弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     第一審判決判示第一の買受事実一覧表及び判示第二の売渡事実一覧表中
別表記載の各罪につき各被告人を免訴する。
     被告会社を罰金一八万円に被告人Aを懲役一年及び罰金四万円に被告人
Bを懲役六月及び罰金二万円に処する。
     但し被告人A、同Bの両名に対しそれぞれ三年間右懲役刑の執行を猶予
する。
     被告人A、同Bにおいて右罰金を完納することができないときは金五百
円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
     第一審及び当審における訴訟費用は全部被告人等の負担とする。
         理    由
 弁護人鈴木義広の上告趣意について。
 臨時物資需給調整法四条の規定する法定刑が一〇年以下の懲役又は一〇万円以下
の罰金であることは所論のとおりであるが、第一審判決が被告C海運株式会社を所
罰した所以のものは、被告会社の取締役社長である被告人Aと専務取締役である被
告人Bの両名が共謀して被告会社の業務に関し、判示のとおり正規の割当公文書と
引換えることなく、石油製品である重油等を一八回に亘り買受け、また、八回に亘
り売渡したとの事実に基ずき同法六条を適用した結果に外ならない。そして第一審
判決は右多数の違反行為は刑法四五条前段の併合罪に該当するものとして同法四八
条二項に従い前示各罪につき定めた罰金の合算額以下において被告会社に対し罰金
二〇万円の刑を言渡したものである。されば右判決には所論のように「法律の認め
た額を越えた罰金」を言渡した違法はないのである。論旨の中、違憲の所論はその
前提を欠き、その他の所論は量刑不当の主張に帰着し、いずれも刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 職権を以て調査すると第一審判決の確定した判示第一の買受事実一覧表及び判示
第二の売渡事実一覧表中別表記載の各罪についてはいずれもその後昭和二七年政令
一一七号大赦令一条八八号により大赦があつたので刑訴四一一条五号、四一三条但
書、四一四条、四〇四条、三三七条三号により原判決及び第一審判決を破棄し右各
罪について各被告人を免訴すべきものとする。
 よつて第一審判決が確定した大赦にかからない犯罪に対し法令を適用すると被告
人A、同Bの各所為は臨時物資需給調整法一条、昭和二二年一〇月三一日総理庁令、
内務省令、大蔵省令、司法省令、文部省令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸
省令、逓信省令、労働省令一号、石油製品配給規則一条一項、四条(昭和二四年三
月三〇日以前の分)昭和二四年三月三一日総理庁令、法務庁令、大蔵省令、文部省
令、厚生省令、農林省令、商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令一
号石油製品配給規則一条一項一一条、一二条附則五項(昭和二四年四月一日以降の
分)刑法六〇条に各違反し臨時物資需給調整法四条一項に各該当するところその情
状により同条二項を適用し懲役及び罰金を併科することとし以上は刑法四五条前段
の併合罪であるから同法四七条、四八条二項一〇条に従い懲役刑については犯情の
最も重いものと認める昭和二四年七月四日B重油六八〇〇立を割当公文書と引換で
なしに代金一五万三〇〇〇円でDに売渡した罪の刑に法定の加重をなし罰金刑につ
いては所定の罰金額を合算した刑期並びに金額の各範囲内で被告人A、同Bをそれ
ぞれ主文三項掲記の如く量定処断し被告会社に対してはその従業者である右被告人
両名が被告会社の業務に関し違反行為をしたものであるから臨時物資需給調整法六
条及び前掲各法条を適用し被告会社を罰金一八万円に処することとしなお被告人A、
同Bの両名に対してはその情状に鑑み刑法二五条によりそれぞれ三年間懲役刑の執
行を猶予し同被告人等において罰金を完納することができないときは同法一八条に
従い金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置することとし主文
六項記載の訴訟費用は刑訴一八一条一項に則りその全部を被告人等に負担せしめる
べきものとする。
 よつて裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 佐藤欽一出席
  昭和二八年四月九日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

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