弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人平澤慎一,同福本悦朗の上告受理申立て理由(ただし,排除されたも
のを除く。)について
1本件は,上告人が,被上告人Y(以下「被上告会社」という。)に委託し1
て行った商品先物取引において損失を被ったことについて,その従業員である被上
告人Yによる説明義務違反等の違法行為があると主張して,被上告人らに対し,2
不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。
2原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)被上告会社は,商品先物取引の受託等を目的とする会社である。また,被
2上告会社は,商品取引員であり,東京工業品取引所の会員である。被上告人Y
は,被上告会社の従業員であり,上告人との取引を担当した者である。
(2)上告人は,被上告会社との間で商品先物取引委託契約を締結し,これに基
づき,平成17年6月14日から同年11月15日まで,被上告会社に委託して,
1審判決別紙「建玉分析表」(ただし,場節の欄を除く。)のとおり,東京工業品
取引所の白金の商品先物取引を行った。その結果,上告人は合計687万9970
円の損失を被った。
(3)被上告会社は,少なくとも,上記取引期間中,平成18年4月限及び6月
限の白金について,それぞれ委託玉(商品取引員が顧客の委託に基づいてする取
引)と自己玉(商品取引員が自己の計算をもってする取引)とを通算した売りの取
組高と買いの取組高とが均衡するように自己玉を建てることを繰り返していた(以
下,このように委託玉と自己玉とを通算した売りの取組高と買いの取組高とを均衡
するように自己玉を建てることを繰り返す取引手法のことを「本件取引手法」とい
う。)。そして,本件取引手法が用いられると,取引が決済される場合,委託玉全
体と自己玉とに生ずる結果が,一方に利益が生ずるなら他方に損失が生ずるという
関係にある。この意味で,委託者全体と商品取引員との間には利益相反の関係があ
る。
(4)上告人は,被上告人Yが被上告会社において本件取引手法を用いているこ2
とについて説明しなかったことが上告人に対する不法行為を構成すると主張してい
る。
3原審は,被上告人Yが上告人に対し本件取引手法を用いていることを説明2
すべき義務を負っていたとはいえないなどとして,上告人の請求を棄却すべきもの
とした。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
商品先物取引は,相場変動の大きい,リスクの高い取引であり,専門的な知識を
有しない委託者には的確な投資判断を行うことが困難な取引であること,商品取引
員が,上記委託者に対し,投資判断の材料となる情報を提供し,上記委託者が,上
記情報を投資判断の材料として,商品取引員に対し,取引を委託するものであるの
が一般的であることは,公知の事実であり,上記委託者の投資判断は,商品取引員
から提供される情報に相応の信用性があることを前提にしているというべきであ
る。そして,商品取引員が本件取引手法を用いている場合に取引が決済されると,
委託者全体の総益金が総損金より多いときには商品取引員に損失が生じ,委託者全
体の総損金が総益金より多いときには商品取引員に利益が生ずる関係となるのであ
るから,本件取引手法には,委託者全体の総損金が総益金より多くなるようにする
ために,商品取引員において,故意に,委託者に対し,投資判断を誤らせるような
不適切な情報を提供する危険が内在することが明らかである。そうすると,商品取
引員が本件取引手法を用いていることは,商品取引員が提供する情報一般の信用性
に対する委託者の評価を低下させる可能性が高く,委託者の投資判断に無視するこ
とのできない影響を与えるものというべきである。
したがって,少なくとも,特定の商品(商品取引所法2条4項)の先物取引につ
いて本件取引手法を用いている商品取引員が専門的な知識を有しない委託者から当
該特定の商品の先物取引を受託しようとする場合には,当該商品取引員の従業員
は,信義則上,その取引を受託する前に,委託者に対し,その取引については本件
取引手法を用いていること及び本件取引手法は商品取引員と委託者との間に利益相
反関係が生ずる可能性の高いものであることを十分に説明すべき義務を負うものと
いうべきである。
しかるに,原審は,上告人が専門的な知識を有しない委託者であるか否か,被上
告会社が上告人から商品先物取引の委託を受ける前から白金について本件取引手法
を用いていたか否か,被上告人Yが上記のような説明をしたか否か等につき審理2
することなく,被上告人Yに説明義務違反がないと判断したのであり,この判断2
には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨を
いうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさ
せるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官古田佑紀裁判官
竹内行夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛