弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
原判決を破棄する。
本件を高松高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人西嶋吉光の上告受理申立て理由について
1本件は,自動車を運転していた者がため池に転落してでき死した事故について,そ
の相続人である上告人らが,保険会社である被上告人に対し,自動車総合保険契約の人身
傷害補償特約に基づき保険金の支払を請求する事案である。
2原審の確定した事実等(裁判所に顕著な事実を含む)の概要は,次のとおりであ。
る。
()A(以下「A」という)は,B株式会社の代表取締役であった。1。
()Aは,昭和57年ころに狭心症との診断を受け,平成9年6月12日に冠動脈バ2
イパス手術を受けた後,狭心症発作予防薬等を定期的に服用していた。
()Aは,平成15年6月10日午前10時10分ころ,普通乗用自動車(以下「本3
件車両」という)を運転してBの事務所を出発したが,その約3分後,本件車両ごとた。
め池に転落し(以下「本件事故」という,同日午前11時55分ころ死亡した。Aの。)
死因は,でき死であった。
()本件事故の現場は,緩やかな下り坂の先の三さ路の交差点である。上記下り坂の4
,,,,前方にはため池があったがAは上記下り坂を直進し三さ路を左右に曲がることなく
急ブレーキ等の回避措置も執らずそのまま上記ため池に転落した。なお,本件事故はAの
自殺によるものではない。
()Bは,被上告人との間で,自動車総合保険契約を締結していたが,同契約には,5
被保険自動車を本件車両,被保険者を被保険自動車の正規の乗車装置又は当該装置のある
,(),室内に搭乗中の者等請求権者を被保険者被保険者が死亡した場合はその法定相続人
人身傷害補償を5000万円とする,次のような内容の人身傷害補償特約(以下「本件特
約」という)が付加されていた。。
ア被上告人は,日本国内において,次の各号のいずれかに該当する急激かつ偶然な外
来の事故により,被保険者が身体に傷害を被ることによって被保険者又はその父母,配偶
者若しくは子が被る損害に対して,この特約に従い,保険金を支払う。
(ア)自動車の運行に起因する事故(以下「運行起因事故」という)。
(イ)被保険自動車の運行中の,飛来中若しくは落下中の他物との衝突,火災,爆発又
は被保険自動車の落下(以下「運行中事故」という)。
イアに記載された傷害には,日射,熱射又は精神的衝動による障害を含まない(以下
「本件傷害除外条項」という。。)
ウ被上告人は,被保険者の極めて重大な過失によって生じた損害については,保険金
を支払わない。
エ被上告人は,被保険者がアに記載された事故の直接の結果として死亡したときは,
死亡による損害(葬祭料,逸失利益,精神的損害及びその他の損害)につき保険金を支払
う。
()本件特約と同様に被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に被っ6
た傷害に対して保険金を支払う旨定めた傷害保険普通保険約款には,被保険者の脳疾患,
疾病又は心神喪失によって生じた傷害に対しては,保険金を支払わない旨の条項(第3条
①(5。以下「疾病免責条項」という)が存在するが,本件特約には疾病免責条項は)。
存在しない。また,傷害保険普通保険約款には,本件傷害除外条項と同内容の条項は存在
しない。
()上告人らは,いずれもAの法定相続人である。7
3原審は,上記事実関係の下において,次のように判断して,上告人らの請求を棄却
すべきものとした。
本件特約の定める保険金支払事由である「外来の事故」とは,事故の原因が被保険者の
身体の内部ではなく,外部からの作用にあることをいい,被保険者の身体疾患等の内部的
原因による事故は「外来の事故」ではない。したがって,保険金請求に係る事故が被保,
険者の身体疾患等の内部的原因による事故でないことについては,保険金請求者が主張,
立証すべきである。
本件事故は,Aの既往症及び事故態様等を考慮すると,Aが狭心症による発作等の身体
疾患に起因した意識障害により適切な運転操作ができなくなったために発生したものであ
る疑いが強く,本件事故が「外来の事故」であることの立証がされたとはいえない。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとお
りである。
()前記事実関係によれば,本件特約は,急激かつ偶然な外来の事故のうち運行起因1
事故及び運行中事故(以下,併せて「運行事故」という)に該当するものを保険事故と。
している。本件特約にいう「外来の事故」とは,その文言上,被保険者の身体の外部から
の作用による事故をいうと解されるので(最高裁平成19年(受)第95号同年7月6日
第二小法廷判決・裁判所時報1439号6頁参照,被保険者の疾病によって生じた運行)
事故もこれに該当するというべきである。本件特約は,傷害保険普通保険約款には存在す
る疾病免責条項を置いておらず,また,本件特約によれば,運行事故が被保険者の過失に
よって生じた場合であっても,その過失が故意に準ずる極めて重大な過失でない限り,保
険金が支払われることとされていることからすれば,運行事故が被保険者の疾病によって
生じた場合であっても保険金を支払うこととしているものと解される。
このような本件特約の文言や構造等に照らせば,保険金請求者は,運行事故と被保険者
がその身体に被った傷害(本件傷害除外条項に当たるものを除く)との間に相当因果関。
係があることを主張,立証すれば足りるというべきである。
()前記事実関係によれば,本件事故は,Aが本件車両を運転中に本件車両ごとため2
池に転落したというものであり,Aは本件事故によりでき死したというのであるから,仮
にAがため池に転落した原因が疾病により適切な運転操作ができなくなったためであった
としても,被上告人が本件特約による保険金支払義務を負うことは,上記説示に照らして
明らかである。
5以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があ
る。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,支
払われるべき保険金の額等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこ
ととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官中川了滋裁判官津野修裁判官今井功裁判官古田
佑紀)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛