弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人世田谷区長は東京都世田谷区<地名
略>から同区<地名略>に至る道路を開設するための用地を買収してはならない。
被控訴人A及び同Bは世田谷区に対し各自一億二七九四万三一〇八円及び同Aにつ
きこれに対する昭和四七年一一月七日以降、同Bにつきこれに対する同月八日以降
各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被
控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は、控訴棄却の判決
を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用及び認否は、控訴代理人において、
甲第九七号証から第一一九号証まで、第一二〇号証の一から三まで、第一二一号証
から第一三三号証までを提出し、当審証人Cの証言を援用し、乙第二七号証、第二
九号証から第三一号証までの成立を認め、同第二八号証の成立は不知と述べ、被控
訴人ら代理人において、乙第二七号証から第三一号証までを提出し、当審証人Dの
証言を援用し、甲第九七号証以下の認否につき同第一二二号証、第一二三号証の各
成立は不知、その余の同号各証の成立(同第一一二号証につき原本の存在とも)は
認めると述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
○ 理由
本件訴は、地方自治法二四二条の二第一項一号の差止請求及び同四号の代位請求に
係る住民訴訟であるところ、その請求は、本件計画道路の開設が違法であるから、
その開設を目的とする用地買収及びその買収のためにした公金の支出もまた違法で
あるとして、被控訴人世田谷区長において今後も継続することが確実視される用地
買収の差止を求め、かつ、被控訴人A及び同Bがそれぞれ世田谷区長及び助役とし
て本件計画道路の用地買収代金を公金から支出したことによる損害の填補を求める
というのであり、本件計画道路の開設とは別紙目録記載の特別区道の新設をいうも
のであることは、控訴人の主張によつて明らかである。
そして、特別区道を新設する場合において、道路の生成の過程を道路法による行政
行為の手続上からみると、まず、特別区の区議会の議決を経て、区長が特別区道の
路線を認定して、これを公示することに始まり(法八条二項、九条)、ついで、当
該特別区が右の公示に係る特別区道の区域を決定して、これを公示し、かつ、これ
を表示した図面を一般の縦覧に供し(法一八条一項)、さらに、当該特別区が当該
特別区道の供用を開始する旨を公示し、かつ、これを表示した図面を一般の縦覧に
供することで終るのであるが(法一八条二項)、成立に争いのない乙第九号証、第
一四号証及び第一五号証によると、別紙目録記載の特別区道について、世田谷区議
会が昭和四八年一一月一三日に路線の認定につき議決し、被控訴人世田谷区長が昭
和五〇年四月二六日に路線の認定をして、同区告示四五号をもつて公示し、かつ、
その関係図面を一般の縦覧に供し、世田谷区が同日に道路の区域を決定して、同区
告示四七号をもつて公示し、かつ、その関係図面を一般の縦覧に供したことを認め
ることができる。
ところで、道路法の規定に基づいて行政庁がおこなう路線の認定及び道路の区域の
決定はともに行政庁の公権力の行使に当たる行政行為すなわち行政処分であると解
すべきであり、また、本件計画道路の開設は、路線の認定及び道路の区域の決定
(この認定及び決定の両者を合せて、以下「本件行政処分」という。)を経ただけ
の段階にとどまり、まだ道路の供用を開始するにいたらないものであるから(この
ことは当事者間に争いがない。)、控訴人において本件計画道路の開設が違法であ
ると主張することは、とりもなおさず本件行政処分の違法を主張することにほかな
らない。
しかし、行政処分は、仮りにその処分に関し違法の点があつたとしても、その違法
が重大かつ明白である場合を除いて、これを当然無効とすべきではないのであるか
ら、権限ある行政庁又は裁判所によつて取り消されることなく、処分として存在す
るかぎり、完全にその効力を承認させられるものと解すべきである(いわゆる行政
行為の公定力)。したがつて、本件行政処分に違法の点があるからといつて、本件
行政処分に基づいてされた用地買収及び公金の支出等のいわゆる財務会計上の行為
が当然に違法となるべき筋合のものではないといわなければならない。
控訴人は、本件計画道路の開設の違法すなわち本件行政処分の違法を多岐に亘つて
主張するけれども(引用に係る原判決事実摘示中「第二、一、3、(一)から
(五)までのとおり)、原判決の理由説示によつても窺われるとおり(原判決二二
枚目-記録五一丁-裏三行目から同三二枚目-記録六一丁-裏末行目までをここに
引用する。)、控訴人が主張する右の各違法事由の如きものは、ここにいわゆる重
大かつ明白な違法とは到底いいえないこと勿論である。ほかに、本件行政処分を当
然無効ならしめるものと認めるべき重大かつ明白な違法があることについて、及び
本件の公金の支出、用地買収等の行為自体に関しいわゆる財務会計上の違法がある
ことについて、控訴人の主張及び立証はない。
なお、被控訴人らが争つている被控訴人Bの当事者適格については、原判決の理由
説示のとおりであるから、原判決二二枚目-記録五一丁-表三行目から一〇行目ま
でを引用する。
よつて、控訴人の被控訴人らに対する請求をいずれも失当として棄却した原判決は
相当であつて、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条一項、九五条、八九条
の規定を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 田宮重男 中川幹郎 新田圭一)
目録(省略)

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