弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     本件附帯上告を却下する。
     上告費用は上告人の、附帯上告費用は附帯上告人の、各負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士岩田宙造、同青木一男、同福井盛太、同公荘惟和、同山根篤、
同加嶋五郎の上告理由は別紙のとおりである。
 第一 上告理由の総論について。
 おもうに、税法の見地においては、課税の原因となつた行為が、厳密な法令の解
釈適用の見地から、客観的評価において不適法・無効とされるかどうかは問題でな
く、税法の見地からは、課税の原因となつた行為が関係当事者の間で有効のものと
して取り扱われ、これにより、現実に課税の要件事実がみたされていると認められ
る場合であるかぎり、右行為が有効であることを前提として租税を賦課徴収するこ
とは何等妨げられないものと解すべきである。たとえば、所得税法についていえば、
売買による所得が問題となる場合、右売買が民商法の厳密な解釈・適用上無効とさ
れ、或いは物価統制令の見地から不適法とされる場合でも、当事者間で有効として
取り扱われ、代金が授受され、現実に所得が生じていると認められるかぎり、右売
買が有効であることを前提として所得税を賦課することは何等違法ではない。本件
では、原審の認定によれば、昭和二〇年四月一日上告人会社(当時A1株式会社)
の事業を国営に移管して第一軍需工廠を設立するに当つて、工場所属の原材料、仕
掛品等の資材(以下単に資材という。)を売買により、代金一六億五千五百十万千
八百六十一円十九銭にて国に買収し(この代金債権は戦時補償請求権となる。)、
終戦後、軍需工廠の廃止に伴い、右資材を代金四億二千二十三万八千五百三十円一
二銭まで上告人会社(商号をA2と変更)に払い下げ(売却し)、上告人会社は、
戦時補償特別措置法の施行前に、前記資材の買収代金一六億円余から、すでに支払
を受けていた金額及び右払下代金額を差し引いて残金を国に請求することにより、
右払下代金額の限度において相殺し、もつて「この法律施行前に戦時補償請求権に
ついて決済を受けた」というのである(同法二条)が、前後二回にわたる資材の売
買と相殺とが仮に民・商法の厳密な解釈適用上無効とされ、或いは国の側における
代表資格の疑義、会計法令違背の見地から不適法無効とされ、或いは制限会社令の
厳密な解釈上これに違背し無効とされるべき場合でも、本件課税処分(国税局長の
審査決定)当時において当事者間で有効のものとして取り扱われ、現実に相殺によ
る決済を生じていたと認められるかぎり、戦時補償特別措置法二条の要件はみたさ
れたものと解して何度妨げがないわけである。もつとも、国を代表して売買契約締
結の掌に当つた者の代表権限に疑義があること、右売買や相殺が国の官吏の行為と
みるには余りに会計法令の違背が甚しいということ、これを有効とみれば制限会社
令違背の問題がおこるということ等の事情は、当事者間において有効とされる売買
や相殺が存在しなかつたことを認めしめる一つ資料となり得ることは否定し得ない
ところであるが、この点の認定については、原審(その引用する一審、以下同じ。)
認定の終戦前後の緊迫した事情の下で一大企業をその機能を停止することなく現状
有姿のまま急速に国営に移管し、次いで終戦後再び急きよ原状に復帰せしめるとい
う手続を、かような事態をまかなうに適する法令が完備されていないという情況の
下で実施せざるを得なかつたという特殊の事情を十分考慮に容れるべきものであつ
て、かような特殊事情の下で、右売買と相殺とが――法令の厳密な解釈適用上不適
法・無効とされるかどうかにかかわらず――本件課税処分当時、当事者間に有効な
ものとして存在していたと認められるかどうかということが、本件の結局の問題で
ある。原審の認定のうちには、右述の意味において、当事者間で有効とされる売買
と相殺とが審査決定当時存在していたとの趣旨を含むものと解され、これらの行為
の効力乃至適法性につき法令の厳密な解釈適用上疑義があるとしても、このことは、
原審認定のような特殊の事情の下では、当事者間に売買と相殺とが有効なものとし
て存在していたと認めることの妨げとならないと解せられ、所論の大部分は、ひつ
きよう、売買と相殺とが当事者間に有効のものとして存在していたとする原審の事
実認定を攻撃するに帰するものと認められる。
 なお、総論末段に資材に終始被上告人の所有にとどまつていたと同視すべきであ
るから、戦時補償特別税を課することは立法趣旨に反する旨を述べているが原審の
引用する一審判決の認定によれば、国営移管時と工廠廃止時とでは、相当に資材の
入れ替えがあり、前後同一性があるとは認められないというのであるから、右所論
は、原審の認めない事実を前提とするもので、その採り得ないことはいうまでもな
い。また、原審と反対の見解をとる大阪地裁の判決(行政事件裁判例集二巻八号一
一七九頁)が確定していることは事実であるが、そのために、原審が右判決と解釈
を同じくしなければならない理由はない。さらに、戦時補償特別措置法が動産と不
動産との間で取扱を異にしても、それは、動産については同一性が保障しがたいと
いう特殊性に基く立法政策的考慮によるものであつて、その結果、動産と不動産と
の間に不均衡を生ずることがあつても、それは、法律事体の予想するところであつ
て、かかる事情もまた、本件の結論を左右するに足りるものでないこともいうまで
もない。
 第二 上告理由の各論について。
 論旨第一点について。
 審査請求を受けた国税局長は、覆審的に新たに課税決定をなし得るもの(従つて
増額決定をもなし得るもの)と解すべきことは、別件、昭和三三年(オ)第三一二
号事件の判決で説明するとおりである。違憲論を含む所論は、すべて、右に反する
独自の見解を前提とするもので採り得ない。
 論旨第二点について。
 原審の引用する一審判決によれば、被上告人国は、A1株式会社の事業を国営に
移管しようとするに当り、問題の資材を合意による有償契約の方式により取得する
意思を有し、昭和二〇年三月中に主として第一軍需工廠設立準備委員会の会合の機
会等を通じて、軍需省契約担当官航空兵器総局第四局長を代理する同局主計課長か
ら、上告人に対しその意思を表明し、上告人は、これに応じ、同年四月一日に現実
に右資材の所有権等を上告人に譲渡することによつて、売買を即時に完結し、その
代金については、その額の算定方法を帳簿価格による旨のかねての合意に基き、後
に算出して、同年七月頃、契約担当官たる第四局長と上告人会社の社長との間にお
いて、具体的に前記十六億円余の金額に確認決定したというのである。原審挙示の
証拠とこれにより原審の認めた事実とを総合して原審が右の如く認定したことは相
当である。この認定によれば、契約担当の掌に当つた者、契約日時、契約内容、契
約交渉の経過等は、右売買契約が当事者間に有効のものとして成立していたものと
認めるに必要な限度においてすべて明らかである。右売買契約を黙示のものとみる
か明示のものとみるかは微妙なところであるが、仮に黙示の契約と解すべきもので
あるとしても、また契約交渉の掌に当つた主計課長の代理権限に疑義があるとして
も、そのことは、原審挙示の証拠とこれにより認定された事実とに基き右の如き経
過で当事者間に売買が有効のものとして成立したと認定することの妨げとなるもの
ではないから、原審が黙示の契約であることを前提とする上告人の主張を排斥した
ことは結局正当であり、所論は、ひつきよう、原審の右認定を攻撃するに帰し、す
べて採用のかぎりでない。
 論旨第三点について。
 税法の見地においては、売買契約が当事者間に有効のものとして成立していた事
実を認定すれば十分であることは前述のとおりである。原審認定のような終戦直前
の特殊緊迫した事情の下で、契約交渉の掌に当つた主計課長の権限に疑義があるに
せよ、原審認定のような経緯により当事者間に売買が有効なものとして成立してい
たと認めるに十分であつて、主計課長の官制上の権限がいかに解されるかにより右
認定が左右されるものではないから、右権限につき原審が審理判断しなかつたから
といつて審理不尽の違法があるといい得るものではない。それ故、所論はすべて採
り得ない。
 論旨第四点について。
 資材の買収契約が国の側における会計法令違背の見地から違法とされるかどうか
にかかわらず、原審認定の事情の下で、右売買契約が当事者間に有効のものとして
成立していたとする原審の認定は動かし難いものであり、所論は、ひつきよう、原
審の右認定を攻撃するに帰し、採用のかぎりでない。
 論旨第五点について。
 原審およびその引用する一審判決は、資材の所有権の国への移転は、使用令の効
果として(違法処分により)生じたものではなく、これとは別に締結された買収契
約により生じた旨を認定しており、所論の選択的主張につき審理判断を与えている
ことは明らかである。所論は、原審が上告人の主張を認めなかつたことをもつて審
理不尽乃至理由不備と称して原判決を攻撃するに過ぎず、その採り得ないことはい
うまでもない。
 論旨第六点について。
 原審は、所論のように、単純に、国が違法をするはずがないとの見地、または会
計法令等の違反はあり得ても使用収用令の違反はあり得ないとの見地から、資材の
所有権移転が売買契約により行われた旨を認定したものではない。原審及びその引
用する一審判決は、工場事業場使用収用令による使用令をもつてしては、資材の所
有権を取得することは法的に不可能であることが明らかであつたこと、他方、総動
員物資使用収用令による収容の手続は、もともと一大企業に属する全資材を使用・
収用する目的で立案されたものでなく、当時の緊急状態の下で簡易迅速に全資材の
所有権を取得する法的手段としては不適当であつたところから、国は売買の方法に
より資材の所有権を取得する意図を有していたこと、当時の状況においては上告人
側の追随を期待すべき状況にあつたこと、前述第二点について記載したような経緯
により国と上告人との間に任意の意思による売買契約が締結されたと目すべき事実
が存在すること等の一切の事情を総合して資材の所有権移転は使用令とは別の任意
の売買により行われた旨を認定したものである。右認定は相当であり、所論は、原
判決を正解しないことに基くもので、採用のかぎりでない。
 論旨第七点について。
 原審の判示は、幾分不十分の点があるが、その引用する一審判決と総合して、次
の趣旨を判示した趣旨と解すべきである。すなわち、その趣旨は、終戦時において
政府所有物資を緊急に民間人所有に切り替える必要にせまられた状況の下で昭和二
〇年八月一八日とりあえず問題の資材の所有権を上告人に移転する旨の合意が国と
上告人との間に成立したこと、その際、右所有権移転の原因を贈与とするか売買と
するか、及び売買とする場合にはその代金額を双方の合意により後にとりきめ、こ
のとりきめが成立したときは八月一八日に遡つて贈与または売買を原因とする所有
権移転があつたものとする旨の暗黙の合意があつたこと、右合意に基き翌二一年一
月八日に国(を代表する商工商整理部長)と上告人会社社長との間に前記八月一八
日の所有権移転の原因は売買としその代金は一応終戦時の帳簿価格を基準とし、「
契約解除、製作停止に伴う損害賠償要領」に従い残存価額をもつて計算する旨の合
意が成立し、これに基き同年五月中に代金額を金四億二千二十三万八千五百三十円
十九銭とすることに協定が成立したこと、以上の事実を認定した趣旨と解すべきも
のである。右事実によれば、昭和二〇年八月一八日所有権移転の合意がなされた際
にはその原因が確定されていなかつたが、その当時すでに当事者間に成立していた
合意に基いて、後に、その原因を売買とし、八月一八日に売買により所有権が移転
したことに当事者間で取り扱う旨及び代金額を前記金額とする旨の協定が成立した
というのであるから、少くとも最後の協定が成立した以後においては、所有権移転
の時期、その法律原因、契約内容が未確定もしくは不明確であるということはあり
得ない。そして、民法上、右のような経過で当事者間に売買を成立せしめることが
不可能であると解すべき根拠はなく、かような経過で売買契約を成立させることが、
仮に国の側における会計法令等違背の見地から違法視されるとしても、このことは、
原審の引用する一審判決の認定するような終戦時の特殊の事情の下で、右のような
経過で当事者間に売買が有効のものとして成立したと認めることの妨げとなるもの
ではない。所論は、原判決を正解しないことに基くものであるか、また、原審が上
告人の主張を認めなかつたことを審理不尽乃至理由不備と称して攻撃するものであ
つて、結局において、右のような経過で売買が成立したとする原審の事実認定を攻
撃するに帰するものであり、すべて、採用し得ない。(原審が当事者間に争いのな
い事実と矛盾した認定をしているとの非難の理由がないことも次に述べるとおりで
ある。)
 論旨第八点について。
 乙六号証の大臣通牒は軍需大臣より軍需工廠長官にあてた行政部内の通牒であり、
甲六号証の通牒は第一軍需工廠長官から上告人会社社長にあてた一方的通牒である。
従つて、これらにより問題の資材の所有権が上告人会社に移転することは法律的に
あり得ないことはいうまでもない。原審及びその引用する一審判決の趣旨は、右通
牒を通じて上告人会社に対しなされた国の所有権移転の意思表示(前述のような経
過で後に売買と確定された)に対し上告人がこれに応ずることにより資材の所有権
が上告人に移転した旨を認定した趣旨であることは明らかである。そして右各通牒
により資材の所有権が移転したことは当事者間に争いがないとの判示の趣旨は、当
時方通牒以外に明示的に売買の意思表示とみとめられるようなものはなかつたこと
及び甲六号証の通牒があつた昭和二〇年八月一八日から当事者間で所有権が国から
上告人会社に移転したものとして取り扱われていたことは当事者間に争いがない、
この趣旨を判示したものと解すべきであり、一方的行為として通牒自体により所有
権が移転した趣旨を判示した趣旨と解すべきではないから、原判決が当事者間に争
いのない事実と矛盾した認定をしたというのは当らない。また、原審が乙四号証を
売買成立の一資料として採用したことは相当であつて、その文理からみても、所論
のように上告人の主張にそう証拠と認めなければならない必然性は何等うかがわれ
ないから、乙四号証に関する論旨は、証拠の取捨選択を非難するものにほかならな
い。その他、工廠廃止のときは資材を含めて工場を一括して返還するという合意が
成立していたとの事実、契約の解除が行われたとの事実は原審及びその引用する一
審判決の認めないところであり、これに関連する論旨は、原審の証拠の取捨選択乃
至その事実認定を非難するものであつて採用のかぎりでない。その他所論は、要す
るに原判決を正解しないことに基くものであるかまたは原審が上告人の主張を認め
なかつたことを審理不尽乃至理由不備と称して攻撃するに帰し、すべて採用のかぎ
りでない。
 論旨第九点について。
 原審及びその引用する一審判決は、前述第二点説明のような経緯により成立した
資材の買収代金から、すでに支払を受けていた金額及び昭和二一年五月頃決定をみ
た資材払下代金四億二千余万円を控除した残額を同年五月中(終戦後戦時補償特別
措置法施行前)に上告人会社から政府に請求することにより、右払下代金の限度で、
相殺が実施された旨を認定したものであつて、右相殺が会計法令上の手続不遵守の
点で違法視されることがあるとしても、そのことは判決の認定する終戦後の事情の
下で、右相殺が当事者間で有効のものとして行われたことを認定することの妨げと
なるものではない。そして、原審の右認定が動かし難いものである以上、所論の指
摘する部分の判示が仮に誤りがあるとしても、この誤りは、原審の判断の結論に影
響を及ぼすものではないから、所論は採用のかぎりでない。
 論旨第一〇点について。
 所論の判示部分を一読して前後一貫しないうらみがあることはたしかであるが、
原判決は、結局、前記相殺の手続については正規の会計法令上の手続に従い相殺額
の歳入納付を行うことをしないで、相殺額を定額戻入により歳出予算に繰り入れる
という略式の方法をとる方針の下に、実際には、相殺額を戻入する手続すらとらず、
単に相殺残額を歳出予算に計上するにとどめるという方法がとられた旨を判示した
趣旨と解すべきものであろう。いずれにしても、原審及びその引用する一審判決の
認定するような終戦後の事情の下で、右相殺が会計法令上の見地から違法視される
ものであるということは、右相殺が当事者間で有効のものとして実施されたとの事
実を認定することの妨げとなるものではないから、所論指摘部分の原判示に理由の
そごがあつても、このことは原判決の結論に影響を及ぼすものではない。よつて所
論は採用し得ない。
 論旨第一一点について。
 原判決認定の資材払下契約の締結が、仮に制限会社令の厳密な解釈上これに触れ
るものであるとしても、このことは、原審及びその引用する一審判決の認定するよ
うな終戦直後の事情(とくに資材を急きよ政府所有から民間人所有に移す必要があ
つたというような事情)の下においては、払下契約が、当事者間で、制限会社令に
触れない有効のものとして取り結ばれたと認めることの妨げとなるものでないから、
同令違反の有無に関する判示が仮に正当でないとしても、原判決の結論に影響を及
ぼすものではない。従つて所論は、結局、理由がないことに帰する。
 論旨第一二点について。
 民訴一九四条の要件をみたすかぎり、主文中の表現でも、更正決定の対象となる
ことについては、異論のないところである。そして、原審における上告人勝訴の限
度からみて、通常ならば、訴訟費用の負担の割合は更正決定後の割合が相当と思わ
れ、とくにこれと反対の負担率をとるについては、その理由の説示があつてしかる
べきであると思われるにかかわらず、原審が反対の負担率を採用したことにつき何
等説明を加えていないところからみて、更正前の負担割合は明白な誤記と認められ
るから、更正決定は相当であり、所論は採り得ない。
 論旨第一三点について。
 論旨(二)にいう「移管に係る資材等に対しては、別途経理措置として、当該会
社の帳簿に基きその数量価格により損失を補償すること及び国営解除の際は、資材
は工場とともにそのまま帳簿価格により原会社に復帰する形態をとること、という
成案に達し、総局長官はこの成案を採用した」との事実は原審の認めないところで
ある。従つて、右方針決定に基き閣議が禀請されたとの事実も原審の認めないとこ
ろであることは明らかである。その他原審の認定に反し論旨に添う事実はすべて、
原審の認めないところであり、所論は、要するに、原審が上告人の主張する事実を
認めなかつたことを判断遺脱乃至理由そごと称して攻撃するにほかならず、採用に
値しない。
 論旨第一四点について。
 終戦時における工廠の資材の所有権移転が、国営移管当時当事者間に成立してい
た諒解(法律的意味の合意)に基き工廠長官の依命通牒により一方的に行われたと
の事実、当事者間で終戦時の資材を国営移管時の資材と同一視して処理する趣旨の
下に一般軍需会社に対する契約解除による補償と同一の補償をなすための経理措置
として乙四号証の覚書が作成されたとの事実は、いずれも原審の認めないところで
ある。かえつて、原審及びその引用する一審判決の認定した事実は、前記(七)に
掲げたとおりであつて、国営移管の際における合意を前提とすることなく終戦後の
売買契約により資材が一括して上告人に売り渡されたとする判決の認定は、その認
定にかかる終戦時の状況その他判決の挙示する証拠にかんがみ十分首肯し得るとこ
ろであつて、この認定が不合理であるということはできない。乙四号証の覚書中に
「工廠に肩替せる諸資産云々」の文句があるからというだけで、右覚書が所論のよ
うに資材を同一視して処理する趣旨の下に作成されたと解さねばならないものでは
ない。また右覚書一項但書の『「契約解除製作停止に伴う損害賠償要領」に依つて
処理すること』なる文言は、資材の払下代金は一応終戦時の帳簿価格を基準とする
が、あたかも国営移管の行われなかつた一般の私企業が終戦に伴う契約解除製作停
止により被つた損害を政府が賠償する場合に準じて代金を減額計算する趣旨、すな
わち代金額を減額計算するための便宜的基準を定めた趣旨と解し得るので、右文言
があるからといつて、覚書の趣旨を所論のように解さなければならないものではな
い。所論は、要するに、原判決及びその引用する一審判決を正解しないことに基く
ものであるか、または、右判決が上告人の主張を認めなかつたことを審理不尽と称
して攻撃するもの、もしくは証拠の取捨選択を非難するに帰し、いずれも採用のか
ぎりでない。
 論旨第一五点について。
 所論は、原判決及びその引用する一審判決の趣旨を正解しないことに基くもので
あつて採り得ない。
 論旨第一六点について。
 終戦時における資材の売渡が仮に一般命令の厳密な解釈上、これに触れるものと
解すべきであるとしても、このことは、原審及びその引用する一審判決の認定する
ような終戦後の事情の下で、右売買が当事者間で有効のものとして成立していたと
いう事実を認定することの妨げとなるものではない。所論は、結局、原審の事実認
定を非難するに帰し採用のかぎりでない。
 論旨第一七、第一八点について。
 終戦時における資材の売買が、仮に占領軍関係法令の厳密な解釈上これに触れる
ものと解すべきであるとしても、このことは、原判決及びその引用する一審判決の
認定するような終戦後の事情の下で、当事者間において右売買が占領軍関係法令に
触れることなく有効になし得るものとの見解の下に行われたという事実(判決は右
事実の認定を含むことは明らかである。)を認定することの妨げとなるものではな
く、原判決の結論をしたすためには、右認定をもつて足り、反覆して常務としてな
されていた行為が何であるかにつき立ち入つて審理判断することは必要でない。所
論は、要するに、原審の事実認定を攻撃するものであるか、または、原審が上告人
の主張を認めなかつたことを審理不尽と称して攻撃するに帰し、採用のかぎりでな
い。
 論旨第一九点について。
 原判決の趣旨は前述第七点に対する説明のとおりであつて、所論のように理由そ
ごがあるといい得るものでないことは明らかである。所論は、原判決を正解しない
ことに基くものであつて採用し得ない。
 附帯上告について。
 附帯上告が上告理由と独立した別個の理由に基くものであるときは、当該上告に
ついての上告理由書の提出期限内に原裁判所に附帯上告状を提出することを要する
ことは、当裁判所が、当裁判所昭和三七年(オ)九六三号事件について、同三八年
七月三〇日に言い渡した判決で判示するとおりである。そして、本件附帯上告理由
が上告人の上告理由と別個のものであり、本件附帯上告状の提出が右の期間経過後
であることは記録上明白であるから、本件附帯上告は不適法であり却下を免れない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊
 裁判官五鬼上堅磐は海外出張中につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    河   村   又   介

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