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平成20年3月28日宣告
平成19年(わ)第132号,第165号,189号
詐欺,死体遺棄,強盗致死被告事件
主文
被告人Aを懲役20年に,被告人Bを懲役10年に処する。
被告人両名に対し,未決勾留日数中各180日を,それぞれその刑に
算入する。
理由要旨
(罪となるべき事実)
第1被告人Aは,C及びDと共謀の上,被告人Aが平成18年4月28日午後5
時30分ころ,名古屋市緑区a町字b町c番地d先道路において,自転車を運
転中,E運転の普通貨物自動車に衝突されて負傷する交通事故被害を受けたこ
とを奇貨として,被告人AがCの経営する飲食店「居酒屋F」で稼働していた
ように装って,前記Eが株式会社Gとの間で締結している自動車保険契約に基
づく休業損害賠償金名下に同社から金員を詐取しようと企て,別表記載のとお
り,被告人Aにおいて,同年5月15日から同年7月28日までの間,前後6
回にわたり,函館市e町f番g号h所在の同社i課あてに,真実は,被告人A
が前記飲食店で稼働していた事実も上記事故後に欠勤した事実もないのに,被
告人Aが同年2月から同年4月までの3か月間に合計73日間同店に勤務して
合計82万7486円の給与の支給を受けた旨及び同年4月28日から同年7
月28日まで欠勤した旨の虚偽のC作成に係る休業損害証明書を提出するとと
もに,Cにおいて,同年6月29日午後4時20分ころ,同市j町k番l号先
路上において,i課従業員Hからの電話による稼働事実等の確認に対し,被告
人Aを雇用しているが休まれて大変であるなどと嘘を申し向けるなどし,自動
車保険金支払決定権限を有するi課長I外1名をしてその旨誤信させて,休業
損害賠償金の支払を決定させ,よって,別表記載のとおり,同年5月22日か
ら同年8月4日までの間,前後6回にわたり,同市m町n番o号所在のJ郵便
局開設の被告人A管理に係る「K」名義の郵便貯金口座等に休業損害賠償金合
計84万5848円を各振込入金させ,もって,人を欺いて金員を詐取し,
第2被告人両名は,L及びMと共謀の上,
1N(当時61歳)から金品を強取しようと企て,平成18年8月22日午。
前7時10分ころから同日午前11時ころまでの間,北海道北斗市p丁目q番
(。。),,,r号s荘t階右のL方当時以下同じにおいてNに対しLにおいて
その頭部を手拳で殴打し,M及び被告人両名において,こもごもNの胸部,腹
部,腰背部等を多数回にわたり手拳等で殴打したり,足蹴にしたりするなどの
暴行を加え,さらに,Lにおいて,体重計及びオーブントースターでNの頭部
を数回殴打したり下腿部を足蹴にするなどし,被告人Aにおいて,Nに対し数
,,回柔道技をかけ背負い投げにより頭部から畳に落下させるなどの暴行を加え
この間,Lにおいて,Nに対し「お前,金どうしたのよ「どの口座に金が,」
入るのよ」などと申し向けて金品を要求し,同人の反抗を抑圧した上,同人管
理にかかるキャッシュカード2枚を強取し,その際,前記暴行により,同人に
第7頸椎骨折離断,第11胸椎骨折,肋骨多発骨折等の傷害を負わせ,同日午
前11時ころ,同所において,同人を上記傷害による外傷性ショックにより死
亡させ,
2Nの死体を遺棄しようと企て,前記1記載のL方において,同日昼過ぎころ
から午後11時ころまでの間,Nの死体をカーペット等にくるみ,これを普通
貨物自動車等に載せて,北海道北斗市u番地v付近道路まで運搬し,翌23日
午前1時ころ,同所付近の森林内に掘った穴の中に前記死体を投棄して土を被
せて埋め,もって,死体を遺棄し
たものである。
(事実認定の補足説明)
被告人Aは,当公判廷において,Nに背負い投げをした際に同人を頭部から畳に
落下させたことはなく,同人は背中から落下したと述べるので,以下,判示のとお
り認定した理由について補足して説明する。
この点につき,被告人Bは,当公判廷において「被告人Aが背負い投げをした,
際,Nは,額の方から,頭が上に反ってのけぞるような状態で畳に落ち,ばたんと
仰向けに倒れた。被告人Aの上記暴行後,あからさまにNの呼吸が乱れておかしく
なった」などと供述しているところ,この供述は,捜査段階から一貫しており,。
具体的で迫真性に富んでいる上,L,M及びOも捜査段階において同様の供述をし
ており,Nの死体を解剖した医師の所見と矛盾する点もない。以上によれば,これ
らの各供述は高い信用性を有するというべきで,これによれば,判示のとおりの事
実が優に認められる。
(量刑の事情)
1本件は,被告人Aが保険金を詐取した詐欺の事案,及び,被告人両名が,他の
共犯者2名と共謀の上,被害者から所持品を強取するとともに,その際の暴行に
,,。よって被害者を死亡させその死体を遺棄した強盗致死死体遺棄の事案である
2強盗致死,死体遺棄の点についてみると,犯行に至る経緯は,次のとおりであ
る。
被告人両名は,Mの友人であるが,Mは,被害者に対する貸金等を回収できな
いでいたところ,暴力団組員で兄貴分にあたるLから金の回収ぐらいできなくて
どうするなどと叱責された。このため,Mは,Lの指示を受けたり,友人である
被告人両名の協力を得たりしつつ,被害者から金品を搾取しようとして,被害者
,,をおびき出して責め立てたり被害者の第三者に対する金銭債権を譲り受けたり
被害者をMの舎弟にするなど様々な策を講じていたところ,被害者は,本件の数
日前に,貸金等を弁済するとの約束を反故にして連絡を絶ってしまった。このた
め,L,M及び被告人両名は,被害者の態度に立腹し,被害者に制裁を加えると
ともに被害者から金品を奪おうと考え,本件の前日に,被害者を騙しておびき出
し,制裁を加えて金品を強取することを話し合った。M及び被告人両名は,本件
当日,被害者を拉致してL方に連れ込んで軟禁状態に置き,前記「罪となるべき
事実」第2記載の各行為に及んだものである。
このように,被告人らは,暴力団特有の論理に基づき,身勝手な動機で本件各
犯行に及んだもので,その動機に酌量の余地は全くない。犯行態様は,被害者を
おびき出して拉致し,軟禁状態に置いた上で,判示のとおり,無抵抗な被害者の
,。,全身を4人がかりで執拗に殴る蹴るしたものであって極めて悪質であるまた
被告人らは,被害者の容体が悪化していることを認識しつつ,犯行の発覚を恐れ
て救急車を手配せず,被害者の死亡を確認するや,死体遺棄を計画して実行に移
し,被害者の所持品等を燃やすなどして証拠隠滅を図ったものであって,犯行後
の情状も悪い。
被告人らの犯行によって被害者は死亡しており,結果は取り返しのつかない重
。,,大なものである被害者は被告人らから執拗かつ激しい暴行を加えられた結果
その尊い生命を奪われ,さらに山林中に投棄されたのであり,その肉体的苦痛,
無念さは察するに余りある。遺族の処罰感情も厳しいものがあるが,これに対す
る慰藉の措置は講じられていない。以上によれば,本件の犯情は極めて悪質であ
るというほかない。
被告人両名が果たした役割をみると,被告人Aは,L方における集団暴行の終
盤に,被害者に対して繰り返し柔道技をかけ,背負い投げをして頭部から落下さ
せており,その直後に被害者の容体が急変したことや鑑定医の所見に照らすと,
この暴行が致命傷となった可能性が高いと認められる。また,このほかにも,本
件当日,被害者を拉致してL方に連れ込み,殴る蹴るの暴行を加え,Mとともに
強取したキャッシュカードを使って残高照会をし,死体遺棄の実行に際してもレ
ンタカーを借りるなど終始重要な役割を果たしたものと評価できる。
被告人Bは,被告人ら4名の中で最年少で従属的な立場で本件に関与したもの
の,本件当日,被害者を拉致してL方に連れ込み,殴る蹴るの暴行を積極的に加
えており,被告人Bがボクシングの経験者であることからすると,暴行の威力は
それなりにあったものとうかがわれるし,死体遺棄の実行にも加わるなど,強い
非難は免れないところである。
3その他の事情についてみると,被告人Aは,暴力団組員ではないものの暴力団
関係者と深い関わりを持ち,前科が2犯(本件強盗致死,死体遺棄の犯行前に傷
害罪によって罰金刑に処せられ,本件後にも暴力行為等処罰に関する法律違反に
より懲役刑の実刑に処せられている)あるほか,判示第1の保険金詐欺にも及。
んでおり,その規範意識は著しく鈍麻しているといわざるを得ない。
以上によれば,被告人Aの刑事責任は極めて重大であり,被告人Bの刑事責任
も相当に重いものがある。
4他方,犯行に至る経緯に照らすと,被告人らの暴行は,財物奪取を目的とした
ものではあるものの,被害者に対する制裁という意味合いもあり,典型的な強盗
致死罪とはやや異なるものである。また,本件は,Lが主導し,Mの債権等を回
収するために敢行された犯行であり,本件犯行によって被告人両名が直接に財産
的な利益を得られる可能性は低く,被告人両名において,自身が財産的利益を得
る目的は希薄であったと認められる。
被告人Aについては,同人が捜査官に供述したことにより本件強盗致死及び死
体遺棄の事案が発覚し,共犯者の検挙,事案の解明に至ったもので,この点は同
被告人の量刑に当たって特に重視すべき情状ということができる。また,同被告
人は,被告人なりに反省の情を示していること,未だ若年であること,被告人の
実母が出廷して謝罪の言葉を述べたことなどの事情も認められる。
被告人Bについては,本件において終始従属的な立場であったこと,同人によ
る暴行が致命傷となったとは認めがたく,同人にとって,共犯者が被害者を死に
至らせるほどの暴行を加えたことは予想外であったこと,被害者の救命,蘇生の
ための努力をしたこと,反省の情が顕著であること,前科前歴がないこと,未だ
若年であること,被告人の実母が出廷して今後の監督を約していることなどの事
情が認められる。
5そこで,これらの事情を総合考慮の上,被告人両名に対しては,それぞれ酌量
減軽をした上で,主文の刑に処するのが相当であると判断した。
(求刑被告人Aにつき懲役30年,同Bにつき懲役15年)
平成20年3月28日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官柴山智
岡田龍太郎裁判官
裁判官板橋愛子
(別表省略)

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