弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする
         理    由
 弁護人大野正直の控訴趣意はその提出に係る控訴趣意書の記載を引用する検察官
は本件控訴は理由のないものとしてその棄却を求めた
 控訴趣意第一点について
 原判決によれば原審は判示第一の(一)(二)(三)において被告人が愛知県碧
海郡矢作町元海軍航空隊跡兵舎内で昭和二十三年二月中旬、同年四月下旬及び同年
七月下旬の三回に互り窃取したケンパスが名古屋財務局碧南出張所長の保管にあつ
たものと認定したことは所論の通りであるが右事実認定の証拠としては論旨のよう
にAの上申書と買受人の証言や供述調書のみによつたものでなくその外Bの検事宛
回答書及び差戻後の原審第五回の公判廷における証人Cの証言をも綜合しているの
である而して右Aの上申書には本件ケンパスは進駐軍が岡崎航空隊に進駐の際携帯
して来たものであつて進駐軍撤去の後県警備隊員がその保管監理を担当し昭和二十
三年六月右警備隊引揚と同時にこれを碧南出張所岡崎分室に移動させたもので進駐
軍所属のものとして県から解放申請中のものであり名古屋財務局の所掌でない旨を
記載してあるがその記載中名古屋財務局の所掌でないとするのは一般国有財産のよ
うに法制上当然にその管轄に属するものでないという迄のことであつて名古屋財務
局碧南出張所岡崎分室において事実上該物件が保管されていたことを否定する趣旨
でないことは明かであり同分室において事実上その物件を保管している以上論旨の
ように該物件が同出張所に関係のないものとはいえないし該物件が進駐軍のもので
あること自体から考えて特段の事情のない本件としては同出張所岡崎分室の職員個
人にその保管が委ねられたとは認め難いから同分室にその保管が委託されたものと
するの外はない而して右C証人の証言によるも同分室としては独立の権限がある訳
でなくすべて名古屋財務局碧南出張所長の命令によつてその事務を処理する丈のこ
とであるから同分室における保管は即ち同出張所長の保管となるのであり同分室の
職員は同出張所長の補助機関としてその命令に基いてその保管事務に従事するに過
ぎないものとせねばならない従つて本件ケンパスが同出張所長の保管にあるものと
することは原審挙示の証拠によつてこれを認め得られないことはなく又その保管が
仮りに同分室限りのものとしても右証人の証言によつて明かなように同分室のその
当時の主任はDであるから同人がその保管責任者となりその点において原審の認定
に誤があることにはなるが被告人においては擅にこれを処分(一件記録上同人と被
告人とが共謀したものという的確な証拠はない)することはその何れの場合におい
ても他人の占有を侵害して窃盗罪を構成するに到りその事実誤認は特に判決に影響
を及ぼすべき程の違法とはいえない従つて原審に所論の違法があるとする論旨は採
用の限りでない
 同上第二点(一)について
 銃砲等所持禁止令に所謂刀剣類が刀剣類としてその目的に従つて使用し得るもの
でなければならぬことは所<要旨第一>論の通りである然しながら被告人の所持して
いた日本刀及び銃剣(証第二、三号)はそれ自体多少の錆はあるがその
本来の目的に使用できないものとは認められない而して被告人がこれを所謂刀剣類
でないと思つていたことはその事実自体に対する錯誤ではなく、法の不知であるか
ら犯意がないものとはいえないのである従つて原審に所論の違法があるとすること
はできない
 同上第二点の(二)について
 原判決によれば判示第二及び第三の事実は判示昭和二十四年四月七日の判決確定
後の事実として刑法第四十<要旨第二>五条前段の併合罪としていることは所論の通
りである而してある数個の犯罪についてその時間的前後を定める標準は
その各終了の時の前後と解すべきところ刀剣類不法所持罪はその所持開始からその
所持終了に到る迄所謂継続犯として単純一罪でありその所持の開始、その継続の時
期に拘らずその終了の時を以てその犯罪の終了時となすべく従つて論旨も是認する
ように判示第三の刀剣不法所持の終了は右判決確定後の昭和二十四年四月二十八日
であるから同罪は判示第二の罪と共に右確定判決後の犯行として右確定判決と関係
なく刑法第四十五条前段の併合罪としたことは正当であり、又原審の法令適用にお
いて論旨の非難するように不分明な点も存しない
 同上第三点について。
 按ずるに原審判示第二の詐欺罪は被告人が名古屋財務局碧南出張所雇の職を退い
た後であつて且つ前示確定判決言渡後の犯行に係りこの点からするも論旨の強調す
るように被告人が所謂犯罪者流の人間でないとは断定し得ず又その悔悟と称するも
のも輙く信用を措き難い事情にありその判示第一の各窃盗についても論旨のように
全く私利私慾に出でたものでないと迄は認められない。従つて論旨その余の主張に
拘らず前示確定判決竝びに本件犯行の態様その他諸般の事情から考察して原審の科
刑は必ずしも不当なものといえないからこの点の論旨も採用し得ない。
 その他原判決を破棄せねばならぬ瑕疵もないので本件控訴は理由のないものとし
て刑事訴訟法第三百九十六条によつてこれを棄却し尚当審における訴訟費用は同法
第百八十一条第一項に則つて全部被告人をして負担せしむべきものと認めて主文の
通り判決する
 (裁判長裁判官 山田市平 裁判官 鈴木正路 裁判官 小沢三朗)

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