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平成17年(ネ)第10063号,第10067号特許実施許諾料返還請求控訴,
同附帯控訴事件
平成17年11月17日判決言渡,平成17年7月14日口頭弁論終結
(原審 東京地方裁判所平成16年(ワ)第13922号,平成17年1月26日
判決) 
           判       決
       控訴人・附帯被控訴人(被告)  合名会社新技術開発研究所
   
       控訴人・附帯被控訴人(被告)  X1
   
       控訴人・附帯被控訴人(被告)  X2
       上記3名訴訟代理人弁護士    比留田薫
   
       被控訴人・附帯控訴人(原告)  株式会社ハネックス
       訴訟代理人弁護士        金子光邦,小池邦吉
           主       文
 1 本件控訴を棄却する。
 2 被控訴人・附帯控訴人の附帯控訴に基づき
   原判決の主文第1,2項は,仮に執行することができる。     
 3 控訴費用(附帯控訴によって生じたものを含む。)は控訴人・附帯被控訴人
らの負担とする。
           事実及び理由
 当事者の呼称は,控訴人・附帯被控訴人(被告)合名会社新技術開発研究所を
「控訴人会社」,控訴人・附帯被控訴人(被告)X1を「控訴人X1」,控訴人・附
帯被控訴人(被告)3名を「控訴人ら」といい,被控訴人・附帯控訴人(原告)を
「被控訴人」という。
第1 申立て
 1 控訴人らの控訴の趣旨
 (1) 原判決を取り消す。
 (2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
 2 被控訴人の附帯控訴の趣旨
   主文第2項と同旨。
第2 事案の概要
1 本件は,被控訴人が,控訴人会社との間で,平成10年4月17日付けで,
控訴人X1を発明者とする特許出願(本件出願(ア)及び(イ))中の発明の実施許諾契
約書を取り交わし,これに基づいて,控訴人会社に対し実施許諾料2000万円を
同年の5月と8月ころに1000万円ずつ支払ったところ,上記特許出願はいずれ
も拒絶理由通知を受けた後,それぞれ平成11年6月9日及び平成12年2月25
日に取り下げられたため,控訴人会社に対し,上記実施許諾契約に基づき,上記2
000万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求め,控訴人会社の社員である
その余の控訴人らに対し,商法80条1項に基づき,同額の連帯支払いを求めた事
案である。
 2 原判決が,被控訴人の請求はいずれも理由あるものとして認容したところ,
控訴人らは,これを不服として控訴を提起した。なお,被控訴人は,原判決に仮執
行の宣言が付されていなかった(被控訴人は仮執行宣言の申立てはしていなかっ
た。)ため,仮執行宣言を求めて附帯控訴を提起した。
 3 本件の前提事実,争点,争点に関する主張は,控訴人らの主張として,次の
とおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「1
 前提事実」,「2 争点」,「3 争点に関する当事者の主張」のとおりである
から,これを引用する。
 (1) 本件で問題とされている本件出願(ア)及び(イ)に係る発明は,技術的に見て
標準ないし優れたものであるが,特にその後続の出願(以下「後続出願」とい
う。)に係る発明は,最高水準のものである。後続出願に係る発明は,本件実施許
諾契約の締結後に開発され,平成11年6月14日に出願されたものである。
 控訴人会社は,後続出願の後である平成11年6月ないし9月ころ,被控訴人に
対し,後続出願をしたことを伝えるとともに,その明細書を交付したところ,被控
訴人は,後続出願の発明が本件出願(ア)(イ)の発明の改良技術であることを認め,
後続出願の発明を本件実施許諾契約の対象とすることについて,明示又は黙示の承
諾をした。
 確かに,控訴人会社は,本件出願(ア)及び(イ)について,拒絶理由通知を受けた
後にその出願取下げをしているが,それは,上記のとおり,後続出願の発明は,本
件出願(ア)(イ)の発明を改良したもので,これをはるかに越えた技術の発明であ
り,かつ,本件実施許諾契約の対象が本件出願(ア)及び(イ)の発明から後続出願の
発明に変更になったことから,本件出願(ア)及び(イ)の出願取下げをしたのであ
る。被控訴人のその後の言動からみても,この点は明らかである。
 (2) 控訴人会社は,その平成15年12月31日付け貸借対照表によれば十分な
資産があり,かつ,借入金等はなく,また,その技術開発力は業界において非常に
高い評価を受けているなどの事情があるから,本訴請求に係る債務を含めた会社の
債務を完済するに足りる会社財産を有していないということはできない。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,被控訴人の本訴請求はいずれも理由があり認容すべきものと認
定判断するものであるが,その理由は,控訴人らの主張に対する判断として次のと
おり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」のと
おりであるから,これを引用する。
 (1) 控訴人らの主張する後続出願の発明(乙6)と本件出願(ア)及び(イ)の発明
(甲1,3)との同一性ないし類似性(特に後続出願と本件出願(ア)との間)につ
いては,これを肯定し得ないでもないが,後続出願の発明が本件出願(ア)及び(イ)
の発明を越える高い技術の発明であることについては,証拠上認めることはできな
い(双方の明細書を対比する限りむしろ格別な相違はなく,一方に進歩性がなけれ
ば他方にも進歩性はないようにも思われる。)。また,仮に後続出願の発明が本件
出願(ア)及び(イ)の発明に比して相対的にある程度は優れた発明であるとしても,
それだけでは,本件実施許諾契約の対象が本件出願(ア)及び(イ)から後続出願の発
明に変わったことを推認するほどの有力な間接事実であるということはできない。
 控訴人らは,後続出願の発明を本件実施許諾契約の対象とすることについて被控
訴人の承諾を得たと主張するが,その主張自体からしても,「明示又は黙示の承
諾」というものであり,書面によらず,かつ,黙示による承諾を含むというのであ
って,にわかに採用し難いものである。この点について,控訴人X1は,その陳述書
(乙23)において,本件出願(ア)及び(イ)が後続出願に変更になるということが
「双方の了解事項」,「共通の認識」であり,後続出願がされてまもない「平成1
1年6月~9月頃,‥‥,A本部長と私の間(で),後続出願が本件出願(ア)の改
良技術であり,後続出願が本件契約の実施許諾の対象であることが再度確認されま
した。」と断定した言い方をしているが,そうであるならば,本件出願(ア)及び
(イ)の出願取下げに踏み切るという重要な局面において,事前の明確な約定をすべ
きであったのに,何ら書面化するなどの適切な措置を講じていないのであるから,
控訴人X1の上記陳述は信用することができない。
 (2) 控訴人らは,控訴人会社は本件債務を含め完済不能ではないと主張するが,
その根拠として提出する乙14は,控訴人会社のパンフレットであり,これによっ
て,直ちに控訴人会社の業界からの高い評価や信用力を肯認するには不十分であ
り,また,控訴人らの提出する乙15,16(貸借対照表等の添付された確定申告
書)は,控訴人らの主張を認めるに足りる的確な証拠であるとはいうことはできな
い。
 (3) 以上のとおり,控訴人らの主張は,いずれも採用することができない。
 2 そうすると,被控訴人の本訴請求は理由があり,これと同旨の原判決は相当
であるから,本件控訴は理由がなく,被控訴人の仮執行宣言を求める附帯控訴は理
由がある。
 よって,主文のとおり判決する。
     知的財産高等裁判所第4部
    裁判長裁判官
                     塚   原   朋   一
   裁判官
                     田   中   昌   利
               裁判官
                     佐   藤   達   文

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