弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
被告人を懲役5年6月に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理       由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保
有する状態で,平成15年3月17日午後6時49分ころ,栃木県芳賀郡a町大字アb
番地c付近道路において,普通乗用自動車を運転し
第2 前記日時ころ,業務として前記車両を運転し,前記道路をア方面から真岡市イ方
面に向かい時速約60キロメートルで進行中,運転開始前に飲んだ酒の酔いのた
めに眠気を催し,前方注視及び確実な運転操作が困難な状態になったのであるか
ら,直ちに運転を中止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,目的地が
近いことに気を許し,直ちに運転を中止せず,漫然前記状態のまま運転を継続した
過失により,同日午後6時50分ころ,同町大字ウd番地先道路を進行中,仮睡状
態に陥って,時速約90キロメートルで自車を道路左側路肩部分に進出させ,折か
ら道路左側端を同方向に歩行中のA(当時14歳)及びB(当時14歳)に自車左前
部を衝突させ,両名を左前方路外田圃に跳ね飛ばし,よって,Aに外傷性血気胸等
の傷害を負わせ,同日午後8時45分ころ,同県真岡市e町f番地所在の甲病院に
おいて,外傷性血気胸に基づく循環不全により死亡するに至らせるとともに,Bに
頚椎損傷等の傷害を負わせ,同日午後9時12分ころ,同県河内郡g町大字エh番
地i所在の乙病院において,頚椎損傷により死亡するに至らせ
第3 同日午後6時50分ころ,同県芳賀郡a町大字ウd番地先道路において,前記車両
を運転中,前記のとおり,A及びBに,死に至らせる傷害を負わせる交通事故を起
こしたのに,直ちに車両の運転を停止して,両名を救護するなど必要な措置を講ず
ることなく,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を直ちに最
寄りの警察署の警察官に報告しなかった。
(法令の適用)
1 罰条        
   第1の行為      道路交通法117条の4第2号,65条1項,同法施行令44条
の3
   第2の行為      被害者毎に刑法211条1項前段
   第3の行為   
    救護義務違反の点  道路交通法117条,72条1項前段
    報告義務違反の点  道路交通法119条1項10号,72条1項後段
2 科刑上一罪の処理  
   第2,第3の各罪について
              各刑法54条1項前段,10条(第2については犯情に差がないの
で特定しない。第3については重い救護義務違反罪の
刑で処断)
3 刑種の選択     
  第1ないし第3の各罪について  各懲役刑を選択
4 併合罪の処理      刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い
第2の罪の刑に加重)
5 未決勾留日数の算入   刑法21条
6 訴訟費用の不負担    刑事訴訟法181条1項ただし書
(自首についての判断)
 弁護人は,第1ないし第3の各事実について,いずれも法律上の自首(以下単に「自
首」という。)が成立する旨主張する。第2の事実について,自首が成立することは,検
察官も争わないところである上,証拠上も明らかであるので,第1,第3の各事実につい
て補足する。
 関係証拠によれば,被告人が,捜査機関に被告人の犯罪事実が発覚する前にa交番
に出頭し,丙警察署において,本件事故を起こし逃走したことを申告していることが認め
られる。しかし,被告人は,その際に,警察官からお酒を飲んでいるのではないかと問わ
れ,酒気帯び運転等の発覚,処罰を免れようとして,事故後に飲酒をした旨を答え,そ
の後の取調べにおいても当初は同様の供述をしていたこと,事故当時に,フロントガラ
スの損傷状態からみて,自転車に乗った人に衝突したものと思ったにもかかわらず,出
頭時,さらには,勾留質問等において,ガードレールにぶつかったようだなどと負傷者の
存在の認識に関して事実に反する供述をしていることが認められる。これらの事実から
は,被告人には,第1,第3の救護義務違反の各事実については,いずれも処罰を認め
る趣旨での犯罪の申告はないと認められ,結局,第1,第3の各事実について自首は成
立しない。
 なお,第2の事実について,自首が成立するが,法律上の減軽の必要を認めないの
で,判示事実には摘示しない。
(量刑理由)
 本件は,被告人が,暗くなった夜7時ころ,酒気を帯びて普通乗用自動車を運転し(第
1の事実),運転開始前に飲んだアルコールの影響により眠気を催し,前方注視及び確
実な運転操作が困難な状況になったにもかかわらず,直ちに運転を中止せず,そのま
まの状態で運転を継続した過失により,道路左端を歩行していた被害者2名に自車を衝
突させて死亡させるに至らしめた上(第2の事実),負傷者を伴う交通事故を起こしたこと
を認識しながらも,救護等の措置を取らずに,その場を逃走した(第3の事実)という業
務上過失致死及び各道路交通法違反の事案である。
 被告人は,犯行当日,知人らとゴルフをし,昼時に,350ミリリットルの缶ビール1本,
その後,午後3時過ぎから午後6時半ころまでの間に,ゴルフの反省会と称して車で料
理店に赴き,そこで約500ミリリットルのビール1杯,焼酎約180ミリリットル(コップ2
杯),さらに,カラオケ店で焼酎約50ミリリットル(コップ1杯)を飲み,相当の飲酒量とな
っていたにもかかわらず,さしたるためらいもなく,車を運転して帰宅しようとしていたの
であって,酒気帯び運転に至る経緯等に酌量の余地は全くない。そして,被告人は,そ
の供述によっても,経営するコンビニエンスストアの家主から飲酒運転をしないよう忠告
されており,同人がいる際には飲酒後の運転を控えていたものの,それ以外において
は,ビール中ジョッキ3杯程度であればほろ酔い気分であり,飲酒後も運転を繰り返して
いたというのであるから,被告人の飲酒運転には常習的な傾向が認められ,その罪悪
感が麻痺していたのは明らかである。また,被告人は,ビール中ジョッキ1杯,酎ハイ5
杯くらいを飲むと飲み過ぎとなるので運転をしなかったと述べているところ,本件時にお
いては,被告人の飲酒量はそれに近く,当日朝からゴルフをしていたことからすれば,被
告人が,飲酒の影響を受けやすい状況にあったと窺え,本件酒気帯び運転は危険性の
高い犯行であったことはもとより,被告人にもその認識は十分可能であったはずである。
 そして,被告人は,運転の途中,眠気を催して湾曲した道路においてガードレールに衝
突しそうになって,前方注視や他人に危害を及ぼさないような確実な運転操作が困難に
なっていることを十分認識したにもかかわらず,帰宅地が近くになっていたことから大丈
夫であると安易に考えて運転を継続し,その結果,仮睡状態に陥り,その状態からアク
セルを踏み込む状況を招いて高速度で車を走行させ,遂に本件事故を惹起したのであ
るから,その過失は,もともとの飲酒運転と深く関連するもので,悪質さの度合いは高
い。加えて,被告人は,事故によりフロントガラスにひびが入り,ボンネットの激しい歪み
を見て,人身事故を起こしたことを認識したにもかかわらず,飲酒運転の発覚等を恐れ
て,敢えてガードレール等に衝突したものと自分に言い聞かせてその場を逃走し,人の
生命の尊さを顧みず自己の利益を優先させたのであって,救護・報告義務違反の動機
も酌むべき点はなく,強く非難されてしかるべきである。被害者2名は道路左端を歩行し
ていたものであるが,被告人車両が一部未舗装の路肩を含めて片側約3メートルの一
般道を時速約90キロメートルで走行し,道路端にはガードレールが設置され,その先は
田圃へののり面となっている道路状況等に照らせば,両名が危険を察知してもその回
避は困難であったといえる。被害者2名は,落ち度はないのに,突如として後方から高
速度で走行してきた被告人の車両に危険を回避する間もなく暗い田圃に跳ね飛ばさ
れ,いずれも家族の愛情に育まれ,多くの友人に囲まれ,柔道の関東大会を目標にす
るなどして中学校生活を有意義に送っており,将来はブティックに勤めたい,あるいは,
美容師になりたいなどそれぞれに人生の夢を描いていたにもかかわらず,14歳の短い
生涯を閉じざるを得なかったのであって,その無念さは筆舌に尽くし難い。被害者らをそ
れぞれに慈しみ,その成長を喜びとしていたそれぞれの両親を始めとする遺族らが受け
た悲嘆,憤りは察するに余りある。両親らは,事故が飲酒運転の末に起こされた上,被
害者らが発見されにくい道路下の田圃に放置されていたことで,殺害されたに等しいと
感じるなど,公判廷においても厳しい処罰感情を示している。加えて,あわよくば一部処
罰を免れんとした当初の被告人の言動には,反省や事の重大性に対する認識の甘さを
指摘せざるを得ない。
 以上,2名の尊い生命を奪ったことはもとより,その結果には,過去にも飲酒運転では
ないものの事故を起こして人を負傷させた経験を有し,車の持つ危険性,事故の悲惨さ
等を十分認識し得たはずの被告人の飲酒運転が深く関わっていることなどに鑑みると,
被告人の刑事責任は十分に重い。
 他方,第2の事実については法律上の自首が成立し,自首の制度を認めた法の趣旨
に照らせば,一定の限度において被告人にとって斟酌すべき事由である。また,被告人
は,捜査の途中からは,本件の重大性を認識し,事実をすべて認めた上,これまでの飲
酒運転の状況などについても隠すことなく供述していること,遺族らに受け入れられずに
いるものの,被告人なりに謝罪の手紙を書き,公判廷でも今後は飲酒をしないと述べる
など,反省,悔悟の情を深めていること,新聞等により報道されたことなどで,経営して
いたコンビニエンスストアは廃業となるなど,それなりの社会的制裁を受けていること,
無制限の任意保険に加入しており,相応の賠償が可能であること,前記過去の事故に
よる罰金前科はあるも15年以上前の古い前科であり,それ以外に前科前歴はないこ
と,被告人の家族らも遺族を訪問するなどして謝罪し,実父が出廷して,被告人に飲酒
をさせないことや今後も謝罪の気持ちを示していきたい旨申し出ていることなどの事情
がある。
 以上の事情を総合すれば,交通事故に対する近時の社会一般の処罰感情,法改正に
伴う国会審議の附帯決議等を併せ考慮しても,本件で問われている刑事責任が,業務
上過失致死,道路交通法違反罪のそれであり,その犯行態様,結果等の全事情に照ら
した同種事案の刑の均衡等にも鑑みると,本件は,法が定めるその処断刑の上限をも
って臨む事案とは認められず,主文の刑が相当と判断した。
(求刑 懲役7年6月)
平成15年7月23日
宇都宮地方裁判所刑事部
裁判官   野  口  佳  子

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