a処分歴等について
控訴人P17は,都立P86高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月9日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から2回起立
を促されたが,これに応じなかった(乙120の1・3)。
控訴人P17は,都教委による平成18年3月22日の事情聴取
において,本件通達は法的に誤っている旨述べた(乙120の2)。
都教委は,控訴人P17に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号「49-1」
の処分)をした。
b本件P17減給処分について
控訴人P17は,平成18年4月1日付けで,都立P87高校に
異動し,同校の平成18年度入学式(同月7日)において起立斉唱
をするよう同校長から職務命令を受けたが,これに従わず,本件不
起立を現認した副校長から2回起立を促されたが,これに応じなか
った(乙120の4・6)。
控訴人P17は,都教委による同月19日の事情聴取において,
憲法及び国法に違反した内容が職務命令として出されたなどと述べ
た(乙120の2・6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P17に対し,本件不起立につき,同年
5月26日付で,減給10分の1・1月の処分(本件P17減給処
分)をした。
なお,控訴人P17には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(セ)控訴人P18(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号50)について
a処分歴等について
控訴人P18は,都立P88高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月12日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わなかった(乙121の1・3)。
都教委は,控訴人P18に対し,上記不起立につき,平成16
年3月31日付けで,戒告処分をした。
控訴人P18は,同年8月9日に,服務事故再発防止研修を受講
したが,受講報告書に「一般論,理念として伺いました。」などと
記載した(乙121の4)。
b本件P18減給処分について
控訴人P18は,都立P88高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月11日)において起立斉唱をするよう同校長から職務命令
を受けたがこれに従わず,不起立を現認した副校長から起立を促さ
れたが,これに応じなかった(乙121の5・7)。
控訴人P18は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,ご
迷惑をおかけしますと答え(乙121の5),都教委からの平成1
8年3月24日の事情聴取において,自らの職務命令違反について
「東京都に対して責任を取る必要はない。」,「生徒に対する責任
についても,とる必要はない。」,「10,23通達は,行政によ
る教育への介入だと思います。これは,教育基本法10条に違反し
ているので,職務命令に従う必要はない。」などと述べた(乙12
1の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P18に対し,同月31日付けで,減給
10分の1・1月の処分(本件P18減給処分)をした。
なお,控訴人P18には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(ソ)控訴人P19(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号51)について
a処分歴等について
控訴人P19は,都立P89高校の平成16年度入学式(平成1
6年4月7日)において起立斉唱をするよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わなかった(乙122の1・3)。
控訴人P19は,都教委による平成16年4月19日の事情聴取
について,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙122
の2)。
都教委は,控訴人P19に対し,上記不起立につき,同年5月2
5日付けで,戒告処分をした。
控訴人P19は,同年8月9日に,服務事故再発防止研修の受講
したが,その受講報告書に,同研修について「地方公務員として3
0年余働いてきて,今まで何も問題にされたこともないのに,退職
近くになって,今さら地公法についての講義を受ける必要がなぜあ
るのかわからなかった。」などと記載した(乙122の4)。
b本件P19減給処分について
控訴人P19は,都立P89高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月10日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わず,副校長から「ご起立下さい」と促されたに
もかかわらず,起立しなかった(乙122の5・7)。
控訴人P19は,都教委による平成18年3月22日の事情聴取
について,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙122
の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P19に対し,同月31日付けで,減給
10分の1・1月の処分(本件P19減給処分)をした。
なお,控訴人P19には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(タ)控訴人P20(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号54)について
a処分歴等について
控訴人P20は,都立P90高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月12日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わず,教頭から立ち上がるよう促されても起立し
なかった。(乙123の1・3)。
控訴人P20は,都教委による平成16年3月22日の事情聴取
には応じたものの,職務命令について責任を取る必要はない旨述べ
た(乙123の2)。
都教委は,控訴人P20に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分をした。
控訴人P20は,同年8月9日に,服務事故再発防止研修を受講
したが,その受講報告書に,同研修について「今回職務命令に従わ
なかったのは,これが『明白に違法』だからと考えるからだ。」な
どと記載した(乙123の4)。
b本件P20減給処分について
控訴人P20は,都立P91高校の平成18年度入学式(平成1
8年4月7日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受
けたが,これに従わず,副校長から「先生起立して下さい」と3回
促されたが,これに応じなかった(乙123の5・7)。
控訴人P20は,入学式終了後に,校長から「国歌斉唱時に起立
しませんでしたね」と聞かれたが,「そのことは自分から答えな
い」と発言した(乙123の5・7)。また,控訴人P20は,都
教委による平成18年4月24日の事情聴取には応じたものの,
「自分の行動は都民の期待に答えたものです。今回の職務命令や通
達については違法なものであると考えます。このことに責任を取れ
と言われても,違和感があります。」などと述べ,不起立の事実確
認について回答を拒否した(乙123の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P20に対し,同年5月26日付けで,
減給10分の1・1月の処分(本件P20減給処分)をした。
なお,控訴人P20には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(チ)控訴人P21(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号57)について
a処分歴等について
控訴人P21は,都立P77高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月13日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わなかった(乙124の1・3)。
控訴人P21は,都教委による平成16年3月26日の事情聴取
に対し,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙124の
2)。
都教委は,控訴人P21に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分をした。
b本件P21減給処分について
控訴人P21は,都立P77高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月15日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,教頭から起立を促されたが,これに応じ
なかった(乙124の4)。
控訴人P21は,校長からの事実確認に対し,「この点について
は返事を差し控えさせてください。」と述べ(乙124の4),都
教委による平成18年3月16日の事情聴取についても,弁護士の
同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙124の5)。
控訴人P21は,不起立により上記戒告処分を受けた事実を生徒
に伝えていたため,上記卒業式で,控訴人P21が再び不起立行為
をするかどうかを注目する生徒もいた。そして,生徒の中には,上
記卒業式の前に控訴人P21に対し,「処分されると経済的不利に
なるなら我慢して立っちゃえよ。」,「筋を通せよ」などと述べる
者もいた。また,卒業式後,控訴人P21に対し,「また処分され
るんだろう,頑固に筋を通したんだ」など述べる生徒もいた(乙1
24の7,甲589の231)。しかし,当日の卒業式は,特に混
乱もなく,運営され,進行した(弁論の全趣旨)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P21に対し,同月31日付けで,減給
10分の1・1月の処分(本件P21減給処分)をした。
なお,控訴人P21には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(ツ)控訴人P22(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号64)について
a処分歴等について
控訴人P22は,都立P92高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月13日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,教頭が「お立ち下さい」と起立を促した
が,起立しなかった(乙125の1・3)。
控訴人P22は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,職
務命令自体が違反であると思うのでそのことに関わることは答えな
いと述べ(乙125の1),都教委による平成16年3月22日の
事情聴取において,弁護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した
(乙125の2)。
都教委は,控訴人P22に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分をした。
控訴人P22は,同年8月2日に,服務事故再発防止研修を受講
したが,その受講報告書に,同研修について「一般的な事例として
のこれまでの服務事故に今回の不起立がどのように位置づけられる
のかも不明であった。」などと記載した(乙125の4)。
b本件P22減給処分について
控訴人P22は,都立P92高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月11日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたが,これに従わず,副校長から「P22先生,立って下さ
い」と促されたにもかかわらず,起立しなかった(125の5・
7)。
控訴人P22は,卒業式終了後,校長室から事実確認をされた際,
「だから不当だと発言したんですよ。」などと述べ(乙125の
5),都教委による平成18年3月23日の事情聴取において,弁
護士の同席を要求し,事情聴取を拒否した(乙125の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P22に対し,同月31日付けで,減給
10分の1・1月の処分(本件P22減給処分)をした。
なお,控訴人P22には,上記各処分の対象とされた非違行為以
外に非違行為と評価される業務実態は認められない。
(テ)控訴人P23(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号66)について
a処分歴等について
控訴人P23は,都立P93高校の平成15年度卒業式(平成1
6年3月10日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わなかった(乙126の1・3)。
控訴人P23は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対して,
お答えする必要はありませんと述べて,事実確認を拒否し(乙12
6の1・3),都教委による平成16年3月25日の事情聴取につ
いても,弁護士の立会いを要求し,事情聴取を拒否した(乙126
の2)。
都教委は,控訴人P23に対し,上記不起立につき,同月31日
付けで,戒告処分をした。
控訴人P23は,同年8月9日に,服務事故再発防止研修(基本
研修)を受講したものの,受講報告書の「所感」欄に,「現在係争
中なので,この件についての記述は留保します。」と記載した(乙
126の4)。
なお,乙126の5によれば,控訴人P23は,平成17年5月
30日に,都教委指導部長から教育課程の実施に係る指導を受けた
ことが認められるが,同証拠からは,その内容が,被控訴人が主張
する内容の不適切な指導に対する厳重注意であったかどうかは明ら
かではない。
bP23減給処分について
控訴人P23は,都立P93高校の平成17年度卒業式(平成1
8年3月10日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を
受けたがこれに従わなかった(乙126の6・8)。
控訴人P23は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対して,
特に言うことはないと述べて,事実確認を拒否し(乙126の6・
8),都教委による平成18年3月22日の事情聴取についても,
弁護士の立会いを要求し,事情聴取を拒否した(乙126の7)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P23に対し,同月31日付けで,減給
10分の1・1月の処分(本件P23減給処分)をした。
(ト)検討
上記(ア)ないし(テ)の各a及びbの認定事実によれば,本件各処分
のうち上記控訴人らが受けた減給処分(以下「本件各減給処分」とい
う。)より前の上記控訴人らの不起立による処分歴は,それぞれ戒告
処分の1回だけであること,本件各減給処分は,同種の再非違行為に
対し加重するという都教委の量定の方針(同種再非違行為加重方針)
に従ってされたものであること,しかし,上記各戒告処分の対象とな
った不起立及び本件各減給処分の対象となった不起立は,積極的に式
典の進行を妨害する行為ではなく,各卒業式等の運営や進行に具体的
な支障を来した事実も認められないこと,上記控訴人らの中には,上
記の戒告処分の対象となった不起立や本件不起立に関する事情聴取,
更には再発防止のための研修(本件各処分後の研修を除く。)に拒否
的で,何ら反省の態度を示していない者もいるが,これらの行為は研
修の実施や進行を積極的に妨害するものではなく,これに具体的な支
障を来したものではなかったことが明らかである。以上に加えて,本
件不起立の前後における上記控訴人らの態度において特に処分の加重
を根拠付けるべき事情もうかがわれないこと(控訴人P1に対する平
成17年5月27日付け厳重注意及び控訴人P13に対する平成18
年6月9日付け厳重注意の対象となった各行為は,その態様等に照ら
すと,上記事情に当たるということはできない。)にも照らすと,上
記控訴人らについては,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や
不起立行為の前後における態度等(過去の処分歴等)に鑑み,学校の
規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観
点から減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が
あったとは認め難いというべきである。
そうすると,上記のように過去の不起立による戒告1回の処分歴が
あることのみを理由に上記控訴人らに対してされた本件各減給処分は,
減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分の選択が重きに
失するものとして社会通念上著しく妥当を欠き,懲戒権者としての裁
量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するが相当
である。
ウ控訴人P7の減給処分及び停職処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番
号31-1・2)について
(ア)平成16年3月31日付け戒告処分(P7戒告処分)について
控訴人P7は,都立P80高校の平成15年度卒業式(平成16年
3月12日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受けた
が,これに従わなかった(乙112の1・3)。
控訴人P7は,卒業式終了後の校長からの事実確認を再三にわたり
拒否し(乙112の1・3),都教委からの平成16年3月23日の
事情聴取については出頭しなかった(乙112号の2)。
都教委は,控訴人P7に対し,上記不起立につき,同月31日付け
で,P7戒告処分をした。
控訴人P7は,同年8月2日に服務事故再発防止研修(基本研修)
を受講したが,受講後に提出した受講報告書には,「失礼千万であ
る。」,「10.23より始まった一連の事柄に,これを読む方はど
のように関ってきたのでしょうか。そのことに多少なりとも罪悪感は
ないのでしょうか。」などと記載した(乙112の4)。
(イ)本件P7減給処分①及びP7減給処分②について
a控訴人P7は,都立P80高校の平成16年度卒業式(17年3
月11日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受けた
が,これに従わず(乙112の5・7),本件不起立を現認した副
校長から起立を促されたが,これに応じなかった。
また,控訴人P7は,上記卒業式前の平成17年3月8日に,校
長から職員室において副校長同席の下,職務命令書を渡された際に,
「法的根拠がないですね。」と述べた(乙112の7)。
控訴人P7は,卒業式終了後の校長からの事実確認に対し,昨年
の卒業式についての(人事委員会)審理の結論が出ていないとの理
由により回答を拒否する(乙112の5)とともに,都教委からの
同月28日の事情聴取について,弁護士の同席を要求し,事情聴取
を拒否した(乙112の6)。
都教委は,同種の再非違行為につき加重する量定の方針を採って
おり(甲278),控訴人P7に対し,本件不起立につき,同月3
1日付けで,減給10分の1・1月の処分(本件P7減給処分①)
をした。
なお,控訴人P7には,本件P7減給処分①当時,上記各処分の
対象とされた非違行為以外に非違行為と評価される業務実態は認め
られなかった。
b控訴人P7は,同年7月21日,服務事故再発防止研修の基本研
修は受講したものの,同年9月13日に実施される専門研修の受講
を職務命令として都教委から命じられ,また,校長から同研修の受
講のために東京都教職員研修センターに出張する旨の職務命令と受
けていたにもかかわらず,同研修を受講しないという職務命令違反
及び信用失墜行為をした(乙112の8・10)。
控訴人P7は,同年10月14日,上記研修命令違反についての
都教委による事情聴取において,ネクタイに小型マイクを仕掛けて
録音しようとしたため,事情聴取を行うことができなかった(乙1
12の9)。
都教委は,控訴人P7に対し,前記の同種の再非違行為につき加
重する量定の方針に従い(甲278),上記職務命令違反及び信用
失墜行為を理由として同年12月1日付けで,減給10分の1・6
月の処分(P7減給処分②)をした(乙112の11・12)。な
お,東京都人事委員会は,平成23年8月3日,上記処分に関する
平成18年1月20日付け審査請求を棄却した(乙112の13)。
控訴人P7は,再度,服務事故再発防止研修(基本研修・専門研
修)の受講を命じられ,平成18年2月1日に同研修を受講したが,
受講後に提出した受講報告書に,研修に対する批判や講師への非難
等を記載した(乙112の18)。また,事前に提出した課題研修
の報告書には「今回の事柄は服務事故ではなく2003年10月2
3日付の通達から始まる東京都教育委員会の暴挙である。」,「人
権感覚のない教育委員を辞めさせるしかないでしょう。」などと記
載した(乙112の17)。
(ウ)本件P7停職処分について
控訴人P7は,都立P80高校の平成17年度卒業式(平成18年
3月10日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令を受けた
が,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から起立を促された
が,これに応じなかった(乙112の14・16)。なお,控訴人P
7は,職務命令書の受取りを拒否し,結局,職務命令書は控訴人P7
の机上に置く方法で交付された(乙112の14・16)。
控訴人P7は,卒業式後の校長からの事実確認において回答を繰り
返し拒否し(乙112の14・16),都教委による平成18年3月
22日の事情聴取にも出頭しなかった(乙112の15)。
都教委は,前記の同種の再非違行為につき加重する量定の方針に従
い(甲278),控訴人P7に対し,本件不起立につき,同月30日
付けで,停職1月の処分(本件停職処分)をした。
(エ)検討
a本件P7減給処分①についての検討
前記(ア)及び(イ)aの認定事実によれば,控訴人P7については,
本件P7減給処分①の前の不起立等による処分歴はP7戒告処分の
1回だけであること,同処分の対象となった不起立及び上記減給処
分の対象となった不起立は,積極的に式典の進行を妨害する行為で
はなく,卒業式の運営進行に支障を来した事実も認められないこと,
控訴人P7の事情聴取の際や服務事故再発防止研修時の態度等には,
不起立についての反省の態度が見られないものの,研修の実施や進
行を積極的に妨害するものではなかったことが明らかである。そし
て,控訴人P7には,本件P7減給処分①当時において,その他,
過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後に
おける態度等(過去の処分歴等)に鑑み,学校の規律や秩序の保持
等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点からP7減給
処分①を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があった
とは認められない。
そうすると,控訴人P7に対する本件P7減給処分①は,過去に
不起立による戒告1回の処分歴があることのみを理由にされたとい
うほかなく,減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分
の選択が重きに失するものとして社会通念上著しく妥当を欠き,上
記処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の
評価を免れないと解するが相当である。
b本件P7停職処分についての検討
前記(ア)~(ウ)の認定事実によれば,本件不起立等による控訴人
P7に対する懲戒処分は,①戒告,②減給処分10分の1・1
月,③減給処分10分の1・6月,④停職処分と,段階的に加
重されたものであり,都教委は,懲戒処分の量定の決定に際して,
過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず再び同様の
非違行為を行った場合には量定を加重するという処分量定の方針に
従い(甲278),控訴人P7に対し,本件P7停職処分をしたこ
とが明らかである。そして,上記aに説示のとおり,本件P7停職
処分の量定の際に重要な前提事実として考慮された処分歴である本
件P7減給処分①は,懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるもの
として違法の評価を免れないから,取り消されるべきであり,また,
本件においては,本件P7停職処分の際に,P7減給処分①の処分
歴がなかったとしても本件P7停職処分が選択されていたことを基
礎付ける事情も認められない。
そうすると,本件P7停職処分は,懲戒権者が処分の際に前提事
実として考慮した過去の処分歴等の有無の判断を誤ってされたもの
であるから,懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違
法と解するのが相当である。
エ控訴人P10の減給処分(別紙2懲戒処分等一覧表記載番号36)に
ついて
(ア)処分歴等について
a平成14年11月6日付け戒告処分(P10戒告処分)について
控訴人P10は,都立P28養護学校の平成12年度の卒業式に
おいて,「日の丸・君が代強制に反対」との文言を記したゼッケン
を着用して式に臨み,平成13年度の入学式では「君が代やめて」
及び「日の丸君が代やめてください」などの文言をブラウスに手書
きし,上記ブラウスを着用して式に臨み,さらに,平成13年度の
卒業式においても,国旗掲揚,国歌斉唱に反対する旨を表示する図
柄をブラウスに手書きし,上記ブラウスを着用して式に臨んでいた
(甲129,乙115の1・2)。
控訴人P10は,平成14年4月5日頃に行われた入学式の打合
せにおいて,入学式における国旗掲揚,国歌斉唱を取り止めるよう
校長に対し申し入れるとともに,国旗掲揚,国歌斉唱に反対し,抗
議する意思を表明すべく,ブラウスの,①右胸に縦約10㎝,横
約15㎝の黒の枠を,また,その枠内の中央に直径約3㎝の塗りつ
ぶした赤い丸を描き,この絵柄に向かって左上から右下方向に黒色
の斜線を入れた模様を手書きするとともに,②背中に直径約20
㎝のハートの絵柄に鎖を描いた模様等を手書きし,上記ブラウスを
着用して入学式に臨んだ(甲129,乙115の3・4)。
校長は,入学式当日,副校長から,控訴人P10が上着を脱いで
おり,ブラウスに上記図柄が記載されているとの報告を受けたため,
同日午前9時25分頃,控訴人P10に対し,ブラウスの上に上着
を着用するよう口頭で職務命令を発出したが,控訴人P10は上記
職務命令に従わず,上着を着用しないまま入学式に臨んだ。
都教委は,控訴人P10に対し,上記職務命令違反により,同年
11月6日付けで,戒告処分(P10戒告処分)をした。
控訴人P10は,校長の事情聴取に応じなかったのみならず,
「申し入れ書」を江崎校長に提出する等の抗議をした(乙第115
の5・6)。
b平成16年4月6日付け減給処分10分の1・1月の処分(P1
0先行減給処分)について
控訴人P10は,都立P28養護学校の平成15年度の卒業式
(平成16年3月24日)において起立斉唱するよう同校長から職
務命令を受けたが,これに従わず,不起立を現認した同教頭から2
回起立を促されたが,これに応じなかった(乙115の10・1
2)。
控訴人P10は,同日の事実確認を拒否し(乙115の10・1
2),都教委からの平成16年4月5日の事情聴取についても,弁
護士の同席を要求し,これを拒否した(乙115の11)。
都教委は,控訴人P10に対し,前記の同種の再非違行為につき
加重する量定の方針に従い(甲278),上記不起立につき,同月
6日付けで,減給10分の1・1月の処分(P10先行減給処分)
をした。
控訴人P10は,同年8月2日に服務事故再発防止研修の基本研
修を受講し,同月30日には専門研修を受講したが,受講報告書に,
「不起立は憲法を尊重する教育公務員として,違法な職務命令に従
えなかったからだ。違法な服務研修に抗議する。」(乙115の1
3),「憲法19条を侵す職務命令および根拠となる2003.1
0.23通達のみなおしが求められる。」(乙115の17)など
と記載した。
なお,上記減給処分は,最高裁平成24年判決②において取り消
された。
(イ)本件P10減給処分について
控訴人P10は,都立P28養護学校の平成16年度の卒業式(平
成17年3月24日)において起立斉唱するよう同校長から職務命令
を受けたが,これに従わず,本件不起立を現認した副校長から起立を
促されたが,これに応じなかった(乙115の18・20)。なお,
控訴人P10は,上記職務命令書の受取り自体を拒否した(乙115
の18・20)。
控訴人P10は,校長からの事実確認を拒否し(乙115の18・
20),都教委からの平成17年3月28日の事情聴取についても,
弁護士の立会いを要求し,事情聴取を拒否した(乙115の19)。
都教委は,懲戒処分の量定の決定に際して,過去に非違行為を行い
懲戒処分を受けたにもかかわらず再び同様の非行を行った場合には量
定を加重するという処分量定の方針を採っており(甲278),同月
31日,控訴人P10に対し,減給10分の1・6月の処分(本件P
10減給処分)をした。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の認定事実によれば,本件不起立による本件P
10減給処分は,①戒告,②減給処分10分の1・1月,③減
給処分10分の1・6月と,段階的に加重されてきたものであり,都
教委は,懲戒処分の量定に際して,過去に非違行為を行い懲戒処分を
受けたにもかかわらず再び同様の非違行為を行った場合には量定を加
重するという上記処分量定の方針に従い(甲278),控訴人P10
に対し,本件P10減給処分をしたことが明らかである。そして,本
件P10減給処分の量定の際に重要な前提事実として考慮された処分
歴であるP10先行減給処分は,最高裁平成24年判決②において,
懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法であることが
確定しており,また,本件においては,本件P10減給処分の際に,
P10先行減給処分の処分歴がなかったとしても,本件P10減給処
分が選択されていたことを基礎付ける事情も認められない。
そうすると,本件P10減給処分は,懲戒権者が処分の際,前提事
実として考慮した過去の処分歴等の有無の判断を誤ってされたもので
あるから,裁量権の範囲を超えるものとして違法と解するのが相当で
ある。
4争点(2)コ(控訴人らの損害の有無及び額)について
(1)戒告処分を受けた控訴人らの請求について
前記3(2)に説示のとおり,上記控訴人らの本件各処分のうちの戒告処
分の取消請求は理由がないから,上記各処分は適法であり,懲戒権者が,
上記各処分をするに当たり,職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったこと
を基礎付ける事実は何ら認められない。
したがって,上記控訴人らの国賠法1条1項に基づく損害賠償請求は,
その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(2)減給処分及び停職処分を受けた控訴人らの請求について
ア前記3(3)に説示のとおり,本件各処分のうちの減給処分及び停職処
分は,懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を超えるものとして違法であ
り,取り消されるべきものである。しかし,行政処分が違法であるから
といって,直ちに国賠法1条1項所定の違法が肯定されるわけではなく,
その違法が肯定されるのは,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公
務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったと認め得るよう
な事情がある場合に限られる(最高裁昭和53年10月20日第二小法
廷判決・民集32巻7号1367頁,最高裁平成5年3月11日第一小
法廷判決・民集47巻4号2863頁)。また,国賠法1条1項所定の
公務員の故意・過失については,法令の解釈につき異なる見解が対立し
て疑義を生じており,よるべき明確な判例学説がなく,実務上の取扱い
も分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,
公務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは,後にその執
行が違法と判断されたからといって,直ちに当該公務員に過失があった
とすることはできない(最高裁昭和46年6月24日第一小法廷判決・
民集25巻4号574頁,最高裁昭和49年12月12日第一小法廷判
決・民集28巻10号2028頁)。
イ本件において,都教委が上記控訴人らの本件不起立について,戒告を
超えて減給以上の懲戒処分を選択したのは,前記3(3)に説示のとおり,
上記控訴人らには不起立等による処分歴があったところ,過去に非違行
為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行っ
た場合には処分の量定を加重するという同種再非違行為加重方針(甲2
78)に従ったためである。なお,控訴人P49の別紙2懲戒処分等一
覧表記載番号「21-2」の減給処分(本件では取消請求の対象となっ
ていない。)についても,前記補正の上引用した原判決の「第4争点
に対する判断」中の1(6)イ(ウ)に説示のとおり,上記の同種再非違行
為加重方針(甲278)に従って処分がされている。
ところで,過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,
再び同様の非違行為を行った場合には,その非違性の程度は,後者の方
が重いことは明らかであるというべきであるから,上記の場合に処分を
加重するという基本方針自体は合理的であって,何ら不相当,不合理な
ものではない。また,処分を選択する懲戒権者には,社会観念上著しく
不合理でない限り,どのような処分を選択するのかにつき広範な裁量が
認められているところ,本件不起立は軽微な非違行為であるとはいえな
い上,本件各処分当時において,再度の不起立に対する懲戒処分につい
て減給以上の懲戒処分を選択することが,懲戒権者としての裁量権の範
囲を超えるものであるとの見解が一般的であったというような事情もな
い。
これらの事情に照らすと,都教委が,上記控訴人らの本件不起立につ
いて,同種再非違行為加重方針に従って量定をし,加重した処分をした
ことが,本件各処分当時において懲戒権者に課された職務上通常尽くす
べき注意義務に違反するものと評価することはできないし,当該判断に
過失があったということもできない。
ウ以上によれば,上記控訴人らの国賠法1条1項に基づく損害賠償請求
は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
第4結論
以上によれば,控訴人P1,同P2,同P3,同P4,同P5,同P6,
同P7,同P8,同P9,同P10,同P12,同P13,同P14,同P
16,同P17,同P18,同P19,同P20,同P21,同P22,同
P23(控訴人P1ら21名)の被控訴人に対する,東京都教育委員会が別
紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付で,上記控訴人らに対して
行った同一覧表の「処分内容」欄記載の各懲戒処分(ただし,同一覧表記載
番号「30-1」,「32-1」,「49-1」の懲戒処分を除く。)の取
消請求はいずれも理由があるから,認容すべきであり,上記控訴人らのその
余の請求及び上記控訴人らを除くその余の控訴人らの請求はいずれも理由が
ないから,棄却すべきであるところ,これと異なり控訴人らの請求を全て棄
却した原判決は一部失当であって,控訴人P1ら21名の本件各控訴は一部
理由があるから,原判決中控訴人P1ら21名に関する部分を上記のとおり
変更し,その余の控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がないから棄却する
こととして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第15民事部
裁判長裁判官井上繁規
裁判官笠井勝彦
裁判官齋藤繁道

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