弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 被告が,原告に対する公正取引委員会平成11年(判)第6号私的独占の
禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)違反事件につ
き,平成13年9月20日付けでした審決(以下「本件審決」という。)を取り消
す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨。
第2 事案の概要
1 原告は,肩書地に本店を置き,千葉市の区域において地質調査業を営む者であ
る。
2 本件審決が引用する審決案(以下「本件審決案」という。)別紙1「目録」記
載の26社(以下「26社」という。)は,千葉市内に本店を置き,同市の区域に
おいて地質調査業を営む者である。
3 千葉市及び同市水道局(以下「千葉市等」という。)は,地質調査業務のほと
んどすべてを指名競争入札又は見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)
の方法により発注しており,指名競争入札等に当たっては,同市が競争入札参加の
資格要件を満たす者として登録している有資格者の中から参加者を指名している。
4 千葉市等は,地質調査業務の指名競争入札等における参加者の指名に当たって
は,同市内に本店又は主たる事務所を有する者(以下「市内業者」という。)の育
成を図るとの観点から,市内業者を優先して選定するものとし,同市内に本店又は
主たる事務所を有しない者(以下「市外業者」という。)については,技術的難度
が高いため市内業者では困難な業務について選定するとの基準に基づいて指名する
業者を選定しており,市内業者が市外業者とともに指名される業務は少ない状況に
ある(査第3号証,第4号証の1ないし5及び第42号証)。
5 原告は,千葉市等が指名競争入札等の方法で発注する地質調査業務(市内業者
のみが指名業者として選定される業務に限る。以下「千葉市等発注の市内業者向け
特定地質調査業務」という。)について,平成7年11月16日から平成10年9
月10日までの間に,22物件について指名を受け,1物件を除く21物件につい
て入札に参加し,うち13物件について受注者になっているが,この22物件の物
件名,指名通知年月日,入札年月日,受注者,落札金額,相指名業者等は,本件審
決案別紙2「指名物件一覧表」記載のとおりである(この「指名物件一覧表」記載
の個々の物件を同表記載の番号に応じ以下「1番物件」等という。)(査第37,
第39,第43及び第65ないし第84号証)。
第3 本件審決の事実認定及び法令の適用
1 原告及び26社は,遅くとも平成7年4月1日以降(原告にあっては同年11
月16日ころ以降,株式会社アイ・アール・エスにあっては同年6月9日ころ以
降,株式会社テクノアースにあっては同年11月8日ころ以降,株式会社システム
サーベイ及び三和技建株式会社にあっては平成10年8月20日ころ以降),千葉
市等発注の市内業者向け特定地質調査業務について,受注機会の均等化及び受注価
格の低落防止を図るため
(1) 千葉市等から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合には,次の方法に
より,当該業務を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
ア 当該業務について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名の
ときは,その者を受注予定者とする
イ 受注希望者が複数のときは,持ち点(指名実績を基に指名1回を1点とするな
どして算出した点数)を勘案して,受注希望者の間の話合いにより受注予定者を決
定する
ウ 受注希望者がいないときは,指名を受けた者の間の話合いにより受注予定者を
決定する
(2) 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定
者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意(以下「本件合意」という。)の下に,受注予定者を決定し,受注予定者
が受注できるようにしていた。
2 原告及び26社は,上記1により,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査
業務のほとんどすべてを受注していた。
3 平成10年9月10日,本事案について,公正取引委員会が独禁法の規定に基
づき審査を開始したところ,原告及び26社は,同月11日以降,千葉市等発注の
市内業者向け特定地質調査業務について,本件合意に基づき受注予定者を決定し,
受注予定者が受注できるようにする行為(以下「本件行為」という。)を取りやめ
ている。
4 原告は,以上のとおり,平成7年11月16日ころから平成10年9月10日
までの間,26社と共同して,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務につ
いて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共
の利益に反して,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務の取引分野におけ
る競争を実質的に制限していたものであって,これは,独禁法2条6項の不当な取
引制限に該当し,同法3条の規定に違反する。よって,被告は,原告に対し,独禁
法54条2項の規定により,本件審決の主文記載のとおり上記取引制限が排除され
たことを確保するために必要な措置を命じる。
第4 原告の主張
1(1) 原告は,以下に述べるように,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調
査業務について,26社と共同し,本件合意に基づき受注予定者を決定し,受注予
定者が受注できるようにするという行為(本件行為)を行ってはいない。
(2) 本件合意は,千葉県地質調査業協会及び社団法人全国地質業協会連合会関
東地質調査業協会千葉県支部(以下,併せて「協会」という。)のルール・慣行で
あり,原告は,協会の会員(以下「協会員」という。)ではなく,本件合意の内容
の詳細を知らないし,これに参加していない。協会員が,原告にも受注調整に加わ
るように誘いをかけてきたり,あるいは協会員間の受注調整による受注予定者や,
受注予定者とされた者の積算価格を原告に連絡してきたりしたことはあったが,そ
れは協会員の一方的な行為であって,原告はこれに応じておらず,協会員間の受注
調整の結果を認めたことはない。
(3) 原告は,千葉市等から指名を受けて入札に参加した場合は,いずれの場合
も受注したいという姿勢で参加しており,設計図書縦覧,現場説明,図面説明,現
場踏査等に基づき独自に積算を行った上で採算のとれる価格をもって入札したもの
であり,他の同業者や相指名業者と連絡調整を行うことにより受注予定者を決定す
るというような行為はしていない。原告が受注した場合も,相指名業者の協力を得
て受注したものではなく,原告が落札できるように入札前に原告の入札価格を相指
名業者に連絡したこともない。また,原告は,相指名業者が受注できるように協力
したことはなく,相指名業者が受注できるように入札価格を決定したこともない。
原告が落札した13物件の多くは,金額の小さい物件や利益の見込まれない物件で
あり,相指名業者が,自らは受注を希望せずに受注を回避した上,誰も受注する者
がいなくて入札が不調になるのを防ぐため,一方的に原告を受注予定者としたもの
であって,本件合意に基づく受注調整によって原告が受注したものではない。
(4)ア 1番物件について,原告は,相指名業者の株式会社ケセン地質研究所及
び対馬基礎開発株式会社に対し,原告が受注できるように協力を要請したことはな
い。相指名業者2社が,原告が受注の意思を有するかどうかについて探りを入れて
きたことはあったが,それは,誰も受注する者がいなくて,入札が不調になること
を防ぐための探りであって,原告は,これに対し,原告が受注できるように協力し
てほしいというような対応はしていない。
イ 3番物件について,原告は,受注を希望して相指名業者2社との話合いによっ
て受注予定者となったものではない。相指名業者2社は,現場説明の際,原告に対
し,原告が受注せよという趣旨の発言をし,原告は,その横柄な態度に立腹して,
入札会場へ行かなかったものである。
ウ 5番物件について,原告は,相指名業者と受注予定者を決める話合いなどはし
てはおらず,受注予定者なる者を知らない。原告は,入札日までに,相指名業者の
株式会社共同地質の担当者から,同社の受注についての協力依頼の電話を受けた
が,協力を断っている。
エ 18番物件について,原告は,相指名業者と受注予定者を決める話合いなどし
ていない。原告は,入札当日,相指名業者の伸光エンジニアリング株式会社の担当
者から,同社の受注についての協力依頼の電話を受けたが,これに応じていない。
オ 上記22物件のその他の物件についても,原告は,相指名業者と受注調整をし
たことはない。
2 協会員は,公正取引委員会の審査開始後も本件行為を取りやめていない。
3 本件審決が事実認定の根拠とする原告代表者Aの供述調書である査第33号証
は,任意性及び信用性を欠くものである。Aは,審査官から上記供述調書を読み聞
かされた際,当日は午後2時から9時半すぎまで窓のない会議室で審訊された上,
帰りの電車の時間が気になっていたことから,自ら納得できない又は正さなければ
ならない点などを,一々注意深く聴いてはおらず,軽く聞き流し,軽い気持ちで判
を押したものであり,Aの署名・押印があったとしても,記載内容が供述したまま
を録取したものとはいえない。
4 また,本件審決が事実認定の根拠とする相指名業者の供述調書は,本件の審査
手続における協会員の審査官に対する供述の調書であるが,あまりにも一方的な内
容で,審査官と協会との間で談合でもあったのではないかと疑わせる程に不自然な
ものであって,信用性を欠くものである。
第5 被告の認否及び主張
 原告の主張は争う。本件審決が認定した上記事実は,本件審決挙示の証拠によ
り,本件審決が説示するとおり合理的に認定できるものであり,実質的証拠に裏付
けられたものである。また,査第33号証には,その末尾に,録取し読み聞かせた
内容に誤りのないものである旨を確認する趣旨で,Aの署名・押印がされており,
さらに,原告にとってむしろ有利なものも含まれていること等からすれば,査第3
3号証の供述には任意性及び信用性があるといえる。
第6 当裁判所の判断
1 本件審決の上記第3の1ないし3の事実認定のうち,原告及び26社は,平成
7年11月16日ころ以降(株式会社システムサーベイ及び三和技建株式会社にあ
ってはそれぞれ平成10年8月25日ころ以降),千葉市等発注の市内業者向け特
定地質調査業務について,本件合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受
注できるようにして,そのほとんどを受注するという本件行為を行っていたが,公
正取引委員会が平成10年9月10日本事案について独禁法の規定に基づき審査を
開始したため,同月11日以降,本件行為を取りやめている,という部分は,本件
審決引用の査第33ないし第37,第39,第43ないし第61,第63及び第6
5ないし第84号証並びに参考人B,同C,同D及びAの審訊の結果により,これ
を合理的な事実認定と認めることができる。
2 原告は,本件審決が引用する上記証拠のうち,査第33号証は任意性及び信用
性を欠くと主張する。査第33号証は,本件審査手続におけるAの審査官に対する
供述の調書であるが,その末尾に,Aの署名・押印があり,「上記のとおり録取し
読み聞かせたところ供述人は誤りのないことを申し立て署名押印した。」と記載さ
れており,本件行為に関する供述の記載も,原告が本件合意の存在を認識した上,
一部の物件について原告の入札価格を相指名業者に教えたことなどを認めつつも,
談合行為に全面的に参加していたことを認めるものではなく,大部分の物件につい
ては原告の入札価格を相指名業者に連絡していないことなどを述べる内容であっ
て,原告にとってむしろ有利な供述も含まれている。本件審判手続におけるAの審
訊の結果によると,査第33号証が作成された当日,Aは午後2時ころ公正取引委
員会に出頭し,午後9時半ころに署名・押印を終えて帰宅しているが,その間に自
由な供述を妨げるような事態は発生していない。その他,本件記録を検討しても,
査第33号証の任意性や,その不利益供述部分の信用性に疑問を抱かせる事情は認
められないから,本件審決が査第33号証を事実認定の証拠としたことに違法はな
いというべきである。なお,査第33号証には「私の略歴については,本日,経歴
書を持参しましたので,提出します。」と記載されているところ,Aの審訊の結果
に照らすと,同経歴書はAが査第33号証作成の日に公正取引委員会で係官から紙
を渡されて作成・提出したものと認められるが,このことをもって査第33号証の
本件行為に関する供述部分の任意性及び信用性を左右するものということはできな
い。
3 また,原告は,本件審決が引用する上記証拠のうち,相指名業者の供述調書は
信用性を欠くと主張する。相指名業者の供述中には,具体的な受注調整の態様など
について,細部で曖昧な箇所や他の相指名業者の供述と異なる箇所が散見される一
方,画一的とみられる箇所もあるが,それらは,通常人一般の記憶力の程度や,同
一の受注調整行為に関する質問に対する答えであるということに由来するもので,
その点から上記供述調書が信用性を欠くものということはできない。本件審決が,
これらの供述調書の内容を他の証拠と総合的に斟酌の上,上記事実認定を行ったこ
とは合理的であるというべきである。
4(1) 原告は,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務について,26
社と共同して,本件合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにするという本件行為は行っていないと主張するので,さらに詳しく検討するこ
ととする。
(2) 原告の代表者であるAは,東海地質株式会社に勤務していた平成2年こ
ろ,千葉市等が指名競争入札等の方法で発注する地質調査業務について,入札に参
加する事業者の間で,受注希望者が1名のときにはその者を受注予定者とし,受注
希望者が複数のときは持ち点制(指名1回ごとに1点を加算して持ち点とし,持ち
点の多い者の受注希望を優先させ,落札すれば持ち点がゼロに戻るというもの)の
下で,受注希望者の話合いにより受注予定者を決め,受注希望者がいないときは,
指名を受けた者の間の話合いにより受注予定者を決め,他の相指名業者は受注予定
者が確実に受注できるように協力するという受注調整が行われていたことを知った
ものであり,平成4年に原告を設立し,原告に対して千葉市等から最初に指名があ
った平成7年11月16日においても,同様の認識を有していた(査第33号証並
びに参考人B,同C,同D及びAの審訊の結果)。
(3) 上記第2の5のとおり,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務に
ついて,原告は平成7年11月16日から平成10年9月10日までの間に22物
件について指名を受けているが,この22物件の入札に参加した各指名業者の入札
価格は,本件審決案別紙3-1「入札価格一覧表(入札が2回行われたもの)」及
び別紙3-2「入札価格一覧表(入札1回のもの)」記載のとおりである(査第3
7,第39及び第65ないし第84号証)。22物件のうち11物件について,2
回の入札が行われているが,すべての物件で第1回目の入札で最も低い価格で入札
した者が第2回目の入札でも最も低い価格で入札している。22物件の個々の物件
の入札状況等は,次の(4)のとおりである。
(4)ア 1番物件について
 1番物件は,原告が千葉市等から指名を受けた最初の物件であったことから,原
告が受注を希望し,その旨を相指名業者2社に告げたところ,相指名業者2社が受
注を希望しなかったため,原告が受注予定者となった(査第45号証)。原告は,
相指名業者に対して自己の入札価格を入札前に連絡した(査第45号証において,
相指名業者の対馬基礎開発株式会社の営業部長Eは,被告の審査官に対し,入札前
にAから原告の入札価格の連絡を受けたと供述している。)。
イ 3番物件について
 3番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,相指名業
者2社が受注を希望しないので原告において受注してほしいとの意向を示した結
果,原告が受注予定者となった。入札当日,Aは入札場所の千葉市役所に出向いた
ものの,相指名業者から受注を押し付けられたと感じて不満を覚え,千葉市の入札
担当者や相指名業者に対し,台風の影響で外房線が不通になったため入札に参加で
きなくなったとの電話を入れて,入札に参加しなかった。相指名業者2社は,急
遽,それぞれが積算した価格で入札し,対馬基礎開発株式会社が落札した(査第4
5,第63及び第65号証並びにAの審訊の結果。このように,3番物件について
も,原告を含む指名業者間の調整で原告を受注予定者としていたものであり,原告
は入札当日になって入札参加を取りやめているものの,台風を奇貨として外房線の
不通を口実にした一回限りの参加取りやめであって,原告が本件合意に基づく受注
調整とは無縁の行動をとっていたとか,あるいは受注調整から離脱したことを示す
ものではない。)。
ウ 4番物件について
 4番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告のみ
受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定者と
した(査第44及び第46号証。相指名業者の伸光エンジニアリング株式会社の取
締役業務部長Dは,本件審判における審訊で,原告が受注予定者となったことにつ
いてAから礼を述べられたと供述している。)。原告は,相指名業者に対して自己
の入札価格を入札前に連絡した(査第46号証において,相指名業者の山中エンジ
ニヤリング株式会社の営業部課長Fは,被告の審査官に対し,入札前にAから原告
の入札価格の連絡を受けたと供述している。)。
エ 5番物件について
 5番物件について,原告及び相指名業者4社が受注希望を確認し合い,持ち点が
一番高かった伸光エンジニアリング株式会社が受注を希望せず,持ち点が二番目に
高い株式会社共同地質が受注を希望したため,同社を受注予定者とした(査第49
及び第52号証)。株式会社共同地質は,原告に自己の入札価格を入札前に連絡し
た(査第52号証において,株式会社共同地質の取締役総務部長Gは,被告の審査
官に対し,入札前に同人が原告及び他の相指名業者に対して同社の入札価格を連絡
したと供述している。)。
オ 6番物件について
 6番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告のみ
が受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定者
とした(査第49及び第51号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価格
を入札前に連絡した(査第49及び第51号証において,相指名業者の京葉テクニ
カ株式会社の専務取締役C及び株式会社ケセン地質研究所の営業部長Hは,被告の
審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡を受けたと供述してい
る。)。
カ 8番物件について
 8番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告のみ
が受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定者
とした(査第51及び第53号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価格
を入札前に連絡した(査第51及び第53号証において,相指名業者の株式会社ケ
セン地質研究所の営業部長H及び千葉土質調査株式会社の営業担当者Bは,被告の
審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡を受けたと供述している。B
は,本件審判における審訊でも同じ供述をしている。)。
キ 10番物件について
 10番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告の
みが受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定
者とした(査第49及び第52号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価
格を入札前に連絡した(査第49号証において,相指名業者の京葉テクニカ株式会
社の専務取締役Cは,被告の審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡
を受けたと供述している。)。
ク 11番物件について
 11番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合ったとこ
ろ,受注を希望する者がいなかったので,話合いにより株式会社両総コンサルタン
トを受注予定者に決め,入札前に同社が同社の入札価格を原告及び他の相指名業者
に連絡した(査第50及び第53号証)。
ケ 12番物件について
 12番物件について,原告及び相指名業者4社は持ち点で受注予定者を決めるこ
ととし,持ち点が一番高い株式会社当間地質を受注予定者とした。株式会社当間地
質は,入札前に同社の入札価格を原告及び他の相指名業者に連絡した(査第48,
第53及び第54号証)。
コ 13番物件について
 13番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告の
みが受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定
者とした(査第49及び第59号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価
格を入札前に連絡した(査第49号証において,相指名業者の京葉テクニカ株式会
社の専務取締役Cは,被告の審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡
を受けたと供述している。)。
サ 14番物件について
 14番物件について,原告及び相指名業者4社が受注希望を確認し合ったとこ
ろ,原告と株式会社当間地質とが受注を希望したが,同社の方の持ち点が原告の持
ち点よりも高かったので,同社を受注予定者とした。株式会社当間地質は,入札前
に同社の入札価格を原告及び他の相指名業者に連絡した(査第48,第53及び第
54号証)。
シ 15番物件について
 15番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告の
みが受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定
者とした(査第44及び第49号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価
格を入札前に連絡した(査第49号証において,相指名業者の京葉テクニカ株式会
社の専務取締役Cは,被告の審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡
を受けたと供述している。)。
ス 16番物件について
 16番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,原告の
みが受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告を受注予定
者とした(査第49及び第60号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価
格を入札前に連絡した(査第49号証において,相指名業者の京葉テクニカ株式会
社の専務取締役Cは,被告の審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡
を受けたと供述している。)。
セ 18番物件について
 18番物件について,原告及び相指名業者6社が受注希望を確認し合い,持ち点
が一番高い伸光エンジニアリング株式会社が受注を希望したので,同社を受注予定
者とした。伸光エンジニアリング株式会社は,入札前に原告及び他の相指名業者に
同社の入札価格を連絡した(査第44及び第51ないし第53号証並びに参考人B
及び同Dの審訊の結果)。
ソ 19番物件について
 19番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合い,株式会
社両総コンサルタントが受注を強く希望し,原告及び他の相指名業者は受注を積極
的には希望しなかったため,同社を受注予定者とした。株式会社両総コンサルタン
トは,入札前に同社の入札価格を原告及び他の相指名業者に連絡した(査第50及
び第51号証)。
タ 20番物件
 20番物件について,原告及び相指名業者4社が受注希望を確認し合ったとこ
ろ,受注を希望する者がおらず,原告のみが犠牲番外物件(受注しても持ち点をゼ
ロにせず,逆に1点を加算する物件,「犠番」とも呼ばれる。)の扱いでよければ
受注してもよいと申し出たため,原告を受注予定者とした(査第47,第49,第
51及び第52号証)。原告は,相指名業者に対して自己の入札価格を入札前に連
絡した(査第47,第49,第51及び第52号証において,相指名業者の株式会
社テクノアースの取締役管理部長兼営業担当部長I,京葉テクニカ株式会社の専務
取締役C,株式会社ケセン地質研究所の営業部長H及び株式会社共同地質の取締役
総務部長Gは,被告の審査官に対し,入札前にAから原告の入札価格の連絡を受け
たと供述している。)。
チ 21番物件について
 21番物件について,原告及び相指名業者2社が受注希望を確認し合ったとこ
ろ,原告のみが受注を希望し,相指名業者2社は受注を希望しなかったので,原告
を受注予定者とした(査第44及び第51号証)。原告は,相指名業者に対して自
己の入札価格を入札前に連絡した(査第51号証において,株式会社ケセン地質研
究所の営業部長Hは,被告の審査官に対し,入札前に原告から原告の入札価格の連
絡を受けたと供述している。)。
ツ その他の物件について
 上記アないしチに掲げた物件以外の物件についても,原告とともに指名を受けた
相指名業者の担当者は,被告の審査官に対し,原告及び相指名業者が本件合意に基
づく受注調整を行っていたことを認める供述をしている(2番物件につき査第51
及び第63号証,7番物件につき査第51及び第59号証,9番物件につき査第5
4及び第59号証,17番物件につき査第53,第55,第56及び第58号証,
22番物件につき査第44及び第60号証)。
(5) 本件審決は,上記(2)のとおり,Aが遅くとも平成7年11月16日に
は本件合意の内容を知っていたこと,上記(4)のとおり,原告が,1番物件,5
番物件及び18番物件について,相指名業者との間で,話合いにより受注予定者を
決め,原告が受注予定者の場合には,原告が相指名業者に入札前に入札価格を連絡
し,原告以外の者が受注予定者の場合には,これらの者から入札前に入札価格の連
絡を受け,これらにより受注予定者が受注できるようにするなど協力し合っていた
こと,3番物件についても,原告と相指名業者との間の話合いで受注予定者を決め
ていたこと,その余の物件についても,相指名業者においては,原告も他の同業者
と同様に受注調整を行っているものと認識されていたこと,一方,原告が上記22
物件の入札に際して,3番物件を除いては受注予定者とされていたにもかかわらず
受注しなかったとか,他の相指名業者が受注予定者とされていたにもかかわらず原
告が受注したなどといった受注調整行為から離脱した,あるいはこれと相容れない
行動をとったものと認めるに足らないこと,さらに,上記(3)のとおり,2回の
入札が行われた11物件の入札結果からは,原告が受注した物件か否かを問わず,
事前に第2回目の入札価格を含めて価格の連絡がされていたことが推認されること
を掲げ,これらの事実を総合すれば,原告が本件合意に参加し,受注予定者を決定
し,受注予定者が受注できるようにしていたものと認めるのが相当であるとし,ま
た,上記認定によれば,原告及び26社は,本件行為により,千葉市等発注の市内
業者向け特定地質調査業務のほとんどすべてを受注していたものと認めるのが相当
である,と認定しているが,この事実認定は,証拠に基づくもので,その推論にも
問題がなく,合理的なものということができる。
(6) 原告は,本件合意は協会のルール・慣行であって,協会員でない原告は本
件行為に参加しておらず,原告は独自に積算した価格で入札に参加していたもの
で,相指名業者との間で入札前に入札価格の連絡をするようなことはしていないと
主張する。
 確かに,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務の入札に参加した業者の
ほとんどは協会に加入しているところ,原告は協会に加入していない(査第33号
証並びに参考人J及びAの審訊の結果)。また,上記(4)のとおり,原告が受注
した物件のほとんどは,原告のみが受注を希望し,相指名業者は受注を希望しなか
った物件である。特に,3番物件は,原告自身も受注を希望しなかったにもかかわ
らず,入札が不調になるのを回避するため原告が受注予定者とされたものと推認さ
れる。
 しかしながら,上記(2)ないし(4)のとおり,原告は本件合意の内容を認識
し,原告は22物件について相指名業者と入札前に受注予定者を決める話合いに加
わっている。そして,原告が受注予定者となり受注した物件について,原告は自ら
積算の上で採算のとれる価格で入札し(このことは原告の自認するところであ
る。),その価格を入札前に相指名業者に連絡しており,相指名業者の協力を得て
受注しているのである。また,相指名業者が受注予定者となった物件については,
原告は当該相指名業者から入札価格の連絡を受け,それを上回る価格で入札してい
るのである。
 そうである以上,本件合意と協会とのかかわりがどのようなものであるかは別と
して,また,原告の受注した物件が相指名業者において受注を希望しなかったもの
であったとしても,原告が26社と共同し,本件行為を行っていたとの認定は相当
であるというべきである。
5 原告は,協会員は公正取引委員会の審査開始後も本件行為を取りやめていない
と主張する。
 原告及び26社が公正取引委員会の審査開始後は本件行為を取りやめているとの
本件審決の認定は,上記のとおり,その挙示する証拠(査第55ないし第58,第
60及び第61号証並びに参考人B,同C及び同Dの審訊の結果)により合理的な
ものと認める。
 原告は,本件行為は協会員のみによるもので,原告には関係のないものであるこ
とを強調し,その根拠の一つとして,協会員はその後も本件行為を継続していると
主張するものであり,Aは,公正取引委員会に対する直接陳述で,協会員は上記の
審査開始後も順番に受注していると述べている。しかし,原告も本件行為に参加し
ていたことは上記のとおりであり,原告の主張あるいはAの陳述のみで本件行為の
取りやめに関する上記の認定の合理性を左右することはできない。
6 以上によれば,原告は,平成7年11月16日ころから,26社(株式会社シ
ステムサーベイ及び三和技建株式会社については平成10年8月25日ころ以降)
と共同して,千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務について,受注予定者
を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,
千葉市等発注の市内業者向け特定地質調査業務の取引分野における競争を実質的に
制限していたところ,平成10年9月11日以降これを取りやめたものであって,
原告の上記行為は,独禁法2条6項の不当な取引制限に該当し,同法3条の規定に
違反するものであるから,同法54条2項の規定に基づき行われた本件審決は適法
というべきである。
第7 結論
 本件審決に原告主張の違法はなく,原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄却
することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条及び民事訴訟法61条
の規定を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第三特別部
裁判長裁判官 泉徳治
裁判官 持本健司
裁判官 秋武憲一
裁判官 森高重久
裁判官 三代川俊一郎

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