弁護士法人ITJ法律事務所

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   主文
 1 本件控訴を棄却する。
 2 控訴費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人(控訴の趣旨)
 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 2 被控訴人
 主文同旨
第2 事案の概要及び本件控訴の経緯
   本件は,被控訴人(原審原告)がリース会社である控訴人(原審被告)に対し,カラ
オケ機器(リース用物件)の売買代金123万3400円とこれに対する平成11年5
月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合に
よる遅延損害金の支払を求めている事案である。
 原審は,被控訴人の請求を認容した。そこで,これを不服とする控訴人が本件控
訴に及んだ。
第3 当事者双方の主張
1 請求原因
 (1) 被控訴人は,音響機器の販売等を目的とする会社であり,控訴人は,生産用,
医療用,事務用,その他営業に供する車両,機械器具,設備など動産のリース
を目的とする会社である。
 (2) 平成9年5月30日,控訴人(ただし,当時の商号は,きたしんリース株式会社)
は,被控訴人に対し,注文書により別紙物件目録記載のカラオケ機器(以下「本
件カラオケ機器」という。)3台を代金合計370万0200円(1台123万3400
円)で被控訴人から購入する旨を申し込み,同日,被控訴人は,注文請書により
これを応諾した。したがって,これにより,控訴人と被控訴人との間に,本件カラ
オケ機器3台を代金370万0200円で売買する旨の売買契約(以下「本件売買
契約」という。)が成立した。
 (3) よって,被控訴人は,控訴人に対し,本件売買契約に基づいて,売買代金の内
金123万3400円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで商
事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否(控訴人)
  請求原因(1),(2)の各事実は認める。
3 抗弁
 (1) 抗弁その1(合意解約)
   株式会社大阪有線放送社(現商号は株式会社有線ブロードネットワークスであ
るが,以下「大阪有線」という。)ないしその従業員であるAは,被控訴人の履行
補助者であるところ,控訴人と被控訴人とは,Aを通じて,本件売買契約を合意
解約した。
 (2) 抗弁その2(物品未納入)
  ① 本件売買契約においては,売買代金の支払時期に関し,本件カラオケ機器納
品後,検収を行って,当月の月末に支払う旨の条項があった。
  ② しかしながら,被控訴人は,本件カラオケ機器を納入していない。
 (3) 抗弁その3(特約による解除)
  ① 本件売買契約は,控訴人が本件カラオケ機器を北海観光有限会社にリース
することを目的として締結したものであり,本件売買契約には,リースを受ける
借主がリース契約を締結しない場合,あるいはリース物件受領書を提出しな
い場合には,買主である控訴人は,売買契約を解除できる旨の特約(以下
「本件特約」という。)があった。
  ② 然るところ,現在に至るまで,本件カラオケ機器については,被控訴人を売主
とするリース契約は締結されておらず,リース物件受領書の提出もない。
  ③ 本件カラオケ機器については,被控訴人の履行補助者である大阪有線のAか
ら売主を被控訴人から株式会社アイ・ダブル・エフに変更する旨の連絡があ
り,控訴人は,これを受けて,アイ・ダブル・エフと本件カラオケ機器2台分につ
き売買契約を締結し,これにつき北海観光との間でリース契約を締結したもの
であり,北海観光から提出を受けたリース物件受領書も,売主をアイ・ダブル・
エフとするものであった。
  ④ したがって,控訴人は,被控訴人に対し,本件特約に基づいて,本件売買契
約を解除する旨の意思表示をした。
 (4) 抗弁その4(一部弁済)
   被控訴人は,本件カラオケ機器のうち,2台分については,Aの父親から代金を
受領している。
 被控訴人が本訴において請求しているのは,残りの1台分の代金であるとこ
ろ,既に支払われた2台分の代金がどれに充当されるかは,弁済者も受領者も
指定していないので,法定充当され,被控訴人は,按分比例による充当後の代
金しか請求することができない。
4 抗弁に対する認否及び反論(被控訴人)
 (1) 抗弁その1の事実は否認する。
   大阪有線は被控訴人の履行補助者ではないし,被控訴人が控訴人との間で本
件売買契約を合意解約した事実はない。
 (2) 抗弁その2について
   ①の事実は認めるが,②の事実は否認する。
   本件カラオケ機器は,被控訴人の仕入先である大阪有線から,リース契約の借
主である北海観光が営むカラオケドンキーに対し,直接,納入されている。
 (3) 抗弁その3について
   ①の事実は認めるが,本件特約により本件売買契約が解除できるとする控訴人
の主張は争う。
   本件特約の解釈としては,客観的に,控訴人がリース契約を締結して,借主から
リース物件受領書を取り付けた対象のカラオケ機器が,本件売買契約の対象物
件(控訴人の注文書に記載されている物件)であれば足りるというべきである。
   北海観光(店舗名カラオケドンキー)に納品された本件カラオケ機器は,いずれ
も被控訴人が大阪有線に注文を出して,同社から直接,北海観光に納品させた
もので,大阪有線に対する支払も,当然,被控訴人が行っている。 これに対し
て,控訴人は,アイ・ダブル・エフと本件カラオケ機器2台分の売買契約を締結し
たと主張しているが,アイ・ダブル・エフは,本件カラオケ機器につき,大阪有線
に注文を出したこともなければ,代金を支払ったこともない。
   したがって,控訴人がリース契約を締結し,リース物件受領書を取り付けた対象
のカラオケ機器は,本件売買契約の対象物件(控訴人の注文書に記載されてい
る物件)であるといわざるを得ないのであり,たとえ控訴人が主観的意思として,
リース物件の売主はアイ・ダブル・エフであると認識していたとしても,本件特約
に基づいて,本件売買契約を解除することはできないというべきである。
 (4) 抗弁その4について
   抗弁その4の主張は争う。
   被控訴人は,Aの父親から246万6800円を受領したが,うち123万3400円
は,本件カラオケ機器1台分の売買代金として受領したものであり,残金123万
3400円は,カラオケ機器1台分についてリース契約が成立していないことか
ら,控訴人に売買代金を請求することができないことに基づく損害賠償金として
受領したものである。
   本訴において,被控訴人は,控訴人に対し,リース契約が成立している残りの1
台分のカラオケ機器の売買代金を請求するものであり,Aの父親から受領した
弁済金が本件カラオケ機器3台分に按分比例されるべきとの控訴人の主張は理
由がない。
5 抗弁その3に対する再抗弁(信義則違反・権利濫用)
  控訴人が本件特約に基づく解除を主張するのは,下記事情からして,信義則違
反・権利濫用であって,許されない。
 (1) 本件においては,先に,本件カラオケ機器が北海観光に納品されてしまってか
ら,控訴人のリースを利用することになったため,納品後,控訴人から被控訴人
に対し,注文書が発行された。控訴人としては,注文書を発行した以上,速やか
に,リース契約書とリース物件受領書を徴収する義務があるというべきである
が,控訴人は,これを放置しておいて,2年近くもたってから,本件特約を理由
に,本件売買契約を解除するというのは,明らかに信義則違反であり,権利の濫
用である。
  (2) 控訴人は,大阪有線のAの申出により,平成9年12月19日付けで,本件売買
の対象物件と同一の商品2台分につき,売主を被控訴人からアイ・ダブル・エフ
に変更したと主張しているが,これは,控訴人が注文書を被控訴人に出してか
ら,実に6か月以上も経過した後のことである。控訴人は,注文書発行時点で,
既に商品が納品済みであることを知っていたのであるから,そもそも売主の変更
は不自然であると思うべきであるうえ,その変更が納品してから6か月以上も経
過してからであれば,尚更不自然であるから,この時点で,被控訴人に対して事
実確認を行うべきであった。それにもかかわらず,控訴人は,被控訴人に何らの
確認もせずに放置しておいたもので,本件訴訟提起後の平成11年6月になっ
て,本件売買契約の解除を主張するのは,信義則違反であり,権利の濫用であ
る。
 6 再抗弁に対する認否と反論
  (1) 再抗弁の主張は争う。
  (2) 本件では次のような事情があり,信義則に違反するのはむしろ被控訴人である
から,被控訴人が信義則違反・権利濫用を主張することは許されない。
 ① 大阪有線(担当者A)は,被控訴人の履行補助者であるところ,Aは,売主の
都合で,本件カラオケ機器の売主をアイ・ダブル・エフに変更してほしいと控訴
人に指示し,控訴人は,これに従って,アイ・ダブル・エフに注文書(ただし,カ
ラオケ機器2台分)を出した。カラオケ機器が3台から2台に変更になったの
は,リース契約の借主である北海観光の都合であると,控訴人は,大阪有線
(担当者A)から聞いている。
 ② その後,北海観光から被控訴人宛にリース物件受領書が発行されたので,
控訴人は,平成10年1月20日に,アイ・ダブル・エフに対し,カラオケ機器の
売買代金として,246万6800円を支払った。
 ③ 大阪有線(担当者A)は,控訴人を欺くために,被控訴人と通謀して,伝票操
作をし,リース物件の売主が被控訴人であるかのように仮装したものであり,
被控訴人は,この企てに協力したものである。そして,Aは,売買代金を着服
した。
 ④ 被控訴人は,平成9年6月4日に請求書を控訴人に発送しているが,通常で
あれば,1か月程度で売買代金が振り込まれるはずであるのに,控訴人から
入金がないにもかかわらず,平成10年7月ころまで控訴人に対して何の連絡
もせず,代金の督促もせず放置していたのであり,これでは,控訴人が本件
売買契約が解消されたと認識するのは無理からぬことである。
 7 再抗弁に対する反論についての認否
   ①の事実は否認する。被控訴人は,大阪有線から北海観光へと直接,カラオケ機
器を納入させたが,だからといって,大阪有線(担当者A)が被控訴人の履行補助
者だということにはならない。
  ③のうち,被控訴人が,控訴人を欺くために,大阪有線(担当者A)と通謀して伝票
操作をしたこと及び被控訴人がこの企てに協力したことは,いずれも否認する。被
控訴人は,伝票操作に協力したことも,大阪有線(担当者A)の詐欺に協力したこと
もない。
  ④のうち,被控訴人が,平成9年6月4日に請求書を控訴人に発送したこと,及び
本件カラオケ機器の入金がないにもかかわらず,平成10年7月になるまで控訴人
に対して,連絡も督促もしなかったことは認めるが,その余の主張は争う。
第4 当裁判所の判断
 1 請求原因(1),(2)の事実は,当事者間に争いがない。
   なお,本件訴状送達の日の翌日が平成11年5月20日であることは,本件記録上
明らかである。
 2 そこで,抗弁について判断する。
  (1) 抗弁を判断する前提として,本件売買契約締結の経緯や本件カラオケ機器のリ
ース契約等について検討すると,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実
が認められる(末尾のかっこ内は,裏付けとなる証拠を示す。)。
   ① 平成9年1月ころ,被控訴人の営業担当者は,北海観光(店舗名カラオケドン
キー)から,カラオケ機器,すなわち,U-karaコマンダーUK-CM20(2
台),U-kara動画CDプレイヤーUK-CH20(2台),U-karaアンプUK-
AM20(1台)の注文を受けた。そこで,被控訴人は,上記カラオケ機器を大
阪有線から買い受けて,同年2月ころ,これを大阪有線から直接,北海観光に
納入設置させた。なお,その際の大阪有線の担当者は,Aであった。
    (甲14号証の2,甲28号証)
   ② 被控訴人は,平成9年1月に注文を受けた①のカラオケ機器について,
    同年1月31日に,代金180万2500円を大阪有線に支払った。
    (甲20,21,28号証)
   ③ その後,被控訴人は,平成9年5月ころ,北海観光から,U-karaコマンダーU
K-CM20(1台),U-kara動画CDプレイヤーUK-CH20(1台),U-kar
aアンプUK-AM20(2台),U-karaスタンドマイクホルダーPS-51(3台)
及びU-karaシステムラックUK-RA11(3台)の追加注文を受けた。その
際,北海観光から,この追加注文分と平成9年2月ころに納入された①の分
のすべて,すなわち本件カラオケ機器(3台分)について,これをリース契約に
してほしいとの要望が出され,大阪有線のAからも同様な話があったので,被
控訴人は,これを承諾した。
    (甲28号証,弁論の全趣旨)
   ④ 控訴人は,北海観光からAを通じてリース契約の申し入れを受け,平成9年5
月30日被控訴人宛に,本件カラオケ機器(3台分)についての注文書(甲1号
証)を送付した。同日,被控訴人は,これを受けて控訴人宛に注文請書(甲3
号証)を送付し,ここに控訴人と被控訴人との間で,本件カラオケ機器(3台
分)について,本件売買契約が成立した。
    (甲1,3,28号証,弁論の全趣旨)
   ⑤ 被控訴人は,北海観光から追加注文のあった③のカラオケ機器を大阪有線か
ら買い受けて,平成9年6月20日ころ,これを大阪有線から直接,北海観光
に納入設置させた。
    (甲6号証,甲14号証の2,甲28号証)
   ⑥ 被控訴人は,平成9年5月に追加注文を受けた③のカラオケ機器について,同
年7月24日,代金105万2900円を大阪有線に支払った。
    (甲25号証,甲26号証の1ないし14,甲28号証)
   ⑦ ところで,平成9年12月ころ,大阪有線のAから控訴人に対し,「売主の都合
で,カラオケ機器の売主をアイ・ダブル・エフに変更してほしい。また,借主で
ある北海観光の都合で,カラオケ機器は,3台から2台に変更してほしい。」と
の申出があった。控訴人は,北海観光との間でカラオケ機器についてのリー
ス契約を未だ締結していなかったことから,Aの申出を了解して,アイ・ダブ
ル・エフに対し,カラオケ機器2台分の平成9年12月19日付け注文書(乙1号
証)を送付し,アイ・ダブル・エフから平成9年12月24日付け注文請書(乙2
号証)の送付を受けた。しかし,控訴人は,カラオケ機器の売主が変更され,
カラオケ機器の台数が変更になったことについて,被控訴人に対し,何ら照会
や確認をすることはなかった。
    (甲28号証,乙1,2号証,弁論の全趣旨)
   ⑧ 控訴人は,平成9年12月19日,北海観光との間で,カラオケ機器2台につい
て,リース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結し,その契約書(乙3号
証,以下「本件リース契約書」という。)を取り交わすとともに,北海観光から,
カラオケ機器2台についてのリース物件受領書(乙4号証)を徴収した。本件リ
ース契約書には,対象物件として,控訴人が大阪有線から購入して,大阪有
線から直接,北海観光に対し納入設置させた物品と同一のカラオケ機器(た
だし,2台)が記載されているが,その売主は「株式会社アイ・ダブル・エフ」と
記載されている。
    (甲1号証,乙3,4号証,弁論の全趣旨)
   ⑨ 控訴人は,平成10年1月20日,アイ・ダブル・エフに対し,カラオケ機器の売
買代金として,246万6800円を支払った。
    (乙5,6号証)
  (2) 抗弁その1(合意解約)について
    控訴人は,大阪有線ないしその従業員であるAが被控訴人の履行補助者である
ことを前提として,Aの申し入れにより本件売買契約を合意解約された旨主張す
る。
    確かに前記認定のとおり,被控訴人は,本件カラオケ機器を大阪有線から購入
し,これを北海観光に納入設置するについては,大阪有線にそれをさせている
から,カラオケ機器の納入という事実行為については,大阪有線ないしその担当
者であるAは,被控訴人の履行補助者の立場にあったということができる。
    しかしながら,大阪有線ないしその担当者であるAが上記のような事実行為を越
えて,売買契約の解約や内容の変更についても,被控訴人の履行補助者の立
場にあったことを認めるに足る証拠はない。
    したがって,Aが平成9年12月になって,本件カラオケ機器の売主を変更してほし
いと控訴人に申し出た事実は認められるが,これをもって,被控訴人が本件売
買契約の合意解約の申し出をしたものと解することはできない。
    よって,抗弁その1(合意解約)は理由がない。
  (3) 抗弁その2(物品未納入)について
    抗弁その2の①の事実は,当事者間に争いがない。 
    しかしながら,前記認定のとおり,本件カラオケ機器は,被控訴人の仕入先であ
る大阪有線が直接北海観光に納入設置していることが認められ,これは,前記
認定のとおり,大阪有線が被控訴人の履行補助者として納入設置を行ったと認
められる。
    したがって,抗弁その2(物品未納入)は理由がない。
  (4) 抗弁その3(特約による解除)について
   ① 抗弁その3の①の事実は,当事者間に争いがない。
   ② そして,前記(1)の認定事実によれば,平成9年12月19日,控訴人は,北海観
光との間で,カラオケ機器2台について本件リース契約を締結し,その契約書
を取り交わすとともに,北海観光から,カラオケ機器2台についてのリース物
件受領書を徴収したことが認められるものの,本件リース契約書には,カラオ
ケ機器の売主として「株式会社アイ・ダブル・エフ」と記載されており,売主を被
控訴人とするリース契約書は作成されていないことが認められる。
   ③ しかし,本件売買契約において,本件特約(リースを受ける借主がリース契約を
締結しない場合,若しくはリース物件受領書を提出しない場合には,買主であ
る控訴人は売買契約を解除できる旨の特約)が定められたのは,控訴人のリ
ース物件購入の目的が当該物件をリースに供してそのリース料によって利益
をあげることにあることから,リース契約が成立しなければリース物件を購入
した意味がなくなるからにほかならない。そうすると,上記認定の事実の下で
は,被控訴人が納入設置した本件カラオケ機器のうち2台分につき,控訴人と
北海観光との間でリース契約が成立し,かつ,北海観光からリース物件受領
書が提出されており,当該2台分については,控訴人が北海観光からリース
料を徴収することができるのであるから,被控訴人が本件特約を行使する要
件は具備しないものといわなければならない。
   ④ 控訴人は,本件リース契約書のカラオケ機器の売主名はアイ・ダブル・エフであ
って被控訴人ではないと主張するが,本件リース契約書に記載されているカ
ラオケ機器は被控訴人が控訴人に売却納入した物件(本件カラオケ機器)で
あるから,たとえ控訴人の主観では,当該リース物件はアイ・ダブル・エフから
購入したものとの認識であったとしても,それは,控訴人がリース物件の売主
を誤認し,その誤った認識のものにリース契約を成立させたに過ぎず,本件特
約を援用する理由とすることはできない。要するに,控訴人は,結果として,本
件カラオケ機器を被控訴人とアイ・ダブル・エフの両者から二重に購入(ただ
し,アイ・ダブル・エフからは2台)する契約を締結したことになるが,現実に本
件カラオケ機器をユーザーである北海観光に納入設置したのは被控訴人で
あり,その被控訴人との本件売買契約が解消されることなく,当該カラオケ機
器2台につき控訴人と北海観光との間にリース契約が成立している以上,控
訴人が被控訴人に対して,その売買代金(ただし,2台分)の支払を拒む合理
的理由は認められない。控訴人は,アイ・ダブル・エフにカラオケ機器2台分の
代金を既に支払っているが,それは,控訴人がAの言辞を軽信し,本件売買
契約の当事者である被控訴人に何らの照会や事実確認をすることなく,本件
売買契約が解消されたと安易に判断したことに原因があり,その責任を被控
訴人に転嫁することは許されない。なお,控訴人は,大阪有線は控訴人を欺く
ために被控訴人と共謀して伝票を操作し,リース物件の売主が被控訴人であ
るかのように仮装したと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
⑤ よって,抗弁その3(特約による解除)は,本件カラオケ機器のうち,リース契
約が成立していない1台については理由があるものの,残り2台については
理由がない。
(5) 抗弁その4(一部弁済)
  被控訴人がAの父親から246万6800円を受領したことは,当事者間に争いが
ない。しかし,証拠(甲8ないし18号証,28号証)及び弁論の全趣旨によれば,
① 被控訴人は,本件カラオケ機器の売買代金を控訴人に対し再三請求して
も,支払ってもらえなかったため,その後,Aの父親と交渉して,Aの父親から24
6万6800円の支払を受けたこと,② 被控訴人は,弁済金受領者として,この2
46万6800円のうち123万3400円は,本件カラオケ機器1台分の売買代金債
権に,また,残金123万3400円は,本件カラオケ機器1台分についてリース契
約が成立していないことを理由として控訴人に売買代金を請求することができな
いことに基づく損害賠償請求債権に,それぞれ充当したことが認められる。
  そうすると,被控訴人が本訴において請求しているのは,上記弁済によって回
収できなかった本件カラオケ機器1台分の売買代金であると認められるから,控
訴人の主張する弁済金の法定充当(按分比例)の抗弁に理由のないことは明ら
かである。
3 結論
  以上のとおりであるから,控訴人は,本件売買契約に基づいて,被控訴人に対し,
本件カラオケ機器1台分の代金123万3400円及びこれに対する訴状送達の日
の翌日である平成11年5月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合に
よる遅延損害金を支払う義務がある。
  よって,被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由
がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
 
  名古屋高等裁判所金沢支部第1部
     
     裁判長裁判官    川崎和夫
裁判官源 孝治
裁判官榊原信次
     物 件 目 録 
商品名(下段は品番)単価(円) 台数 小計(円)
1 U-karaコマンダー
  UK-CM20            875,500  3台 2,626,500
 
2 U-kara動画CDプレイヤー
  UK-CH20            269,0003台807,000
3 U-karaアンプ
  UK-AM20            68,0003台204,000
4 U-karaスタンドマイクホルダー
  PS-51              1,6003台    4,800
5 U-karaシステムラック
  UK-RA11            19,300  3台57,900
  以上,売買代金合計370万0200円
                             
  (なお,上記の単価,小計,合計の各金額は,いずれも消費税を含んだ額であ  
る。)
 

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