弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定中、電話機器類の回路図及び信号流れ図に係る部分を破棄する。
     右部分につき、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     その余の本件抗告を却下する。
     前項に関する抗告費用は抗告人らの負担とする。
         理    由
 抗告代理人井上俊治、同松葉知幸、同小野範夫、同水間頼孝の抗告理由第一につ
いて
 【要旨一】証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却
下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをす
ることはできないと解するのが相当である。論旨は採用することができない。
 同第二について
 一 記録によれば、主文第一項の文書に係る本件の経緯は次のとおりである。
 1 本件の本案の請求は、大阪地方裁判所平成四年(ワ)第八一七八号事件判決
別紙電話機目録記載の電話機器類(以下「本件機器」という。)を購入し利用して
いる抗告人らが、本件機器にしばしば通話不能になる瑕疵があるなどと主張して、
相手方に対し、不法行為等に基づく損害賠償を請求するものである。
 2 本件は、抗告人らが、本件機器の瑕疵を立証するためであるとして、本件機
器の回路図及び信号流れ図(以下「本件文書」という。)につき文書提出命令の申
立てをした事件であり、相手方は、本件文書は民訴法二二〇条四号ロ所定の「第百
九十七条第一項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記
載されている文書」及び同号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文
書」に当たるとして、本件文書につき文書提出の義務を負わないと主張した。
 二 原審は、本件文書は、本件機器を製造したメーカーが持つノウハウなどの技
術上の情報が記載されたものであって、これが明らかにされると右メーカーが著し
く不利益を受けることが予想されるから、民訴法二二〇条四号ロ所定の文書に当た
り、また、本件文書は、本件機器のメーカーがこれを製造するために作成し、外部
の者に見せることは全く予定せず専ら当該メーカー、相手方及びその関連会社の利
用に供するための文書であるから、同号ハ所定の文書にも当たり、相手方は本件文
書を提出すべき義務を負わないとして、本件文書提出命令の申立てを却下した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 【要旨二】民訴法一九七条一項三号所定の「技術又は職業の秘密」とは、そ
の事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困
難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをい
うと解するのが相当である。
 本件において、相手方は、本件文書が公表されると本件機器のメーカーが著しい
不利益を受けると主張するが、本件文書に本件機器のメーカーが有する技術上の情
報が記載されているとしても、相手方は、情報の種類、性質及び開示することによ
る不利益の具体的内容を主張しておらず、原決定も、これらを具体的に認定してい
ない。したがって、本件文書に右技術上の情報が記載されていることから直ちにこ
れが「技術又は職業の秘密」を記載した文書に当たるということはできない。
 2 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至
るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作
成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると
個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害された
りするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると
認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二〇条四号ハ所
定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるということは、当審
の判例とするところである(平成一一年(許)第二号同年一一月一二日第二小法廷
決定・民集五三巻八号登載予定)。
 これを本件についてみると、原決定は、本件文書が外部の者に見せることを全く
予定せずに作成されたものであることから直ちにこれが民訴法二二〇条四号ハ所定
の文書に当たると判断しており、その具体的内容に照らし、開示によって所持者の
側に看過し難い不利益が生じるおそれがあるかどうかについて具体的に判断してい
ない。
 四 以上によれば、本件文書に関する原審の前記判断には、法令の解釈適用を誤
った違法があり、右違法は裁判の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は
理由があり、原決定中、本件文書に係る部分は破棄を免れない。そして、右に説示
したところに従い更に審理を尽くさせるため、右部分について本件を原審に差し戻
すのが相当である。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 藤井
正雄 裁判官 大出峻郎)

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