弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原決定を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 抗告代理人花村聡、同小比賀正義の抗告理由について
 一 本件は、原々決定別紙物件目録記載の建物に根抵当権の設定を受けた相手方
が、物上代位権の行使として、右建物を賃借してこれを他に転貸している抗告人の
転借人に対する転貸賃料債権につき差押命令(原々決定)を得たところ、抗告人が、
右差押命令に対して執行抗告をし、抗告棄却決定に対して更に抗告をした事件であ
る。記録によると、本件の事実関係は、次のとおりである。
 1 相手方は、昭和六三年六月二一日、D(以下「D」という。)との間で、同
人の株式会社E銀行に対する金銭消費貸借契約に基づく債務について保証委託契約
を締結し、同年一〇月二一日、D及びF(以下、右両名を併せて「Dら」という。)
との間で、相手方のDに対する求償債権等を被担保債権として、Dら共有の本件建
物に極度額を一億九八〇〇万円とする根抵当権を設定することを合意し、同日、そ
の旨の登記を経由した。
 2 本件建物は、昭和六三年九月二六日新築の三階建店舗兼共同住宅用建物であ
る。
 3 相手方は、平成九年一〇月二八日、右保証委託契約に基づき、DのE銀行に
対する債務七二一六万二八一二円を弁済し、Dに対して同額の求償債権を取得した。
 4 Gは、右同日、Dらから本件建物を買い受け(同月三〇日所有権移転登記)、
同月三一日、抗告人に本件建物を賃貸し(同年一一月一七日賃借権設定仮登記)、
抗告人は、第三債務者らに対し、本件建物の部屋のうち七室を転貸している。
 5 相手方は、平成一〇年九月一〇日、横浜地方裁判所川崎支部に、本件根抵当
権に基づく物上代位権の行使として、抗告人の第三債務者らに対する転貸賃料債権
について差押命令を申し立て、同裁判所は、同月一六日、本件債権差押命令を発し
た。
 6 抗告人は、本件債権差押命令に対し、執行抗告をした。
 二 原審は、抵当不動産の賃貸により抵当権設定者が取得する賃料債権に対して
は、民法三七二条によって準用される同法三〇四条一項により、抵当権者は物上代
位権を行使することができるところ、同項に規定する「債務者」には、抵当権の設
定者及び抵当不動産の第三取得者(以下、両者を併せて「所有者」という。)のほ
か、抵当権設定後に抵当不動産を賃借した者も含まれると解すべきであるから、抵
当権者は、右の賃借人が取得すべき抵当不動産の転貸賃料債権に対しても、物上代
位権を行使することができるとの理由により、本件差押命令を相当として、抗告人
の執行抗告を棄却した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 民法三七二条によって抵当権に準用される同法三〇四条一項に規定する「債務者」
には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきで
ある。けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を
負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担する
ものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはない
からである。同項の文言に照らしても、これを「債務者」に含めることはできない。
また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると、正常な取引に
より成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害
することにもなる。もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の
行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を
作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とす
る場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代
位権を行使することを許すべきものである。
 以上のとおり、【要旨】抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視するこ
とを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位
権を行使することができないと解すべきであり、これと異なる原審の判断には、原
決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原決定
は破棄を免れない。そして、抗告人が本件建物の所有者と同視することを相当とす
る者であるかどうかについて更に審理を遂げさせるため、本件を原審に差し戻すこ
ととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛